131 / 143
第五章
20
しおりを挟むユーリ様にエスコートをされながら、会場の扉の前で呼ばれるのを待機する。
「大丈夫かい?表情が硬くなってる気がするけど?」
「今日から正式に王太子様の婚約者って認識されるのかと思ったら、急に緊張してきてしまいました」
「そんなに緊張するようなことかい?イリーナ嬢は慣れてると思ってたよ。小さい頃からミハイルの婚約者候補だったんだから、次期王太子妃だって思われていただろ?候補者の中でも正式に婚約者に選ばれる可能性が高かったからね」
確かに複数人いる婚約者候補で、選ばれるのは私じゃないかと言われてはいた。
でもそれは勝手に周りが言ってるだけで、私には全然実感がなかったのよね。
だってミハイル様には嫌われていましたし、最終的には他の人が選ばれると思っていた。
「あくまで当時の私は候補者でしたから、ミハイル様の婚約者って印象が薄かったんですよね。ミハイル様から嫌われていましたし、ミハイル様も王太子に正式に任命されてなかったので、王子の複数いる婚約者候補の1人ってだけだったので、そこまで緊張することもありませんでした」
パトリシア様が婚約者候補として、私以上に目立って居たのも緊張しなかった要因よね。
周りから選ばれるって言われてたのは私だったけど、ミハイル様に気に入られていたのはパトリシア様の方でしたし、私への当てつけが目的でしょうけど、ミハイル様の普段の行動のお陰で、完全にミハイル様に惹かれることはなかったから、私にはそこまでダメージはなかったのよね。
ミハイル様の婚約者って地位に一時期執着してたのも、婚約者に選ばれれば母親が喜ぶと思ったからですしね。
当時の私には恋愛というものがよく分からなかった。
いや………、知りたくないと思っていたって方が正しいかしら?
誰かを好きになっても叶わないですし、貴族令嬢として親が決めた相手と結婚しないといけない。
だから恋愛をしても苦しむだけ、それなら自分の婚約者を好きになれば良いって考えて、ミハイル様に必死に好きになろうとした。
その結果、当時の私は誰が見てもミハイル様に恋してる女だった、婚約しようって迷いもなく切り替えられたのは、前世の記憶を思い出したって理由もあるけど、私自身がミハイル様を本気で好きだったわけではないからなのよね。
だけど今の私は本気でユーリ様に惹かれている。
これは勘違いでも思い込みでもない。
好きな人と結婚できる私は恵まれてるのよね。
ユーリ様が私を好きになってくれたら嬉しいけど、これ以上は欲張ってはいけないわよね。
ユーリ様から大切にされてる今の状態に満足しないと、ユーリ様は私のことを妹のように可愛がってるだけかもしれないけど、嫌われてないだけマシよね。
「何があっても私が守るから、困ったことがあったら、些細なことでも報告して欲しい。イリーナ嬢は何でも我慢してしまいそうだからね」
ユーリ様は私のことをよく理解してるわね。
私は前世のことから、人を頼ったり、弱味を見せたりするのが苦手なのよね。
何か負けた気がしてしまう。
だけど王族に嫁ぐってことはそれでは駄目なのよね。
小さいことでもちょっとした火種が大火事になってしまうことがある。
油断はしてはいけない。
「わかりました。婚約者としてユーリ様を頼らせて頂きます」
「絶対だよ。男として婚約者に頼って貰えないのは、とても寂しいからね」
そんな事を言われたら頼らずには居られないわよね。
ユーリ様って口が上手いわね。
ユーリ様と結婚しても、周りからずっとモテてそうで不安になりそうね。
将来の妻として、夫がモテてるのは誇りに思うかもしれないけど、それと同時に不安にもなりそうね。
結婚後の事を妄想してると、私とユーリ様の名前が呼ばれる。
「それじゃあ入るよ」
「はい」
これから戦いの始まりだわ。
1,900
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
義務ですもの。
あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!
みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。
幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、
いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。
そして――年末の舞踏会の夜。
「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」
エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、
王国の均衡は揺らぎ始める。
誇りを捨てず、誠実を貫く娘。
政の闇に挑む父。
陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。
そして――再び立ち上がる若き王女。
――沈黙は逃げではなく、力の証。
公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。
――荘厳で静謐な政略ロマンス。
(本作品は小説家になろうにも掲載中です)
【完結済】王女に夢中な婚約者様、さようなら 〜自分を取り戻したあとの学園生活は幸せです! 〜
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
王立学園への入学をきっかけに、領地の屋敷から王都のタウンハウスへと引っ越した、ハートリー伯爵家の令嬢ロザリンド。婚約者ルパートとともに始まるはずの学園生活を楽しみにしていた。
けれど現実は、王女殿下のご機嫌を取るための、ルパートからの理不尽な命令の連続。
「かつらと黒縁眼鏡の着用必須」「王女殿下より目立つな」「見目の良い男性、高位貴族の子息らと会話をするな」……。
ルパートから渡された「禁止事項一覧表」に縛られ、ロザリンドは期待とは真逆の、暗黒の学園生活を送ることに。
そんな日々の中での唯一の救いとなったのは、友人となってくれた冷静で聡明な公爵令嬢、ノエリスの存在だった。
学期末、ロザリンドはついにルパートの怒りを買い、婚約破棄を言い渡される。
けれど、深く傷つきながら長期休暇を迎えたロザリンドのもとに届いたのは、兄の友人であり王国騎士団に属する公爵令息クライヴからの婚約の申し出だった。
暗黒の一学期が嘘のように、幸せな長期休暇を過ごしたロザリンド。けれど新学期を迎えると、エメライン王女が接触してきて……。
※10万文字超えそうなので長編に変更します。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる