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しおりを挟むラッセルside
伯母上の考えてることが理解できなくて、困惑していると伯父上は深い溜め息をつく。
「妻はいつか妹がラッセルを利用して、王座に返り咲くつもりだと考えているんだ。どんなに妹はそんなことを考えてないって言っても、あいつは納得しないんだよ」
「伯母上は何でそんな勘違いをしてるの?俺の知ってる母上は今の生活に満足していた。伯父上には悪いけど、王族としての生活は固っ苦しくて、俺も母上も嫌がってたくらいだ」
一応は俺や母上や姉上は準王族だから、年に1度だけ色んな国の王族だけが集まるパーティーでは、王族として参加して居たけど疲れるだけで憂鬱だった。
王になるか公爵家の当主になるか自由に選べるって言われたら、俺は迷わず公爵家の当主を選ぶ。
国のトップなんて無理難題を毎日押し付けられて、毎日国を良くする為に政策に頭を悩ませる。
公爵家の当主も同じようなものかもしれないけど、重要度では王のほうが重いから責任は重い。
「妹やラッセルやエレーナは準王族として王族専用の教育をしてきたから、王族って身分がどれだけ大変で責任重大か理解しているから嫌がってるのに、あいつはそれを理解してないんだよ」
王族専用の勉強は大半が王族の歴史を習う。
この国の王族や他国の王族がした過ちがどんな結果を生み出したのかを教えられる。
周りへの思い遣りを無くし自分勝手に生きると、周りには敵しか残らないことを永遠と教えられる。
国民からの希望を無視続けるとどうなるかを過去の例を交えて話されたり、軽くトラウマになるぐらい重い話を沢山されてきた。
それを教えられてきたのに、王にならなくても済む立場にいるのに、従兄弟を害してまで王になりたいとは到底思えない。
「伯母上だって王妃になる為に王族の勉強してるよね?それなのに俺が従兄弟達に危害を加えると思ってるの?」
「あれは思い込みが激しいんだ。それと周りから色々と唆されてるんだろうな。私と妻が婚約してた頃は、妻はあそこまで妹に警戒してなかった。妹が優秀だったのもあれを余計に疑心暗鬼にさせたのかもしれない」
母上は何も悪くないよな?
周りは何のつもりで伯母上にそんな話をしたんだ?
国を混乱させたかったのか?
そんなことをして何の得があるんだ?
「伯父上は何の対策もしなかったの?伯母上に変なことを吹き込む相手を関わらせないようにすることだって、伯父上なら出来たでしょ?」
「それが難しいんだよ。相手は妻の親族が多かったのと、確信的なことは一切言わなかったんだ。相手が勘違いするような言い回しをしたり、さり気なく疑うように誘導したりしてるだけで、決定的な発言はしてなかった」
伯母上の親族は狡賢いってことか……、伯母上の親族は何が目的でそんなことをしてたんだ?
目的が見えてこない。
そんなことをして何のメリットがあるんだ?
母上が勘違いさせるような行動をしてたなら、警告の為に忠告するのは理解できるけど、母上は王女として育ったから、周りからの見え方を1番気を付けていた。
自分の軽率な行動で周りを振り回してしまうことをよく理解していた。
母上は、俺や姉上にも行動や言葉には気を遣うように言い聞かされてきた。
そんな母上が勘違いされるような行動をするはずが無い。
「伯母上の親戚は、何の目的があってそんなことをしてるんですか?」
「それが分からないんだ。妹は人から恨まれるような事をしていなかった。妹やルークは私や息子を支える家臣になると、常日頃から公言していたのに、何故そんなことを言い始めたのか?」
伯父上も分かってないのか……、
確かに父上達は、伯父上達を何があっても支えると公言していたな。
そういえばある日突然言うようになったよな?
伯母上が自分達を疑ってるのを知って、誤解をとくためにやってたのかな?
「伯母上は今も疑ってるの?従兄弟たちは?」
「妻は疑ってる気がする。息子達は疑ってない。息子達の本音は多分押し付けられるなら押し付けたいが本音だろうな。妻のことは勝手なことをしないように監視続ける。」
「………分かった。姉上に心配掛けないためにも、俺はセントラル学院に入ったほうが良いんだよな?」
「そうだな。あそこなら飛び級で今から進学することも出来る。エレーナを解放してあげたいってお前の希望も早く叶うはずだ」
そっか……、姉上達の通ってる学園は16歳にならないと通えないけど、セントラル学院なら今から準備したら来年には通えるんだ。
3年間で卒業だから14歳で卒業して、当主になれるのは16歳からだから、2年間は姉上について回って、16歳になったら当主になれば良い。
姉上には5年間我慢して貰うことになるけど、これが1番いいのかもしれない。
「決意したみたいだな。これから大変だろうけど頑張れ。お前は妹とルークの息子だから絶対にやれる」
「うん」
伯父上が俺の頭を優しく撫でる。
負担と期待で泣きそうになってると、部屋のドアが大きい音を鳴らして開けられる。
「陛下!!エレーナ様がお倒れになりました!?」
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