断罪される１か月前に前世の記憶が蘇りました。

１２

　伯父様がどの程度把握してるか分からないから、１から説明する必要があるかしら？

「伯父様は私のことで噂話などを聞いたことがありますか？」

「エレーナの噂か？うーん、悪い噂などは聞いたことないな。優秀とか、エレーナが次期跡取りでもおかしくないとかなら聞いたことがあるが」

　確かにそんな噂もあるわね。

　その噂はロベルトの母親や王妃様が流してる気がするのよね。

　普通なら公爵家の跡取り問題を簡単に口に出せる内容ではない。

　身内だけの場でなら話すかもしれないけど、噂が広がるような場所で話したり絶対にしないわ

　ラッセルが落ちこぼれで、私が桁違いに優秀だったりしたら、跡取りに私がなる可能性が高いって話が広がるかもしれないけど、私は平均よりちょっと上なだけ、ラッセルは今は平均かもしれないけどまだまだ成長途中だわ。

　だからそんな噂話が広がるのは本来ならおかしいのよね。

　誰かが意図的に流してる可能性が高い。

　そんな噂を流して得をするのは、ロベルト関係の人達よね。

　王妃様やロベルトの母親が直接流してるとは思わない、そんな分かりやすいことはしないわよね。

　我が家を敵に回すことになる。

　お２人が手駒を使って噂を流してるだろうから、その人達に警告をすることは出来るけど、お２人には何の効果もない。

「伯父様が聞いた噂も色々と問題はありそうですけど、他にも私について噂があるんです。全て嘘なんですけどね」

「他にもあるのかい？」

「学園で数ヶ月に１回短い期間だけ広まる噂なんですけど、私がロベルトの恋人を虐めてるって噂が回るんです。周りもそんな現場を見てませんし、私がロベルトに興味がないのを知ってるので、数日で噂は消えるんですけど、数カ月後にまた噂になるんです」

　誰が流してるか予想は出来ますけど、相手にもメリットが無いのよね。

　この婚約が無くなったら庶民になるだけなのに、そのことを理解してるのかしら？

　社交界にこの噂が広がらないのは、誰も信じないっていう理由と、王妃様やロベルトの母親が止めてるからだと思うのよね。

　お2人は私を気に入らないけど、ロベルトが庶民になってしまう方が嫌だって思ってるみたいだから、長期間身に覚えのない噂が広がり、そのことに私が怒って婚約破棄を言ってこないようにする為に、噂が広がらないようにしてる可能性がある。

　それでも定期的にその噂がでてくるから、ストレスにはなってるのよね。

　興味もない男に執着してるみたいに言われるのは、私とってとても屈辱だわ。

「それは知らなかったな。女性の間での噂話は王妃である妻から聞くんだが、そんな報告は一切上がってきてない」

「そうですか………」

　聞いても伯父様に報告してないか、社交界ではそんな話が広がってないか、伯父様の姪である私の話だから、周りが王妃様に知られないようにしてるかのどれかよね。

「姉上は誰が噂を流してるのか把握してるんだよな？何の対処もしてないなんてことはないでしょ？」

　ラッセルが不思議そうに私に聞いてくる。

　普通は自分の良くない噂話が流れてたら、誰がその話を広めてるのか、どの程度噂が広がってるのか調べるわよね。

「全く調べてないわけでないですけど証拠は無いですわ。すぐに噂話が消えてましたし、あの噂が広がっても私が困ることはありませんでしたから、ロベルトと婚約破棄出来るなら私からしたら有り難いぐらいですしね」

「確かに誰も信じないなら気にしなくてもいい噂ではあるな。でもこれからはどうなるか分からない」

　伯父様も私が何を警戒してるのか理解してくれてるみたいね。

「どういうこと？姉上には何の障害にもならない噂なんだろ？」

「それは親が健在で私が一時的でも当主になることがなかったらの話よ。今まではお父様達が元気だったから、ラッセルが当主になれる年齢になるまで、健在だと思ってたから不安はなかったわ」

　だけどお父様達が亡くなってしまったことで、今までみたいに放置は出来なくなってしまった。

「何が変わるんだ？」

「ロベルト達が私を有責にして、無理難題を押し付けてくる可能性があるのよ。1番可能性が高いのは、愛人としてロベルトの恋人を受け入れろとかかしら？生活費も出すように言ってくるでしょうね」

「それなら父上達が亡くなる前から言ってそうじゃないか？」

「私が当主になるのと、ならないとでは引っ張られる金額が変わるのよ。それに私が当主にならないなら、ロベルトと結婚しても庶民になるだけだから、庶民が愛人を持っても養えないわよ」

　その場合は、私とロベルトの結婚の意味が無いでしょうけどね。

「そっか………、だから姉上は伯父上にお願いして、相手の有責の証拠を揃えて欲しいってことなんだ。姉上は本気であの男と婚約破棄するつもりなんだな」

「そういうことよ。伯父様には悪いけど、私は王妃様も何かしてくる可能性があると思ってるわ。あの人は甥であるロベルトを可愛がってますから」

　血の繋がりのある甥と血の繋がらない姪では、どっちが可愛いかは分かりきってますけどね。