【オススメネット小説】幻獣少女えるふ&幻獣になったオレ

猫パンチ

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番外編エピソード 名探偵シャーケット・ネコーズの誕生

怪盗キャット(ラム+)VS名探偵、世紀の大決戦!

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【閲覧注意! バットエンド確定のストーリーです。
この話は、最低主人公がボコボコになるストーリーです。

 本編の主人公はいざという時に頼りになる切り札だけど、この主人公はボコボコにされます。
 仕事場でえばっている無能上司とかの名前に置き換えてね♡
時間的には、第七章後の話になりますね】



  怪盗キャットMがすでにあるけど、こっちは半分羊だからセーフ!


  俺の名前は染井亮。所轄の刑事として働き、高校生にも慕われている名刑事だ。
プール開きも開始されるというちょっと暑くなって来た頃、事件は発生した。

 今回も、俺に挑戦状が届いたのだ。相手の名前は、怪盗キャット! 
 最近になって幻住高校に現れるようになった正体不明の大怪盗だ。
 性別、血統、能力等、全くと言って良いほど分かっていない。

ある時は壁に張り付き、ある時は電気を出し、ある時は空を大胆不敵に飛んでいる。
そんな恐るべき怪盗が、この俺に挑戦状を挑んで来た。
 刑事のプライドをかけて対決せねばなるまい!

え、コピー文章だって? 
 最初を書いていると、やる気が失せていくから許せ!

  俺がいつものように幻住高校へ向かおうとすると、無能上司が話しかけて来た。
まあ、俺の至らない所を後ろで支えてくれているのだから感謝せねばなるまい。

 名刑事という者は、時間の無駄と分かり切っている事さえ、ある程度は付き合わねばならないのだ。
そして、適当に聞き流す。
これもまた、名刑事に必要な能力なんだ。

 今回も適当に聞き流そうとしたら、思わぬ人物?を紹介された。
まさか、上司も真剣に怪盗キャットの事を考えているとは思わなかった。
 話を寝ながら聞いていたり、適当に合槌してごめんなさい。

 「染井君に紹介しよう。
イギリス、いやイスラエル帰り(実際にはニネベだけど)の名探偵『シャ―ケット・ネコーズ』君だ! 

 怪盗キャットは神出鬼没の大怪盗。
 染井君でも手古摺っている相手だからね。
それ相応の人物を警備に当てる事にした」

 上司がそう言って紹介したのは、全長三十センチ前後の猫だった。
 二本脚で立ち、全体の黒い毛皮に、お腹と脚の部分は白い毛皮、見るからに高貴な香りの漂う紳士猫だった。

そして、蝶ネクタイ型の首輪『キャットフォン』を身に付け、俺に挨拶する。
なんて頼もしいキャットなんだ!

 「どうも、僕が紹介に与かった探偵のネコーズです。
こっちは助手のモコソン。よろしくお願いするニャン!」

 「いや、こちらこそ。私も怪盗キャットを追って約一ヶ月。
どうにも困り果てていた所です。
 奴のせいで何度ブタ箱を経験した事か……」

 俺はその時の状況を思い出し、涙が出た。
 孤独に耐え、ののしりに遭い、何度挫折しかけた事か。
しかし、今は一人ではない。頼もしい仲間ができたのだ!

 「じゃあ、三匹で頑張ってくれたまえよ!」

 上司にそう言われ、俺は焦りを感じた。

 「三匹? 俺も動物扱い?」

 俺が落ち込んだ表情をすると、ネコーズが励ましに来る。

 「染井刑事、人数が少なくて落ち込んでいましたね? でも大丈夫ニャン! 
この蝶ネクタイ型携帯『キャットフォン』を使えば、僕の猫仲間『CAT48(キャットフォーティエイト)』四十八匹達が協力してくれるニャン! 

 可愛くて、有能で、癒されるニャン。『CAT48(キャットフォーティエイト)』一匹で、人間の無能刑事三人分の働きをしてくれるニャン。
 安心して任せるが良いニャン」

ネコーズがそう言うと、背後から大量の『CAT48(キャットフォーティエイト)』達が現れた。
どいつもこいつも抱き付きたくなるほど可愛い!

 「じゃあ、行きましょうか」

そう言って蹄を差し出したのはモコソンだった。
ワイルドな顔立ちに、優しい眼差し。
こいつもタダモノで無い事を感じさせる。

こうして、怪盗キャットを追い詰めるメンバーが結成された。
 果たして怪盗キャットを捕らえる事が出来るのだろうか?
ネコーズは、俺にこう尋ねる。

 「では、怪盗キャットからの予告状を見せくれませんか? 
そこから、犯行時刻やお宝が判別できますからね」

 俺はそう言われ、ポケットから予告状を取り出す。
 改めて確認するが、この印刷文字、キャットの刻印、紛れもなく怪盗キャットの予告状だ。

 「ニャン! オレンジが香る立夏の時に、ナツミンの秘宝『聖三角形ホーリートライアングル』をいただきに参ります! 怪盗キャット」

 予告状にはこう書いてあった。
 俺の知識では、『聖三角形ホーリートライアングル』とは、ナツミンのオレンジ色のパンティ―である可能性が高い。

 時刻は全く分からないが、お宝は特定している。
 早く幻住高校へ行き、ナツミンこと天草夏美あまくさなつみのオレンジ色のパンティ―を確保しなければな! 

 俺がそう思って走り出そうとすると、ネコーズがこう言う。

 「待ってください! 染井刑事の言うお宝がナツミンと関係している事は同意します。
しかし、必ずしもパンティ―だけが三角形ではありません。
 時期を考えてみてください。

もうすぐ喫茶店ドライアドでは、ナツミンの手作りケーキ『三種のナツミカン』を販売致します。そして、それは染井刑事がスポンサーのはず……。
つまり、怪盗キャットの今回の狙いは、この『三種のナツミカン』を盗む事です」

 俺はそれを聞き納得する。
 確かに、今日はナツミンの手作りケーキが売り出される前日だ。

おそらくナツミンが俺の為に愛を込めて作った夏ミカンを使ったケーキが、喫茶店ドライアドには置いてある事だろう。それを奪おうというのか! 
 俺達は急いで喫茶店ドライアドへ向かう。

 「くっ、ナツミンの為に用意した俺の給料三カ月分が……。
 怪盗キャット、ナツミンのケーキに手を出させるわけにはいかない!」

 「給料の三カ月分って……。結構ぼられているニャン。
ケーキの数なんて、せいぜい三百個くらいでしょう?」

 「ふっ、愛する人の為ならば、金を惜しまないのが真の男だ! さあ、急ぐぞ!」

 「恋は人を盲目にするというからな……。みんなは気を付けると良いニャン!」

こんな会話をして、俺とネコーズ、モコソンは喫茶店ドライアドに着いた。
 喫茶店ドライアドの中には、女性店長とバイトのお姉さんがいた。
お姉さんは二十代前半で、ナツミンに負けず劣らずの美女だ。

ちょっとドジな所がある為、未だに見習いだがそこが人気を呼んでいる。
ナツミンとは違った魅力を醸し出していた。とはいえ、俺はナツミン一筋。
 他の女子に恋心を抱くわけにはいかない。

え、最近まで他の女子に気があったって? 
うーん、幻住高校で軽い事故に遭ってから、ショックで俺の記憶が無くなっているらしい。

ここ二、三日の話なんだが……。
まあ、過ぎた事は仕方あるまい。
 忘れたという事は、その程度の魅力の女子だったという事だ。

 今重要な事は、ナツミンの愛を手に入れる事と、ナツミンの俺への愛が籠った手作りケーキを死守する事だけだ。
 俺がそう考えていると、ネコーズがこう提案する。

 「まあ、一週間に三百個といっても、今日準備されているのは百個くらいでしょう。
さすがのナツミンでも一気に三百個を作るのはきついし、保存も難しくなる。

そのため、一種類を三十三個ずつ作っているはずです。
その量なら、怪盗キャットが絶対に手出しできない場所に保管する事が出来る!」

 「本当か? いったいどこに?」

 俺が驚いてそう訊くと、ネコーズは自信たっぷりにこう言った。

 「ふっ、すでにCAT48(キャットフォーティエイト)が処理してくれています。
 彼らのお腹の中が一番安全ですからね。

これなら、怪盗キャットがいくら尽力しても盗み出す事ができません。
まさに、生きた金庫というわけです!」

なんて斬新な発想だ! しかし、関心は出来ない。
 取り出す事さえ不可能だからだ。
 俺がそう思っていると、すでにケーキを食べた包みのゴミが大量に落ちていた。

もしも、ナツミンのケーキが無いと分かれば、キモいストーカーオタクはブチ切れし、喫茶店ドライアドは暴動になるだろう。
そうなれば、事故さえも起きかねない。俺は当然の様に抗議する。

 「なっ、食べちゃったの? もう出せ無いじゃん! 
 怒り狂ったキモオタ共が店を破壊するかもしれない。
 従業員やナツミンにまで危険が及ぶ事に……」

 俺の慌てふためいた対応とは打って変わって、ネコーズは落ち着きながら言う。

 「大丈夫ニャン! キモいオタク共の狙いはナツミンニャン! 
つまり、ナツミンのケーキ以上の品物を提供すれば文句は言わないニャン」

 「確かにそうだが……」

 俺はネコーズに同意する。
しかし、ナツミンのケーキ以上の物などそう易々と用意できる物ではない。
いったいどうするのだろうか?

  ネコーズはある物を見せて来た。

 「これは、ナツミンが穿いているオレンジパンティーニャン! 
ナツミンのお兄さんに頼んで、使用済みと未使用のオレンジパンティ―を交換したニャン。これをキモオタ共に配れば問題ないニャン。

ちなみに、これはさっきまでナツミンが穿いていたパンティーニャン。
まだほんのり温かい!」

 「なっ、俺がせっせと努力してナツミンの行動や着替える場所を予測し、パンティ―をくすねていたというのに、こんな簡単な方法で百枚の使用済みパンティ―を集めたというのか! 

しかも、さっきまで穿いていてほんのり温かいだと? 
この一枚は俺が預かっておこう! 
 未使用のパンティ―の経費は、俺が費用は出しても良い!」

 俺はそう言いながら、思わずパンティ―を懐に入れる。
うむ、本当にほんのり温かい。
 世間で冷たくあしらわれている俺を少しずつ癒してくれるようなそんな温かさを感じていた。

 俺とネコーズが、オレンジパンティ―を抱え込んでいると、バイトのお姉さんが口をはさむ。
おっと、さすがに引いてしまったかな。

キモオタを封じ込めるためには、このくらいの荒療治が必要なのだ。
お姉さんにはその事を分かって欲しい! 
 俺がそう願っていると、お姉さんは照れる事無くこう言う。

 「あの、さすがに全員がキモオタ共とは限らないのでは? 
 純粋にケーキを食べる為に来るお客もいるはずです。
 女子高生とか、OLのお姉さんとかはどう対応しますか?」

ふっ、愚問だな! そんな物はとっくに準備できているに決まっているだろう。
あの名探偵のネコーズが、こんな初歩的なミスをするはずがない! 
 何らかの策を講じてあるに違いない。

 俺はそう思ってネコーズを見る。
なんか震えているけど大丈夫か?

 「僕とした事がミスったニャン! 
モコソンの影響で、思考が少しキモオタ共に傾いていたようだニャン。
どうしよう?」

ネコーズは考え始めた。俺はただ黙ってネコーズを見つめているしかない。
ここで怒るのは軽率という物だ。

 俺の無しえなかったナツミンのパンティ―ゲットを、軽々とやってのけたネコーズを信じるのだ! 

ネコーズは、俺の期待に応えるかのごとく状況を整理していく。
この状況判断こそが、困った時に重要なのだ。

 状況を正確に整理する事により、思わぬ突破口を見付け出す事が出来るのだ。
ネコーズは思考が終わり語り出す。

 「ケーキを食べたのは、CAT48の猫達。
そして、問題のケーキは、ナツミカンを使った天草夏美の手作りケーキ。
うむ、ならばまだ無事の可能性が出て来たニャン! 

 CAT48の苦手な食べ物は、ミカンの様な柑橘系の果物だ。
だから、CAT48はナツミンのケーキを食べられなかったはず……。
ならば、ケーキはどこにあるのか? 

そう、ナツミンのケーキは食べずに冷蔵庫に残しておき、下にあった普通のチーズケーキを食べたんだニャン! 

だから、床にあったのはそのチーズケーキのゴミニャン。
ナツミンのケーキは、まだ冷蔵庫にあって手を付けられていないはずニャン!」

ネコーズがそう推理すると、CAT48はこう語る。

 「そうニャン! 僕ら、ミカンは苦手だから食えなかったニャン。
そこで、下の段にあったチーズケーキとプリンを食べたんだニャン。
 素晴らしい推理力ニャン!」

 「ふっ、プリンの容器の中に、ケーキのゴミが入っていた。
だから、誰かがプリンを謝って食べた事はあらかじめ分かっていたニャン。
まあ、ナツミンのケーキが無事で良かったニャン!」

 俺達は、ナツミンのケーキが無事な事を確かめるため、冷蔵庫へ集まった。
 俺達が数分前に冷蔵庫を開けた時は、確かにナツミンオケーキは入っていた。

 CAT48の説明により、冷蔵庫にはチーズケーキとプリンが無くなっているが、ナツミンのケーキは置いてあるはずだ。
 従業員以外は誰も冷蔵庫に触っていない。

 俺が冷蔵庫を開けると、あるべきはずの物が全く無くなっていた。
ナツミンのオレンジケーキはおろか、店の商品が丸ごと無くなっていたのである。

 「バ、バカな……。
ナツミンのケーキはおろか、残っていたプリンも、牛乳さえも無くなっている! 
これは怪盗キャットの犯行なのか?」

 俺は慌てふためいていた。
 不可能を可能にする怪盗、それが怪盗キャットなのだ! 
ネコーズは冷静に冷蔵庫を確認する。

 冷蔵庫のコンセントは差さっているが、温度が下がっていない様に感じる。
そう、冷蔵庫は壊れていたのだ。
 誰かが電気をショートさせた事により、冷蔵庫が壊れたらしい。

 間違いなく、怪盗キャットの犯行だった。
しかし、冷蔵庫は昨日の内に壊れたようで、数分前に気が付いたという。
ナツミンのケーキは早朝に運び込まれたから、怪盗キャットに盗られたわけではない。

 早朝にナツミンが店長の家にケーキを置きに来て、ついさっきケーキを運び入れたという。
 昼間は休んでいるから、ありがちな確認ミスだった。
ネコーズはこう分析する。

 「ふむ、まだ怪盗キャットは厨房に侵入していない。
 店のどこかにナツミンのケーキがあるはずニャン。
バイトのお姉さん(推定二十三歳、独身の八束さん)に話を聞いてみよう。

 肉球の跡から怪盗キャットの犯行なのは分かるけど、まだ盗まれたと決まったわけじゃないニャン!」

 俺は八束さんを捕まえ、真近で質問する。
 真剣さを装い、キスできる位置まで接近する事に成功した。
どさくさに紛れて唇を奪おうかと思ったが、モコソンがそれを許さない! 

くっ、こいつ、俺と八束さんの間に割り込みやがって! 
 何気にオッパイを揉んでいるじゃないか! 
こんなできる奴だったとは、思わぬ伏兵がいた者だ。

 俺はキスを諦め、モコソンをどかす振りしてオッパイを触った。
 手の甲だったが、感触は最高だった。
モコソンが抵抗するふりをして、モコソンとオッパイの間に手を滑り込ませる。

 五分ほど、感触を楽しんでいた。
さすがに、八束さんも不審感を抱いている為、ここで終了する。
あくまでも言うが、俺はナツミン一筋なんだ。これは事故に過ぎない!

 「やあ、失敬! 興奮して近付き過ぎたようだ。
 上司からはいつも言われているんです。
キミは熱意こそあるが、状況判断が甘いと……。

まさか、八束さんを壁で挟むような形になるとは思いませんでしたよ。
あまりの熱心さに、距離感が掴めなかったようです。
ご無礼を許してもらいたい!」

 「いえ、いえ、そう思うなら速くどいてください! 
まだ身動きが取れないんですけど……」

 「これは失礼!」

 俺はようやく八束さんから離れることにした。
オッパイに触れていたためか、八束さんはオッパイを押さえて、ブラのずれを確認する。この仕草が、どれだけの男を虜にして来た事か……。

 俺達がそう思って凝視していたが、さすがに警察を呼ばれそうなので、俺もモコソンも仕事に戻る事にした。
おのれ怪盗キャット、女性を傷付けるとは許せない! 

お前がこんな事を企まなければ、八束さんのオッパイに触る事は無かったのだ。
 一人の男として、怪盗キャットを捕まえる決意を固めた。

さて、俺の興奮も冷めて来た所で、ようやく本題に入る。
 八束さんの顔を見ながら、捜査を始める。

 「では、八束さん。ナツミンのケーキをどこに移動させましたか?」

 「はあ、実は冷蔵庫が壊れていたので、コンビニから氷を買って来て、そこのクーラーボックスに入れておきましたけど……」

そう言って八束さんの差す指の先には、台車の上にクーラーボックスが置いてあった。
 丁度、百個ほど入るクーラーボックスだった。
まあ、苦肉の策なのだろう。

 早めに修理業者を呼ばなくては、明日の業務に差し支えが出る。
 何にしても、怪盗キャットに取られてなくって良かった。
 俺がそう思っていると、台車が動き出す。

クーラーボックスが死角になって、誰が動かしているか分からない。
 台車は一気に高速で移動していく。

まさか、と思った時にはもう遅い!
 怪盗キャットは、台車を使い、クーラーボックスごと盗もうとしていたのだ。

 「フニャハハハ! 
では、ナツミンの聖三角形ホーリートライアングルことナツミカンケーキは頂いて行くニャン!」

そう言って逃走する怪盗キャットのスピードは、すでに時速六十キロを超えている。
 走って追い駆けても間に合わない。

 俺がそう思って諦めかけていると、背後からミサイルの様な物が飛んで来た。
そして、台車に突き刺さり、クーラーボックスを守っていた。

 「ふっ、モコソンミサイル! これでしばらくは台車を使う事は出来まい。
モコソンの蹄が楔の様に台車を止めているからね!」

モコソンを発射したネコーズはそう言う。
あのレーザービームの様な豪速球は、ネコーズの鍛えられた筋力あっての物だった。
 身体を回転させ、遠心力によって長距離を飛ばす必殺技『モコソンミサイル』。

ネコーズのコントロールもすごいが、モコソンの勇気とバランスがあってこその技だった。しかし、怪盗キャットには恐るべき秘密兵器がある。
どんな強者をも一撃で倒す必殺技『キャットスタンガン』だ。

 怪盗キャットの冷酷な一撃がモコソンを襲う! 
 怪盗キャットは激しい電流を浴びせ掛けるが、モコソンは微動だにしなかった。
 本来なら気絶し、身体の力が抜けるはずなのにいったいどういう事なのか? 

 「くっそ! こいつ、キャットスタンガンが効かない! なんて奴だ!」

 「ふっ、今のモコソンは無敵モードだ。
 八束さんのオッパイを触った事により興奮し、身体が活性化している。

この状態になったモコソンは、どんな怪我も一瞬にして治癒してしまうのだ。
 医者らしい素晴らしい能力だろう」

ネコーズの解説に、モコソンは付け加える。

 「ふ、八束さんがナース服になってくれれば、更なる能力が発現するかもしれない。
 早く着てください!」

モコソンは期待して八束さんを見るが、その期待は裏切られた。

 「いえ、その状態でもう充分ですから……」

 「がっふ! 早く……、着替えて……」

モコソンの演技も虚しく、八束さんは着替えてくれなかった。
サービス精神の無い人だ。ナツミンなら喜んで着てくれる事だろう。
そこが八束さんとナツミンの実力の差だった。

 「くっそ! こうなったら三種のケーキを一つずつだけでもお届けするんだ!」

 怪盗キャットは、モコソンの無敵モードに業を煮やし、苦肉の策に出る。
 大量に盗む事を捨て、三種類のケーキを一つずつ盗む。

 「フニャハハハ、さらばニャン!」

 恐るべき敵を前にして、怪盗キャットは逃げる事に専念する。
 勝負をするのではなく、さっさと目的を達成する。
この判断力があるからこそ、未だに怪盗キャットは捕まっていないのだ。

 根性無しと思うかもしれないが、怪盗は冒険するよりも堅実な逃走ルートを用意しておくものだ。

そうする事により、たとえ一、二個逃走経路が潰されても臨機応変に逃げる事が出来るのだ。
ネコーズは一瞬で理解した、怪盗キャットの有能さを……。

そのため、全く手加減をする事は無い。
そう、ネコーズもまた臨機応変に対応できるスーパーキャットなのだ! 
 CAT48を巧みに用い、怪盗キャットの逃走経路を絞り込んでいく。

 怪盗キャットが下水道に逃げ込もうが、屋根裏に登ろうが、たちどころに追跡をしていた。
 逃走において、焦りは命取りだ。

 行動が単調になり、逃走ルートが容易に割り出せる。
ネコーズは確実に怪盗キャットを追い詰めていた。

 「くっそ! なぜ、オイラの居場所が分かるんだ? 
 空を飛んでいるからスピードで逃げ切れているが、このままではまずいニャン!」

ネコーズは巧みにCAT48の情報を聞き、怪盗キャットを追い駆ける。
 眼と鼻の先まで追跡していた。

 「こちら、わさび! ターゲットを確認! 下水道を通過中!」

 「了解! 今通過した。しかし、いなくなっている。カキ、お前の附近にいるはずだぞ!」

 「カキ、怪盗キャットを確認! 民家に侵入したもよう。
また、わさびのエリアに入りました!」

そう、ネコーズはCAT48に名前を付け、担当エリアを決めて誘導させてもらっているのだ。友情と信頼があってこそのなせる技だった。
ネコーズはCAT48の指導も完璧だ。

これは一匹しかいない怪盗キャットにはできない芸当だった。
 友情の差により、怪盗キャットを追い詰めている。

しかし、怪盗キャットも一筋縄ではいかない。
すでに、このからくりを理解し、CAT48の一匹に近付いていたのだ。

 「ぎゃあ! ニャン……」

 「どうした、わさび? カキ、わさびの様子がおかしいぞ。気をつけろ!」

 「こちらカキ、了解! 以上は今のところありません!」

ちなみに、CAT48は、一匹一匹にア~ワまで食べ物の名前を付けているのだ。
それにより、捜査の場所と連絡を取っているのだ。

 「こちら、わさびニャン! ちょっと良い情報が手に入ったので驚いただけニャン!」

 「良い情報? どんな事ニャ?」

ネコーズはわさびの情報を聞く。
しかし、わさびはすでに、怪盗キャットによって夢の世界に連れ去られていた。
 連絡を取っていたのは、怪盗キャットだったのである。

 「何! 三河寿司のおじさんが寿司を作り過ぎて、タイムセールの無料キャンペーン? マジで?」

 「マジマジ。早く行かないと、寿司が無くなっちゃいますよ。
サーモンとか、マグロもあるニャン!」

ネコーズは立ち止って考え始めた。

 「うーむ。怪盗キャットは、ケーキ三個を持って逃走中か。
このくらい、子猫なら誰もがやった事のある可愛い悪戯ニャン。

 他の大量のケーキは無事、怪盗キャットの犯行は失敗したと言っても良い。
 今回は見逃してやるか。じゃあ、三河寿司に向かいますか!」

ネコーズは三河寿司に向かって歩き出した。
 怪盗キャットはまんまと逃走に成功したのだ。

  怪盗キャットは逃走に成功し、あるお方の元へナツミンのケーキを届ける。
 果たして、喜んでくれるのだろうか?

 「どうも、ナツミンのケーキ三種です。
 一つずつしか盗れませんでした。
 思わぬ強敵が現れまして……」

 「ほう、これがナツミンのケーキか。
でかした! ふむ、素晴らしい味だ。
 三つだけでも価値がある、それほどの完成度だ。

 怪盗において重要なのは、捕まらない事だ。
 探偵や警察はミスをして犯人を逃しても死にはしないが、怪盗は捕まった場合は死んだも同然だ。

だから絶対にミスをしてはいけない。
 今回は数が少ないとはいえ、お前はケーキを盗む事に成功した。
 当然お前の勝ちだ! 

 今度から強敵が現れた場合は、徹底的に弱い奴を潰しに行け! 
 勝率こそが重要で、確実に勝てる奴をボコボコにしていけば良い。
そして、目的を果たせばお前の勝ちなのだ!」

 「はい! 今度からは、容赦する事無く雑魚をボコボコにしていきます。
カモを狩るのが、オイラの仕事ですからね!」

 「ふっ、引き続き頑張ってくれたまえ!」

 「では、オイラは行かなければならない所があるので、これで失礼します!」

 「うむ。ご苦労だった!」

こうして怪盗キャットは目的を果たし、どこかへ向かう。
どこへ行くのだろうか?

  一方、ネコーズは三河寿司に着き、寿司を頼む。
すると、CAT48が現れた。
 実際、寿司が多くて食べ切れなかったようだ。

 「ハーイ、オイラ達も加勢するよ! 
この店のネタが尽きるまで食って、食って、食いまくってやるぜ!」

 「おお! CAT48か。じゃあ、50匹で食べまくるとしますか! 
モコソンも丁度現れた様だし」

 「へ―イ、おやじ! いくらをあるだけください! 後、ビールも……」

 「おいおい、メタボなのに大丈夫かよ。腹が出ているぜ!」

 「ふん、何このくらいは大丈夫だ! どうせみんな裸だから大丈夫! 
それに、寿司は別腹だよ!」

 「ニャハハ、その通りニャン!」

こうして、二時間ほどで店のネタを全て平らげた。
みんなホクホク顔で店を出る。

 「ふー、食った、食った。満足したニャン」

 「あ、これお勘定です!」

 「え? 無料じゃないの?」

 「ははは、お客さん、冗談はよしてくださいよ。軽く五十万円は超えていますよ!」

 「タイムセールで無料じゃないの? 寿司を作り過ぎたとかで……」

 「そんなセールは聞いた事がありません。正規の値段で払ってくださいよ!」

 「ガーン、怪盗キャットに騙されたニャン!
まあ、捜査費として染井刑事に付けておくか。
 所轄の染井刑事に払わせると……」

ネコーズは、染井刑事の職場に連絡し、そのまま払わせることにした。
その頃、染井刑事はナツミンのパンティ―を持って自宅に帰っていた。
 怪盗キャットの犯行がほぼ失敗に終わり、必要なくなったからだ。

 「ふう、最愛のナツミンのコレクション。これが手に入るとは……。
 今日は良い日だ! さて、どのようにして使おうか……」

こうして、ネコーズの登場により全員がハッピーになった。
 後日、染井刑事の元に大量の領収書が届いた事と、一匹の猫が夜遅くまで眠っていたのは内緒だよ!

 「うーん、わさび抜きなんてダメですよ!
 大人だったらわさびも入れないと、ムニャムニャ……」
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