断罪回避に失敗した悪役令嬢の祈りは届いた! ……だが、コレじゃない!

らおぴん

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食生活

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ボクの成長は著しい。
吸収力の旺盛なお年頃なのもプラスに働いて、3ヶ月ほどが過ぎる頃にはもう、前々世の3才児程度……すなわち、そこそこ憎まれ口のひとつも叩ける段階までレベルアップした。

幼児をネイティブ外国語環境に放り込むと、わりとナチュラルにバイリンガル化していたものだが、この原始世界でも同様らしい。
発達レベル的には原人の域を既に脱して、初期の縄文人程度であろうか。
脳に関しては、いわゆる現代人とほぼ同程度であるはずだ。
ただ、使う範囲が違うだけで。

「ウーダ様、麦の粉ができました」

便宜上、ワタシの知る作物に当てはめてはいるが、同じものではない。
ただ、穀物というものは粉にしてしまうと、不思議と、調理結果が似たり寄ったりになる。
アフリカあたりで主食となっていたウガリなんかは最たる例で、どの穀物粉を炊いても「ウガリ」であったりしたものだ。
前世での「製粉麦」はこねるとグルテンを形成し、発酵させるとフカフカになったりしたが、単純に石で挽き潰すだけの粗い粉では、素養があろうがなかろうが、いくらこねてもグルテン形成になんか至らない。
だからもう、穀物っぽいものは何でも挽いちゃうし、雑ざったところで気にしない。

「お、ありがと」

「ボクはトルティーヤがいいです」

「はいよ、じゃあ干し肉を炙って、ほぐしておくんだよ」

原始人がトルティーヤとか、笑うwww
だが他の表現を思い付かなかったので、ろくに単語もない文明創成期に「トルティーヤ」が爆誕してしまった。
まあ、いいか。

「ホグシテオク?」

「こう、ちぎって、バラバラにするの」

言葉とは、こうして覚えていくものだ。
最初は単語ばかりであった会話も、今はちょっとした文章でも伝わるようになってきている。
3才児程度の理解力がある、と言われても、実際、猿や犬ではこの段階には至らなかったものだ。
獣に毛が生えた……いや、獣から毛が抜けた程度とはいえ、さすがは人類である。

「ソースはどれにする?」

「3のやつがいい」

数字も、10までは読めるようになっている。
ただ、数というより、記号として認識しているようだ。

ちなみに、ワタシはついに土器製作を達成した。
結局、繊細な形成をするにあたっては、コネものにありがちな「素材を寝かせる」過程が必要であったらしい。
さらには焼き上がりのバロメーターとして、焼き物本体が真っ赤になるまで火に入れて置かなければならない事実も発見した。
つまりは、粘土に含まれるガラス質なんかがしっかり溶けて馴染まねばならなかったのだ。
ただ、そこからの加減が難しく、大きなものや薄いものはなかなか成功しなかった。
それもまた理屈がわかってくると、良さげな砂を混ぜてみたりして、調整できるようになってきたのだ。
おかげでいまは、いくつかの壺に、塩漬けのあれこれを保存できていたりする。
あと、天然発酵した果実を集めて、酒の製作を模索中。

3のやつ、というのは3番の壺に漬け込んだちょっと酸味のある草の実の塩漬けである。

6番の壺の、甘い果実汁を煮詰めた蜜と混ぜると、結構美味しい。

なお、何であろうが漬ける前には加熱している。
今世、洗ったとしても、洗う水自体にいろいろありそうなので、漬けるにしても生はちょっと怖いのだ。

塩は、岩塩が見つからないため海水から採らねばならなかった。
ものすごく手間がかかる作業なのだが、ボクがある程度意志疎通できるようになった段階で海に近い別荘(笑)に赴き、二人がかりで数日間かけ、まとまった量を作って来たのだ。

海水を煮詰めつつ、海水を含ませて干した海藻で濃くした液を継ぎ足し、最終的にはそれをまた海藻に含ませて大きな葉の上で干し、藻塩を採る……。
ちなみに、煮詰めるだけだと量も採れない上に、焦げやら土器の土クズやらが雑ざって小汚なくなることを、以前の体験で学んでいたワタシである。
一人ではとてもやってられないクソ作業であったが、こういうのは、無心にやってくれる子供がいたりすると、結構はかどるものなのだ。
あんまりやりたくないので、早いとこ、どこか海に近い集落に手順を伝授して、交易で買えるようにしたいものである。

そんなこんなで、ちょっとだけだが塩漬けができるようになり、料理の幅が広がった。


粗めの全粒粉に近い粉に加水して、ちょっとだけ例の蜜を加えて……石板の上で薄く焼く。
……ほぼトルティーヤでしょ、これは。

焼き上がったものも、素材が単純なので、干しておけば数日は保つので何かと便利な主食である。

ただ、アンデスの先住民よろしく「石で挽いた穀物とともに穀物で挽いた石も食する」状態なので、ちょっと歯が心配だ……。
トルティーヤの本場では、近代化未然、成人のほとんどの奥歯は根元まで磨り減っていたらしいしね。


ほぐした肉と青菜を獣脂で炒めて、このトルティーヤで包んだものが、ボクのお気に入りである。

蜜だけ塗ると、デザートになる。

前世以前の食生活を経験してきたワタシにはまだまだ不十分に思えるこの貧相な食生活も、この世界では画期的なものである。
ボクとの生活が落ち着いたら、干したトルティーヤも、結構イケた交易品になるかもしれない。

ここ数ヶ月間、ワタシは外の世界をほとんど見ていない。
たかが数ヶ月とは言え全てが新しいこの世界では、ちょっとしたきっかけで物事が急激に変化する。

交易を再開したとき、彼ら今世の人々は、どんな進歩を遂げているのかが楽しみだ。




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