異世界でカフェを開くことになりました

ならん

文字の大きさ
7 / 63

7. ハーブティーと暴走

しおりを挟む
カフェが順調に営業を続ける中、私のハーブティーは町の人々の間で評判になり、多くの客が訪れるようになった。特にカモミールやミント、レモンバームのティーは人気があり、リラックスやリフレッシュのために訪れる客が増えていた。そんなある日のこと、カフェで思いもよらない事件が起きた。

朝早く、いつものようにカフェを開ける準備をしていると、リュウが興奮気味に駆け込んできた。

「菜々美、大変だ!カフェの前に行列ができてるんだ!」

「えっ、行列?」

驚いて外を見ると、確かにカフェの前には多くの人々が集まっていた。彼らは興奮した様子で何かを期待しているようだった。

「どうしてこんなにたくさんの人が……?」

ガイデンも不思議そうに近づいてきた。

「最近、君のハーブティーに一時的なステータス上昇効果があるという噂が広まっているみたいだよ。」

「ステータス上昇効果?」

驚きながらも、その理由が気になった。私はすぐにカウンターに戻り、ハーブティーを準備し始めた。

「とにかく、お客さんたちを迎え入れないとね。」

開店時間になり、私はドアを開けた。行列を作っていた人々は次々とカフェに入り、席に着いた。

「いらっしゃいませ。ご注文は何にいたしますか?」

客たちは興奮した様子でハーブティーを注文し始めた。特にカモミールティーやミントティーが人気で、多くの人がそれを求めていた。

しかし、その日の午後、突然カフェの中で異変が起こり始めた。客の一人がカモミールティーを飲んだ直後、体が光り始めたのだ。

「うわっ、何だこれは!?力がみなぎってくる!」

他の客たちも驚きの声を上げ、店内は一時騒然となった。私はすぐに駆け寄り、状況を確認した。

「大丈夫ですか?何が起こったんですか?」

「わからないけど、突然力が湧いてきたんだ。まるで魔法が暴走したみたいに。」

リュウも駆けつけ、驚きの表情を浮かべていた。

「菜々美、これは一体どういうことだ?」

戸惑いながらも、すぐにハーブティーの成分を調べ始めた。心臓がドキドキと激しく脈打つのを感じつつ、私は自分の知識を総動員して原因を突き止めなければならないと決意した。カフェの未来が、この解明にかかっているかもしれない。焦りと不安が胸を締め付けるが、私にはやるべきことがある。

「もしかして、異世界のハーブと何かが反応しているのかも……。」頭の中でその仮説を反芻しながら、私はリュウと共に調査を進めることにした。異世界のハーブと私が持ち込んだハーブが混ざり合って、何か予期せぬ化学反応が起こっているのではないかと疑った。

ガイデンも真剣な表情で状況を見守っていた。「これはただ事ではない。何とか解決しないと。」

私はハーブティーの試料を取り出し、リュウと共に分析を始めた。しかし、その分析には時間がかかりそうだった。時間が経つにつれて、焦りと不安が募る。このままではカフェの信頼が損なわれてしまう。

「リュウ、まずは一旦店を閉めよう。安全が確認できるまでお客さんに提供するのは危険だわ。」

リュウは頷き、店内の客に事情を説明し始めた。「皆さん、申し訳ありませんが、本日は一旦営業を中止させていただきます。安全確認が取れるまでしばらくお待ちください。」

客たちは最初こそ驚きと不満を口にしたが、リュウとガイデンの誠実な対応に次第に納得し、店を後にした。

カフェが閉店すると、私は再びハーブティーの分析に取り掛かった。自分の持っている知識と、この世界で得た情報をもとに、原因を突き止めようとする。

まずは各種ハーブの成分を調べ、異世界のハーブとの組み合わせを確認するために細かくデータを取る。顕微鏡でハーブの微細な構造を観察し、魔力の反応を調べるために特殊な試薬を使った実験も行った。

「リュウ、この異世界のハーブ、フーリ草がカモミールと混ざると魔力が暴走するみたいだわ。」

リュウは驚いた表情で言った。「なるほど、でもどうしてそんなことが起こるんだろう?」

私は考え込んだ。「おそらく、この世界のハーブには私たちの世界にはない魔力が含まれているからよ。特定の組み合わせが予想外の反応を引き起こすことがあるのかも。」

「じゃあ、その組み合わせを避ける方法を見つけないといけないね。」リュウも真剣な表情で応じた。

「まずは、安全な組み合わせを見つけるために、もう一度すべてのハーブを確認しよう。どのハーブが危険なのかリストを作って、それを元に新しいレシピを作るんだ。」

リュウと私は、ひたすらハーブの成分分析と実験を繰り返した。何度も失敗を重ねながら、ようやく安全なハーブティーのブレンドを見つけ出すことができた。

「これで、やっと安全なレシピが完成したわ。」リストを手に、ホッと一息ついた。

「でも、これからも注意が必要だ。新しいハーブを使う時は、必ず安全確認をしないとね。」リュウが付け加え、私も同意した。

「そうね。これからもお客さんの安全を第一に考えて、カフェを運営していこう。」

数日後、新しいハーブティーのレシピが完成し、再びカフェは賑わいを取り戻した。私は安全なハーブブレンドを提供しつつ、客たちに異世界のハーブの魅力を伝えることに成功した。

「今回の経験で、もっとハーブについて学ぶ必要があると感じました。」私はそう言って、リュウとガイデンに感謝の気持ちを伝えた。

「君の努力と知識があったからこそ、問題を乗り越えられたんだよ。」リュウが微笑みながら言い、ガイデンも満足げに頷いた。

「これからも頑張っていこう。カフェの成長は君の成長でもあるんだから。」

私は新たな決意を胸に、再びカフェの運営に取り組むことを誓った。魔法の暴走事件を乗り越えたことで、私はさらに成長し、異世界での新しい生活を充実させていくことを心に誓ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜

自ら
ファンタジー
異世界に転移したアキト。 彼に壮大な野望も、世界を救う使命感もない。 望むのはただ、 美味しいものを食べて、気持ちよく寝て、静かに過ごすこと。 ところが―― 彼が焚き火をすれば、枯れていた森が息を吹き返す。 井戸を掘れば、地下水脈が活性化して村が潤う。 昼寝をすれば、周囲の魔物たちまで眠りにつく。 村人は彼を「奇跡を呼ぶ聖人」と崇め、 教会は「神の化身」として祀り上げ、 王都では「伝説の男」として語り継がれる。 だが、本人はまったく気づいていない。 今日も木陰で、心地よい風を感じながら昼寝をしている。 これは、欲望に忠実に生きた男が、 無自覚に世界を変えてしまう、 ゆるやかで温かな異世界スローライフ。 幸せは、案外すぐ隣にある。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...