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45. 裁判
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菜々美のカフェに暗い影が差してから数日が経った。営業停止命令が出され、町中にはカフェに対する悪評が広まりつつあった。噂は一人歩きし、「菜々美のカフェのハーブティーで体調を崩した」「有毒な植物を栽培しているらしい」など、次々に尾ひれがついていった。これまでカフェを支えてくれていた常連客の中にも、不安げな表情を浮かべる者が増え、足が遠のく姿を見た菜々美は胸が締め付けられる思いだった。
店内は今までになく静まり返っていた。カウンターに座る菜々美は、報告書を何度も読み返しながら、自分たちに向けられた不当な疑惑に対しどうすればいいのかを考え続けていた。
「菜々美さん、次はどうしましょう?」アリスが静かに声をかけた。
菜々美は深く息をつき、少し考えた後に答えた。「まず、畑をもう一度調べる必要があるわ。不審な植物がどうしてあそこにあったのか、その原因を突き止めるのが最優先ね。」
「でも、あの植物が自然に紛れ込んだんじゃなくて、誰かが意図的に植えたんだとしたら?」マークが不安そうに尋ねる。
「その可能性も考えなきゃいけないわ。」菜々美は報告書を閉じて立ち上がった。「何が真実なのか、私たち自身で確かめないと。誰も信じてくれなくても、自分たちだけはこのカフェを守らなきゃ。」
アリスとマークは小さく頷き、三人は再び畑に向かうことにした。
畑に着いた菜々美たちは、細かく地面や周囲を調べ始めた。見慣れたハーブが風に揺れる中、不審な植物が見つかった場所だけが、どこか異様な雰囲気を醸し出している。
「ここよ。」菜々美が指差す。その地面は他の場所よりもわずかに掘り返されたような痕跡があり、違和感があった。
「確かに、自然にこうなるとは思えないな。」マークが膝をつき、土を手に取りながら言った。「この辺り、最近誰かが来たような跡がある気がする。」
「じゃあ、やっぱり誰かが意図的に……?」アリスが顔を曇らせる。
菜々美は慎重に周囲を見渡した。風に乗ってハーブの香りが漂う中、この場所だけが、彼女にとって異質なものに感じられた。
「証拠がないとどうにもならないわ。」菜々美は苦い表情を浮かべながら立ち上がった。「誰かがここにこの植物を植えた証拠が見つかれば、それを元に反論できるのに。」
その後も畑を隅々まで調べたが、決定的な証拠は見つからなかった。
翌日、役人たちが再び菜々美を訪ねてきた。彼らは冷たい視線を向け、短く告げた。「町民からの訴えが正式に受理されました。この件について裁判が行われることになります。」
「裁判……?」菜々美の顔が一気に青ざめた。
「そうです。裁判所であなたのカフェに対する疑惑を審議します。それまでの間、営業停止は継続されます。」
役人たちはそれ以上何も言わず、硬い足音を響かせて去っていった。
菜々美はその場に立ち尽くした。裁判となれば、カフェに対する疑惑は町中にさらに広まるだろう。彼女が無実を証明できなければ、この事態は取り返しのつかないものになるかもしれない。
その夜、リュウとガイデンを交えた緊急の相談がカフェで開かれた。
「裁判か……。」リュウは険しい表情で腕を組み、低く呟いた。「どう考えても、誰かが仕組んでる。これまで平和にやってたカフェが、突然こんな疑惑を向けられるなんて不自然すぎる。」
「でも、裁判となれば、感情論だけでどうにかできるものではないわ。」ガイデンが冷静に続ける。「裁判所は証拠を重視する。役人たちが提出してくる証拠をどう覆すかが鍵ね。」
「もし無実を証明できなかったら……その場合、どうなるの?」菜々美が声を震わせながら尋ねた。
その問いかけに、しばらく誰も口を開かなかった。静寂がカフェを支配し、彼女の不安を一層強めていった。
「……最悪の場合、投獄される可能性もある。」ガイデンが慎重に言葉を選びながら答えた。「毒物を故意に使用した罪は町の条例で重罪とされている。特に『人命に関わる危険性があった場合』と認定されれば、最低でも数年間の投獄、場合によっては終身刑が科される可能性もある。」
「投獄……?」菜々美の声はかすれて、かろうじて聞こえるほどだった。
「そうだ。」リュウが強張った顔で言葉を引き取る。「カフェを失うだけじゃ済まない。お前が危険人物として扱われれば、この町からも追放されるだろう。そんなことになれば……。」
「そんな……。」菜々美の体が小さく震えた。
彼女にとって、カフェはただの仕事場ではなかった。新しい土地で一から築いた、夢そのものだった。その場所が奪われるだけでも耐えがたい。それがもし、自分自身の自由すらも失うことに繋がるとしたら――。
「でも、無実を証明できるわ。」菜々美は拳を握りしめ、か細いながらも決意を込めて言った。「私は何も悪いことをしていない。このカフェが安全だということを証明してみせる。」
「そのために、俺たちがいる。」リュウが力強く答えた。「証拠を集めて、このくだらない疑惑をぶっ壊してやる。」
「ええ、やるべきことは明確よ。」ガイデンが微笑みを浮かべた。「菜々美、あなたが無実である以上、真実を明らかにするのは不可能じゃないわ。」
菜々美は二人に感謝の眼差しを向けながら、少しだけ顔を上げた。だが、心の奥底にはまだ重い不安が居座っていた。
その翌日、裁判が近づく中で町の噂はさらに広がり、「あのカフェの店主は牢獄送りになるらしい」といった憶測まで飛び交うようになった。
市場で顔見知りの商人が菜々美を見かけ、話しかけてきた。「菜々美さん……あんた、本当に無実なんだろうな?」
「もちろんです。」菜々美は即座に答えたが、その声には疲労と不安が滲んでいた。
「そりゃ信じたいけどよ……もし有罪になったら、牢獄に入れられるなんて話も出てるんだ。怖くて、正直もうあんたのカフェには行けねえかもしれねえ。」
商人のその言葉は、菜々美の胸に鋭く突き刺さった。
「でも、俺はまだ信じてるぜ。」商人はそう付け加え、去っていった。
その日の夜、カフェの片隅で菜々美は拳を握り、再び決意を固めた。
「絶対に無実を証明する。このカフェを守り抜く。それに……私はこの町を出たくない。」
その心の中には、愛するカフェ、仲間、町への強い思いが溢れていた。しかし、その思いが実を結ぶまでの道のりが、険しく厳しいものであることを、彼女は痛感していた。
「それでも、やるしかないわ。」菜々美は強い口調で言い切った。「私たちが間違っていないことを証明するために。」
リュウとガイデンは顔を見合わせ、小さく頷いた。「分かった。俺たちも手伝う。まずは、その証言者たちの動きを調べるべきだな。」
「私も畑や市場で情報を探してみるわ。」ガイデンが続ける。「何か手掛かりが見つかるかもしれない。」
菜々美は二人に感謝の笑みを浮かべた。「ありがとう。絶対に真実を突き止めましょう。」
こうして、裁判が始まるまでの間、菜々美たちはそれぞれに動き始めた。町中の噂と疑念、そして仕組まれた罠に立ち向かうために。
店内は今までになく静まり返っていた。カウンターに座る菜々美は、報告書を何度も読み返しながら、自分たちに向けられた不当な疑惑に対しどうすればいいのかを考え続けていた。
「菜々美さん、次はどうしましょう?」アリスが静かに声をかけた。
菜々美は深く息をつき、少し考えた後に答えた。「まず、畑をもう一度調べる必要があるわ。不審な植物がどうしてあそこにあったのか、その原因を突き止めるのが最優先ね。」
「でも、あの植物が自然に紛れ込んだんじゃなくて、誰かが意図的に植えたんだとしたら?」マークが不安そうに尋ねる。
「その可能性も考えなきゃいけないわ。」菜々美は報告書を閉じて立ち上がった。「何が真実なのか、私たち自身で確かめないと。誰も信じてくれなくても、自分たちだけはこのカフェを守らなきゃ。」
アリスとマークは小さく頷き、三人は再び畑に向かうことにした。
畑に着いた菜々美たちは、細かく地面や周囲を調べ始めた。見慣れたハーブが風に揺れる中、不審な植物が見つかった場所だけが、どこか異様な雰囲気を醸し出している。
「ここよ。」菜々美が指差す。その地面は他の場所よりもわずかに掘り返されたような痕跡があり、違和感があった。
「確かに、自然にこうなるとは思えないな。」マークが膝をつき、土を手に取りながら言った。「この辺り、最近誰かが来たような跡がある気がする。」
「じゃあ、やっぱり誰かが意図的に……?」アリスが顔を曇らせる。
菜々美は慎重に周囲を見渡した。風に乗ってハーブの香りが漂う中、この場所だけが、彼女にとって異質なものに感じられた。
「証拠がないとどうにもならないわ。」菜々美は苦い表情を浮かべながら立ち上がった。「誰かがここにこの植物を植えた証拠が見つかれば、それを元に反論できるのに。」
その後も畑を隅々まで調べたが、決定的な証拠は見つからなかった。
翌日、役人たちが再び菜々美を訪ねてきた。彼らは冷たい視線を向け、短く告げた。「町民からの訴えが正式に受理されました。この件について裁判が行われることになります。」
「裁判……?」菜々美の顔が一気に青ざめた。
「そうです。裁判所であなたのカフェに対する疑惑を審議します。それまでの間、営業停止は継続されます。」
役人たちはそれ以上何も言わず、硬い足音を響かせて去っていった。
菜々美はその場に立ち尽くした。裁判となれば、カフェに対する疑惑は町中にさらに広まるだろう。彼女が無実を証明できなければ、この事態は取り返しのつかないものになるかもしれない。
その夜、リュウとガイデンを交えた緊急の相談がカフェで開かれた。
「裁判か……。」リュウは険しい表情で腕を組み、低く呟いた。「どう考えても、誰かが仕組んでる。これまで平和にやってたカフェが、突然こんな疑惑を向けられるなんて不自然すぎる。」
「でも、裁判となれば、感情論だけでどうにかできるものではないわ。」ガイデンが冷静に続ける。「裁判所は証拠を重視する。役人たちが提出してくる証拠をどう覆すかが鍵ね。」
「もし無実を証明できなかったら……その場合、どうなるの?」菜々美が声を震わせながら尋ねた。
その問いかけに、しばらく誰も口を開かなかった。静寂がカフェを支配し、彼女の不安を一層強めていった。
「……最悪の場合、投獄される可能性もある。」ガイデンが慎重に言葉を選びながら答えた。「毒物を故意に使用した罪は町の条例で重罪とされている。特に『人命に関わる危険性があった場合』と認定されれば、最低でも数年間の投獄、場合によっては終身刑が科される可能性もある。」
「投獄……?」菜々美の声はかすれて、かろうじて聞こえるほどだった。
「そうだ。」リュウが強張った顔で言葉を引き取る。「カフェを失うだけじゃ済まない。お前が危険人物として扱われれば、この町からも追放されるだろう。そんなことになれば……。」
「そんな……。」菜々美の体が小さく震えた。
彼女にとって、カフェはただの仕事場ではなかった。新しい土地で一から築いた、夢そのものだった。その場所が奪われるだけでも耐えがたい。それがもし、自分自身の自由すらも失うことに繋がるとしたら――。
「でも、無実を証明できるわ。」菜々美は拳を握りしめ、か細いながらも決意を込めて言った。「私は何も悪いことをしていない。このカフェが安全だということを証明してみせる。」
「そのために、俺たちがいる。」リュウが力強く答えた。「証拠を集めて、このくだらない疑惑をぶっ壊してやる。」
「ええ、やるべきことは明確よ。」ガイデンが微笑みを浮かべた。「菜々美、あなたが無実である以上、真実を明らかにするのは不可能じゃないわ。」
菜々美は二人に感謝の眼差しを向けながら、少しだけ顔を上げた。だが、心の奥底にはまだ重い不安が居座っていた。
その翌日、裁判が近づく中で町の噂はさらに広がり、「あのカフェの店主は牢獄送りになるらしい」といった憶測まで飛び交うようになった。
市場で顔見知りの商人が菜々美を見かけ、話しかけてきた。「菜々美さん……あんた、本当に無実なんだろうな?」
「もちろんです。」菜々美は即座に答えたが、その声には疲労と不安が滲んでいた。
「そりゃ信じたいけどよ……もし有罪になったら、牢獄に入れられるなんて話も出てるんだ。怖くて、正直もうあんたのカフェには行けねえかもしれねえ。」
商人のその言葉は、菜々美の胸に鋭く突き刺さった。
「でも、俺はまだ信じてるぜ。」商人はそう付け加え、去っていった。
その日の夜、カフェの片隅で菜々美は拳を握り、再び決意を固めた。
「絶対に無実を証明する。このカフェを守り抜く。それに……私はこの町を出たくない。」
その心の中には、愛するカフェ、仲間、町への強い思いが溢れていた。しかし、その思いが実を結ぶまでの道のりが、険しく厳しいものであることを、彼女は痛感していた。
「それでも、やるしかないわ。」菜々美は強い口調で言い切った。「私たちが間違っていないことを証明するために。」
リュウとガイデンは顔を見合わせ、小さく頷いた。「分かった。俺たちも手伝う。まずは、その証言者たちの動きを調べるべきだな。」
「私も畑や市場で情報を探してみるわ。」ガイデンが続ける。「何か手掛かりが見つかるかもしれない。」
菜々美は二人に感謝の笑みを浮かべた。「ありがとう。絶対に真実を突き止めましょう。」
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