異世界でカフェを開くことになりました

53. 闇の中の真実

リュウとガイデンは、早朝の町を抜け、再び町外れのカフェへと足を運んでいた。
地下貯蔵庫で得た情報は確かに貴重だったが、それだけでは裁判を覆すには不十分だった。
彼らは、より直接的な証拠を手に入れるため、さらに奥深く潜入する必要があると考えていた。

「今回の計画は昨日よりも慎重に進めないといけないわ。」

ガイデンがカフェに近づく途中で言った。

「アーウィンが見張っている以上、簡単にはいかないでしょう。」

「分かってる。」

リュウは短剣を腰に収めながら答えた。

「だが、俺たちには時間がない。裁判は進んでるし、菜々美のカフェはもうギリギリの状態だ。あの地下に何が隠されているのか、全部暴いてやる。」

二人がカフェに近づくと、従業員たちが搬入口から荷物を運び出しているのが見えた。
リュウは物陰に身を隠しながら、タイミングを伺った。

「どうやら今日は昨日より警戒が強まっているな。あいつら、俺たちがここに来るのを予想してるのか？」

ガイデンは冷静に辺りを観察しながら答えた。

「それは考えにくいわ。ただ、王族の使者が頻繁に出入りしている以上、このカフェ全体が厳戒態勢になっている可能性はある。」

二人は慎重に搬入口の裏側に回り込み、一瞬の隙を突いて建物の中へ潜り込んだ。
昨日と同じ通路を抜けて地下貯蔵庫に向かうと、内部は依然として冷たい空気に包まれていた。

「誰もいないようだな。」

リュウが囁く。

「でも、油断は禁物よ。」

ガイデンが慎重に足を進めながら答えた。

「アーウィンがいつ戻ってくるか分からないわ。」

二人が奥へ進むと、部屋の中央にある大きな机の上に、新たな書類が置かれているのが見えた。
その中の一つには、「計画進行状況」と記されたタイトルがあり、リュウがそれを手に取った。

「ここに書かれているのは……菜々美のカフェだけじゃない。」

リュウが険しい顔で言った。

「町全体を支配下に置くための計画だ。まずは菜々美のカフェを潰し、その後でこのカフェを中心に町の経済を掌握するつもりらしい。」

ガイデンも書類に目を通し、驚愕の表情を浮かべた。

「それだけじゃないわ。このハーブを使って町の住民たちを徐々に弱らせることで、抵抗する力を奪う計画が書かれている。ミリアムは単なる商売のために動いているんじゃない……町全体を支配しようとしているわ。」

「なんて奴だ……。」

リュウは拳を握りしめた。

「こんなこと、絶対に許せない。」

その時、遠くから足音が聞こえてきた。
二人は咄嗟に机の下に隠れ、音の主を確認しようと息を潜めた。

現れたのはアーウィンだった。
彼は部下らしき二人を従え、何かの指示を出している。

「計画は順調だ。」

アーウィンの冷たい声が地下室に響く。

「ミリアム様からも進行を急げとの指示が来ている。次の荷物を今夜中に運び出せ。王族の使者が直接受け取りに来ることになっている。」

「分かりました、アーウィン様。」

部下の一人が答えると、すぐに部屋を出て行った。

アーウィンは部下を見送った後、机の上の書類に目を通し始めた。
その表情には緊張感がなく、全てが計画通りに進んでいるという余裕が見て取れた。

リュウは隠れながら、小声でガイデンに囁いた。

「奴をどうにかしないと、この計画は止められない。ここで動くか？」

「まだよ。」

ガイデンが冷静に答える。

「私たちがここにいることがバレたら、全てが終わる。まずは彼らの動きを把握してから。」

アーウィンはしばらく机の上の書類を確認していたが、やがてそれらを整頓し、部屋を出て行った。
リュウとガイデンは息を吐きながら物陰から姿を現した。

「この計画の内容を全部持ち帰るべきだわ。」

ガイデンが机の書類を袋に詰めながら言った。

「これが裁判での決定的な証拠になる。」

「だが、王族が関与している以上、これだけじゃ足りないかもしれない。」

リュウが険しい顔で答える。

「もっと直接的な証拠を掴まないと。」

「それには、次の荷物がどこに運ばれるのかを突き止める必要があるわね。」

ガイデンが静かに言った。

二人は慎重に地下室を後にし、カフェの外に戻ると、一息ついた。

「今日は十分な収穫があった。」

リュウが息を整えながら言った。

「だが、まだ終わってない。次は王族の使者に直接接触するしかないな。」

「それが最も危険な道だけど、避けては通れないわね。」

ガイデンが頷いた。

「ミリアムの真の目的を暴くために。」

二人は菜々美のカフェへと急いだ。その手には、地下貯蔵庫で得た証拠が握られていた。
町全体を巻き込む陰謀に立ち向かうため、次の一歩を進める決意を固めていた。