星の涙

ならん

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異世界と翡翠の翼

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朝、目覚まし時計の音が部屋に響く。

いつも通りの朝だ。翔太はベッドから出て、目の前の窓を開ける。
外は普通の東京の風景。

高層ビルが遠くにそびえ立ち、下の道路には人々が行き交っている。
新しい一日が始まる。

部屋を抜け出し、簡単な朝食を済ませる。
テーブルの上には、母が作ってくれたおにぎりが2つ。いつもと変わらない母の味。

学校のための準備をして、リュックを背負う。
僕の日常は平凡そのもの。特別なことなど何もない。ただの大学生に過ぎない。

家を出て、いつもの道を歩き始める。
この道を歩くのも、もう何100回目だろう。
左には小さな公園があり、右にはいつも賑わっているコンビニ。通学路は僕にとって懐かしさすら感じるほど馴染み深い。

しかし、その日はいつもと違った。
車一台がようやく通れる細い路地に入ったとき電話がかかってきた。

画面を見て友人からの電話であることを確認して顔を上げると、目の前にスピードを上げた車が迫っていた。
驚きのあまり、僕の体は硬直してしまい、動くことができなかった。

その瞬間、車は僕に衝突し、世界が一瞬でひっくり返った。

衝撃と共に、世界がぐるぐると回る。

僕は道路に横たわり、上を見上げた。青い空、白い雲。そして、意識は遠のいていき意識は完全に闇に包まれた。


◇◇◇


意識が戻った時、僕は見知らぬ草原の上にいた。

目を開けると、目の前には広がる緑と、空には輝く太陽。

首をかしげながら立ち上がると、自分の身につけている服が変わっていることに気付いた。
いつもの制服ではなく、なにやら古風で装飾的な服。これは一体、どういうことだろう。

辺りを見渡すと、木々、花、そして遠くに見える小さな集落。どこを見ても、東京のどこかとは思えない。

ここは一体どこなんだ?混乱しながらも、とにかく人のいる方へと歩き始めることにした。
歩いていると、突然、小さな声が聞こえてきた。

「おい、お前、何者だ?」

振り返ると、そこには小さな獣のような生き物が立っていた。
驚く僕を見て、それは笑った。

「驚くな、俺はゴブリンだ。ここはエルダナ。お前が今いるのは異世界だ」。

「異世界?」
僕は困惑しながらもいろいろと察した。
「あー例のあれかぁ……」

今の僕の目の前にいるのは確かに人語を話すゴブリン。
そして、周りの景色も、服も、全てが現実味を帯びている。

僕はゴブリンに尋ねた。

「ここは本当に異世界なのか?」
ゴブリンは頷いた。

「ああ、お前は異世界から来た訪問者だ。こういうことはたまにあるんだ」。

「たまにあるってなんだよ……こっちの世界の人たちも慣れっこなのか」
僕はあきれ気味にそう思った。

ゴブリンは僕を見て言った。
「お前、とりあえずその集落まで行ってみろ。ここにいても仕方ない。そして、この世界で生きる道を探せ」。

僕はゴブリンに感謝し、集落へと向かうことにした。
まだ混乱しているけど、ここは新しい世界。
新しいスタートを切るしかない。そう決めた。

◇◇◇


集落に近づくにつれて、僕の心は緊張でいっぱいになった。

この世界の人々は、異世界から来た僕をどう思うのだろうか?不安で一杯だったが、とにかく前に進むしかなかった。

森を抜ける小道を歩いていると、小さくてかわいいドラゴンが目の前に現れた。
彼は翡翠のような鱗を持ち、まるで宝石のように輝いていた。

「こんにちは、君は何者なんだい?」

と僕が優しく声をかけると、目の前の小さなドラゴンは驚いたように僕をじっと見つめた。その瞳には、ただの野生の生き物とは異なる、何か知性のようなものが宿っているように見えた。彼は、まるで僕の言葉を理解しているかのように、好奇心に満ちた眼差しで僕を観察していた。

「ここが君の家かい?」

と僕がさらに尋ねると、ドラゴンは首を傾げ、小さな声で「キュイーン」と鳴いた。その声には不思議な響きがあり、何かを伝えようとしているようだった。彼の小さな翼がゆっくりと動き、僕に対する好奇心を示しているかのように見えた。

僕は小さなドラゴンを見つめ、いくつかの名前を提案してみた。

「エメラルドはどうだろう? きみの鱗の色にぴったりだよね。」

しかし、ドラゴンはその名前に対して大きく首を振り、明らかに不満そうな表情を浮かべた。

「それじゃあ、スパークは?」

と次に提案してみると、ドラゴンは一瞬興味を示したものの、すぐに大きなため息をついて、まるで「それじゃないんだけど」と言いたげだった。

「アズールはどうかな?」

と新たな名前を投げかけると、今度はかなり劇的に反応し、まるで「全然違う!」と言わんばかりに激しく首を横に振った。

最後に「リトってどう?」
と提案してみると、その瞬間、ドラゴンの態度が一変した。彼は明らかに喜びを表し、僕の周りを興奮して飛び回り始めた。その小さな体からは、僕の提案がどれほど気に入ったかが伝わってきた。

「リト、ね!いい名前に決められて良かったよ!」

僕が笑顔で言うと、リトは僕の肩にとまり、嬉しそうに頭をこすりつけてきた。彼の目は喜びでいっぱいで、その小さな翼が幸せそうにパタパタと舞っていた。
少し歩いてから、僕は再びリトに話しかけた。

「ここの森はきれいだね。リトはここが好きなのかい?」

リトは僕の言葉に興味深げに耳を傾け、再び「キュイーン」と鳴いて、木々の間を飛び回り始めた。

しばらくすると、僕はリトに別の質問を投げかけた。
「君は飛ぶのが得意なんだね。どこまで飛べるのかな?」
リトは僕の質問に応えるかのように、少し高い枝に舞い上がり、そこから僕を見下ろして「キュイーン」と鳴いた。

僕たちが森の端に近づく頃、僕はリトに対してより親しみを感じていた。

「リト、君は僕と友達になってくれるかな?」

僕がそう尋ねると、リトは僕の肩にとまり、優しく頭をすり寄せた。その行動は、リトの僕に対する信頼と親しみを示しているようだった。

「リト、君と一緒に旅をしてもいいかな?」

と僕が優しく尋ねると、リトは目を輝かせ、明らかに喜びの表情を見せた。彼の小さな翼が急速にパタパタと動き、僕の提案に対する喜びを表しているようだった。

リトは僕の言葉に反応して、まるで僕を理解しているかのように頷いた。
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