星の涙

旅立ち

村に足を踏み入れると、そこはまるで中世のヨーロッパを思わせる風景だった。

木造の家々、石畳の道、そして人々の服装もどこか古風で、まるで歴史の教科書から飛び出してきたよう。
村人たちは僕を見て、最初は驚いた表情を浮かべた。だが、彼らはすぐに温かい笑顔で僕を迎え入れた。

村の長老のような人物が近づいてきて、「君は遠い異世界から来たのだね。我々の村にようこそ」と言った。
村の長老が僕たちを招待し、話があると言った。

長老の家は、村の中心にある古いが温かみのある家だった。
長老は僕たちを温かく迎え入れ、飲み物を差し出してくれた。

翔太とリトが長老の家に入ると、長老は彼らを暖かい笑顔で迎えた。古い木製の家具が置かれた居間には、時間が穏やかに流れているような感じがした。

長老は二人に向かって言った。
「私はこのガレス村の長老、ソラと申します。君たちの名前は？」

翔太は少し緊張しながらも、礼儀正しく答えた。
「はい、私の名前は翔太です。こちらはリトと言います。」

リトは小さく「キュイーン」と鳴いて、長老に挨拶のような仕草を見せた。

長老は優しく微笑みながら、リトを見つめた。
「リトはとても特別な存在のようだね。君たちはどんな目的でエルダナに来たのかい？」

翔太は一呼吸置いてから答えた。
「実は事故に遭い、気づいたらここにいたんです。」

「なるほど、それは大変だったね。」長老は同情の意を込めて言った。「でも安心してくれ、この村では君たちを歓迎するよ。ここで必要な情報や支援を得られるだろう。」

翔太は感謝の意を表しながら、「ありがとうございます、ソラさん。この村で新しいことを学べることを楽しみにしています」と答えた。

リトも翔太の隣で安心した様子を見せていた。

「君たちがこの村に滞在するのは、我々にとっても喜びだ」と長老は言った。
「そして、もしきみたちにとって都合が良ければ、この家の一部を使ってもらいたい。」

僕は驚きつつも、その提案に感謝した。
「でも、どうしてこんな親切を？」と僕が尋ねると、長老は微笑んだ。

「実は、以前この家には私の孫が住んでいたんだ。でも、彼は冒険者として世界を旅することを決めた。家が空いているので、君たちが使うのにぴったりだと思ったんだ。」
長老は優しく語った。

僕は感謝の気持ちでいっぱいになった。リトも喜んでいるようだった。

長老はこの世界のことを教えてくれた。
エルダナというこの世界では、魔法が実在し、人々はそれを日常生活で使っているという。
聞くほどに、僕の心はワクワクでいっぱいになった。

夕食の時間になると、村の集会場に足を運んだ。そこは、木製の長いテーブルとベンチが並ぶ、温かみのある空間だった。村人たちはすでに集まり、食事の準備に忙しくしていた。

テーブルの上には、様々な手作りの料理が並んでいた。新鮮な野菜のサラダ、香ばしいパン、煮込まれた肉料理、そして色とりどりのフルーツ。村の人々は彼らの豊かな収穫を誇らしげに見せていた。

リトは、並んだ料理に目を輝かせ、興奮しながらあれこれと食べ始めた。彼は特にフルーツに夢中で、リンゴやベリーをぱくぱくと食べ、満足そうにしていた。

「リトは食いしん坊だね」と、隣に座る子供が笑いながら言った。

食後、村人たちが楽器を取り出し、軽快な音楽が始まった。子供たちは踊り始め、僕もリトと一緒にその輪へ加わった。リトは音楽に合わせて小さく体を動かし、楽しそうにしていた。


◇◇◇


翌朝、目を覚ますと、僕は新しい世界の最初の朝を迎えていた。

窓から差し込む光が、どこか懐かしくも新鮮だ。昨夜は不思議な夢を見たような気がしたが、窓の外の景色を見ると、ここが現実であることを改めて実感した。

村の市場に立ち寄ると、様々な特産品が目に飛び込んできた。
不思議な果物、色とりどりの布、そして僕の目を引いたのは、日本の特産品に似た工芸品だった。
僕はその工芸品を手に取り、思わず「これは...」と呟いた。

昼になると、村の広場で共同の食事が始まった。
僕は村人たちと一緒に食事をし、彼らの話に耳を傾けた。彼らの中には、異世界から来た訪問者に興味を持つ人もいれば、警戒する人もいた。
しかし、僕に対する彼らの態度は、全体としては温かいものだった。

ある日、長老は僕たちを自宅に招待し、重要な話があると言った。
長老は深く息を吸い、話し始めた。

「この世界は古くから多くの秘密を秘めている。森の奥深くには古代の遺跡があると言われている。また、忘れ去られた王国の遺跡があり、そこには未知の魔法と歴史が眠っている。さらに、北の果てには、時間が止まったかのような氷の洞窟があり、そこには古の魔物や伝説の秘宝が眠っていると言われているんだ。」

僕は、長老の言葉に心を奪われた。子供の頃から冒険物語を夢中で読んでいた僕にとって、これはまさに夢のような話だった。冒険への渇望が心を強く掴んで離さない。

「行ってみようよ、リト。」

僕は決心した声で言った。リトは僕の目を見て、小さな頷きを返した。

この村から出て、エルダナの広い世界を旅して、この世界の真実を探る。そう決意した瞬間、僕の心は未来への期待でいっぱいになった。


◇◇◇


朝の光が窓から差し込み、僕は新しい一日の始まりと共に目を覚ました。
昨夜はほとんど眠れなかった。今日から始まる旅に対する期待と、少しの不安が心を支配していたからだ。

起き上がり、 外に出ると村の人々が僕のために集まってくれていた。彼らとの別れは寂しかったが、新しい世界を発見するためには、この一歩が必要だ。

長老は優しい笑顔で僕に近づき、小さな袋を手渡した。
「若者よ、これは我々からの旅立ちの贈り物だ」と長老が言った。

袋を開けると、中には金貨の他に、干し肉、パン、果物などの食料が入っていた。また、小さなお守りと精巧に作られた小さな工芸品も見えた。

驚いた僕は、「これは受け取れません」と言ったが、長老は首を振った。

「いや、受け取ってくれ。異世界から来た君がこの先の旅で困らないように、と村人たちが集めたものだ。お守りは君を守るため、工芸品は君の旅の記念になるだろう」と長老が優しく言った。

リトも僕の足元で小さく「キュイーン」と鳴き、村人たちの親切に感謝しているようだった。

「本当にありがとうございます。この恩は忘れません」と僕が言うと、村人たちは笑顔で手を振った。

「幸運を祈る。そして、いつかまたこの村に帰って来てくれたら嬉しい」と長老が言った。


僕は心からの感謝を込めて頭を下げ、リトと一緒に新しい冒険への道を歩き始めた。村人たちからの温かい贈り物を心に刻みながら、未知の旅への第一歩を踏み出した。
これが、本当の冒険の始まりだ。