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文化祭準備
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お兄ちゃんの好きな女性のタイプである、背がお兄ちゃんよりも低いことはクリアだ。料理上手であること、は朝ごはんを作るのを継続していけば、クリアできそう。お兄ちゃんの側にいる……も、家族だしできている気がする。お兄ちゃんのちょっとした変化に気づく、は難易度が高いけれど、観察してたら何とかなりそう。少しおバカ……は、うん、私の成績だと達成できる。でも、そこが可愛いっていうのは、主観的だし難しいな。でも、それよりも、一番難しいのは、素敵な笑顔だ。
鏡の前で笑ってみる。どうしても作り笑いをすると、頬の筋肉が強張って不自然な笑みになる。これでは到底魅力的な笑顔とは言えないだろう。
これは要練習だな。毎日練習しよう。
さて。十月に入り、看板を作ったり、ステージのオープニング用の寸劇の練習をしたりと、生徒会では本格的に、来月に控えた文化祭の準備が始まっていた。十月の半ばには、中間テストもあるし、十月は意外と忙しい。
ちなみに、屋台は二、三年生のみと決まっているので、私たちのクラスは定番のお化け屋敷をすることになった。まだ、一ヶ月あるためほとんど手をつけていないけれど、着々とスーパーマーケットなどで集めた段ボールが教室に運びこまれている。
それに、文化祭では、合唱コンクールもあるので皆で、ちょっとずつ課題曲をあわせたりもしている。
「……本当にやらないとだめかな? この役別に男でよくない?」
今は、オープニング用の劇の練習だ。ちなみに脚本は、書記の高木先輩。
「シンデレラは女じゃないとだめだろ。諦めろ、優。オープニングの劇で、会長は男女逆転する。これは、伝統だ」
冴木先輩が、青い顔をしたお兄ちゃんの肩をぽんと叩いた。ちなみに、冴木先輩は、王子役だ。
演劇部から衣装を借りて、本番通りの練習をしてみよう、ということになったのだけれど、衣装をみてお兄ちゃんは嫌になったのだと思う。
でも、お兄ちゃんは筋肉があるわりに、細いし、絶対に女装も似合うと思うんだけどな。
「ほら、小鳥遊さんも、会長を説得して。小鳥遊さんの言うことなら、会長は何でも聞くから!」
会計の林先輩に耳打ちされる。いや、流石にそれはないと思う。でも、お兄ちゃんの女装姿を見てみたいのも事実。
「お兄ちゃんなら、きっとできるよ。お兄ちゃんは、何を来てもかっこいいし」
私がそういうと、お兄ちゃんは揺らぎ始めた。
「そうかな。可笑しくないかな」
「うん、絶対にかっこいいよ」
「私だって、小鳥遊先輩の女装姿見たいです」
「俺も優の女装姿みたい」
「私も」
皆が口々に言ったのに押されて、結局お兄ちゃんは女装することになった。
更衣室でそれぞれ寸劇の衣装に着替えた後、生徒会室に集合する。
お兄ちゃんは、女性の服装ということで、着替えるのに手間取ったのか、一番最後だった。
「遅くなって、ごめん」
生徒会室の扉が、言葉と共に開かれる。そこに現れたのは、美女だった。すらりとした体に、金髪のカツラがよく映えている。元々お兄ちゃんは、儚げな顔立ちだから、シンデレラが変身する前のみすぼらしい衣装は、より幸薄そうな美女に仕立てあげていた。惜しまれるのは、お兄ちゃんは男性なので肩幅が大きいことだけど、それ以外はどこからどうみても美女だった。本番は、メイクもするみたいだし、もっと完成度が上がることだろう。
みんな、お兄ちゃんに見とれて言葉を発することができなかった。
「やっぱり、変、かな」
お兄ちゃんの言葉でようやく、皆は金縛りから解け、口々に称賛する。
「会長、すごくにあってますよ」
「小鳥遊先輩、可愛い」
「お兄ちゃん、すごく綺麗だよ」
お兄ちゃんは皆に誉められて、少し照れ臭そうに笑った。
そして、寸劇の練習が始まる。私は一年生ということもあって、セリフは少ないので、特に問題なく言え──
「そんな姿では、文化祭には参加できないわね、シンデレラ。いい気味ね、オーホッ、ホッ、げほっ、ごほっ」
なかった。高笑いって意外と難しいな。家に帰って練習しよう。
「お兄ちゃん、あのね、お願いがあるんだけど」
家に帰って、一緒に夕食をとっているときに、お兄ちゃんに話を切り出す。
「どうしたの?」
「もし、冴木先輩とか、他の人とまだ約束してなかったら、私と文化祭回ってもらえないかな?」
お兄ちゃんは、きょとん、とした顔をした。
「え、でも、朱里は彼氏の田中亮だか敦だか何だかと回らなくていいの?」
「亮くんとは、もう別れたよ。あれいってなかったっけ」
私が首をかしげると、お兄ちゃんは盛大に咳き込んだ。
「ごほっ、ごほっ。別れた!? 初耳だよ。……そっか、それなら、一緒に回ろう」
「ありがとう、お兄ちゃん」
お兄ちゃんは本当はお兄ちゃんの好きな人と回りたかったかもしれないけれど。お兄ちゃんを楽しませることができるように、頑張ろう。
鏡の前で笑ってみる。どうしても作り笑いをすると、頬の筋肉が強張って不自然な笑みになる。これでは到底魅力的な笑顔とは言えないだろう。
これは要練習だな。毎日練習しよう。
さて。十月に入り、看板を作ったり、ステージのオープニング用の寸劇の練習をしたりと、生徒会では本格的に、来月に控えた文化祭の準備が始まっていた。十月の半ばには、中間テストもあるし、十月は意外と忙しい。
ちなみに、屋台は二、三年生のみと決まっているので、私たちのクラスは定番のお化け屋敷をすることになった。まだ、一ヶ月あるためほとんど手をつけていないけれど、着々とスーパーマーケットなどで集めた段ボールが教室に運びこまれている。
それに、文化祭では、合唱コンクールもあるので皆で、ちょっとずつ課題曲をあわせたりもしている。
「……本当にやらないとだめかな? この役別に男でよくない?」
今は、オープニング用の劇の練習だ。ちなみに脚本は、書記の高木先輩。
「シンデレラは女じゃないとだめだろ。諦めろ、優。オープニングの劇で、会長は男女逆転する。これは、伝統だ」
冴木先輩が、青い顔をしたお兄ちゃんの肩をぽんと叩いた。ちなみに、冴木先輩は、王子役だ。
演劇部から衣装を借りて、本番通りの練習をしてみよう、ということになったのだけれど、衣装をみてお兄ちゃんは嫌になったのだと思う。
でも、お兄ちゃんは筋肉があるわりに、細いし、絶対に女装も似合うと思うんだけどな。
「ほら、小鳥遊さんも、会長を説得して。小鳥遊さんの言うことなら、会長は何でも聞くから!」
会計の林先輩に耳打ちされる。いや、流石にそれはないと思う。でも、お兄ちゃんの女装姿を見てみたいのも事実。
「お兄ちゃんなら、きっとできるよ。お兄ちゃんは、何を来てもかっこいいし」
私がそういうと、お兄ちゃんは揺らぎ始めた。
「そうかな。可笑しくないかな」
「うん、絶対にかっこいいよ」
「私だって、小鳥遊先輩の女装姿見たいです」
「俺も優の女装姿みたい」
「私も」
皆が口々に言ったのに押されて、結局お兄ちゃんは女装することになった。
更衣室でそれぞれ寸劇の衣装に着替えた後、生徒会室に集合する。
お兄ちゃんは、女性の服装ということで、着替えるのに手間取ったのか、一番最後だった。
「遅くなって、ごめん」
生徒会室の扉が、言葉と共に開かれる。そこに現れたのは、美女だった。すらりとした体に、金髪のカツラがよく映えている。元々お兄ちゃんは、儚げな顔立ちだから、シンデレラが変身する前のみすぼらしい衣装は、より幸薄そうな美女に仕立てあげていた。惜しまれるのは、お兄ちゃんは男性なので肩幅が大きいことだけど、それ以外はどこからどうみても美女だった。本番は、メイクもするみたいだし、もっと完成度が上がることだろう。
みんな、お兄ちゃんに見とれて言葉を発することができなかった。
「やっぱり、変、かな」
お兄ちゃんの言葉でようやく、皆は金縛りから解け、口々に称賛する。
「会長、すごくにあってますよ」
「小鳥遊先輩、可愛い」
「お兄ちゃん、すごく綺麗だよ」
お兄ちゃんは皆に誉められて、少し照れ臭そうに笑った。
そして、寸劇の練習が始まる。私は一年生ということもあって、セリフは少ないので、特に問題なく言え──
「そんな姿では、文化祭には参加できないわね、シンデレラ。いい気味ね、オーホッ、ホッ、げほっ、ごほっ」
なかった。高笑いって意外と難しいな。家に帰って練習しよう。
「お兄ちゃん、あのね、お願いがあるんだけど」
家に帰って、一緒に夕食をとっているときに、お兄ちゃんに話を切り出す。
「どうしたの?」
「もし、冴木先輩とか、他の人とまだ約束してなかったら、私と文化祭回ってもらえないかな?」
お兄ちゃんは、きょとん、とした顔をした。
「え、でも、朱里は彼氏の田中亮だか敦だか何だかと回らなくていいの?」
「亮くんとは、もう別れたよ。あれいってなかったっけ」
私が首をかしげると、お兄ちゃんは盛大に咳き込んだ。
「ごほっ、ごほっ。別れた!? 初耳だよ。……そっか、それなら、一緒に回ろう」
「ありがとう、お兄ちゃん」
お兄ちゃんは本当はお兄ちゃんの好きな人と回りたかったかもしれないけれど。お兄ちゃんを楽しませることができるように、頑張ろう。
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