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告白
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「あ、愛梨ちゃん……」
生徒会室に入ってきたのは、愛梨ちゃんだった。愛梨ちゃんは、私とお兄ちゃんの間に流れる緊張感には気づかず、たったったと、お兄ちゃんに駆け寄ろうとして、パソコンのコードに引っ掛かり、私にぶつかった。私はその衝撃で、後ろ手に隠していたフォンダンオショコラを落としてしまった。
「あいたたた、ごめん、朱里ちゃん」
「う、ううん」
愛梨ちゃんの前では首を振ったものの、私の心の中は、どうしよう、で埋め尽くされていた。だって、落としたものをお兄ちゃんには渡せない。
私がショックを受けている間に、愛梨ちゃんは鞄から、チョコレートを取り出すと、お兄ちゃんに渡した。
「小鳥遊先輩、今日バレンタインデーでしょう? だから、チョコレート受け取ってください」
「……っ!」
やっぱり、愛梨ちゃんの用事もチョコレートだったんだ。どうしよう、お兄ちゃんが受け取っちゃったら。いや、でも、そもそも、お兄ちゃんはモテるからすでにたくさんのチョコレートをもらってるよね。私だって、その他大勢の一人のわけで。
けれど、お兄ちゃんは、愛梨ちゃんのチョコレートを受け取らなかった。
「ごめん。悪いけれど、そのチョコレートは受け取れない」
「えっ、なんでですか? 先輩チョコレートお嫌いでしたか?」
お兄ちゃんは、甘いものは好きだったはずなのに、なんでだろう。私も愛梨ちゃんも首をかしげていると、お兄ちゃんは言った。
「どうしても、チョコレートを貰いたい子がいるんだ。その子以外からは、悪いけれど、受け取れない」
「……そう、ですか。わかりました」
愛梨ちゃんがしょんぼりとしながら、生徒会室を出ていく。そっか。お兄ちゃん、好きな人がいるんだもんね。その人以外から、告白同然のチョコレートなんて、貰っても迷惑なだけだよね。
「それで、朱里の用事って?」
お兄ちゃんが優しい声でしゃがんだままの私に近づく。咄嗟にフォンダンオショコラを後ろに隠した。
「ごめん、やっぱり……、なんでもないんだ」
けれど、お兄ちゃんは首を振る私にしゃがみこんで目線をあわせると、言った。
「僕の自惚れじゃなかったら、朱里が今、隠したもの、僕に貰えないかな。それで、さっきの言葉の続きを聞かせてほしい」
でも。これは、チョコレートだ。いつもの家族として渡すチョコレートじゃない。本命のチョコレート。それに、落としてしまった。
「でも。……でも、そしたら、お兄ちゃんの迷惑になっちゃう」
「僕は、朱里のことを迷惑だと感じたことは一度もないよ」
「それに、落としちゃったし」
「問題ないよ」
そこまで言われたら、もう、言うしかないよね。私が覚悟を決めて立ち上がると、お兄ちゃんも立ち上がった。深く息を吸う。
「初めて会った日からずっと、お兄ちゃんのことが好きです。家族じゃなくて、一人の男性として。だから、もし、良かったら、このチョコレートを受け取ってください」
目をぎゅっと瞑って、緊張しながら、フォンダンオショコラを差し出す。
なんていって振られるんだろう。やっぱり、受け取れない、かな。
「……やっと、聞けた」
「……え?」
ふわりとした熱が私を包んだ。抱き締められているのだと、気づくまで数秒かかった。
「おにい、ちゃん?」
「僕も、朱里のことが好きだよ」
うそだ。だって、そんなの私に都合がよすぎる。
「うそだよ」
やっぱり、断ると気まずいから優しいお兄ちゃんはうそをついてるんだ。
「うそじゃない。朱里が好きだよ」
「だって、お兄ちゃんには、好きな人がいるでしょう」
「すきな、ひと?」
お兄ちゃんは、ぱちぱちと瞬きをした。そんなお兄ちゃんに泣きそうな気分になりながら、主張する。
「だって、お兄ちゃんより背が小さくて、お兄ちゃんの側にいて、お兄ちゃんのちょっとした変化に気づいて、笑顔が素敵で、料理が上手で、少しおバカで、でもそこが可愛い子が好きって、お兄ちゃん言ってたもん!」
「……ああ、それは」
お兄ちゃんはなるほど、と頷いた。やっぱりお兄ちゃんには好きな人がいるんだ。だから、期待してしまう前に、この腕を離してほしい。お兄ちゃんの腕から脱出を図っていると、お兄ちゃんは笑いながら、抱き締める力を強くした。
「誰だと思う?」
お兄ちゃんも趣味が悪い。まさか、私の口からそれを言わせるのか。
「お兄ちゃんのクラスメイトのショートカットの人でしょう?」
「残念ながら、彼女は成績優秀だよ」
そうなんだ。だったら、誰だろう。うーん、と悩んでいる私にお兄ちゃんは笑いながら囁いた。
「朱里だよ」
「ええ!? お兄ちゃん私のことバカって思ってたの?」
「反応するのそこなんだ」
まあ、確かにバカだけれども。えっ、でも、お兄ちゃんの好きな女性のタイプが私ってことは、本当にお兄ちゃんの好きな人って、私なの!?
顔が真っ赤になるのを感じる。それじゃあ、もしかして、もしかしなくても、私ってずっと空回りしてた?
「でも、朱里が僕のこと好きって言ってくれたから、やっと、僕も好きだって言える。朱里、好きだよ」
お兄ちゃんの甘い言葉にながされそうになったけれど、ん? と気にかかった。
「やっと、って……?」
「お義父さんとの約束だったんだ。朱里が断れなかったらいけないから、僕からは絶対に、言わないって。それから、約束がもうひとつ」
お兄ちゃんは、私の体を離すと、私の前に跪いた。
「朱里、結婚しよう」
「……えっ」
け、けけけけけけ、結婚!?
生徒会室に入ってきたのは、愛梨ちゃんだった。愛梨ちゃんは、私とお兄ちゃんの間に流れる緊張感には気づかず、たったったと、お兄ちゃんに駆け寄ろうとして、パソコンのコードに引っ掛かり、私にぶつかった。私はその衝撃で、後ろ手に隠していたフォンダンオショコラを落としてしまった。
「あいたたた、ごめん、朱里ちゃん」
「う、ううん」
愛梨ちゃんの前では首を振ったものの、私の心の中は、どうしよう、で埋め尽くされていた。だって、落としたものをお兄ちゃんには渡せない。
私がショックを受けている間に、愛梨ちゃんは鞄から、チョコレートを取り出すと、お兄ちゃんに渡した。
「小鳥遊先輩、今日バレンタインデーでしょう? だから、チョコレート受け取ってください」
「……っ!」
やっぱり、愛梨ちゃんの用事もチョコレートだったんだ。どうしよう、お兄ちゃんが受け取っちゃったら。いや、でも、そもそも、お兄ちゃんはモテるからすでにたくさんのチョコレートをもらってるよね。私だって、その他大勢の一人のわけで。
けれど、お兄ちゃんは、愛梨ちゃんのチョコレートを受け取らなかった。
「ごめん。悪いけれど、そのチョコレートは受け取れない」
「えっ、なんでですか? 先輩チョコレートお嫌いでしたか?」
お兄ちゃんは、甘いものは好きだったはずなのに、なんでだろう。私も愛梨ちゃんも首をかしげていると、お兄ちゃんは言った。
「どうしても、チョコレートを貰いたい子がいるんだ。その子以外からは、悪いけれど、受け取れない」
「……そう、ですか。わかりました」
愛梨ちゃんがしょんぼりとしながら、生徒会室を出ていく。そっか。お兄ちゃん、好きな人がいるんだもんね。その人以外から、告白同然のチョコレートなんて、貰っても迷惑なだけだよね。
「それで、朱里の用事って?」
お兄ちゃんが優しい声でしゃがんだままの私に近づく。咄嗟にフォンダンオショコラを後ろに隠した。
「ごめん、やっぱり……、なんでもないんだ」
けれど、お兄ちゃんは首を振る私にしゃがみこんで目線をあわせると、言った。
「僕の自惚れじゃなかったら、朱里が今、隠したもの、僕に貰えないかな。それで、さっきの言葉の続きを聞かせてほしい」
でも。これは、チョコレートだ。いつもの家族として渡すチョコレートじゃない。本命のチョコレート。それに、落としてしまった。
「でも。……でも、そしたら、お兄ちゃんの迷惑になっちゃう」
「僕は、朱里のことを迷惑だと感じたことは一度もないよ」
「それに、落としちゃったし」
「問題ないよ」
そこまで言われたら、もう、言うしかないよね。私が覚悟を決めて立ち上がると、お兄ちゃんも立ち上がった。深く息を吸う。
「初めて会った日からずっと、お兄ちゃんのことが好きです。家族じゃなくて、一人の男性として。だから、もし、良かったら、このチョコレートを受け取ってください」
目をぎゅっと瞑って、緊張しながら、フォンダンオショコラを差し出す。
なんていって振られるんだろう。やっぱり、受け取れない、かな。
「……やっと、聞けた」
「……え?」
ふわりとした熱が私を包んだ。抱き締められているのだと、気づくまで数秒かかった。
「おにい、ちゃん?」
「僕も、朱里のことが好きだよ」
うそだ。だって、そんなの私に都合がよすぎる。
「うそだよ」
やっぱり、断ると気まずいから優しいお兄ちゃんはうそをついてるんだ。
「うそじゃない。朱里が好きだよ」
「だって、お兄ちゃんには、好きな人がいるでしょう」
「すきな、ひと?」
お兄ちゃんは、ぱちぱちと瞬きをした。そんなお兄ちゃんに泣きそうな気分になりながら、主張する。
「だって、お兄ちゃんより背が小さくて、お兄ちゃんの側にいて、お兄ちゃんのちょっとした変化に気づいて、笑顔が素敵で、料理が上手で、少しおバカで、でもそこが可愛い子が好きって、お兄ちゃん言ってたもん!」
「……ああ、それは」
お兄ちゃんはなるほど、と頷いた。やっぱりお兄ちゃんには好きな人がいるんだ。だから、期待してしまう前に、この腕を離してほしい。お兄ちゃんの腕から脱出を図っていると、お兄ちゃんは笑いながら、抱き締める力を強くした。
「誰だと思う?」
お兄ちゃんも趣味が悪い。まさか、私の口からそれを言わせるのか。
「お兄ちゃんのクラスメイトのショートカットの人でしょう?」
「残念ながら、彼女は成績優秀だよ」
そうなんだ。だったら、誰だろう。うーん、と悩んでいる私にお兄ちゃんは笑いながら囁いた。
「朱里だよ」
「ええ!? お兄ちゃん私のことバカって思ってたの?」
「反応するのそこなんだ」
まあ、確かにバカだけれども。えっ、でも、お兄ちゃんの好きな女性のタイプが私ってことは、本当にお兄ちゃんの好きな人って、私なの!?
顔が真っ赤になるのを感じる。それじゃあ、もしかして、もしかしなくても、私ってずっと空回りしてた?
「でも、朱里が僕のこと好きって言ってくれたから、やっと、僕も好きだって言える。朱里、好きだよ」
お兄ちゃんの甘い言葉にながされそうになったけれど、ん? と気にかかった。
「やっと、って……?」
「お義父さんとの約束だったんだ。朱里が断れなかったらいけないから、僕からは絶対に、言わないって。それから、約束がもうひとつ」
お兄ちゃんは、私の体を離すと、私の前に跪いた。
「朱里、結婚しよう」
「……えっ」
け、けけけけけけ、結婚!?
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