たとえ、この恋がいつか死んでしまうのだとしても

夕立悠理

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生まれた時から

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 ーーこの恋は永遠なのだと、何の根拠もなしに、ただ信じていた。

 大好きなあなたが、私をその青銀の瞳に捉えると、ゆっくりと微笑む時間が好きだった。

「ロレンツ殿下」
「オリアナ」
 私がその名を呼ぶと、嬉しそうに幸せそうに私の名前を呼び返してくれることも。

 あなたがいて。
 その隣には、私がいる。

 そんな当たり前じゃない幸運が、ずっとずっと当然のように続くのだと、信じていた。

◇◇◇

 私、ことオリアナ・ドロワーは、ドロワー公爵家の次女として生まれた。
 ドロワー公爵家には、既にこの家を継ぐ長男と、隣国へ嫁ぐ長女がいて、残る私はこの国王家との繋がりを強めるべく、数ヶ月前に生まれた第一王子との婚約が生まれた時点で決まっていた。

 私と、ロレンツ殿下。

 生まれた時から、将来夫婦になることが決まっていた私たちは、とても仲の良い婚約者だった。

「オリアナ、かくれんぼをしよう!」
「いいですよ、ロレンツ殿下」

「ロレンツ殿下、私また、マナーの先生に叱られてしまいました」
「大丈夫。オリアナは頑張ってること、私は知ってるよ」
 
「オリアナ、大好きだよ」
「私も大好きです、ロレンツ殿下」


 ーー私たちはいつだって、お互いにとって、最高の遊び相手で、戦友で、大好きな婚約者だった。

 生まれた時から婚約者を決められるのは、不運だと、誰かがいった。


 けれど、その言葉に対して、私たちは首を振った。
「こんなに近くに、最高のパートナーがずっといてくれるのに、何が不運なんだ?」
「こんなに大好きな人に一秒でも早く知り合えてとても嬉しいです!」

 そんな私たちは、とても仲の良い婚約者として、国中で評判だった。ーーある日、までは。

 ーーロレンツ殿下が、風邪を引いた。
 そう知らされたのは、ちょうどロレンツ殿下が14を迎える日のことだった。

 寒くなってきたから、寒がりなロレンツ殿下のために、手編みのショールを徹夜で作り終えたところだった。

 そのほかにも、愛を込めた手紙や、似合うと思って買ったカフスボタンなど、たくさんのプレゼントを用意していた。

 盛大なパーティーが王城で準備されていたけれど、それはもちろん延期になった。

 たしかその日。お見舞いに行った私は、誕生日に残念だったけれど来年はもっと盛大にお祝いしましょう。みたいなことを言ったと思う。

 それに、ロレンツ殿下は、熱のせいで赤い顔で、そうだね、と小さく微笑んだのを憶えている。


 最初は、みんなロレンツ殿下はただの風邪だと思っていて。実際、医者の診察結果もそうだった。

 ……けれど。

 数日経っても、数十日経っても、ロレンツ殿下の熱は下がらなかった。

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