悪魔な娘の政略結婚

夕立悠理

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マリエラ 3

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 私が、可愛い?
 可愛いなんて、初めて言われたわ。

 あまりの衝撃に私が固まっていると、ミカルド様はその美しい顔で微笑んだ。

「婚約者が君で、よかった」




「マリエラ嬢、そのドレスとても似合っているよ」
「……ありがとうございます」

 婚約者として一緒に出席した夜会で、ミカルド様にエスコートされる。それににこりともせずに答えた、私に周囲は顔をしかめた。

「ミカルド様も、おかわいそうに。あんな、無表情な婚約者のご機嫌とりをしなくてはいけないなんて」

 周囲の言うことは最もだった。思わず私もうんうん、と頷いてしまう。けれど、ミカルド様は、そういった面々にむかって、見惚れるような笑顔で言ったのだ。

「僕の婚約者は、とても可愛らしい人ですよ。ご機嫌とりだなんて、とんでもない。僕は、事実しか言っていません」

 !?

 これには私も驚いた。私が、可愛いなんて。以前も一度聞いたけれど、それは、私の聞き間違いだと思っていたから。

 でも。本当は、今日のドレスはとっても気合いをいれてきたのだ。私には愛嬌がないから、少しでも、可愛いって思われたくて。

 このドレスを着るために少しダイエットもしたのだった。

 だから。

 可愛いっていわれて、すっごく嬉しい!
 心のなかで飛び上がって喜ぶ。もちろん、その間も私の表情筋はぴくりとも動かなかったけれど。

 そんな私をなぜか柔らかい眼差しで見つめたミカルド様は、手を差し出した。
「僕と踊っていただけませんか?」
「喜んで」


 ミカルド様と踊る。ミカルド様の海よりも深い瞳には私だけが映っていた。

 ミカルド様を独占できるなんて、とっても幸せだわ!

 なんて贅沢な時間なの。

 私はうっとりと、ミカルド様の瞳を見つめた。
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