間違えられた番様は、消えました。

夕立悠理

文字の大きさ
67 / 89
四章 私の望み

12話

「選民主義の塊……ですか」
 でも、先ほどの魔術師は女神と言っていた。
 魔術師は貴族がほとんどと知識にあるから、貴族には優しいのだろうか。

 ……でも、それならば平民の私とどうして親友だったんだろう。

「うん。だから、君と友人関係だったのは、僕も疑問に思ってた」

 ……もし。
 なんらかの手段で、ずっと前から私が運命の番であることを知っていたのなら。
 偽るために、近づいたことも考えられる。

「そうなんですね……」

 エルマ・アンバー。
 私から見た彼女は、どうだったのか。
 日記を強く握りしめる。

 黒く塗りつぶされたページたち。
 誰にも暴かれたくなかった、私のこころ。

「うん。……そういえば」

 ノクト殿が私の持っている日記に視線を落とす。

「はい。日記を手に入れられました」

 中身が黒く塗りつぶされていたことには、触れられなかった。
 ……きっと、がっかりされるだろうから。

「よかったね」

 ノクト様は、私の表情で察したのか、それ以上深く聞かずにいてくれた。

「はい」

 ……本当に、良かった。
 心の中で付け足す。
 私の大切なこころの欠片。

「それじゃあ、そろそろいい時間だし。……邸まで、魔法で送るよ」

 ノクト殿がそういって、手を差し出した時ーー。

「ノクト副団長!」

 息を切らして誰かがやってきた。
 制服のバッジ的に、3番隊の誰かみたいだ。

「ごめん、すぐに戻るから、少しだけ待ってて」
「わかりました」

 転移魔法も今なら私も使えるかもしれない。
 でも、慣れないと全く異なる場所に運ばれてしまう危険性もある魔法だ。

 待っておいた方が無難だろう。

 かつての私がよく休憩時間に、座っていたというベンチに座って、ぼんやりと日記の表紙を眺める。

 大事に日々を綴っていたことが表紙からもわかる。
 
 それなのに、黒く塗りつぶした日記。

「何を考えてたのかな……」

 何を経験して、どう思ったのか。
 全部知りたい。
 でも、無理やりに暴きたいわけじゃない。

 そう思いながら、表紙を撫でた。

「ロイゼ!!」

 突然、大きな声で名前を呼ばれ、思わず俯いていた顔を、あげる。

 緑色の瞳が爛々と私を見つめていた。

「っ、あーー」

 声の主は、さっきの女魔術師だった。

「あなた、目が紫なのね」

 大きな声に驚いて、顔を上げた。
 ……そんな言い訳をする前に。

 彼女は、私の目の前でじっと、目を見つめる。
 ーーどんな魔法を使っても、瞳は変わらない。

 銀行で、口座を確認するときに思い出した、知識。


「団長と同じね? ねぇ、あなたでしょう。ーーロイゼ団長」
感想 478

あなたにおすすめの小説

【完結】そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして

Rohdea
恋愛
──ある日、婚約者が記憶喪失になりました。 伯爵令嬢のアリーチェには、幼い頃からの想い人でもある婚約者のエドワードがいる。 幼馴染でもある彼は、ある日を境に無口で無愛想な人に変わってしまっていた。 素っ気無い態度を取られても一途にエドワードを想ってきたアリーチェだったけど、 ある日、つい心にも無い言葉……婚約破棄を口走ってしまう。 だけど、その事を謝る前にエドワードが事故にあってしまい、目を覚ました彼はこれまでの記憶を全て失っていた。 記憶を失ったエドワードは、まるで昔の彼に戻ったかのように優しく、 また婚約者のアリーチェを一途に愛してくれるようになったけど──…… そしてある日、一人の女性がエドワードを訪ねて来る。 ※婚約者をざまぁする話ではありません ※2022.1.1 “謎の女”が登場したのでタグ追加しました

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

〖完結〗その愛、お断りします。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚して一年、幸せな毎日を送っていた。それが、一瞬で消え去った…… 彼は突然愛人と子供を連れて来て、離れに住まわせると言った。愛する人に裏切られていたことを知り、胸が苦しくなる。 邪魔なのは、私だ。 そう思った私は離婚を決意し、邸を出て行こうとしたところを彼に見つかり部屋に閉じ込められてしまう。 「君を愛してる」と、何度も口にする彼。愛していれば、何をしても許されると思っているのだろうか。 冗談じゃない。私は、彼の思い通りになどならない! *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

番(つがい)はいりません

にいるず
恋愛
 私の世界には、番(つがい)という厄介なものがあります。私は番というものが大嫌いです。なぜなら私フェロメナ・パーソンズは、番が理由で婚約解消されたからです。私の母も私が幼い頃、番に父をとられ私たちは捨てられました。でもものすごく番を嫌っている私には、特殊な番の体質があったようです。もうかんべんしてください。静かに生きていきたいのですから。そう思っていたのに外見はキラキラの王子様、でも中身は口を開けば毒舌を吐くどうしようもない正真正銘の王太子様が私の周りをうろつき始めました。 本編、王太子視点、元婚約者視点と続きます。約3万字程度です。よろしくお願いします。  

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

私が消えたその後で(完結)

毛蟹
恋愛
シビルは、代々聖女を輩出しているヘンウッド家の娘だ。 シビルは生まれながらに不吉な外見をしていたために、幼少期は辺境で生活することになる。 皇太子との婚約のために家族から呼び戻されることになる。 シビルの王都での生活は地獄そのものだった。 なぜなら、ヘンウッド家の血縁そのものの外見をした異母妹のルシンダが、家族としてそこに溶け込んでいたから。 家族はルシンダ可愛さに、シビルを身代わりにしたのだ。

冷酷夫からの離婚宣告を受けたので、次は愛してくれる夫を探そうと思います。

待鳥園子
恋愛
「……それでは、クラウディア。君とはあと、三ヶ月で離縁しようと思う」 一年前に結婚した夫ジャレッドからの言葉に、私はまったく驚かなかった。 彼はずっと半分しか貴族の血を持たぬ私に対し冷たく、いつかは離婚するだろうと思っていたからだ。 それでは、離婚までに新しい夫を見付けねばとやって来た夜会に、夫ジャレッドが居て!?

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。