ちょっとまって、柚くんは義弟様!!……だよね?

夕立悠理

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そのいち

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夢を、見ていた。まだ君が幼い頃の夢を。

 「おねーちゃんと、いっしょがいい!」
あれは、確か、私が小学校に上がる日だった。幼稚園と小学校。別々の場所に通うことを寂しがった君が、地団駄を踏んだ日の夢。

「ゆずくん、家ではいっしょだよ」
「やーだ、ずっといっしょがいい」
更に大粒の涙を溢しながら、君が言う。なんて、可愛いんだろう。そこまで思われるなんて、義姉冥利につきるなぁ。

 「ふふ」
私が頬を緩ませながら、頭を撫でようとして、視界がぐらついた。


 「きろ、……起きろ、夏音かのん! 遅刻するぞ」
「うわぁ!」
耳元でした声にびっくりして思わず、体を起こす。あれ? 可愛いゆずくんはどこにいったんだろう。きょろきょろとあたりを見回すと、大きくなった柚くんがいた。

 「ふふ、おはよう、柚くん」
夢で撫でられなかった代わりに、柚くんを撫でると、ぱっと手を振り払われる。
「ああ、おはよう。副会長でありながら、入学式に遅刻しそうなバカ夏音」
バカって、ひどいなぁ。まぁ、否定できないけど……って、ええっ! あわてて目覚まし時計を見ると、すでに8時を回っていた。

 「どうして、起こしてくれなかったの!?」
「何度も起こしたに決まってるだろ!」
怒りながら、柚くんが私の部屋から出ていく。
「ええ、全然気づかなかったよー」

 半泣きになりながら、急いで制服を着替え、家を出ようとして、忘れ物。
 どんなに忙しくても、ちゃんとお母さんに挨拶をしてからいかないとね。

 お母さん、柚くんは今日から高校生です。私も高校2年生になりました。


 「おいてくぞ、バカ」
「待って、柚くん!」

 最近あんなに可愛かった柚くんは反抗期なのか、口が悪いですが、ちゃんと待っててくれるところが優しいです。

 「じゃあ、いってくるね、おかあさん」
最後にもう一度お母さんに手を合わせたら、出発だ。






 「夏音! あれほど遅刻しないでっていったのに」
入学式が終わったあと、親友兼会長様の中嶋茜なかじまあかねちゃんに叱られた。
「申し開きもございません、ハイ」
「しかも、一緒に新入生代表の柚貴ゆずきくんまで遅刻させそうになってどうするの」
「……ほんっとーに、ごめんなさい」
なんとか遅刻ギリギリに体育館についたものの、ぜえはぁと息が荒い副会長と、新入生代表は格好がつかなかった。茜ちゃんのいうことは最もだ。

 「まぁまぁ、間に合ったんだし、そこまでにしてあげてよ、ね?」
お説教を続ける茜ちゃんと私の間にわってはいったのは、書記の工藤晃一くどうこういちくんだった。ちなみに、私の憧れの人でもある。
「工藤は、全く夏音に甘いんだから」
そういいつつも、お説教をやめてくれた茜ちゃんもなかなかに私に甘いと思う。


 「そういえば、柚貴くんは、やっぱりテニス部に入るの?」
入学式が終われば、2、3年生は授業がないので──そのかわり部活の勧誘に忙しいけど──、生徒会室で茜ちゃんとおしゃべりする。
「そうじゃないかな?」
柚くんはテニスが強いんだよね。去年も個人戦の県大会で優勝してたし、テニス部に入るんじゃないかな。私と違って、勉強もできるしスポーツ万能な柚くんは私の誇りだ。

 「今年は誰が庶務として入ってくるかねー」
「ねー、楽しみ」
私たちの学校の生徒会は緩くて、生徒会長以外には選挙がない。まあ、そもそもみんな受験勉強や部活に忙しく生徒会執行部に入りたがるひとがいないんだけど。一年生は庶務として、経験を積むのが、決まりだった。

 「もしかして、誰もいなかったりして」

「少なくとも、一人いることは確定だな」
見知った声に振り向くと、柚くんがいた。
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