1 / 7
さようなら
しおりを挟む
ずっと、ずっと好きだった。
初めてあったときから、ずっと。
「ヴィオラ」
暖かなまなざしも。
私を呼ぶ、少しだけ低い声も。
私が迷子にならないように、繋いだ大きな手も。
大好きだった。
私が何度言葉で伝えても、それに応えてくれることはなかったけれど。幸せだった。
でも、その幸福は今日で終わる。
終わりにしなくちゃ、いけない。
「マカリ」
名前を呼ぶと、彼は魔法書から顔をあげ、星屑のような、金の瞳を瞬かせた。
「私ね、マカリのことが」
いつもの私のお決まりの恋の告白と同じ台詞にマカリは、あげていた視線を魔法書に落とした。
好きじゃない。そういったら、顔をあげてくれるかしら。でも、嘘でもそんなことは、言えなかった。
「心配なの」
「……ちゃんと、最近は三食食べてるよ」
マカリは、なぜか少し不機嫌そうに眉をよせて、顔をあげた。私が、心配しているのが、鬱陶しかったのかもしれない。
「そう? ならよかった」
魔法の研究に没頭すると、何も見えなくなる彼のことが、心配だ。でも、その心配も余計なお世話ね。
「ヴィオラは、心配しすぎ」
案の定、マカリはそういって少し笑って、また難解な魔法書に目線をおとした。
「マカリ、あのね……ううん、なんでもない」
だいすきよ、さようなら。
その二言がどうしてもいえずに、かわりに微笑んだ。そういったら、泣いてしまいそうだった。
最後にあなたに見せる顔は、笑顔でありたい。
私はもう一度、微笑んで、マカリの家を後にした。
私は、その日、住み慣れた町をでて、王都に旅立った。
初めてあったときから、ずっと。
「ヴィオラ」
暖かなまなざしも。
私を呼ぶ、少しだけ低い声も。
私が迷子にならないように、繋いだ大きな手も。
大好きだった。
私が何度言葉で伝えても、それに応えてくれることはなかったけれど。幸せだった。
でも、その幸福は今日で終わる。
終わりにしなくちゃ、いけない。
「マカリ」
名前を呼ぶと、彼は魔法書から顔をあげ、星屑のような、金の瞳を瞬かせた。
「私ね、マカリのことが」
いつもの私のお決まりの恋の告白と同じ台詞にマカリは、あげていた視線を魔法書に落とした。
好きじゃない。そういったら、顔をあげてくれるかしら。でも、嘘でもそんなことは、言えなかった。
「心配なの」
「……ちゃんと、最近は三食食べてるよ」
マカリは、なぜか少し不機嫌そうに眉をよせて、顔をあげた。私が、心配しているのが、鬱陶しかったのかもしれない。
「そう? ならよかった」
魔法の研究に没頭すると、何も見えなくなる彼のことが、心配だ。でも、その心配も余計なお世話ね。
「ヴィオラは、心配しすぎ」
案の定、マカリはそういって少し笑って、また難解な魔法書に目線をおとした。
「マカリ、あのね……ううん、なんでもない」
だいすきよ、さようなら。
その二言がどうしてもいえずに、かわりに微笑んだ。そういったら、泣いてしまいそうだった。
最後にあなたに見せる顔は、笑顔でありたい。
私はもう一度、微笑んで、マカリの家を後にした。
私は、その日、住み慣れた町をでて、王都に旅立った。
349
あなたにおすすめの小説
前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!
お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。
……。
…………。
「レオくぅーん!いま会いに行きます!」
初恋に見切りをつけたら「氷の騎士」が手ぐすね引いて待っていた~それは非常に重い愛でした~
ひとみん
恋愛
メイリフローラは初恋の相手ユアンが大好きだ。振り向いてほしくて会う度求婚するも、困った様にほほ笑まれ受け入れてもらえない。
それが十年続いた。
だから成人した事を機に勝負に出たが惨敗。そして彼女は初恋を捨てた。今までたった 一人しか見ていなかった視野を広げようと。
そう思っていたのに、巷で「氷の騎士」と言われているレイモンドと出会う。
好きな人を追いかけるだけだった令嬢が、両手いっぱいに重い愛を抱えた令息にあっという間に捕まってしまう、そんなお話です。
ツッコミどころ満載の5話完結です。
ここだけの話だけど・・・と愚痴ったら、婚約者候補から外れた件
ひとみん
恋愛
国境防衛の最前線でもあるオブライト辺境伯家の令嬢ルミエール。
何故か王太子の妃候補に選ばれてしまう。「選ばれるはずないから、王都観光でもしておいで」という母の言葉に従って王宮へ。
田舎育ちの彼女には、やっぱり普通の貴族令嬢とはあわなかった。香水臭い部屋。マウントの取り合いに忙しい令嬢達。ちやほやされてご満悦の王太子。
庭園に逃げこみ、仕事をしていた庭師のおじさんをつかまえ辺境伯領仕込みの口の悪さで愚痴り始めるルミエール。
「ここだけの話だからね!」と。
不敬をものともしない、言いたい放題のルミエールに顔色を失くす庭師。
その後、不敬罪に問われる事無く、何故か妃選定がおこなわれる前にルミエールは除外。
その真相は?
ルミエールは口が悪いです。言いたい放題。
頭空っぽ推奨!ご都合主義万歳です!
女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です
くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」
身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。
期間は卒業まで。
彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。
わんこ系婚約者の大誤算
甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。
そんなある日…
「婚約破棄して他の男と婚約!?」
そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。
その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。
小型犬から猛犬へ矯正完了!?
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
最高魔導師の重すぎる愛の結末
甘寧
恋愛
私、ステフィ・フェルスターの仕事は街の中央にある魔術協会の事務員。
いつもの様に出勤すると、私の席がなかった。
呆然とする私に上司であるジンドルフに尋ねると私は昇進し自分の直属の部下になったと言う。
このジンドルフと言う男は、結婚したい男不動のNO.1。
銀色の長髪を後ろに縛り、黒のローブを纏ったその男は微笑むだけで女性を虜にするほど色気がある。
ジンドルフに会いたいが為に、用もないのに魔術協会に来る女性多数。
でも、皆は気づいて無いみたいだけど、あの男、なんか闇を秘めている気がする……
その感は残念ならが当たることになる。
何十年にも渡りストーカーしていた最高魔導師と捕まってしまった可哀想な部下のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる