恋心を封印したら、なぜか幼馴染みがヤンデレになりました?

夕立悠理

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さようなら

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 ずっと、ずっと好きだった。
 初めてあったときから、ずっと。

「ヴィオラ」

 暖かなまなざしも。
 私を呼ぶ、少しだけ低い声も。
 私が迷子にならないように、繋いだ大きな手も。

 大好きだった。

 私が何度言葉で伝えても、それに応えてくれることはなかったけれど。幸せだった。

 でも、その幸福は今日で終わる。
 終わりにしなくちゃ、いけない。

「マカリ」

 名前を呼ぶと、彼は魔法書から顔をあげ、星屑のような、金の瞳を瞬かせた。


「私ね、マカリのことが」

 いつもの私のお決まりの恋の告白と同じ台詞にマカリは、あげていた視線を魔法書に落とした。


 好きじゃない。そういったら、顔をあげてくれるかしら。でも、嘘でもそんなことは、言えなかった。

「心配なの」

「……ちゃんと、最近は三食食べてるよ」

 マカリは、なぜか少し不機嫌そうに眉をよせて、顔をあげた。私が、心配しているのが、鬱陶しかったのかもしれない。

「そう? ならよかった」
 魔法の研究に没頭すると、何も見えなくなる彼のことが、心配だ。でも、その心配も余計なお世話ね。
「ヴィオラは、心配しすぎ」

 案の定、マカリはそういって少し笑って、また難解な魔法書に目線をおとした。

「マカリ、あのね……ううん、なんでもない」
 だいすきよ、さようなら。

 その二言がどうしてもいえずに、かわりに微笑んだ。そういったら、泣いてしまいそうだった。
 
 最後にあなたに見せる顔は、笑顔でありたい。

 私はもう一度、微笑んで、マカリの家を後にした。


 私は、その日、住み慣れた町をでて、王都に旅立った。
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