軽いノリでチョコレートを渡したら、溺愛されまして

夕立悠理

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そのいち

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ぼんやりと、窓の外を眺めていると、女子生徒と男子生徒がぶつかっているのが見えた。
よろめいた女子生徒をとっさに抱き抱えた腕は細いけれど、しっかりしている。

 やっぱり格好いいな、東藤先輩──。

 「……沙、理沙ってば、話、聞いてる?」
「ごめん、全然聞いてなかった」
慌てて智美ちゃんに謝ると、智美ちゃんは仕方ないなぁと笑ってくれた。

「なーに、また、東藤会長でもいた?」
「わー! 智美ちゃん、声が大きいよ!」
「どれどれ、あっ、ほんとだ。東藤先輩、いるねぇ」
智美ちゃんは、私を見てにやにやとしている。ううう。
「そんなに好きなら、いっそ告白しちゃえば? もうすぐ、バレンタインだし。せっかく理沙は生徒会に入ってるんだから、接点あるんだしさ」
「無理だよー。チョコレートは渡したいけど、あんなに可愛い佐上さんだって振られたっていう噂、知らないの?」

 「知ってる知ってる。でも、可愛さなら理沙だって負けてないって」
「……智美ちゃん、わざと言ってるでしょ」

 自分のことは自分が一番よくわかってる。私はきつめの顔立ちをしていて、可愛さとは無縁だ。

 「理沙はその顔と性格のギャップが可愛いんだって」
「……誉められてる気がしないよ」
「誉めてる誉めてる」
全く心がこもっていない軽い感じで返した、智美ちゃんに、もー、と笑って、急に思い付いた。

 「そうだ!」
「どうしたの、急に」

 だって、やっぱりもうすぐバレンタイン。好きな人にチョコレートのひとつくらい渡したい。でも、振られるのは嫌だ。まだ、夢を見ていたい。というわけで。

 「友チョコをあげればいいんだ!」

 生徒会の男の子みんなに配った、その中の一人にたまたま東藤先輩がいただけ。そんな軽めの好意を匂わせたくらいで、まさか、振られてたりはしないだろう。

 「理沙、本当にそれでいいの?」
智美ちゃんは呆れた顔をしたけれど、それに笑って頷いて、さっそく放課後私は、チョコレートの材料を買いに行くことにした。






 そして、バレンタイン当日。私は、ばれませんように、と心の中で念じながら、生徒会役員の男の子たちにチョコレートを配った。ちゃんと東藤先輩にも渡せたしみんな、嬉しそうにしてくれた。うん、自己満足だけど、渡せて良かった。本当は、東藤先輩のだけ、一つチョコレートの数が多いんだけど、それだけじゃ、ばれないよね……。なんて、思ってた翌日。

 「理沙──、お客さんよ」
「客?」
今日は休みの日なのに誰だろう。疑問に思いながら、玄関に行くと、そこにいたのは、なんと、東藤先輩だった。

 「えっ? えっ? 東藤先輩?」
「こんにちは、高倉さん」
「こ、こんにちは」
どうしたんだろう。チョコレートには、何も混ぜてないけど。うそ。乙女心と好意を少しだけ混ぜた。

 「どうしても、早く確認したいことがあって。ここじゃしにくい話だから、ちょっと、外で話せる?」
もしかしなくても、生徒会の仕事のことだよね。
「は、はい!」
私、何か仕事でやらかしちゃっただろうか。そう緊張しながら、家の外へ。

 「それでね、聞きたいんだけど……」
「はい」
「高倉さんって、恋愛的な意味で俺のこと、好きなの?」
「えっ?」

 な、なんで、バレてるのー!?
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