8 / 8
8
しおりを挟む
「アノ……。シアノ」
「はっ!!!!!!」
憂いを帯びてなお、びゅーてぃふぉーな推しの声にはっと、目を覚まします。
ここは、どこかしら。
飛び起きて、辺りを見回すと、王城の一室でした。
「……シアノ、倒れたって聞いたけど、大丈夫?」
心配そうに、イグニス殿下が、わたくしの顔を覗き込みます。
「だ、だだだだ、だいじょうぶ……デス」
「嘘だね。シアノは嘘をつく時、一瞬、右手が震えるから」
えっ!!!!!
それは知りませんでしたわ!
思わず、自分の右手を凝視していると、イグニス殿下が、わたくしの手を握……って、イグニス殿下!?!?!?
「イグニス殿下!?!?」
「ねぇ、シアノ。そんなにショックだったの。ノントに幼馴染の彼女ができたことが」
「そ、れは」
ええそれはもう。
だって、くっついたカップルを引き離すのはさすがに、良心がとがめますし。
でも、イグニス殿下の幸せのためなら……。
「……そう。じゃあ、シアノ。今も僕の幸せを願うことが、得意?」
「得意ですが……」
得意でしたが、邪な気持ちをいだくようになったわたくしが、かつてほど得意かというと……。
「……そう。ねぇ、シアノ。僕じゃ、どうしてダメなの?」
「ダメなんてそんなはずありません! アリス嬢は、イグニス殿下の良さにまだ目覚めてないだけです!! まだまだここからーー」
「え?」
「へ?」
どうして、イグニス殿下ったら、そんなに奇妙なものをみる顔をしてるんですの。
もちろん、その顔も素敵ですが。
「今、なんて?」
「まだまだこここらです!! わたくしがーー」
「ごめん。そこじゃなくて……」
「イグニス殿下の良さにーー」
「そこより前」
「アリス嬢は、イグニス殿下」
「……アリス?」
はっ!!!
イグニス殿下は、アリスの名前も知らなかったんでしたっけ。
「ノント様の幼馴染の……」
「それは知ってる。そうじゃなくて、なんでアリス嬢?」
「だって、アリス嬢は、イグニス殿下の、運命の相手で……」
途中声が小さくなってしまったのは、イグニス殿下の信じられないものをみる瞳に気づいたからです。
「あんなに言ったのに、まだ気づいてないの?」
「……へ?」
「僕は、君が好きだよ」
「わたくしも、イグニス殿下が大好きです」
推しからファンサを貰えるのは、何にも変え難い喜びですわね!
「……はぁ、そっか。なるほど。今まで浮かれてたの、バカだったな」
「え? イグニス殿下?」
「いい、シアノ……、僕は、君が好きだよ。君を愛してる」
「わたくしも……」
「ちょっとまって。ちゃんと僕の目をみて、聞いて」
で、でも。いくらファンサとはいえ、目を見てそんなことを言われたら。勘違いしてしまいます!!!!
「!? イグニス殿下」
目を逸らしたわたくしの顔を両手で包んで、イグニス殿下はわたくしをまっすぐ見つめました。
「シアノ、君を愛してる」
「!!!!」
息が苦しい。胸を抑えられてるわけじゃないのに。
青い瞳にわたくしだけが映っていて。
その瞳が、熱を帯びているように感じられて。
「……でも、でもでも」
ここで、勘違いをしてはだめですわよ!
ガチ恋しても……イグニス殿下は幸せにはなれませんもの。
「でも、なに?」
「わたくしは、絶対に、イグニス殿下を勝たせたくて……」
「その勝ちってなに?」
わたくしは、簡単に恋愛の勝ち負けについて説明いたしました。
「ねぇ、シアノ。だったら、君が僕を勝たせてよ」
「で、でも……」
悪役令嬢のわたくしは、そんなことができる資格がーー、
「言ったよね。僕の幸せを願うのが得意だって。僕を、幸せにできるのは、シアノ、君だけなんだよ」
「イグニス殿下……」
でも、本当に?
本当に、イグニス殿下は、わたくしに、その恋していて。
わたくしが、イグニス殿下を幸せにできるの?
「わたくしも、イグニス殿下を、愛しています」
ぽろり、と口からこぼれ落ちてしまいました。
もう、これ以上自分の気持ちに嘘がつけませんでしたの。
「……うん。やっと、聞けた」
「イグニス、でん」
ふわり、と柔らかいものが唇に触れました。
「!?、!? ここ、ここここんぜんにこのようなことは、この、ようなことは……」
言いかけた言葉を飲み込みます。
イグニス殿下は、それはもう嬉しそうで、わたくしも、嬉しくなってしまったから。
なので、代わりに、もう一度、伝えることにしました。
「あなたを愛しています。心から」
ーーその後、イグニス殿下の大きすぎる愛に包まれたり、続編のヒロインが現れたり、とかなんとかあったりしますけれど……確かなことは、イグニス殿下は、わたくしにとって最高のヒーローだということですわ!
「はっ!!!!!!」
憂いを帯びてなお、びゅーてぃふぉーな推しの声にはっと、目を覚まします。
ここは、どこかしら。
飛び起きて、辺りを見回すと、王城の一室でした。
「……シアノ、倒れたって聞いたけど、大丈夫?」
心配そうに、イグニス殿下が、わたくしの顔を覗き込みます。
「だ、だだだだ、だいじょうぶ……デス」
「嘘だね。シアノは嘘をつく時、一瞬、右手が震えるから」
えっ!!!!!
それは知りませんでしたわ!
思わず、自分の右手を凝視していると、イグニス殿下が、わたくしの手を握……って、イグニス殿下!?!?!?
「イグニス殿下!?!?」
「ねぇ、シアノ。そんなにショックだったの。ノントに幼馴染の彼女ができたことが」
「そ、れは」
ええそれはもう。
だって、くっついたカップルを引き離すのはさすがに、良心がとがめますし。
でも、イグニス殿下の幸せのためなら……。
「……そう。じゃあ、シアノ。今も僕の幸せを願うことが、得意?」
「得意ですが……」
得意でしたが、邪な気持ちをいだくようになったわたくしが、かつてほど得意かというと……。
「……そう。ねぇ、シアノ。僕じゃ、どうしてダメなの?」
「ダメなんてそんなはずありません! アリス嬢は、イグニス殿下の良さにまだ目覚めてないだけです!! まだまだここからーー」
「え?」
「へ?」
どうして、イグニス殿下ったら、そんなに奇妙なものをみる顔をしてるんですの。
もちろん、その顔も素敵ですが。
「今、なんて?」
「まだまだこここらです!! わたくしがーー」
「ごめん。そこじゃなくて……」
「イグニス殿下の良さにーー」
「そこより前」
「アリス嬢は、イグニス殿下」
「……アリス?」
はっ!!!
イグニス殿下は、アリスの名前も知らなかったんでしたっけ。
「ノント様の幼馴染の……」
「それは知ってる。そうじゃなくて、なんでアリス嬢?」
「だって、アリス嬢は、イグニス殿下の、運命の相手で……」
途中声が小さくなってしまったのは、イグニス殿下の信じられないものをみる瞳に気づいたからです。
「あんなに言ったのに、まだ気づいてないの?」
「……へ?」
「僕は、君が好きだよ」
「わたくしも、イグニス殿下が大好きです」
推しからファンサを貰えるのは、何にも変え難い喜びですわね!
「……はぁ、そっか。なるほど。今まで浮かれてたの、バカだったな」
「え? イグニス殿下?」
「いい、シアノ……、僕は、君が好きだよ。君を愛してる」
「わたくしも……」
「ちょっとまって。ちゃんと僕の目をみて、聞いて」
で、でも。いくらファンサとはいえ、目を見てそんなことを言われたら。勘違いしてしまいます!!!!
「!? イグニス殿下」
目を逸らしたわたくしの顔を両手で包んで、イグニス殿下はわたくしをまっすぐ見つめました。
「シアノ、君を愛してる」
「!!!!」
息が苦しい。胸を抑えられてるわけじゃないのに。
青い瞳にわたくしだけが映っていて。
その瞳が、熱を帯びているように感じられて。
「……でも、でもでも」
ここで、勘違いをしてはだめですわよ!
ガチ恋しても……イグニス殿下は幸せにはなれませんもの。
「でも、なに?」
「わたくしは、絶対に、イグニス殿下を勝たせたくて……」
「その勝ちってなに?」
わたくしは、簡単に恋愛の勝ち負けについて説明いたしました。
「ねぇ、シアノ。だったら、君が僕を勝たせてよ」
「で、でも……」
悪役令嬢のわたくしは、そんなことができる資格がーー、
「言ったよね。僕の幸せを願うのが得意だって。僕を、幸せにできるのは、シアノ、君だけなんだよ」
「イグニス殿下……」
でも、本当に?
本当に、イグニス殿下は、わたくしに、その恋していて。
わたくしが、イグニス殿下を幸せにできるの?
「わたくしも、イグニス殿下を、愛しています」
ぽろり、と口からこぼれ落ちてしまいました。
もう、これ以上自分の気持ちに嘘がつけませんでしたの。
「……うん。やっと、聞けた」
「イグニス、でん」
ふわり、と柔らかいものが唇に触れました。
「!?、!? ここ、ここここんぜんにこのようなことは、この、ようなことは……」
言いかけた言葉を飲み込みます。
イグニス殿下は、それはもう嬉しそうで、わたくしも、嬉しくなってしまったから。
なので、代わりに、もう一度、伝えることにしました。
「あなたを愛しています。心から」
ーーその後、イグニス殿下の大きすぎる愛に包まれたり、続編のヒロインが現れたり、とかなんとかあったりしますけれど……確かなことは、イグニス殿下は、わたくしにとって最高のヒーローだということですわ!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
204
この作品の感想を投稿する
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる