今度こそあなたの幸せを願える私になりたい(リメイク)

夕立悠理

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武器選び/異様な執着

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翌日。教室に向かうと、教室は多くの生徒でごった返していた。
 今日は授業はなく、〈キンダー〉と〈エルターン〉の顔合わせだからだろう。

 グレイさんはどこだろうと、辺りを見回していると、ぽんと肩を叩かれた。
「おはよう、アリサ」
「おはようございます、グレイさん」

 この学園では、貴族のルールよりも、年功序列が優先される。昨日の口ぶりからして、グレイさんは、平民だろうけれど、私に親しげな口を聞いても誰かに罰せられることはない。むしろ、アリサと名前を呼ばれることは滅多にないことなので、新鮮だった。

 「まずは、必要なものを買いにいくか」
「はい!」

 制服は支給されたものの、教科書や魔獣科に必須の武器は、まだ持っていない。その辺りを、買いにいくのだろう。

 確か、購買部があったはずだ。

 グレイさんに案内されるまま、学園内を進む。すると、大きなホールに出た。

 ホールはとても広い。そのなかに、お店がたくさん並んでいた。

 「ここが、購買部だ。何か欲しいものがあれば、大抵はこのなかで手にはいる」
「なるほど」

 確かに、これだけお店があれば困ることはなさそうだ。

 グレイさんと一緒に教科書を揃えていく。


 「一年で必要なのは、これくらいだな。後は武器だが──」
ごくりと息を飲む。魔獣を倒すには魔法を使わなくてはならず、武器はその魔法をまとわせて使う。

 「逆に魔法に耐えられるものなら何でもいいんだ。例えば変わり種といえば、楽器を武器にしているやつもいる」
「楽器を?」
確かに武器屋には、楽器もおいてあった。もしかして、楽器で殴るのだろうか。それは、ちょっと楽器が可哀想だ。想像して、私が顔をしかめていると、グレイさんは笑った。

 「ちょっと、待ってろ。今見せてやる。店主、試奏してもいいか?」
そういうと、グレイさんと共に広場に出た。ホールのすぐ近くに広場があるのだ。

 ? ここには魔獣はいない。どうするんだろう。

 そう思っていると、グレイさんは、ヴァイオリンを構え、弾いた。綺麗な音が紡がれると同時に、光の矢が空から降り注ぐ。

 「わぁ」
綺麗だ。その光景に思わず、感嘆の声を漏らすと、グレイさんは得意気に笑った。

 「この矢は人には害はないが、魔獣が触れると消滅するんだ。──と、まぁ、こんな感じで、何でもいいんだ。ただ、武器によって性質は異なる。さっきみたいに、楽器だと広範囲攻撃が主だし、俺が使っている剣だと、攻撃範囲が狭い分一撃が重くなる」

 店主にヴァイオリンを返しながら、グレイさんが説明してくれる。何でもいい、かぁ。何でもいいと言われると逆に困る。

 「まぁ、最初は剣がいいんじゃないか。わかりやすいしな」
そう言って、グレイさんは私に小ぶりな剣を差し出した。素振りしてみると、私の手に馴染んだ。これなら、重すぎて、腕が疲れることもなさそうだ。それになにより、柄の装飾が気に入った。澄んだ青い装飾はまるで──ルーカス殿下の瞳のようで。

 グレイさんにお礼をいって、剣を購入する。

 武器屋をでようとすると──、丁度ルーカス殿下とすれ違った。ルーカス殿下の隣にいるのがルーカス殿下の〈エルターン〉だろうか。

 ルーカス殿下は私を見ると、顔をしかめて、すぐにグレイさんに視線を移す。

 「グレイ先輩、後でお話があるのですが」
「……わかりました。じゃあ、昨日の場所で」

 と短い言葉を交わして、二人は別れた。
 知り合いだったのだろうか?

 私が首をかしげていると、グレイさんは、気にするな、というように私の背中をぽん、と叩くと

 「腹へっただろ? 奢ってやるよ。学食だけどな」
「ありがとうございます!」
丁度お腹が減っていたのは事実だったので、喜ぶと、グレイさんも安心したように笑った。

 ◇ ◇ ◇
 約束の場所につくと、すでに、相手が立っていた。

 「どうしたんです? 急に呼び出したりして」
大方の察しは着いているが、あえて、さっぱりわからないというフリをする。

 すると、相手はよっぽど腹に据えかねていたのか、胸ぐらを捕まれた。

 「私は、貴方に頼んだはずです。彼女を転科させるように、と」
「俺も勧めたんですがね、彼女の意志が思った以上に強くって」
「魔獣科がどれほど危険か一番わかっているのは、貴方自身でしょう!」
そう言われれば返す言葉もないが。

 「そんなに大事な『オヒメサマ』なら、貴方が囲ってしまえばいいのでは」
大事にしまいこんで、誰にも見られないように、傷つけられないように、してやればいい。相手はそうできる立場にあった。

 そういうと、俺の胸ぐらから力なく手を離し、うわ言のように呟く。
「それじゃあ、彼女が幸せになれない。私は、今度こそ彼女に幸せになって欲しいんだ」

 それなら、自分がその幸せとやらを、与えてやればいいじゃないか。そう思ったが、その言葉は寸前のところで飲み込んだ。

 相手がとても悲痛な顔をしていたからだ。

 「まぁ、俺も注意して見ておきますよ」
彼女は俺の〈キンダー〉でもあるのだから、大切にするに決まっていた。

 そう言うと、ようやく安心したのか、頼みましたよ、と言葉を残して去っていった。

 こういうのを野次馬根性というのだろうが、見たところ、普通の少女だった。何がそこまで、執着させるのかしらない。
 その執着の理由を知ったとき、自分も何かに執着できるようになるだろうか。

 「興味深いな」
そうひとりごちて、俺も自室に戻ることにした。
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