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手紙
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今日は、学園始まって以来の休日だ。さて、何をしよう。私が、自室で伸びをしていると、ドアが軽くノックされた。
「はい」
「カーナよ、貴女にお届けもの」
扉を開くと、カーナさんが手紙を二通加えていた。お礼をいって、それを受け取り、差出人をみる。相手は、マリウス殿下とユストだった。
まず、マリウス殿下のものから開封する。手紙を読むと、どうやら、マリウス殿下に初めてのご友人ができたらしい。その方は、マリウス殿下の赤い瞳を怖がることもないのだと、嬉しそうに綴られていた。
これも、私のおかげだと書いてあったけれど、それは違う。マリウス殿下自身の力だ。微笑ましく思いながら、手紙を直そうとすると、追伸に目が止まった。
「ぼくの婚約者候補を父様と母様が探しているけれど、ぼくはアリサになってほしいな」
ぎょっとして、何かの書き間違えではないかと数回見直したが、書いてある言葉は一緒だった。
私が、マリウス殿下の、婚約者に?
マリウス殿下は第二王子だ。そして、その地位を差し引いても、魅力的な人物だと思う。けれども、だからこそ、以前の私がそうであったように、恨まれて嵌められることも考えられる。
それを思うと、ご遠慮したい提案だ。
今度はユストの手紙を開封する。
すると、そこには、ひたすらに私がいなくなって、寂しいと書いてあった。
「ユスト……」
ユストのことを思うと、胸が締め付けられるような気分になる。今すぐ、家に帰って、抱き締めたい。けれど、私はユストよりも、血よりも濃い絆を選んだのだ。途中で投げ出すなんて許されない。
ひとまず、ユストに私もユストがいなくて寂しく思っていること、夏期休暇には必ず帰ることを書いて、封を閉じた。
さて、問題はマリウス殿下だ。なんて、返事をしよう。なかなかいい案は浮かばない。
ふと、窓の外に目を向けると──
「グレイさん!?」
グレイさんが手を振っていた。慌てて、窓を開ける。
すると、グレイさんはにやにやしながら、私に言ってきた。
「今からわるーい場所に行くけど、アリサもくるか?」
「はい」
「カーナよ、貴女にお届けもの」
扉を開くと、カーナさんが手紙を二通加えていた。お礼をいって、それを受け取り、差出人をみる。相手は、マリウス殿下とユストだった。
まず、マリウス殿下のものから開封する。手紙を読むと、どうやら、マリウス殿下に初めてのご友人ができたらしい。その方は、マリウス殿下の赤い瞳を怖がることもないのだと、嬉しそうに綴られていた。
これも、私のおかげだと書いてあったけれど、それは違う。マリウス殿下自身の力だ。微笑ましく思いながら、手紙を直そうとすると、追伸に目が止まった。
「ぼくの婚約者候補を父様と母様が探しているけれど、ぼくはアリサになってほしいな」
ぎょっとして、何かの書き間違えではないかと数回見直したが、書いてある言葉は一緒だった。
私が、マリウス殿下の、婚約者に?
マリウス殿下は第二王子だ。そして、その地位を差し引いても、魅力的な人物だと思う。けれども、だからこそ、以前の私がそうであったように、恨まれて嵌められることも考えられる。
それを思うと、ご遠慮したい提案だ。
今度はユストの手紙を開封する。
すると、そこには、ひたすらに私がいなくなって、寂しいと書いてあった。
「ユスト……」
ユストのことを思うと、胸が締め付けられるような気分になる。今すぐ、家に帰って、抱き締めたい。けれど、私はユストよりも、血よりも濃い絆を選んだのだ。途中で投げ出すなんて許されない。
ひとまず、ユストに私もユストがいなくて寂しく思っていること、夏期休暇には必ず帰ることを書いて、封を閉じた。
さて、問題はマリウス殿下だ。なんて、返事をしよう。なかなかいい案は浮かばない。
ふと、窓の外に目を向けると──
「グレイさん!?」
グレイさんが手を振っていた。慌てて、窓を開ける。
すると、グレイさんはにやにやしながら、私に言ってきた。
「今からわるーい場所に行くけど、アリサもくるか?」
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