今度こそあなたの幸せを願える私になりたい(リメイク)

夕立悠理

文字の大きさ
21 / 23

歓迎パーティ

しおりを挟む
制服を、魔獣科のものから、通常のものへと着替えて、鏡の前で確認する。リボンがよれていたので、結び直して。

 「よし、これで大丈夫、よね」
いつも着なれている魔獣科のそれとは違い、ひらひらとした制服はどこか落ち着かない。

 どうして、通常の制服へと着替えているのかというと。今日は、入学式から丁度一月。なので、私たち新入生を歓迎するパーティーがあるのだ。

 時計を見ると、そろそろいい時間だったので、パーティーが行われるホールに急ぐ。



 「アリサ、よく来たな」
 ホールへ着くと、グレイさんが私を見つけ、微笑んだ。

 私の心の中はぐちゃぐちゃで、それどころじゃない、と欠席しようと思っていたのだけれども、グレイさんから

 『食事から何まで全部上級生持ちの特別パーティーだ。こんなこともう二度とないから、行ってみろよ。気晴らしになるかもしれないしな』

 というお言葉を頂いたため、参加することにしたのだった。

 グレイさんから、飲み物を受け取り、口に含む。
「……美味しい」
「だろ? これ甘くて美味しいよな」

 嬉しそうに笑うグレイさんに、心が解される。この顔を見られただけでも、このパーティーに来た価値はあったかもしれない。

 「他にも美味しいのが、たくさん……、ってそろそろ時間か。引き留めてワルかったな」

 グレイさんは私からグラスを奪うと、とん、と背中を押した。

 「ですが、私は……、」
「親睦を深めるためのパーティーだ。意外と面白い話も聞けるかも知れないから、な。最低でも、一人とは踊っとけ」
「……わかりました」

 グレイさんと別れ、ホールの中央へ向かう。このパーティーのメインとして、一年の全学科の男女が踊ることになっていた。

 もちろん、男性の方が圧倒的に比率が多いので、男性は、パートナーがいない間は、食事を摂ったり、歓談したりしているようだ。

 そんなことを考えながら、ぼんやりと立っていると、声をかけられた。
 「踊っていただけませんか?」
「……、喜んで」
声をかけてきたのは、気の良さそうな少年だった。この学園には、12才から15才までならどの年齢でも入れるから、同級生といっても歳が違うことがままある。ルーカス殿下だって、私の二つ上の14才だ。けれど、少年は、私と同じ年齢のように思えた。

 気の良さそうな少年だ。
 少年にエスコートされ、ホールのさらに中央へ。曲に任せてダンスを踊る。

 「僕は、植物科のフレッドと言います。君のお名前を伺っても?」
「はい。私は、魔獣科のアリサと申します」

 私がそう言うと、フレッドは驚いた顔をした。
 「君が魔獣科唯一の女の子なんですね。じつは僕も、植物科唯一の男なんです」
そういって、嬉しそうに笑う。確かに、植物科は、女子生徒が多いと聞いていたが、今年の入学者で男子生徒は一人だけだとは思わなかった。驚きだ。

 その後も、植物科が普段、どんなことをしているか──魔法で植物を成長させようとしたら成長させすぎて、ツタが足に絡まって大変だった──など、たくさんの面白い話を聞くことができた。

 「よければ、また僕と話してください」
ダンスの終わりに、フレッドが言った言葉に笑顔で頷く。とても、楽しい時間だった。

 さて、グレイさんに言われたノルマである一人と踊るはクリアした。もう、グレイさんの元へ戻ろうか──と考えていたとき、声をかけられる。

 「私と、踊っていただけませんか?」
手を差し出していたのは。
「……ルーカス殿下」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

良くある事でしょう。

r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。 若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。 けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

処理中です...