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歓迎パーティ
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制服を、魔獣科のものから、通常のものへと着替えて、鏡の前で確認する。リボンがよれていたので、結び直して。
「よし、これで大丈夫、よね」
いつも着なれている魔獣科のそれとは違い、ひらひらとした制服はどこか落ち着かない。
どうして、通常の制服へと着替えているのかというと。今日は、入学式から丁度一月。なので、私たち新入生を歓迎するパーティーがあるのだ。
時計を見ると、そろそろいい時間だったので、パーティーが行われるホールに急ぐ。
「アリサ、よく来たな」
ホールへ着くと、グレイさんが私を見つけ、微笑んだ。
私の心の中はぐちゃぐちゃで、それどころじゃない、と欠席しようと思っていたのだけれども、グレイさんから
『食事から何まで全部上級生持ちの特別パーティーだ。こんなこともう二度とないから、行ってみろよ。気晴らしになるかもしれないしな』
というお言葉を頂いたため、参加することにしたのだった。
グレイさんから、飲み物を受け取り、口に含む。
「……美味しい」
「だろ? これ甘くて美味しいよな」
嬉しそうに笑うグレイさんに、心が解される。この顔を見られただけでも、このパーティーに来た価値はあったかもしれない。
「他にも美味しいのが、たくさん……、ってそろそろ時間か。引き留めてワルかったな」
グレイさんは私からグラスを奪うと、とん、と背中を押した。
「ですが、私は……、」
「親睦を深めるためのパーティーだ。意外と面白い話も聞けるかも知れないから、な。最低でも、一人とは踊っとけ」
「……わかりました」
グレイさんと別れ、ホールの中央へ向かう。このパーティーのメインとして、一年の全学科の男女が踊ることになっていた。
もちろん、男性の方が圧倒的に比率が多いので、男性は、パートナーがいない間は、食事を摂ったり、歓談したりしているようだ。
そんなことを考えながら、ぼんやりと立っていると、声をかけられた。
「踊っていただけませんか?」
「……、喜んで」
声をかけてきたのは、気の良さそうな少年だった。この学園には、12才から15才までならどの年齢でも入れるから、同級生といっても歳が違うことがままある。ルーカス殿下だって、私の二つ上の14才だ。けれど、少年は、私と同じ年齢のように思えた。
気の良さそうな少年だ。
少年にエスコートされ、ホールのさらに中央へ。曲に任せてダンスを踊る。
「僕は、植物科のフレッドと言います。君のお名前を伺っても?」
「はい。私は、魔獣科のアリサと申します」
私がそう言うと、フレッドは驚いた顔をした。
「君が魔獣科唯一の女の子なんですね。じつは僕も、植物科唯一の男なんです」
そういって、嬉しそうに笑う。確かに、植物科は、女子生徒が多いと聞いていたが、今年の入学者で男子生徒は一人だけだとは思わなかった。驚きだ。
その後も、植物科が普段、どんなことをしているか──魔法で植物を成長させようとしたら成長させすぎて、ツタが足に絡まって大変だった──など、たくさんの面白い話を聞くことができた。
「よければ、また僕と話してください」
ダンスの終わりに、フレッドが言った言葉に笑顔で頷く。とても、楽しい時間だった。
さて、グレイさんに言われたノルマである一人と踊るはクリアした。もう、グレイさんの元へ戻ろうか──と考えていたとき、声をかけられる。
「私と、踊っていただけませんか?」
手を差し出していたのは。
「……ルーカス殿下」
「よし、これで大丈夫、よね」
いつも着なれている魔獣科のそれとは違い、ひらひらとした制服はどこか落ち着かない。
どうして、通常の制服へと着替えているのかというと。今日は、入学式から丁度一月。なので、私たち新入生を歓迎するパーティーがあるのだ。
時計を見ると、そろそろいい時間だったので、パーティーが行われるホールに急ぐ。
「アリサ、よく来たな」
ホールへ着くと、グレイさんが私を見つけ、微笑んだ。
私の心の中はぐちゃぐちゃで、それどころじゃない、と欠席しようと思っていたのだけれども、グレイさんから
『食事から何まで全部上級生持ちの特別パーティーだ。こんなこともう二度とないから、行ってみろよ。気晴らしになるかもしれないしな』
というお言葉を頂いたため、参加することにしたのだった。
グレイさんから、飲み物を受け取り、口に含む。
「……美味しい」
「だろ? これ甘くて美味しいよな」
嬉しそうに笑うグレイさんに、心が解される。この顔を見られただけでも、このパーティーに来た価値はあったかもしれない。
「他にも美味しいのが、たくさん……、ってそろそろ時間か。引き留めてワルかったな」
グレイさんは私からグラスを奪うと、とん、と背中を押した。
「ですが、私は……、」
「親睦を深めるためのパーティーだ。意外と面白い話も聞けるかも知れないから、な。最低でも、一人とは踊っとけ」
「……わかりました」
グレイさんと別れ、ホールの中央へ向かう。このパーティーのメインとして、一年の全学科の男女が踊ることになっていた。
もちろん、男性の方が圧倒的に比率が多いので、男性は、パートナーがいない間は、食事を摂ったり、歓談したりしているようだ。
そんなことを考えながら、ぼんやりと立っていると、声をかけられた。
「踊っていただけませんか?」
「……、喜んで」
声をかけてきたのは、気の良さそうな少年だった。この学園には、12才から15才までならどの年齢でも入れるから、同級生といっても歳が違うことがままある。ルーカス殿下だって、私の二つ上の14才だ。けれど、少年は、私と同じ年齢のように思えた。
気の良さそうな少年だ。
少年にエスコートされ、ホールのさらに中央へ。曲に任せてダンスを踊る。
「僕は、植物科のフレッドと言います。君のお名前を伺っても?」
「はい。私は、魔獣科のアリサと申します」
私がそう言うと、フレッドは驚いた顔をした。
「君が魔獣科唯一の女の子なんですね。じつは僕も、植物科唯一の男なんです」
そういって、嬉しそうに笑う。確かに、植物科は、女子生徒が多いと聞いていたが、今年の入学者で男子生徒は一人だけだとは思わなかった。驚きだ。
その後も、植物科が普段、どんなことをしているか──魔法で植物を成長させようとしたら成長させすぎて、ツタが足に絡まって大変だった──など、たくさんの面白い話を聞くことができた。
「よければ、また僕と話してください」
ダンスの終わりに、フレッドが言った言葉に笑顔で頷く。とても、楽しい時間だった。
さて、グレイさんに言われたノルマである一人と踊るはクリアした。もう、グレイさんの元へ戻ろうか──と考えていたとき、声をかけられる。
「私と、踊っていただけませんか?」
手を差し出していたのは。
「……ルーカス殿下」
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