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二章
もう一人の僕
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「……でも、話しても、私が楽になるだけで」
「話してくれたら、君を……嫌いになれるかも」
「!」
そうか、そういう方法もあるんだ。
私が楽になるためじゃなく。
リッカルド様に、嫌われるために。
「ねぇ、教えて、ソフィア。君は、僕に好かれると困った顔をするよね。だったらーー僕が君を嫌いになるために、教えて」
◇◇◇
全部、話した。
過去の私が、リッカルド様にしたことも。
悪魔のことも、全部。
「……なるほど」
リッカルド様は、私が話終わると、頷いた。
「そんなことがあったんだね」
リッカルド様は口を挟むことなく、最後まで聞いてくれた。
「話してくれてありがとう」
リッカルド様は微笑むと、私の手を握った。
「……あの?」
「僕のお願い……聞いてくれる?」
「私にできることなら」
リッカルド様が、私に死んで欲しいというなら、死ぬ。
それでも、許されるとは思っていないけれど。
「うん、だったら、明日は学園に来て。明日も明後日も、卒業するまで、ずっと」
「……え?」
学園にいく?
それはもちろん、リッカルド様のお願いなら、構わないけれど。
どうして、そんなことを。
「それで、学園を卒業したら……ううん、その後のことは、その時に伝えるね」
「わかりました。……それがリッカルド様の望みなら」
リッカルド様は頷くと、花を一輪手折り、私に差し出した。
「それから、ソフィア」
「……はい」
その花を受け取る。花からは、芳しい香りがした。
「僕は、君が好きだよ」
「……っ」
うそ、嘘だって。
私は許されないことしたのに。
それなのに。
「何度だって伝えるよ。僕は、ソフィアが好きだ。だからね……」
あとずさった私との距離を詰めて、リッカルド様は、微笑んだ。
「君を許さないことにする。だから、これから教えてね。どうしたら、君が幸せを感じるのか」
それは、私の幸せとは反対のことをしてくれる、ということ……?
「君は僕のそばで、幸せになるんだ。僕にいつか、許されるために」
「え?」
「君は許されたいんだろう? だったら、僕の願いごと、叶えてくれるよね」
でも、私にとってそんな都合のいいこと……。
「それが君が僕にできる、最善のことだよ」
「!! ……わかりました」
リッカルド様が決めたことなら、従うしかない。
「うん。……ソフィア。また、明日」
「また……明日」
リッカルド様は、ここで研究があるからと小屋の中へと入って行った。
邪魔はできない。
女子寮に戻るまで、ずっと、今日起きたことを考えていた。
私ができる最善のこと。
それは、リッカルド様が今度こそ笑える世界をつくることだった。
でも、リッカルド様にとっての、それが違うのなら。
私は、それに従うべきで、でも、本当に、いいのかな。
私が幸せになっても、いいの……?
◆◆◆
「……さて」
ソフィアが完全にいなくなるのを確認して、僕は、影に話しかけた。
「いるんだろう? ……悪魔」
影は、何も応えない。
「いや、こう呼んだ方がいいかな。『もう一人の僕』」
影が、揺れる。
躊躇っているかのようだ。
「自分だけ勝ち逃げなんてずるいじゃない。姿を現しなよ」
影が大きくゆらめいた。
そして、影の中から、ぼんやりとした姿を見せる。
徐々に実態を伴っていくその姿を見て、思わず笑った。
「やっぱり、君……、というか、僕か? 世界を渡ったんだね」
「話してくれたら、君を……嫌いになれるかも」
「!」
そうか、そういう方法もあるんだ。
私が楽になるためじゃなく。
リッカルド様に、嫌われるために。
「ねぇ、教えて、ソフィア。君は、僕に好かれると困った顔をするよね。だったらーー僕が君を嫌いになるために、教えて」
◇◇◇
全部、話した。
過去の私が、リッカルド様にしたことも。
悪魔のことも、全部。
「……なるほど」
リッカルド様は、私が話終わると、頷いた。
「そんなことがあったんだね」
リッカルド様は口を挟むことなく、最後まで聞いてくれた。
「話してくれてありがとう」
リッカルド様は微笑むと、私の手を握った。
「……あの?」
「僕のお願い……聞いてくれる?」
「私にできることなら」
リッカルド様が、私に死んで欲しいというなら、死ぬ。
それでも、許されるとは思っていないけれど。
「うん、だったら、明日は学園に来て。明日も明後日も、卒業するまで、ずっと」
「……え?」
学園にいく?
それはもちろん、リッカルド様のお願いなら、構わないけれど。
どうして、そんなことを。
「それで、学園を卒業したら……ううん、その後のことは、その時に伝えるね」
「わかりました。……それがリッカルド様の望みなら」
リッカルド様は頷くと、花を一輪手折り、私に差し出した。
「それから、ソフィア」
「……はい」
その花を受け取る。花からは、芳しい香りがした。
「僕は、君が好きだよ」
「……っ」
うそ、嘘だって。
私は許されないことしたのに。
それなのに。
「何度だって伝えるよ。僕は、ソフィアが好きだ。だからね……」
あとずさった私との距離を詰めて、リッカルド様は、微笑んだ。
「君を許さないことにする。だから、これから教えてね。どうしたら、君が幸せを感じるのか」
それは、私の幸せとは反対のことをしてくれる、ということ……?
「君は僕のそばで、幸せになるんだ。僕にいつか、許されるために」
「え?」
「君は許されたいんだろう? だったら、僕の願いごと、叶えてくれるよね」
でも、私にとってそんな都合のいいこと……。
「それが君が僕にできる、最善のことだよ」
「!! ……わかりました」
リッカルド様が決めたことなら、従うしかない。
「うん。……ソフィア。また、明日」
「また……明日」
リッカルド様は、ここで研究があるからと小屋の中へと入って行った。
邪魔はできない。
女子寮に戻るまで、ずっと、今日起きたことを考えていた。
私ができる最善のこと。
それは、リッカルド様が今度こそ笑える世界をつくることだった。
でも、リッカルド様にとっての、それが違うのなら。
私は、それに従うべきで、でも、本当に、いいのかな。
私が幸せになっても、いいの……?
◆◆◆
「……さて」
ソフィアが完全にいなくなるのを確認して、僕は、影に話しかけた。
「いるんだろう? ……悪魔」
影は、何も応えない。
「いや、こう呼んだ方がいいかな。『もう一人の僕』」
影が、揺れる。
躊躇っているかのようだ。
「自分だけ勝ち逃げなんてずるいじゃない。姿を現しなよ」
影が大きくゆらめいた。
そして、影の中から、ぼんやりとした姿を見せる。
徐々に実態を伴っていくその姿を見て、思わず笑った。
「やっぱり、君……、というか、僕か? 世界を渡ったんだね」
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