入れ替わったご令嬢は、竜王に溺愛される

夕立悠理

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学園生活の始まり

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何か、暖かいものが頬を舐めている。その暖かさを何故か懐かしく思いながら、微睡んでいると、大きな音が鳴り響いた。

 慌てて体を起こして、音源である、目覚まし時計を止める。

 時間を見ると、もう登校時間まで、15分を切っていた。
「うそ!?」
ちゃんと時間を設定していたはずなのに、おかしいな。泣きそうになりながら、身支度を整える。寮の朝食もとっくに終わってしまっただろう。お腹の虫が悲しく鳴いた。

 「いきましょう、オカト!」
このままでは遅刻してしまう。はしたないけれど、小走りになりながら、校門まで急ぐ。

 「ごめんなさい。ノーハルトには、後で必ず会わせてあげるから」
私のクラスは昨日の時点で確認したけれど、ノーハルトが何組なのか、わからない。けれど、ノーハルトのクラスを確認するだけの時間はなかった。

 始業開始のベルがなる前になんとか、教室に滑り込むことができた。

 ぜぇはぁ、と侯爵令嬢だったときだったらあり得ない荒い息をつきながら、空いていた席に座ると、隣の席の人に笑われた。
「フレーネ、いい走りぶりだったな」
聞き覚えのある声に、思わず顔を上げると、ノーハルトだった。

 ノーハルトと私は同じクラスだったようだ。オカトが鳴きながら、ノーハルトの膝に飛び乗った。

 「こいつの面倒も見てくれたようだな、ありがとう」
「いえ」
オカトのことよりも、ノーハルトは窓際の席であり、校門から走っている私の姿がさぞ、よく見えただろうことが気になってしまう。恥ずかしくなって、真っ赤になってしまった。

 「ここ、はねてる」
ノーハルトに優しく、髪に触れられて固まる。ノーハルトはただの親切だとわかっているのに、変に緊張する。

 「……っと、悪い。女性の髪をみだりに触るものじゃないな」
そう言って、ぱっとノーハルトは手を離した。優しい手が離れるのが少しだけ、名残惜しくて、視線で追うと、ノーハルトの海のような青い瞳と目があった。

 世界が切り取られてしまったように、静かだ。
 ──どこまでも深い青に吸い込まれてしまいそう。

 なんて幻想は、始業開始のベルが鳴ったことによって立ち消えた。

 慌てて視線をそらし、教室に入ってきた教師の言葉に耳を傾ける。

 ──そんな感じで、学園生活は始まった。
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