死んだはずの悪役聖女はなぜか逆行し、ヤンデレた周囲から溺愛されてます!

夕立悠理

文字の大きさ
2 / 3
一周目

悪役聖女、義兄にトラウマを植え付ける 1

しおりを挟む
 三日三晩寝込んだ、翌朝。


 わたしが前世の記憶を思い出してから、まず目を付けたのは義兄のトーラスだった。

 トーラスは、澄みきった青の瞳に、漆黒の髪をしている。金の瞳に紫の髪をしているわたしとは全く似ていない。

 それもそのはず。

 トーラスは分家からやってきた義理の兄だからだ。

 そんなわたしがトーラスに植え付けるトラウマは……全く思い出せない。

 かといって他の攻略対象者たちのトラウマが思い出せるかと言ったら、そうではないのだけれど。

 なんにせよ、義兄のトーラスにトラウマを植え付けなればならない。

「どんなトラウマがいいかな……」

 わたしが自室で唸っていると、扉がノックされた。
「はい」

 扉を開けると、義兄のトーラス……トーラスお義兄様が立っていた。

「……おはよう」

 わざわざ朝の挨拶をしにきたみたいだ。
 でも攻略対象者なだけあって、その造形は整っているはずだけど、覇気がない。

 でも、今世の記憶を思い返してみれば、このぼんやりとした顔は、いつものことだった。

「おはようございます、トーラスお義兄様」

 わたしは、トーラスお義兄様の開いているんだか、開いていないんだが、よくわからない瞳を見つめながら、挨拶をする。

「……うん」

 わたしの挨拶を聞くと、満足したのか、トーラスお義兄様は、帰っていった。

 その後ろ姿を見つめながら、わたしはある決心を固めていた。

 何事も最初が肝心という。

 あのトーラスお義兄様の瞳をぱっちりと開かせてみせるのだ!

 できれば、トラウマに怯え、毎日開くようになるように!

「そうときまれば、さっそくトラウマ作りよね……」

 たとえば、トーラスお義兄様が苦手なものを大量に用意するのはどうかな。

 そして、それをいつもいつも理由を付けて、わたしがトーラスお義兄様に押し付けるのだ!

 我ながらナイスアイディアじゃない?

 なーんだ、悪役聖女役も以外と簡単かも!

 わたしは上機嫌で、料理長のゼファの元へと向かった。
「ねぇ、ゼファ」
「どうしましたか、ロイゼお嬢様」

 ゼファは、わたしに気づくと、にこっと笑ってくれた。

 ゼファは体格のせいで、怖がられることが多いけど、本当はとっても優しいのよね。

 わたしはゼファにあるものを頼んだ。

「任せてください、ロイゼお嬢様」
 
◇◇◇

 夕食の時間になった。
「具合はどうだい、ロイゼ」
 お父様が金の瞳を細めて心配そうな顔で尋ねてきた。
「お父様、だいぶよくなりましたが……」
 わたしはそっと、夕食を指差した。

「まだ、ピーマンだけ食べられないほど、体調が悪いです」

 今日の夕食は、ピーマンの肉詰めをもっとおしゃれにしたようなものだ。

「あら、まぁ、そうなの」
 わたしの言葉に驚いたように、お母様が、声を上げる。


「はい。なので……」

 わたしは、ぼんやりした顔を――わかりにくいけど、苦手なピーマンを前にして、少し歪めている――トーラスお義兄様を見た。

「トーラスお義兄様、食べてもらえませんか?」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

乙女ゲーの世界に聖女様として召喚されたけど興味がないので妹に譲ります

ゆずぽんず
恋愛
ある日、ユウとチカの姉妹が乙女ゲームの世界に聖女様として召喚された。 好きなゲームの世界に入れたと喜ぶ妹のチカ。 本来、聖女様として召喚されるのだったの一人。どちらかが死に、召喚された。 妹のことが大切な姉のユウは、妹がこの世界にいたいのならば私が偽物となってこの世界から消えようと決意する。 *乙女ゲーマーによる小説です。乙女ゲーになろう設定混ぜ込んでみました。 *乙女ゲーによくある設定(共通ルートやバッドエンドなどのよくある設定)の説明があります。分かりにくかったらすみません。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

伯爵令嬢が婚約破棄され、兄の騎士団長が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 2月15日付で、誤字脱字の修正および一部表現の見直しを行いました。 ただし、記載内容の趣旨に大きな変更はございません。 引き続きよろしくお願いいたします。

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

処理中です...