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一周目
悪役聖女、義兄にトラウマを植え付ける 1
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三日三晩寝込んだ、翌朝。
わたしが前世の記憶を思い出してから、まず目を付けたのは義兄のトーラスだった。
トーラスは、澄みきった青の瞳に、漆黒の髪をしている。金の瞳に紫の髪をしているわたしとは全く似ていない。
それもそのはず。
トーラスは分家からやってきた義理の兄だからだ。
そんなわたしがトーラスに植え付けるトラウマは……全く思い出せない。
かといって他の攻略対象者たちのトラウマが思い出せるかと言ったら、そうではないのだけれど。
なんにせよ、義兄のトーラスにトラウマを植え付けなればならない。
「どんなトラウマがいいかな……」
わたしが自室で唸っていると、扉がノックされた。
「はい」
扉を開けると、義兄のトーラス……トーラスお義兄様が立っていた。
「……おはよう」
わざわざ朝の挨拶をしにきたみたいだ。
でも攻略対象者なだけあって、その造形は整っているはずだけど、覇気がない。
でも、今世の記憶を思い返してみれば、このぼんやりとした顔は、いつものことだった。
「おはようございます、トーラスお義兄様」
わたしは、トーラスお義兄様の開いているんだか、開いていないんだが、よくわからない瞳を見つめながら、挨拶をする。
「……うん」
わたしの挨拶を聞くと、満足したのか、トーラスお義兄様は、帰っていった。
その後ろ姿を見つめながら、わたしはある決心を固めていた。
何事も最初が肝心という。
あのトーラスお義兄様の瞳をぱっちりと開かせてみせるのだ!
できれば、トラウマに怯え、毎日開くようになるように!
「そうときまれば、さっそくトラウマ作りよね……」
たとえば、トーラスお義兄様が苦手なものを大量に用意するのはどうかな。
そして、それをいつもいつも理由を付けて、わたしがトーラスお義兄様に押し付けるのだ!
我ながらナイスアイディアじゃない?
なーんだ、悪役聖女役も以外と簡単かも!
わたしは上機嫌で、料理長のゼファの元へと向かった。
「ねぇ、ゼファ」
「どうしましたか、ロイゼお嬢様」
ゼファは、わたしに気づくと、にこっと笑ってくれた。
ゼファは体格のせいで、怖がられることが多いけど、本当はとっても優しいのよね。
わたしはゼファにあるものを頼んだ。
「任せてください、ロイゼお嬢様」
◇◇◇
夕食の時間になった。
「具合はどうだい、ロイゼ」
お父様が金の瞳を細めて心配そうな顔で尋ねてきた。
「お父様、だいぶよくなりましたが……」
わたしはそっと、夕食を指差した。
「まだ、ピーマンだけ食べられないほど、体調が悪いです」
今日の夕食は、ピーマンの肉詰めをもっとおしゃれにしたようなものだ。
「あら、まぁ、そうなの」
わたしの言葉に驚いたように、お母様が、声を上げる。
「はい。なので……」
わたしは、ぼんやりした顔を――わかりにくいけど、苦手なピーマンを前にして、少し歪めている――トーラスお義兄様を見た。
「トーラスお義兄様、食べてもらえませんか?」
わたしが前世の記憶を思い出してから、まず目を付けたのは義兄のトーラスだった。
トーラスは、澄みきった青の瞳に、漆黒の髪をしている。金の瞳に紫の髪をしているわたしとは全く似ていない。
それもそのはず。
トーラスは分家からやってきた義理の兄だからだ。
そんなわたしがトーラスに植え付けるトラウマは……全く思い出せない。
かといって他の攻略対象者たちのトラウマが思い出せるかと言ったら、そうではないのだけれど。
なんにせよ、義兄のトーラスにトラウマを植え付けなればならない。
「どんなトラウマがいいかな……」
わたしが自室で唸っていると、扉がノックされた。
「はい」
扉を開けると、義兄のトーラス……トーラスお義兄様が立っていた。
「……おはよう」
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でも攻略対象者なだけあって、その造形は整っているはずだけど、覇気がない。
でも、今世の記憶を思い返してみれば、このぼんやりとした顔は、いつものことだった。
「おはようございます、トーラスお義兄様」
わたしは、トーラスお義兄様の開いているんだか、開いていないんだが、よくわからない瞳を見つめながら、挨拶をする。
「……うん」
わたしの挨拶を聞くと、満足したのか、トーラスお義兄様は、帰っていった。
その後ろ姿を見つめながら、わたしはある決心を固めていた。
何事も最初が肝心という。
あのトーラスお義兄様の瞳をぱっちりと開かせてみせるのだ!
できれば、トラウマに怯え、毎日開くようになるように!
「そうときまれば、さっそくトラウマ作りよね……」
たとえば、トーラスお義兄様が苦手なものを大量に用意するのはどうかな。
そして、それをいつもいつも理由を付けて、わたしがトーラスお義兄様に押し付けるのだ!
我ながらナイスアイディアじゃない?
なーんだ、悪役聖女役も以外と簡単かも!
わたしは上機嫌で、料理長のゼファの元へと向かった。
「ねぇ、ゼファ」
「どうしましたか、ロイゼお嬢様」
ゼファは、わたしに気づくと、にこっと笑ってくれた。
ゼファは体格のせいで、怖がられることが多いけど、本当はとっても優しいのよね。
わたしはゼファにあるものを頼んだ。
「任せてください、ロイゼお嬢様」
◇◇◇
夕食の時間になった。
「具合はどうだい、ロイゼ」
お父様が金の瞳を細めて心配そうな顔で尋ねてきた。
「お父様、だいぶよくなりましたが……」
わたしはそっと、夕食を指差した。
「まだ、ピーマンだけ食べられないほど、体調が悪いです」
今日の夕食は、ピーマンの肉詰めをもっとおしゃれにしたようなものだ。
「あら、まぁ、そうなの」
わたしの言葉に驚いたように、お母様が、声を上げる。
「はい。なので……」
わたしは、ぼんやりした顔を――わかりにくいけど、苦手なピーマンを前にして、少し歪めている――トーラスお義兄様を見た。
「トーラスお義兄様、食べてもらえませんか?」
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