84 / 147
6章.ダイン獣王国編
76話.驚愕
しおりを挟むカルロの話を驚愕の表情で聞いていたクロムとアキナ。
カルロたち竜人族4人はこの世界において圧倒的な強者と言ってもよいほどの強者である。
そのカルロたちがここまで一方的にやられた上に、ルームの存在が無ければおそらく逃げることすら無理であったであろう事実に驚愕した。
確かにミツルが驚異的な素早さを持つことは聞いていた、しかしただ素早いだけの奴と心のどこかでミツルを見下していたことを痛感するのであった。
「カルロ、すまない。
これは完全に俺の油断と慢心による判断ミスだ……」
「兄貴……」
「主よ、これは我らの慢心。
主が自分を責める必要はありません」
目を覚ましたビネガはクロムたちの元に現れ、カルロの話の続きをし始めた。
カルロをルームに押し込んだあとのビネガは二人を連れて自分もルーム内に避難するつもりであった。
ミツルに目眩まし目的で火球を数発放つと同時に二人のもとに駆け付けるビネガ。
二人を抱えようとした瞬間にビネガの顎が打ち上げられた。
ビネガは何が起きているのか理解できないまま宙に浮かび上がり、さらに顔を右方向へと吹き飛ばされたのだった。
吹き飛ばされたあとにビネガは察したのである、ミツルに蹴り上げられてさらに横に蹴り飛ばされたのであると。
「ん~、君たちは弱いね。
でもさっきの彼が急に消えたのは何かの<技能>…… なのかな」
不敵な笑みを浮かべながらそんなことを言うミツルと目が合うとビネガは心底恐怖を感じ、気が付いた時にはルーム内に逃げ込んでいた。
全てを語り終えたビネガは力なくクロムたちに頭を下げる、あの二人を見捨てて逃げてしまったと。
クロムはそんなビネガに対して今は休んでくれということとあとは任せてほしいということを告げるのであった。
カルロとビネガをルーム内で休息させてから狐人族の集落に戻ったクロムとアキナは、黙っていた。
お互いに何から話すべきなのかを決めかねていたのである。
そしてアキナがその静寂を破るのであった。
「あの二人の救出…… 行かないとだね」
「あぁ、だが無策で行けばあいつらの二の舞だろうな」
クロムはどう攻めるのかを決めかねていた。
ただ砦を陥落するだけであれば、氷なり雷なりで物量で攻め込み続ければきっと問題なくできるであろう。
しかし二人が囚われていると思われる砦を一気に陥落させてしまうわけにはいかないのである。
そして一つの案を思いついたクロムはナビに尋ねるのであった。
「なぁ、俺の――」
ナビの返答で自分の作戦に手応えを感じたクロム。
その作戦を聞いたアキナはその作戦の内容に驚愕し反対したのだが、特に代案がでてくるわけでもなく……
クロムに押し切られる形で渋々作戦に同意したアキナはクロムを心配そうに見つめるのであった。
「大丈夫、上手くいくさ。
俺はアキナと離れる気はない、だから無事帰ってくるさ。
今回は留守番とあの二人の看病を任せた」
アキナはおどけてそういうクロムにこれ以上文句をいうことも出来ず、ただ自分の役目に思いを寄せるのであった。
「もぉ!!!
ちゃんと私のところに帰ってきてね!!!」
アキナの腹が据わった声を聞いたクロムは笑顔で告げるのであった、作戦開始だと。
ルームから飛び出し砦前に姿を現したクロム。
ソイソたちの姿もミツルの姿も共に発見出来なかったクロムは砦に向けて先制攻撃を開始したのである。
砦の上空を覆い尽くすような巨大な氷の塊を発生させて、そこから五月雨のように無数の氷雹を砦に向けて発射させたのだった。
クロムの放つ氷雹によって、みるみる崩壊していく砦。
クロムはこの攻撃によって二人が致命傷を負わないこと祈りながらも一切手を抜かずに氷雹を振り続けさせるのであった。
そして砦もそろそろ半壊かという頃にクロムは甲高い金属音のような音とともに目の前で転んでいる男を視認するのであった。
ミツルをおびき出すことに成功したクロムは、奇襲に失敗し目の前で尻餅をついているミツルを見下ろしながら言うのであった。
「てめーがミツルか、お前は絶対に許さないからな!!」
31
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる