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6章.ダイン獣王国編
104話.都市国家ミレストン
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クロムたちが退室した後の謁見の間は異様な緊張感と静寂が支配していた。
そこにいる者は獣王ダインと勇者タケルの二人のみである。
お互いに何をどう言葉にすればよいのかわからずに、その場に佇むしかなかった。
「アイツを城に呼び出したことが間違いだったのかもしれぬな……
当分アイツの顔は見たくないわい……」
静寂を破ったのはダインのボヤキであった。
本来であれば臣下に聞かせるべきではないような内容なのであるが、それを実際に聞いたタケルは、こういったダインの素の部分を垣間見ることで自分が仕える王の人間性を感じて親近感を覚えるのであった。
「当分は僕のほうで対応しとくさ、ダイン」
「ふんっ、やっと口調を元に戻しおったな」
「公的な場では主従関係だからね、僕らはさ。
だけど二人しかいないこの場では友として話すさ、当然ね」
先ほどまでの緊張感と静寂がなくなった謁見の間からは、二人の笑い声が響いていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ミレストンに到着したクロムたちは忙しかった。
クロムは悪魔襲撃で避難していた街の責任者と面会し、街が譲渡されここを都市国家としてダイン獣王国から独立させることを説明するところから始めた。
それと並行してアキナたちはその事実を街中で流布していた、悪魔を退けた英雄クロムが獣王ダインよりこの街を譲渡され、この街で建国するということを。
その結果、当然ながら街は混乱したのだが……
悪魔を撃退できずにいた獣王ダインよりもその悪魔を撃退したクロムのほうが庇護下に入るに値する存在であるのではないか、という考えが世論の主流になるまでにさほど時間はかからなかった。
このことはダインが国民に強いてきたルール【弱肉強食】の考え方が国民に染みついていたという証拠だと感じたクロムは、そこに痛烈な皮肉を感じざるえなかった。
その後、クロムたちは街の中央に存在する噴水広場に街の皆を集めて宣言するのであった。
【都市国家ミレストン】の建国と街を復興させることを。
宣言するクロムの隣にはアキナとカルロが立ち、<ダイン獣王国のダイン王><カロライン王国のマギヌス王><自由自治国家ルインの自治議会議長のサラカ>、この3名が発行したクロムの建国を承認する書類を高々と掲げるのだった。
そしてクロムの建国宣言は街の人々の大歓声で迎えられることとなった。
無事に建国宣言を終えたクロムはルインの防衛をゴランとトーマとギンに任せ、3人以外の主要な仲間たちを集めるのだった。
悪魔王サタンの軍勢を迎え撃つための準備をしなければならないのである。
バロンが言うには猶予は一カ月程度しかないということだった。
クロムは仲間たちに力を分け与えた上で、その力を馴染ませて悪魔たちと対等以上に戦えるように修行してこいと告げ、ミレストンにはクロムとアキナだけが残るのであった。
狐人族の里を出てからここに至るまでの怒涛の展開を思い出しながら、互いに相手を称える二人。
「お疲れ様ね、クロム。
無視しないでっていくら言っても無理ばっかりするんだから……」
「ごめんごめん、俺も望んでしてるわけじゃないんだけどなぁ」
「そう? いつも自分で首突っ込んでるわよ?」
「自覚はないんだよね、それ……
でも絶対にアキナの隣からは離れないよ。
そして俺はそのために絶対に負けないし、死なないさ」
「もぉ……、クロムが強いのは知ってるよ?
でも本当に心配なんだからね!!!」
「ありがとうな、俺はそんなアキナがそばに居てくれるから強くいられるし、強くなれるんだよ」
クロムは抱きしめられて赤面しているアキナをより一層強く抱きしめながらそう言うのであった。
この先に待ち受ける激動が今までのものとは比較にならない規模になることを感じているクロムであったが、せめてこの瞬間だけはすべてを忘れてアキナとの時間を大切にすることを決めるのだった。
そして、クロムはアキナにそっと口づけをし、優しくも甘いその時間は日付を超えてもなお続くのであった。
そこにいる者は獣王ダインと勇者タケルの二人のみである。
お互いに何をどう言葉にすればよいのかわからずに、その場に佇むしかなかった。
「アイツを城に呼び出したことが間違いだったのかもしれぬな……
当分アイツの顔は見たくないわい……」
静寂を破ったのはダインのボヤキであった。
本来であれば臣下に聞かせるべきではないような内容なのであるが、それを実際に聞いたタケルは、こういったダインの素の部分を垣間見ることで自分が仕える王の人間性を感じて親近感を覚えるのであった。
「当分は僕のほうで対応しとくさ、ダイン」
「ふんっ、やっと口調を元に戻しおったな」
「公的な場では主従関係だからね、僕らはさ。
だけど二人しかいないこの場では友として話すさ、当然ね」
先ほどまでの緊張感と静寂がなくなった謁見の間からは、二人の笑い声が響いていた。
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ミレストンに到着したクロムたちは忙しかった。
クロムは悪魔襲撃で避難していた街の責任者と面会し、街が譲渡されここを都市国家としてダイン獣王国から独立させることを説明するところから始めた。
それと並行してアキナたちはその事実を街中で流布していた、悪魔を退けた英雄クロムが獣王ダインよりこの街を譲渡され、この街で建国するということを。
その結果、当然ながら街は混乱したのだが……
悪魔を撃退できずにいた獣王ダインよりもその悪魔を撃退したクロムのほうが庇護下に入るに値する存在であるのではないか、という考えが世論の主流になるまでにさほど時間はかからなかった。
このことはダインが国民に強いてきたルール【弱肉強食】の考え方が国民に染みついていたという証拠だと感じたクロムは、そこに痛烈な皮肉を感じざるえなかった。
その後、クロムたちは街の中央に存在する噴水広場に街の皆を集めて宣言するのであった。
【都市国家ミレストン】の建国と街を復興させることを。
宣言するクロムの隣にはアキナとカルロが立ち、<ダイン獣王国のダイン王><カロライン王国のマギヌス王><自由自治国家ルインの自治議会議長のサラカ>、この3名が発行したクロムの建国を承認する書類を高々と掲げるのだった。
そしてクロムの建国宣言は街の人々の大歓声で迎えられることとなった。
無事に建国宣言を終えたクロムはルインの防衛をゴランとトーマとギンに任せ、3人以外の主要な仲間たちを集めるのだった。
悪魔王サタンの軍勢を迎え撃つための準備をしなければならないのである。
バロンが言うには猶予は一カ月程度しかないということだった。
クロムは仲間たちに力を分け与えた上で、その力を馴染ませて悪魔たちと対等以上に戦えるように修行してこいと告げ、ミレストンにはクロムとアキナだけが残るのであった。
狐人族の里を出てからここに至るまでの怒涛の展開を思い出しながら、互いに相手を称える二人。
「お疲れ様ね、クロム。
無視しないでっていくら言っても無理ばっかりするんだから……」
「ごめんごめん、俺も望んでしてるわけじゃないんだけどなぁ」
「そう? いつも自分で首突っ込んでるわよ?」
「自覚はないんだよね、それ……
でも絶対にアキナの隣からは離れないよ。
そして俺はそのために絶対に負けないし、死なないさ」
「もぉ……、クロムが強いのは知ってるよ?
でも本当に心配なんだからね!!!」
「ありがとうな、俺はそんなアキナがそばに居てくれるから強くいられるし、強くなれるんだよ」
クロムは抱きしめられて赤面しているアキナをより一層強く抱きしめながらそう言うのであった。
この先に待ち受ける激動が今までのものとは比較にならない規模になることを感じているクロムであったが、せめてこの瞬間だけはすべてを忘れてアキナとの時間を大切にすることを決めるのだった。
そして、クロムはアキナにそっと口づけをし、優しくも甘いその時間は日付を超えてもなお続くのであった。
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