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商会立ち上げ編
第30話 マサムネは計画を進める
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──ログアウトしました
West India Companyからログアウトしてバーチャルマイルームに戻ったマサムネをP.AIの1人である花木蘭が恭しく一礼して出迎える。
「主上おかえりなさいませ」
中華風の甲冑を身にまとい、長い黒髪を頭上で1つの団子にまとめて布で包んだ凛々しい顔立ちの20代前半の容姿の男装の麗人。中国隋朝から唐朝への過渡期を舞台にした歴史シミュレーションゲーム【隋唐演義─風は万里を駆けゆく─】におけるマサムネのアバターであり、通称2代目マサムネコと呼ばれる存在である。
「ああ、ただいま木蘭。さっそくだけどダイジェストは出来てる?」
「は。こちらにございまする」
木蘭がバーチャルディスプレイを操作して、本日West India Company30日目のダイジェストを早送りで再生してみせる。それをチェックしたマサムネは内容に満足してさっそくデータを自身のチャンネルにUPした。たちまち再生数カウンターが回り始める。
「今日は色々あったから編集大変だったでしょ。でも、上手にまとめてくれてあるね」
「勿体なきお言葉にございます。同僚たちも助力してくれましたゆえ」
「そかそか。これならこっちはもう完全に任せて大丈夫そうだね。リスナーのみんなからも最近はダイジェスト上がるのが早くて嬉しいって声も届いてるからね。……じゃあそろそろ、次のステップに移ろうか」
それを聞いた木蘭が期待に目を輝かせる。
「主上、ついにあの計画を実行されるのでございますか?」
「うん。ノブナが言い出した時はどうしたもんかと思ったけど、みんなの希望とリスナーのみんなにもっと楽しんでもらうことを考えるとやっぱりこれがベストかなって思うし。だから今日の生放送の最後に発表しようと思うんだ。他のみんなにも伝えて全員に正装するよう伝えておいてもらえる?」
「……っ! 御意!」
恭しく一礼して弾んだ足取りで茶室を出てゆく木蘭の様子に、マサムネは自分の決定はきっと間違っていないという確信を強くするのだった。
それからマサムネは居住まいを正し、木蘭が起動したままのホロディスプレイを操作して【ON AIR】をタップして口を開いた。
「やあみんな! ゲーム実況者のマサムネだよ! G.tubeの俺のチャンネル【その時、歴史を動かした!】にようこそ! West India Companyのプレイ30日目を振り返りながら解説していくよ!」
──マサムネ君おつおつ
──最近マジでログアウトから生放送開始まで早くなったな
──すでにダイジェストも上げてるというねw
──30日目はめっちゃ濃かったな
──一気に話が動いたよね
──情報過多だったから整理したいわ
──……
「確かに濃い1日だったね。ここ最近は干し果物を作って街に売りに行って、孤児院で子供たちを教えたり、街を散策して情報収集したり、奴隷小屋の増築をしたりってぐらいだったからねぇ」
──いやいや日常回も普通におもろいで
──異世界旅行してる感覚で新鮮だよ
──サミエラ先生の授業楽しいよね
──干し果物作りや奴隷小屋の増築もクラフト動画見てるみたいで楽しいよ
──サミエラの屋台での叩き売りがどちゃすこ
──アイドルの握手会のノリだよねぇ
──……
「そかそか。楽しんでもらえてるなら良かったよ。じゃあ、いつも通り1日の内容を振り返りながら解説してくね。あ、今日は最後に発表することがあるからよかったら最後まで視聴してね」
──ざわざわ
──これは最後まで観るしか
──く、最初だけ観て落ちようと思ってたのになんという孔明の罠
──楽しみすぎる
──wktk
──……
マサムネがさっそく早朝にサミエラがロッコと荷馬車でサンファンの街に向かうシーンを再生する。
「サミエラが始めてすっかりサンファンで人気になった干し果物。今やロッコのアレムケル農園を巻き込んでの一大事業になってるんだけど、サミエラは更に先を見据えて経営の多角化のために仕事を任せられる信頼できる奴隷を購入することを検討してるんだよね」
──ロッコがドン引きw でもなんだかんだでロッコも楽しんでるよね
──先を見据えた経営戦略が凄いですね……
──元々フェイクとしての事業だったのに当たったと見るや即座にアレムケル農園を巻き込んで軌道修正するサミエラの決断力!
──バンシーのエンブレムを前面に押し出してのブランド化への流れが興味深かった
──流行に乗るんじゃなくて流行を作り出すってワクワクすんね
──……
サンファンの交易広場に到着し、屋台小屋を借りて商売の準備を始め、朝の4点鐘の朝市開始と同時に一斉にサミエラの屋台に群がる客たちのシーンではマサムネが苦笑ぎみに解説する。
「これね、4点鐘が鳴り終わると同時にドドドドって足音が押し寄せてくるんだよね。長篠で武田騎馬軍団の突撃を受けた時の記憶が甦ったよ」
──ぶふっwww
──こっわw
──このマンゴーおばちゃん、もうすっかり覚えたわw
──トップグループはほぼ固定メンバーだよね
──サミエラをお姉様呼ばわりのこのサミエラ親衛隊のチームプレイやばない?
──ほんそれ! ほかの女の子が周りを妨害してグループの1人がローテでサミエラのとこに真っ先に駆けつけてるよな! マンゴーおばちゃんには負けるけど
──サミエラさん、客の相手上手すぎ!
──握手会の素質あるね
──てか今まで気にしてなかったけど、トーマス爺さん何気に激戦区のトップグループじゃねぇかw
──なにこのエレガントでダイナミックな動き!
──フェンシングやってるのかな?
──……
コメント欄が大いに盛り上がりつつ、マサムネが適時解説を入れつつ、完売御礼で商売が終わった昼前。ロッコと店の片付けをしているサミエラのもとに奴隷商人のジョージ・パーシグが近づいてきて話しかけてくる。
「……このイングランド公認の奴隷商人ジョージ・パーシグ氏との出会いはなかなか衝撃的だったね。まさかカリブ海で雑賀の八咫鴉紋の種子島を見せられるとは思わなかったからね」
──まさかの織田信菜時代の慣れ親しんだアイテム! チャンネル間違えたかとw
──パーシグさんが古物商じゃなくて良かったよね
──あの小太刀とか家宝レベルのめっちゃ業物じゃんね
──忍刀と十手とか、もうサミエラがわざと知らないふりしてるのがツボったわw 鉤の付いた鉄の棒ってw
──雑賀の鉄砲傭兵と忍者の奴隷とか絶対買いじゃん!
──さも相手の要望に応じたような素振りで値引かせるとか悪女やのぅ
──交渉上手いよなぁ
──ジョージ氏はこの時代じゃ珍しい人格者ですね
──……
「まあサミエラは日本語はネイティブスピーカーだから日本人奴隷なら絶対買いだよね。この時代のカリブ海で日本語なんてそれだけで暗号に等しいわけだし。それに、彼らの私物から由緒正しい武家の出身者と忍者と雑賀衆の関係者だってことは読み取れていたわけだから買わない理由がないよね」
──ジャパニーズ・ニンジャが登場するとか最高すぎるだろ
──成功者は妬まれるから戦闘力のある護衛は欲しいところ
──情報収集や情報操作でも活躍してくれるかな
──狙撃主の能力も気になるよね
──サムライはどんな奴かな
──……
「とりあえず奴隷たちのことは後にして、ジョージ氏に屋台小屋を引き渡して、夕方の4点鐘に改めて交易所で落ち合う約束をしたサミエラはロッコと一度別れて教会に向かうよ。あ、ちなみにロッコは仕入れた果物を積んだ荷馬車で一度農園に帰って、荷物を降ろして空荷になった荷馬車でもう一度戻ってくる予定ね。買い取る予定の奴隷たちは壊血病だっていう話だから荷馬車に乗れるようにって配慮だね」
──ロッコ優しい……いや、この場合はサミエラの配慮かな
──荷物満載の荷馬車の荷台には人は乗せれんもんな
──そもそも壊血病に効く干し果物を作ってるから壊血病なぞ恐れるに足りず
──もうこの時点でサミエラに買われる奴隷は幸せやん!
──結果的には人数増えるからグッジョブ( ̄▽ ̄)b
──ネタバレ禁止ーっ!
──俺もサミエラ様に飼われたいハァハァ
──うわっヘムタイがおるで!
──……
【作者コメント】
歴史小説で一番難しいポイントは何か? それはほとんどの読者がその時代のことをほとんど知らないという点にあります。なんならその小説で初めてその時代に触れる場合も少なくありません。逆に作者は専門家レベルで知識があることが求められます。それでいて学術書や論文ではなくあくまで娯楽小説なのですからその知識を分かりやすく面白く作中に反映しなければなりません。
それでもまだ自国の歴史なら学校での歴史教育という共通の土台がありますが、これが外国となるとますますハードルが上がります。
ましてや帆船時代、日本は鎖国中でやっと開国した頃には時代は蒸気船時代。そもそも帆船文化がないのです。そんな日本において18~19世紀の帆船小説はぶっちゃけ人気がありません。それも当然。イギリスなんかの帆船小説は読者がある程度の帆船の知識がある前提で書かれているので日本語に訳しただけでは難しすぎるのです。「上手回し開始だ! 下桁を引き込め! 詰め開き急げ! 面舵一杯!」どうです? 帆船の知識がある読者にとってはワクワクする一文ですが大抵の読者にはサッパリだと思います。
なので、日本で本格帆船小説を初見の読者に楽しんでもらうためには解説役は絶対に必要だと前々から思っておりました。そんなわけでこの小説はあえてこういうスタイルを採用しています。
他にも新しい試みを色々導入していますので引き続きお楽しみいただけると幸いです。
【登場人物紹介・花木蘭】
中国隋朝の皇帝・煬帝による高句麗征伐軍に召集された体の不自由な父に代わり、女の身でありながら父の鎧を纏い、花家の長男として従軍する。煬帝の気まぐれな采配によって高句麗征伐軍は自壊し、動員された兵士の多くはそのまま反乱軍となって各地で治安を脅かすようになるが、木蘭自身は隋軍に留まり、名将・張須陀の副官として反乱軍討伐で活躍する。張須陀の戦死後も木蘭は斜陽の隋を立て直そうと奮闘するがその努力はついに実らず、煬帝の度重なる悪政によりついに隋朝は滅亡し、反乱軍の最大勢力が唐朝を興すに至る。かつての敵に仕えることを良しとしなかった木蘭は男装を解き、故郷で静かに余生を送る。
【隋唐演義─風は万里を駆けゆく─】は1人プレイ用の歴史シミュレーションゲームでありながら、プレイヤーは高句麗征伐軍に強制徴募された下っぱの兵としてスタートするので、歴史の重要な舵取りには一切関わることはできず、武勲を立てて出世して隋朝の延命のためにどれほど努力しようと、トップの煬帝がすべてをぶち壊してしまうのでどうやっても隋は滅びることになる。かといって反乱軍である唐軍に加わっても中枢の権力は李一族が握っているので結局、歴史の重要な舵取りには関われない。大河ドラマならばともかく歴史シミュレーションゲームとしては最悪の糞ゲーと評されている。
マサムネ演じる花木蘭のプレイ動画は固定ファンには人気だったものの、ゲームそのものの評判の悪さにより、歴代マサムネコでも特に人気の初代(アーデルハイド)と4代目(信菜)に比べるとあまり知られていない不遇ヒロインである。
West India Companyからログアウトしてバーチャルマイルームに戻ったマサムネをP.AIの1人である花木蘭が恭しく一礼して出迎える。
「主上おかえりなさいませ」
中華風の甲冑を身にまとい、長い黒髪を頭上で1つの団子にまとめて布で包んだ凛々しい顔立ちの20代前半の容姿の男装の麗人。中国隋朝から唐朝への過渡期を舞台にした歴史シミュレーションゲーム【隋唐演義─風は万里を駆けゆく─】におけるマサムネのアバターであり、通称2代目マサムネコと呼ばれる存在である。
「ああ、ただいま木蘭。さっそくだけどダイジェストは出来てる?」
「は。こちらにございまする」
木蘭がバーチャルディスプレイを操作して、本日West India Company30日目のダイジェストを早送りで再生してみせる。それをチェックしたマサムネは内容に満足してさっそくデータを自身のチャンネルにUPした。たちまち再生数カウンターが回り始める。
「今日は色々あったから編集大変だったでしょ。でも、上手にまとめてくれてあるね」
「勿体なきお言葉にございます。同僚たちも助力してくれましたゆえ」
「そかそか。これならこっちはもう完全に任せて大丈夫そうだね。リスナーのみんなからも最近はダイジェスト上がるのが早くて嬉しいって声も届いてるからね。……じゃあそろそろ、次のステップに移ろうか」
それを聞いた木蘭が期待に目を輝かせる。
「主上、ついにあの計画を実行されるのでございますか?」
「うん。ノブナが言い出した時はどうしたもんかと思ったけど、みんなの希望とリスナーのみんなにもっと楽しんでもらうことを考えるとやっぱりこれがベストかなって思うし。だから今日の生放送の最後に発表しようと思うんだ。他のみんなにも伝えて全員に正装するよう伝えておいてもらえる?」
「……っ! 御意!」
恭しく一礼して弾んだ足取りで茶室を出てゆく木蘭の様子に、マサムネは自分の決定はきっと間違っていないという確信を強くするのだった。
それからマサムネは居住まいを正し、木蘭が起動したままのホロディスプレイを操作して【ON AIR】をタップして口を開いた。
「やあみんな! ゲーム実況者のマサムネだよ! G.tubeの俺のチャンネル【その時、歴史を動かした!】にようこそ! West India Companyのプレイ30日目を振り返りながら解説していくよ!」
──マサムネ君おつおつ
──最近マジでログアウトから生放送開始まで早くなったな
──すでにダイジェストも上げてるというねw
──30日目はめっちゃ濃かったな
──一気に話が動いたよね
──情報過多だったから整理したいわ
──……
「確かに濃い1日だったね。ここ最近は干し果物を作って街に売りに行って、孤児院で子供たちを教えたり、街を散策して情報収集したり、奴隷小屋の増築をしたりってぐらいだったからねぇ」
──いやいや日常回も普通におもろいで
──異世界旅行してる感覚で新鮮だよ
──サミエラ先生の授業楽しいよね
──干し果物作りや奴隷小屋の増築もクラフト動画見てるみたいで楽しいよ
──サミエラの屋台での叩き売りがどちゃすこ
──アイドルの握手会のノリだよねぇ
──……
「そかそか。楽しんでもらえてるなら良かったよ。じゃあ、いつも通り1日の内容を振り返りながら解説してくね。あ、今日は最後に発表することがあるからよかったら最後まで視聴してね」
──ざわざわ
──これは最後まで観るしか
──く、最初だけ観て落ちようと思ってたのになんという孔明の罠
──楽しみすぎる
──wktk
──……
マサムネがさっそく早朝にサミエラがロッコと荷馬車でサンファンの街に向かうシーンを再生する。
「サミエラが始めてすっかりサンファンで人気になった干し果物。今やロッコのアレムケル農園を巻き込んでの一大事業になってるんだけど、サミエラは更に先を見据えて経営の多角化のために仕事を任せられる信頼できる奴隷を購入することを検討してるんだよね」
──ロッコがドン引きw でもなんだかんだでロッコも楽しんでるよね
──先を見据えた経営戦略が凄いですね……
──元々フェイクとしての事業だったのに当たったと見るや即座にアレムケル農園を巻き込んで軌道修正するサミエラの決断力!
──バンシーのエンブレムを前面に押し出してのブランド化への流れが興味深かった
──流行に乗るんじゃなくて流行を作り出すってワクワクすんね
──……
サンファンの交易広場に到着し、屋台小屋を借りて商売の準備を始め、朝の4点鐘の朝市開始と同時に一斉にサミエラの屋台に群がる客たちのシーンではマサムネが苦笑ぎみに解説する。
「これね、4点鐘が鳴り終わると同時にドドドドって足音が押し寄せてくるんだよね。長篠で武田騎馬軍団の突撃を受けた時の記憶が甦ったよ」
──ぶふっwww
──こっわw
──このマンゴーおばちゃん、もうすっかり覚えたわw
──トップグループはほぼ固定メンバーだよね
──サミエラをお姉様呼ばわりのこのサミエラ親衛隊のチームプレイやばない?
──ほんそれ! ほかの女の子が周りを妨害してグループの1人がローテでサミエラのとこに真っ先に駆けつけてるよな! マンゴーおばちゃんには負けるけど
──サミエラさん、客の相手上手すぎ!
──握手会の素質あるね
──てか今まで気にしてなかったけど、トーマス爺さん何気に激戦区のトップグループじゃねぇかw
──なにこのエレガントでダイナミックな動き!
──フェンシングやってるのかな?
──……
コメント欄が大いに盛り上がりつつ、マサムネが適時解説を入れつつ、完売御礼で商売が終わった昼前。ロッコと店の片付けをしているサミエラのもとに奴隷商人のジョージ・パーシグが近づいてきて話しかけてくる。
「……このイングランド公認の奴隷商人ジョージ・パーシグ氏との出会いはなかなか衝撃的だったね。まさかカリブ海で雑賀の八咫鴉紋の種子島を見せられるとは思わなかったからね」
──まさかの織田信菜時代の慣れ親しんだアイテム! チャンネル間違えたかとw
──パーシグさんが古物商じゃなくて良かったよね
──あの小太刀とか家宝レベルのめっちゃ業物じゃんね
──忍刀と十手とか、もうサミエラがわざと知らないふりしてるのがツボったわw 鉤の付いた鉄の棒ってw
──雑賀の鉄砲傭兵と忍者の奴隷とか絶対買いじゃん!
──さも相手の要望に応じたような素振りで値引かせるとか悪女やのぅ
──交渉上手いよなぁ
──ジョージ氏はこの時代じゃ珍しい人格者ですね
──……
「まあサミエラは日本語はネイティブスピーカーだから日本人奴隷なら絶対買いだよね。この時代のカリブ海で日本語なんてそれだけで暗号に等しいわけだし。それに、彼らの私物から由緒正しい武家の出身者と忍者と雑賀衆の関係者だってことは読み取れていたわけだから買わない理由がないよね」
──ジャパニーズ・ニンジャが登場するとか最高すぎるだろ
──成功者は妬まれるから戦闘力のある護衛は欲しいところ
──情報収集や情報操作でも活躍してくれるかな
──狙撃主の能力も気になるよね
──サムライはどんな奴かな
──……
「とりあえず奴隷たちのことは後にして、ジョージ氏に屋台小屋を引き渡して、夕方の4点鐘に改めて交易所で落ち合う約束をしたサミエラはロッコと一度別れて教会に向かうよ。あ、ちなみにロッコは仕入れた果物を積んだ荷馬車で一度農園に帰って、荷物を降ろして空荷になった荷馬車でもう一度戻ってくる予定ね。買い取る予定の奴隷たちは壊血病だっていう話だから荷馬車に乗れるようにって配慮だね」
──ロッコ優しい……いや、この場合はサミエラの配慮かな
──荷物満載の荷馬車の荷台には人は乗せれんもんな
──そもそも壊血病に効く干し果物を作ってるから壊血病なぞ恐れるに足りず
──もうこの時点でサミエラに買われる奴隷は幸せやん!
──結果的には人数増えるからグッジョブ( ̄▽ ̄)b
──ネタバレ禁止ーっ!
──俺もサミエラ様に飼われたいハァハァ
──うわっヘムタイがおるで!
──……
【作者コメント】
歴史小説で一番難しいポイントは何か? それはほとんどの読者がその時代のことをほとんど知らないという点にあります。なんならその小説で初めてその時代に触れる場合も少なくありません。逆に作者は専門家レベルで知識があることが求められます。それでいて学術書や論文ではなくあくまで娯楽小説なのですからその知識を分かりやすく面白く作中に反映しなければなりません。
それでもまだ自国の歴史なら学校での歴史教育という共通の土台がありますが、これが外国となるとますますハードルが上がります。
ましてや帆船時代、日本は鎖国中でやっと開国した頃には時代は蒸気船時代。そもそも帆船文化がないのです。そんな日本において18~19世紀の帆船小説はぶっちゃけ人気がありません。それも当然。イギリスなんかの帆船小説は読者がある程度の帆船の知識がある前提で書かれているので日本語に訳しただけでは難しすぎるのです。「上手回し開始だ! 下桁を引き込め! 詰め開き急げ! 面舵一杯!」どうです? 帆船の知識がある読者にとってはワクワクする一文ですが大抵の読者にはサッパリだと思います。
なので、日本で本格帆船小説を初見の読者に楽しんでもらうためには解説役は絶対に必要だと前々から思っておりました。そんなわけでこの小説はあえてこういうスタイルを採用しています。
他にも新しい試みを色々導入していますので引き続きお楽しみいただけると幸いです。
【登場人物紹介・花木蘭】
中国隋朝の皇帝・煬帝による高句麗征伐軍に召集された体の不自由な父に代わり、女の身でありながら父の鎧を纏い、花家の長男として従軍する。煬帝の気まぐれな采配によって高句麗征伐軍は自壊し、動員された兵士の多くはそのまま反乱軍となって各地で治安を脅かすようになるが、木蘭自身は隋軍に留まり、名将・張須陀の副官として反乱軍討伐で活躍する。張須陀の戦死後も木蘭は斜陽の隋を立て直そうと奮闘するがその努力はついに実らず、煬帝の度重なる悪政によりついに隋朝は滅亡し、反乱軍の最大勢力が唐朝を興すに至る。かつての敵に仕えることを良しとしなかった木蘭は男装を解き、故郷で静かに余生を送る。
【隋唐演義─風は万里を駆けゆく─】は1人プレイ用の歴史シミュレーションゲームでありながら、プレイヤーは高句麗征伐軍に強制徴募された下っぱの兵としてスタートするので、歴史の重要な舵取りには一切関わることはできず、武勲を立てて出世して隋朝の延命のためにどれほど努力しようと、トップの煬帝がすべてをぶち壊してしまうのでどうやっても隋は滅びることになる。かといって反乱軍である唐軍に加わっても中枢の権力は李一族が握っているので結局、歴史の重要な舵取りには関われない。大河ドラマならばともかく歴史シミュレーションゲームとしては最悪の糞ゲーと評されている。
マサムネ演じる花木蘭のプレイ動画は固定ファンには人気だったものの、ゲームそのものの評判の悪さにより、歴代マサムネコでも特に人気の初代(アーデルハイド)と4代目(信菜)に比べるとあまり知られていない不遇ヒロインである。
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