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プロローグ
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誰かの腕にぶつかって意識が浮上する。
しまったうとうとしていたから、と思って体を起こすと隣に座っている河戸勝武君の二の腕に頭が寄りかかっていることに気付いた。
筋骨隆々、という言葉がぴったりなたくましい二の腕は柔道部だからというのもあるだろうが、それでも同い年のクラスメイトに比べてかなり太い。制服の下からでも分かるその固さに思わずびっくりとしてしまったのは内緒だ。短めに切り揃えられた黒髪はツンツンとして固そうで取っ付きにくい彼の性格とよく似ているなんて言ったら怒られるだろうか。ガタイのいい体と無愛想に引き締められた口のせいでクラスメイト達から遠巻きにされてはいるけれど、喋ってみたら結構いい人というのは知っていたので寄りかかって寝てしまったぐらいでは怒らないとは思いたい。願望が入っているけど。
今日は三泊四日の修学旅行の二日目だ。先ほどまで丸一日スキーの実習をしていたおかげかみんな疲れ果てていたのだろう。私も少し寝ていたぐらいだ。目を擦りながら辺りを見回しても誰かが話す声すら聞こえない。クラスの中心人物である光野杏さんや高宮苺さん、遠野鳳梨さんが黙っているということは寝てしまっている可能性が高い。今日こそ三田村君に告白するんだから、なんていっていたのは苺さんだったか。彼女の気合いの入り用と言ったら別のクラスの女子達が驚きと好奇の目で見るほどだ。
可愛らしく巻かれた髪を二つにゆるく結んで、いつも以上にぱっちりさせた目は確かに可愛かった。生徒指導の先生に怒られていたけどね。
冬の北海道で観光やスキーをするのが目的のこの旅行は既に数ヶ月前からその片鱗をのぞかせていた。やれ誰と付き合うとか、誰と一緒のグループがいいとか、そんなことを話しながら計画を立てる。その空気に少し乗れていなかったけれど、ざくろちゃんや久しぶりに会う棗ちゃんとお泊まりは結構楽しみだった。一日目の夜、早々にレポートを書いてお互いの時間を楽しんでいた私達が見回りの先生にみんながあんた達みたいにいい子だったらいいんだけどなんて言われたのはクラスメイトに黙っていた方が良いだろう。棗ちゃんがこういう行事に来るのは珍しいなと思ってはいたけれど、母親に行けと言われたと眠そうな口調で言われたのは記憶に新しい。一日目の小樽観光は楽しかったなぁ、ご飯も美味しかったし。
同い年の仲のいいクラスメイトとの非日常を既に一日目で楽しんでいたおかげか、それとも先ほどまでスキーをしていて体力が削られたからか、みんな静かに寝ているようだ。バスの席順は早いもの順ということで一人で乗っている子もいるからか男女もバラバラだ。空いている席がなかったのだろう、河戸君が隣にきた時はちょっと驚いたけど。
流石に彼も疲れたのだろうか、奥二重の目を閉じて規則正しく呼吸をしている。大きな体に静かな寝息は似合わないな、とちょっとおかしくなる。今どこかな、と窓の外を見るとスキー場からホテルに降りるまでの山道を走っているようだ。次の目的地に行くまでに二時間ほどかかる、と先生も言っていて、時計を見ると一時間ほど経った辺りだろうというのが分かる。起きてしまったせいか目が冴えてしまって隣を覗くと、ざくろちゃんも棗ちゃんもよく寝ていたので起きているのは私だけか、と小さく伸びをしてから、スキー場で買ったレモンティーを一口飲んだ。すっかり冷めてしまっているが、眠気で火照った体には丁度いい。
「ふぅ……」
もう一寝入りしようかな、と思った時、いきなり体が左側に強く引っ張られ、ガンッ、と頭を車窓に打つけた。
「痛っ、えっ、あっ」
体を起こそうとしたのだが、それは叶わず。誰かに体を押さえつけられているような、そんな強い力が私の体を襲う。そして、一瞬の浮遊感の後、一気に体が叩きつけられた。
そのまま、私の意識はブラックアウトする。
『本日、午後三時頃。修学旅行に来ていた果花学園二年三組を乗せたバスが急ブレーキにて横転、崖の下に落下しました。運転手、引率教諭は重傷。生徒達は死亡が確認されました。警察は過失運転致死として運転手に事情を聞いています。続いて、次のニュースを……』
しまったうとうとしていたから、と思って体を起こすと隣に座っている河戸勝武君の二の腕に頭が寄りかかっていることに気付いた。
筋骨隆々、という言葉がぴったりなたくましい二の腕は柔道部だからというのもあるだろうが、それでも同い年のクラスメイトに比べてかなり太い。制服の下からでも分かるその固さに思わずびっくりとしてしまったのは内緒だ。短めに切り揃えられた黒髪はツンツンとして固そうで取っ付きにくい彼の性格とよく似ているなんて言ったら怒られるだろうか。ガタイのいい体と無愛想に引き締められた口のせいでクラスメイト達から遠巻きにされてはいるけれど、喋ってみたら結構いい人というのは知っていたので寄りかかって寝てしまったぐらいでは怒らないとは思いたい。願望が入っているけど。
今日は三泊四日の修学旅行の二日目だ。先ほどまで丸一日スキーの実習をしていたおかげかみんな疲れ果てていたのだろう。私も少し寝ていたぐらいだ。目を擦りながら辺りを見回しても誰かが話す声すら聞こえない。クラスの中心人物である光野杏さんや高宮苺さん、遠野鳳梨さんが黙っているということは寝てしまっている可能性が高い。今日こそ三田村君に告白するんだから、なんていっていたのは苺さんだったか。彼女の気合いの入り用と言ったら別のクラスの女子達が驚きと好奇の目で見るほどだ。
可愛らしく巻かれた髪を二つにゆるく結んで、いつも以上にぱっちりさせた目は確かに可愛かった。生徒指導の先生に怒られていたけどね。
冬の北海道で観光やスキーをするのが目的のこの旅行は既に数ヶ月前からその片鱗をのぞかせていた。やれ誰と付き合うとか、誰と一緒のグループがいいとか、そんなことを話しながら計画を立てる。その空気に少し乗れていなかったけれど、ざくろちゃんや久しぶりに会う棗ちゃんとお泊まりは結構楽しみだった。一日目の夜、早々にレポートを書いてお互いの時間を楽しんでいた私達が見回りの先生にみんながあんた達みたいにいい子だったらいいんだけどなんて言われたのはクラスメイトに黙っていた方が良いだろう。棗ちゃんがこういう行事に来るのは珍しいなと思ってはいたけれど、母親に行けと言われたと眠そうな口調で言われたのは記憶に新しい。一日目の小樽観光は楽しかったなぁ、ご飯も美味しかったし。
同い年の仲のいいクラスメイトとの非日常を既に一日目で楽しんでいたおかげか、それとも先ほどまでスキーをしていて体力が削られたからか、みんな静かに寝ているようだ。バスの席順は早いもの順ということで一人で乗っている子もいるからか男女もバラバラだ。空いている席がなかったのだろう、河戸君が隣にきた時はちょっと驚いたけど。
流石に彼も疲れたのだろうか、奥二重の目を閉じて規則正しく呼吸をしている。大きな体に静かな寝息は似合わないな、とちょっとおかしくなる。今どこかな、と窓の外を見るとスキー場からホテルに降りるまでの山道を走っているようだ。次の目的地に行くまでに二時間ほどかかる、と先生も言っていて、時計を見ると一時間ほど経った辺りだろうというのが分かる。起きてしまったせいか目が冴えてしまって隣を覗くと、ざくろちゃんも棗ちゃんもよく寝ていたので起きているのは私だけか、と小さく伸びをしてから、スキー場で買ったレモンティーを一口飲んだ。すっかり冷めてしまっているが、眠気で火照った体には丁度いい。
「ふぅ……」
もう一寝入りしようかな、と思った時、いきなり体が左側に強く引っ張られ、ガンッ、と頭を車窓に打つけた。
「痛っ、えっ、あっ」
体を起こそうとしたのだが、それは叶わず。誰かに体を押さえつけられているような、そんな強い力が私の体を襲う。そして、一瞬の浮遊感の後、一気に体が叩きつけられた。
そのまま、私の意識はブラックアウトする。
『本日、午後三時頃。修学旅行に来ていた果花学園二年三組を乗せたバスが急ブレーキにて横転、崖の下に落下しました。運転手、引率教諭は重傷。生徒達は死亡が確認されました。警察は過失運転致死として運転手に事情を聞いています。続いて、次のニュースを……』
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