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大空を求めて(2)
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「ああ、花街から出たことねえよ。外に頼れるヤツもいない。だけどここで稼げる期間なんて、あと数年もねえ。とっとと出なきゃ落ちぶれて乞食になるしかなくなる」
確かに、陰間が商売になる期間は、遊女よりもはるかに短い。その事実は町を出ようが出まいが関係ない。
ならば、早めに出て自活の道を探したほうが良い。
「あんたの年季明けって、いつなんだよ?」
「借金は、もうすぐ返し終える・・・はずなんだよ」
「何?自分で把握してねえの?抜け目ないあんたが?」
梓は意を決した。今まで誰にも言ってこなかったことだが、彼には打ち明けなければ。梓にはそうする理由があった。
「俺じゃねえ。俺の母親の借金だ・・・それを松風に返さなきゃならねぇ。まあ、あとは俺を育てるのにかかった分くらいか」
「・・・なんで母親の借金の肩代わりなんか?そういう性格じゃないだろ」
「もちろん俺が望んだわけじゃない。やつとおふくろの間で、俺にそれを負わせる証文が作られたらしい。だからどうあってもそれを払い終わらねえと、やつは俺を放さないってことだ」
「お前の知らないところで勝手に借金背負わされた、ってことかよ。ひでえ話だな・・・。どのくらいなんだよ?」
「それが、言わねえんだあいつ。ガンとして。だから俺が自分で調べた」
「しらべた?どうやって?」
「まずおふくろの居場所をつきとめて、手紙で聞いてみた。けれど返事はこなかった。だから・・・」
「待てよ、おふくろさん、生きてるのか!?」
「ああ。21年前、大見世から見受けされて、妾になっているらしい。その時借りた金を松風に清算しきれなかったんだと俺はにらんでる」
しかし、松風が梓に見せるどす黒いほどの執着は、その関係が金だけではなかったことを物語っている。だが、そこまで菊染に語る必要もないだろう。梓は話を進めた。
「おふくろが元いた大見世の帳簿を見せてもらったら、見た限り遊女にしては金遣いは質素だった。だけど俺を産むのに、金が要ったらしい」
「そうか・・・」
菊染はなんとも言えず視線を落とした。遊女が子供を産むとなると、その期間客をとれなくなる。なので見世が損をするその額を、遊女自身が払わなくてはならない。そんなのはごめんだと子供を堕ろす遊女のほうが多い中、彼の母親は梓を産んだのだ。
「その借金を、松風にしたってか」
「多分な。それ以外で大金を使った形跡はなかった。だから、やつが俺に大きな顔をするわけよ」
梓は肩をすくめた。
「で、それはもう返せそうなのか?」
「おう。あとちょっとだ。だから・・・」
「だから?」
きょとんと聞き返した菊染めに、梓はにやりと笑った。
「おいおい、俺たちそもそも誰の話をしてたんだっけか?」
2人は縁側で稽古をつづけている千寿のほうに目をやった。
「あんた・・・千寿を連れて行く気なのか?」
菊染がおそるおそる聞いた。
「でも足抜けは無理って、さっき自分で言ってたじゃないか」
「そうだ。だから正式に出て行けるようにする」
「正式にって、どうやって?まさか身請け・・・?」
「親元身請けだよ、もう手は打ってある」
そう来たか。と菊染は思った。客が遊女を身請けしようとすると莫大な金がかかるが、もう一つ、遊女を自由にする方法がある。それが親元身請けだ。一度は困窮して売った娘だが、また金をつくることができたので買い戻したい。売った親がそう言ってきた場合のみ、客よりも安い金額で身請けすることができる。だが、もちろん気楽に払える額ではない。
「親に連絡つけたのかよ・・・でも金はどうするんだ?」
「そうなんだよ・・・普通だと相場は50両だけど、千寿の人気を考えればそれ以上かもしれねえ。そこで菊染」
「うわー」
嫌な予感がした。
「お前もあいつが好きなんだろ。いくらか金の都合つけられねえか?」
「・・・あのなあ。俺がそんなに持ってるように見えるか?」
たしかに、菊染は着道楽で有名だ。
「だいたい、千寿本人にはそれ言ったのかよ?」
「言ってない」
「あんたなー・・・。」
すっぱり即答した梓に、菊染は頭をかかえた。
「そりゃ、あいつを自由にしてやりてえよ。でもいくら親元身請けだからって、その金がなきゃ無理だ。ここは金がすべてなんだから・・・」
「はあ・・・せっかく親とつなぎがとれたのに」
残念そうに首をふる梓。菊染はずっと疑問に思っていたことを口に出した。
「・・・でも、お前はどうなんだよ」
「は?」
「お前の本心がよくわからねえよ。いくら好きだからってそこまでする柄じゃねえだろ。なのにどうして千寿にそこまでできるんだ?それに・・・」
菊染はそこまで言って口ごもった。
「それに?」
梓は続きを促した。
「・・・俺の気持ちは知ってるだろ。千寿を一緒に助けることはできるけれど、千寿を2つにわけることはできない・・・。いざ、千寿が俺もあんたも選ばなかったら、俺たちかなり間抜けだぞ」
菊染はじっと梓を見た。
「うーん、」
梓は言葉を探すようにうなった。
「俺、昔足抜け未遂したって言ったろ」
「ああ」
「その時一緒に居たやつ、殺されちまったんだ。」
菊染の表情が変わった。
「殺したって・・・まさか」
「そう、松風だよ。・・・俺は、そいつが好きだった。だから・・・」
梓ははっとした。菊染に話すことで初めて、自分の本心が浮かび上がってきたからだ。
「今度こそは、俺は好きなやつと一緒にここを出る。たとえ別の道を行くとしても・・・それが松風への報復だ。」
梓の脳内に、渚の姿が鮮明に浮かびあがった。
・・・かなえられなかった夢。
「そうか・・・それが本心なんだな」
「ああ」
菊染めはすばやく考えをめぐらせた。千寿が2人のうち、どちらと一緒になるかなんてわからない。だが3人で出る、というのは最良の案な気がした。どのみち自分一人ではどうにもならないのなら、ここで手を組んだほうが良い。
「わかった。なんとしてでも2人で50両、集めよう」
「いや、2人だけじゃきついだろ」
「でも、ほかに協力してくれるやつなんているのか?」
「もう手は打ってあるって」
梓はニヤリと笑って酒をあおいだ。
「手って――」
言いかけて、菊染ははっと口をつぐんだ。庭にある人物が姿を現したからだ。
「おや。みんなで何しているんだい」
どうやら灯紫が用事を終えて帰ってきたようだ。
「あ、灯紫さま!おかえりなさい」
「お花見をしているんです!灯紫さまもどうですか!」
さよとゆきがそばにまとわりついて誘った。
「灯紫さまが朝早くでかけて、こんな時間に帰ってくるなんてめずらしいですね。おつかれさまです」
千寿も出迎える。
「そうなんだよ。久しぶりに早起きしたからつかれたよ。私は部屋で休んでいるから、みんなは楽しんでいな」
灯紫はそういって庭を後にし、部屋へもどってどっかり座り込んだ。
(はあ・・・。やっかいな用事だったよ、まったく)
灯紫は先ほど受け取った手紙を懐から取り出した。手紙の内容は、気が重くなるものだった。灯紫は深いため息をついた。
(まさか、梓が水芽の子だったとはね・・・)
水芽は、いっとき大見世の売れっ子だった。お互いに顔も知っていて、灯紫も現役だったころはよく話す仲だった。
(あの娘は、三線が上手だったっけ・・・)
見世はちがったが、三線の稽古でよく一緒になった。
いつも強気で気ままだった灯紫とは正反対で、水芽は繊細で優しい性格だった。
その繊細さを歯がゆく感じることも多かったが、彼女と一緒にいると心が安らいだものだった。
(でも、足抜けしてつかまったり、無理を通して子を産んだり・・・私なんぞより芯のある娘だった)
富豪の妾として、幸せとはいかないまでも落ち着いた暮らしを送っているはず・・・。そう思っていた灯紫は、今回の知らせに声を失うほどおどろいた。だが思い返してみると、いろいろな符丁が合った。
(あの2人の関係・・・・いままで不可解だったけど、そういう事だったのか)
そうだ。驚いてばかりはいられない。
灯紫は手紙を細工つきの木箱に厳重にしまいこんだ。この手紙は大切な証拠だ。誰か――そう、松風に見つかるようなことがあってはならない。こちらに非はないとはいえ、相手は手ごわい。
灯紫は、彼が梓をともなって胡蝶屋を訪ねてきた日のことを思い出した。
「書、三線、舞も上々。容姿端麗で、夜のほうも仕込み済み。どうです?楼主さん。この胡蝶屋で彼をやとってもらえませんか。損はさせませんよ」
松風はそういって梓を売り込んできた。たしかに、今までみたどの女よりも美しい、遊女以上に完璧な陰間だった。ちょうど売り上げが落ちていたころで、灯紫は危険を承知で梓を迎え入れた。
しかし今考えれば、梓に性技を仕込んだのは一体誰だったのだろう。
あの年で、梓はもう陰間として「できあがって」いた。そうとう丹念に仕込んだのだろう。その相手は・・・・灯紫は自分の想像にぞっとした。
(なんて、罪深いこと・・・・・)
だが、松風は仕事面では優秀だった。最初は梓の世話役だったが、すぐに見世の廻しをまかされるようになり、最終的には遣手にまでなった。ここ数年は、灯紫が飴、松風が鞭の役割でうまく見世をまわしていたのだ。
しかし、今となっては松風のその処世の巧みさが恐ろしい。
(抜け目のない男だとは思っていたけれど、裏の裏があったんだね・・・)
灯紫は細工箱を押入れの奥に隠した。これを使うにしても、慎重に時期を見なければならない。そして・・・
(梓に、どう説明したものか・・・・)
それが一番気の重い仕事だった。灯紫は煙管に火をつけた。
ちょっと一休みしてから、考えよう・・・。
確かに、陰間が商売になる期間は、遊女よりもはるかに短い。その事実は町を出ようが出まいが関係ない。
ならば、早めに出て自活の道を探したほうが良い。
「あんたの年季明けって、いつなんだよ?」
「借金は、もうすぐ返し終える・・・はずなんだよ」
「何?自分で把握してねえの?抜け目ないあんたが?」
梓は意を決した。今まで誰にも言ってこなかったことだが、彼には打ち明けなければ。梓にはそうする理由があった。
「俺じゃねえ。俺の母親の借金だ・・・それを松風に返さなきゃならねぇ。まあ、あとは俺を育てるのにかかった分くらいか」
「・・・なんで母親の借金の肩代わりなんか?そういう性格じゃないだろ」
「もちろん俺が望んだわけじゃない。やつとおふくろの間で、俺にそれを負わせる証文が作られたらしい。だからどうあってもそれを払い終わらねえと、やつは俺を放さないってことだ」
「お前の知らないところで勝手に借金背負わされた、ってことかよ。ひでえ話だな・・・。どのくらいなんだよ?」
「それが、言わねえんだあいつ。ガンとして。だから俺が自分で調べた」
「しらべた?どうやって?」
「まずおふくろの居場所をつきとめて、手紙で聞いてみた。けれど返事はこなかった。だから・・・」
「待てよ、おふくろさん、生きてるのか!?」
「ああ。21年前、大見世から見受けされて、妾になっているらしい。その時借りた金を松風に清算しきれなかったんだと俺はにらんでる」
しかし、松風が梓に見せるどす黒いほどの執着は、その関係が金だけではなかったことを物語っている。だが、そこまで菊染に語る必要もないだろう。梓は話を進めた。
「おふくろが元いた大見世の帳簿を見せてもらったら、見た限り遊女にしては金遣いは質素だった。だけど俺を産むのに、金が要ったらしい」
「そうか・・・」
菊染はなんとも言えず視線を落とした。遊女が子供を産むとなると、その期間客をとれなくなる。なので見世が損をするその額を、遊女自身が払わなくてはならない。そんなのはごめんだと子供を堕ろす遊女のほうが多い中、彼の母親は梓を産んだのだ。
「その借金を、松風にしたってか」
「多分な。それ以外で大金を使った形跡はなかった。だから、やつが俺に大きな顔をするわけよ」
梓は肩をすくめた。
「で、それはもう返せそうなのか?」
「おう。あとちょっとだ。だから・・・」
「だから?」
きょとんと聞き返した菊染めに、梓はにやりと笑った。
「おいおい、俺たちそもそも誰の話をしてたんだっけか?」
2人は縁側で稽古をつづけている千寿のほうに目をやった。
「あんた・・・千寿を連れて行く気なのか?」
菊染がおそるおそる聞いた。
「でも足抜けは無理って、さっき自分で言ってたじゃないか」
「そうだ。だから正式に出て行けるようにする」
「正式にって、どうやって?まさか身請け・・・?」
「親元身請けだよ、もう手は打ってある」
そう来たか。と菊染は思った。客が遊女を身請けしようとすると莫大な金がかかるが、もう一つ、遊女を自由にする方法がある。それが親元身請けだ。一度は困窮して売った娘だが、また金をつくることができたので買い戻したい。売った親がそう言ってきた場合のみ、客よりも安い金額で身請けすることができる。だが、もちろん気楽に払える額ではない。
「親に連絡つけたのかよ・・・でも金はどうするんだ?」
「そうなんだよ・・・普通だと相場は50両だけど、千寿の人気を考えればそれ以上かもしれねえ。そこで菊染」
「うわー」
嫌な予感がした。
「お前もあいつが好きなんだろ。いくらか金の都合つけられねえか?」
「・・・あのなあ。俺がそんなに持ってるように見えるか?」
たしかに、菊染は着道楽で有名だ。
「だいたい、千寿本人にはそれ言ったのかよ?」
「言ってない」
「あんたなー・・・。」
すっぱり即答した梓に、菊染は頭をかかえた。
「そりゃ、あいつを自由にしてやりてえよ。でもいくら親元身請けだからって、その金がなきゃ無理だ。ここは金がすべてなんだから・・・」
「はあ・・・せっかく親とつなぎがとれたのに」
残念そうに首をふる梓。菊染はずっと疑問に思っていたことを口に出した。
「・・・でも、お前はどうなんだよ」
「は?」
「お前の本心がよくわからねえよ。いくら好きだからってそこまでする柄じゃねえだろ。なのにどうして千寿にそこまでできるんだ?それに・・・」
菊染はそこまで言って口ごもった。
「それに?」
梓は続きを促した。
「・・・俺の気持ちは知ってるだろ。千寿を一緒に助けることはできるけれど、千寿を2つにわけることはできない・・・。いざ、千寿が俺もあんたも選ばなかったら、俺たちかなり間抜けだぞ」
菊染はじっと梓を見た。
「うーん、」
梓は言葉を探すようにうなった。
「俺、昔足抜け未遂したって言ったろ」
「ああ」
「その時一緒に居たやつ、殺されちまったんだ。」
菊染の表情が変わった。
「殺したって・・・まさか」
「そう、松風だよ。・・・俺は、そいつが好きだった。だから・・・」
梓ははっとした。菊染に話すことで初めて、自分の本心が浮かび上がってきたからだ。
「今度こそは、俺は好きなやつと一緒にここを出る。たとえ別の道を行くとしても・・・それが松風への報復だ。」
梓の脳内に、渚の姿が鮮明に浮かびあがった。
・・・かなえられなかった夢。
「そうか・・・それが本心なんだな」
「ああ」
菊染めはすばやく考えをめぐらせた。千寿が2人のうち、どちらと一緒になるかなんてわからない。だが3人で出る、というのは最良の案な気がした。どのみち自分一人ではどうにもならないのなら、ここで手を組んだほうが良い。
「わかった。なんとしてでも2人で50両、集めよう」
「いや、2人だけじゃきついだろ」
「でも、ほかに協力してくれるやつなんているのか?」
「もう手は打ってあるって」
梓はニヤリと笑って酒をあおいだ。
「手って――」
言いかけて、菊染ははっと口をつぐんだ。庭にある人物が姿を現したからだ。
「おや。みんなで何しているんだい」
どうやら灯紫が用事を終えて帰ってきたようだ。
「あ、灯紫さま!おかえりなさい」
「お花見をしているんです!灯紫さまもどうですか!」
さよとゆきがそばにまとわりついて誘った。
「灯紫さまが朝早くでかけて、こんな時間に帰ってくるなんてめずらしいですね。おつかれさまです」
千寿も出迎える。
「そうなんだよ。久しぶりに早起きしたからつかれたよ。私は部屋で休んでいるから、みんなは楽しんでいな」
灯紫はそういって庭を後にし、部屋へもどってどっかり座り込んだ。
(はあ・・・。やっかいな用事だったよ、まったく)
灯紫は先ほど受け取った手紙を懐から取り出した。手紙の内容は、気が重くなるものだった。灯紫は深いため息をついた。
(まさか、梓が水芽の子だったとはね・・・)
水芽は、いっとき大見世の売れっ子だった。お互いに顔も知っていて、灯紫も現役だったころはよく話す仲だった。
(あの娘は、三線が上手だったっけ・・・)
見世はちがったが、三線の稽古でよく一緒になった。
いつも強気で気ままだった灯紫とは正反対で、水芽は繊細で優しい性格だった。
その繊細さを歯がゆく感じることも多かったが、彼女と一緒にいると心が安らいだものだった。
(でも、足抜けしてつかまったり、無理を通して子を産んだり・・・私なんぞより芯のある娘だった)
富豪の妾として、幸せとはいかないまでも落ち着いた暮らしを送っているはず・・・。そう思っていた灯紫は、今回の知らせに声を失うほどおどろいた。だが思い返してみると、いろいろな符丁が合った。
(あの2人の関係・・・・いままで不可解だったけど、そういう事だったのか)
そうだ。驚いてばかりはいられない。
灯紫は手紙を細工つきの木箱に厳重にしまいこんだ。この手紙は大切な証拠だ。誰か――そう、松風に見つかるようなことがあってはならない。こちらに非はないとはいえ、相手は手ごわい。
灯紫は、彼が梓をともなって胡蝶屋を訪ねてきた日のことを思い出した。
「書、三線、舞も上々。容姿端麗で、夜のほうも仕込み済み。どうです?楼主さん。この胡蝶屋で彼をやとってもらえませんか。損はさせませんよ」
松風はそういって梓を売り込んできた。たしかに、今までみたどの女よりも美しい、遊女以上に完璧な陰間だった。ちょうど売り上げが落ちていたころで、灯紫は危険を承知で梓を迎え入れた。
しかし今考えれば、梓に性技を仕込んだのは一体誰だったのだろう。
あの年で、梓はもう陰間として「できあがって」いた。そうとう丹念に仕込んだのだろう。その相手は・・・・灯紫は自分の想像にぞっとした。
(なんて、罪深いこと・・・・・)
だが、松風は仕事面では優秀だった。最初は梓の世話役だったが、すぐに見世の廻しをまかされるようになり、最終的には遣手にまでなった。ここ数年は、灯紫が飴、松風が鞭の役割でうまく見世をまわしていたのだ。
しかし、今となっては松風のその処世の巧みさが恐ろしい。
(抜け目のない男だとは思っていたけれど、裏の裏があったんだね・・・)
灯紫は細工箱を押入れの奥に隠した。これを使うにしても、慎重に時期を見なければならない。そして・・・
(梓に、どう説明したものか・・・・)
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ちょっと一休みしてから、考えよう・・・。
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