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大空を求めて(4)
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先ほどのしんみりとした気分は吹き飛び、千寿は障子を蹴破るほどの勢いで梓の部屋へころがりこんだ。
「あ、梓・・・・!」
ゼイハアと息を切らしたその必死の形相に、寝ようとしていた梓はぎょっとした。
「わっ・・・な、なんだ。千寿かよ」
「な、なんですか、これ。どういうこと・・・・?!」
その手には手紙が握られていた。先ほど梓に届いたものと同じ字がつづられている。梓は合点がいった。
(そうか、俺と千寿両方に手紙を書いたのか、お師匠さんは)
「おい、おちつけ。面白い顔になってんぞ」
「いや、せつ・・・説明してください。なんで梓が私の師匠と交流を?!まさか、客として・・・・・」
梓は頭をかかえた。
「おいおい、下世話な想像するんじゃねーよ・・・」
「じゃ、じゃあ何で・・・?」
真剣に困った顔をしている千寿がおかしくて、梓は思わず笑ってしまった。
「はは・・・これはな、壮大な計画の一部で――」
と、フカシかけたが、いったん口をつぐんだ。
(いや、こんな時くらいはまじめに言うか)
梓はふーっと息を吐いた。
「あのな・・・俺、もうすぐここを出ていくんだ」
「え?」
「ちなみに菊染も年季明け」
「えっ・・・・え?!?」
千寿は目を白黒させた。そして、泣きそうな顔になった。
「そ、そんな・・・・。わたし、やっと・・・・」
2人の大切さに気がついたのに。だが千寿はその言葉をぐっとのみこんだ。
「仲良く、なれたのに・・・・。」
「ごめんな。陰間は遊女より年季が少ないんだ。その分金額も安いしな」
千寿はなんとか冷静になろうと努力した。
「で、でも・・・2人一緒にいなくなっちゃうと・・・お店もさびしくなりますね・・・」
そういう千寿のおでこを、あずさはこつんとつついた。
「2人じゃねえ。お前も一緒に行くんだよ。お師匠様からの手紙に書いてなかったか?」
「え!?」
千寿があわてて握っていた手紙を開いた。くしゃくしゃになってしまいっている。
「すみません・・・動転して最後まで読んでなかったです・・・」
「ったくもう・・・そのために、あんたのお師匠さんと連絡とったり、まあいろいろやってたわけ。簡単にいきそうにはないけど・・・・。ま、なんとかなるさ」
「でも・・・・。なんで私に、そこまでしてくれるんです・・・・?」
千寿は本当にわからないという顔をした。
梓は、腹をくくった。思えば・・・ここまで、長かった。
最初はすました嫌な女だと思った。でもそれは強がりで、実は人いちばい脆くて、それを隠すため頑張っていることにすぐ気がついた。そしたら千寿が気になってしかたなくなった。お互い衝突したり、こっちが意地になって突っぱねた時もあったが・・・・
それも、ここまでだ。
「なんでって。俺が、お前と行きたいからだよ」
千寿は無言で固まった。
しばし、2人の間に沈黙がながれた。やがて千寿がおそるおそる口を開いた。顔に疑いがありありと表れている。
「そ、それは・・・・・なぜ・・・・・?」
ったく、こういう時だけ察しが悪いヤツ・・・。梓はヤケクソになった。
「好きだからに決まってんだろ、ばーか」
千寿は再び固まった。いや、凍りついた。そして・・・・
「うそ!?だって、あんなにつっかかってきたじゃないですか!?むしろ梓は私のことキライなのかと思ってましたよ――!?」
梓も負けじと言い返した。
「お前な――!!今まで散々助けてきたのにその言い草かよ!キライなやつの仕事代わりに受けるか!?首吊り現場にかけつけるか!?」
そう言われると千寿はぐっとつまった。
「うっ・・・・それは・・・すみません・・・・」
(まあでも、俺も天邪鬼だったよな・・・)
と、梓は思ったが、口にはださなかった。
「それに・・・私を出すなんて、お金かかりますよね・・・?いくら師匠に親代わりをたのんでも」
「ああ、かかるよ」
「それは誰が、まさか・・・」
「俺、って言いたいとこだけど。俺だけじゃねえ。あんたの元情人イロ、あと師匠・・・・それに菊染も」
「菊染も!?」
内心面白くなかったが、梓はうなずいた。
「ああ、まあな」
千寿はうつむいた。
「そんな・・・・・私、散々迷惑かけて・・・・そこまでしもてらう価値なんて・・・ないのに」
「うるせーよ。お前のためじゃねえ、俺のためにやってんだよ・・・・でも、一応聞いといてやる。お前、外に出たいか?」
千寿の脳内に、さまざまな思いが飛び交った。
さっき、これ以上は望まないと自分に言い聞かせたばかりなのに。心はたやすく梓の提案に傾いていた。
千寿はまっすぐ顔を上げて梓を見た。
「・・・出たいです」
「よし、そうこなくっちゃ」
「でも、2人にかける負担はできるだけ少なくしたいです・・・私もありったけお金をかきあつめます」
「あ~、そういう細かい話はまた今度な。もう遅いし、ずっとここいたら怪しまれるだろ。もう戻って寝な」
「あ・・・はいっ」
たしかにそうだ。ずいぶん話しこんでしまった。が、最後にこれだけは言わなくてはと口をひらいた。
「梓・・・」
「ん?」
「いつも、梓には助けられてばかりです・・・。私はまだあなたに何も返せてない。でも・・・ありがとう」
フフンと梓は鼻で笑った。
「どう?少しは俺のことすきになった?」
とたんに千寿はそっぽをむいた。
「もう!そうやっていつもふざけて」
「いや、俺は真剣だぜ?今までで一番」
梓はゆっくり、しかし鮮やかな手つきで千寿を押し倒した。
「本当は今すぐ2回目をしてえよ?」
千寿は当惑しながらも、なすがままだった。
だから、梓は手を離した。
「でも、今のお前にいきなり次の男を選べってったって、無理だろ」
「え・・・・・」
千寿の顔にかかる髪を、梓はやさしくかきあげた。
「だから、待つよ。ここを出てからゆっくり次をはじめればいい」
その瞳の優しさに、千寿ははっとした。
(意地悪されたり、喧嘩したこともあったけど・・・・彼は、いつも私を助けてくれた。本当は、梓はずっと――)
「だから、今日の話はこれでおしまい。部屋に戻りな、千寿」
負けた。完全に、一本取られた・・・・・。
何が負けなのかはっきりとはわからないが、とにかく千寿はそう思った。
「あ、梓・・・・!」
ゼイハアと息を切らしたその必死の形相に、寝ようとしていた梓はぎょっとした。
「わっ・・・な、なんだ。千寿かよ」
「な、なんですか、これ。どういうこと・・・・?!」
その手には手紙が握られていた。先ほど梓に届いたものと同じ字がつづられている。梓は合点がいった。
(そうか、俺と千寿両方に手紙を書いたのか、お師匠さんは)
「おい、おちつけ。面白い顔になってんぞ」
「いや、せつ・・・説明してください。なんで梓が私の師匠と交流を?!まさか、客として・・・・・」
梓は頭をかかえた。
「おいおい、下世話な想像するんじゃねーよ・・・」
「じゃ、じゃあ何で・・・?」
真剣に困った顔をしている千寿がおかしくて、梓は思わず笑ってしまった。
「はは・・・これはな、壮大な計画の一部で――」
と、フカシかけたが、いったん口をつぐんだ。
(いや、こんな時くらいはまじめに言うか)
梓はふーっと息を吐いた。
「あのな・・・俺、もうすぐここを出ていくんだ」
「え?」
「ちなみに菊染も年季明け」
「えっ・・・・え?!?」
千寿は目を白黒させた。そして、泣きそうな顔になった。
「そ、そんな・・・・。わたし、やっと・・・・」
2人の大切さに気がついたのに。だが千寿はその言葉をぐっとのみこんだ。
「仲良く、なれたのに・・・・。」
「ごめんな。陰間は遊女より年季が少ないんだ。その分金額も安いしな」
千寿はなんとか冷静になろうと努力した。
「で、でも・・・2人一緒にいなくなっちゃうと・・・お店もさびしくなりますね・・・」
そういう千寿のおでこを、あずさはこつんとつついた。
「2人じゃねえ。お前も一緒に行くんだよ。お師匠様からの手紙に書いてなかったか?」
「え!?」
千寿があわてて握っていた手紙を開いた。くしゃくしゃになってしまいっている。
「すみません・・・動転して最後まで読んでなかったです・・・」
「ったくもう・・・そのために、あんたのお師匠さんと連絡とったり、まあいろいろやってたわけ。簡単にいきそうにはないけど・・・・。ま、なんとかなるさ」
「でも・・・・。なんで私に、そこまでしてくれるんです・・・・?」
千寿は本当にわからないという顔をした。
梓は、腹をくくった。思えば・・・ここまで、長かった。
最初はすました嫌な女だと思った。でもそれは強がりで、実は人いちばい脆くて、それを隠すため頑張っていることにすぐ気がついた。そしたら千寿が気になってしかたなくなった。お互い衝突したり、こっちが意地になって突っぱねた時もあったが・・・・
それも、ここまでだ。
「なんでって。俺が、お前と行きたいからだよ」
千寿は無言で固まった。
しばし、2人の間に沈黙がながれた。やがて千寿がおそるおそる口を開いた。顔に疑いがありありと表れている。
「そ、それは・・・・・なぜ・・・・・?」
ったく、こういう時だけ察しが悪いヤツ・・・。梓はヤケクソになった。
「好きだからに決まってんだろ、ばーか」
千寿は再び固まった。いや、凍りついた。そして・・・・
「うそ!?だって、あんなにつっかかってきたじゃないですか!?むしろ梓は私のことキライなのかと思ってましたよ――!?」
梓も負けじと言い返した。
「お前な――!!今まで散々助けてきたのにその言い草かよ!キライなやつの仕事代わりに受けるか!?首吊り現場にかけつけるか!?」
そう言われると千寿はぐっとつまった。
「うっ・・・・それは・・・すみません・・・・」
(まあでも、俺も天邪鬼だったよな・・・)
と、梓は思ったが、口にはださなかった。
「それに・・・私を出すなんて、お金かかりますよね・・・?いくら師匠に親代わりをたのんでも」
「ああ、かかるよ」
「それは誰が、まさか・・・」
「俺、って言いたいとこだけど。俺だけじゃねえ。あんたの元情人イロ、あと師匠・・・・それに菊染も」
「菊染も!?」
内心面白くなかったが、梓はうなずいた。
「ああ、まあな」
千寿はうつむいた。
「そんな・・・・・私、散々迷惑かけて・・・・そこまでしもてらう価値なんて・・・ないのに」
「うるせーよ。お前のためじゃねえ、俺のためにやってんだよ・・・・でも、一応聞いといてやる。お前、外に出たいか?」
千寿の脳内に、さまざまな思いが飛び交った。
さっき、これ以上は望まないと自分に言い聞かせたばかりなのに。心はたやすく梓の提案に傾いていた。
千寿はまっすぐ顔を上げて梓を見た。
「・・・出たいです」
「よし、そうこなくっちゃ」
「でも、2人にかける負担はできるだけ少なくしたいです・・・私もありったけお金をかきあつめます」
「あ~、そういう細かい話はまた今度な。もう遅いし、ずっとここいたら怪しまれるだろ。もう戻って寝な」
「あ・・・はいっ」
たしかにそうだ。ずいぶん話しこんでしまった。が、最後にこれだけは言わなくてはと口をひらいた。
「梓・・・」
「ん?」
「いつも、梓には助けられてばかりです・・・。私はまだあなたに何も返せてない。でも・・・ありがとう」
フフンと梓は鼻で笑った。
「どう?少しは俺のことすきになった?」
とたんに千寿はそっぽをむいた。
「もう!そうやっていつもふざけて」
「いや、俺は真剣だぜ?今までで一番」
梓はゆっくり、しかし鮮やかな手つきで千寿を押し倒した。
「本当は今すぐ2回目をしてえよ?」
千寿は当惑しながらも、なすがままだった。
だから、梓は手を離した。
「でも、今のお前にいきなり次の男を選べってったって、無理だろ」
「え・・・・・」
千寿の顔にかかる髪を、梓はやさしくかきあげた。
「だから、待つよ。ここを出てからゆっくり次をはじめればいい」
その瞳の優しさに、千寿ははっとした。
(意地悪されたり、喧嘩したこともあったけど・・・・彼は、いつも私を助けてくれた。本当は、梓はずっと――)
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