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ウツギの巫女
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夜半。深い場所から水が流れるような不思議な音がして、セレンは目をさました。
(これは・・・最初の日、森で聞いた音・・・?)
飛び起きたセレンは、鉄格子の前に1人の男が立っているのに気がついた。
「起きたようですね」
「どうです、巫女さま・・・・?」
セレンはその風貌に息をのんだ。
2人とも、黒髪に、藍色の瞳ーーー!
とくにその女性のほうは儚げなたたずまいで、物語に出てくる妖精そのものだった。
(もしかして、・・・!?)
セレンは女の人の顔をじっと見た。するととたんに頭の中にきりがかかったようにふんわりと心地よい気持ちになり、つづいてふっと目の前が暗転した。
(なに・・・・!?)
驚くセレンに、女の人が声をかけた。
「たしかに・・・セレンです。セレン、私を覚えていますか・・・?」
「え・・・なぜ、私の名を・・・・それにどうやってここに・・・?」
セレンはわけがわからず目を白黒させた。
「とりあえず、ここから出ましょう、セレン」
男の人がそういい、鉄格子の鍵の前に座って何やら手を動かした。
「それ、鍵がかかっていて、ないと出れな・・・・えっ」
セレンが言い終わらぬうちに、カチャリと音がして鍵が開いた。
「さあ、いきましょう。話はそれから」
女の人がそういって手を、差し出した。
一瞬迷ったが、セレンはその手を取った。いずれ彼らと交渉せねばならないのだから、それを逃す手はない。
その手はさらりとしていて、冷たかった。
牢を抜け、城の裏手の崖をつたい、街を取り囲む背後の山にセレンは足を踏み入れた。山道は厳しかったが、前の二人は対して苦しそうにもなくどんどん進んでいった。
「セレン、平気ですか・・・?」
途中、女の人がそう声をかけた。
「大丈夫です、このくらい・・・」
彼女はふふと笑った。
「そう、頼もしいです。ここは、ウツギしかしらない秘密の道なのですよ」
山の中腹にさしかかったところで、前方に丸太でできた大きな壁が連なっているのが見えた。
「あの柵の中が、私達の村です。中の洞窟に向かいましょう」
女の人がそういった。
「門番がまだ眠っているか、確かめてきます」
男の人がさっと走り、また音もたてずに戻ってきた。
「大丈夫です。さ、いきましょう」
2人に先導されるままに、セレンは大きなやぐらの下の小さな木の扉をくぐり抜けた。
そこは、石造りのいかめしい城下とは全くことなった、木や茅葺でできた建物が点在している集落のようだった。小屋はどれも小さく、くずれかけたみすぼらしいものばかりで、灯もなく夜の闇に沈んでいる。
セレンは城下との落差に驚いた。
前の2人はその家々を素通りし、村のはずれまでセレンを導いた。
「あっ・・・だれか、いますよ・・・!」
セレンは驚いてたちどまった。
村の行き止まりは、聳え立つ山壁で、そこにはぽっかりと穴が開いていた。そこにランプを持ったイベリス兵が立っていることにセレンは気がついた。
「大丈夫、そこへは行かないわ」
女の人は言い、兵士達の居る場とは反対方向に歩き出した。
「ど、どこへ行くのですか」
「・・・・ここよ」
兵士達が見えなくなったところで、女の人は山肌の岩に足をかけ登りはじめた。
いくらか上まで登ると、ちょうど数人立てるほどの岩場が現れた。
「さあ、あなたも」
「あの、どこへ・・?」
セレンが聞こうとした瞬間、女の人の姿が消えた。
(!?)
うろたえるセレンに、男の人が説明した。
「少しわかりにくいけれど、この岩の後ろが入り口なんだ。足元、気をつけて」
次の瞬間、男の人も消えた。
セレンはおそるおそる岩の陰を覗き込んだ。
隠されていてわかりにくかったが、人一人入れるほどの穴が真っ暗な口をあけていた。
(こ、ここに・・・入れと)
セレンは思わずたじろいだ。だが次の瞬間、そんな自分を恥じた。
(なにを怖がっているんだ・・・行かなければ)
セレンは意を決して穴に腰掛け、そこへ足を踏み入れた。
「大丈夫よ、足場はあるから」
下から女の人の声が聞こえたので、セレンはえいっと飛び込んだ。
「っ・・・・・!」
なんとか転ばずに着地したセレンは、2人のあとについて山の腹の中を歩いた。
中は真っ暗で湿っている。ひたひたと風か、水かわからない音がする。女の人は灯を持っているようで、そのわずかな光をたよりにセレンは2人のあとを付いていった。その場所を歩いて、セレンはようやく気が付いた。
(そうか・・・あの不思議な音は、この水の音、だったのか)
複雑にまがりくねった道の突き当たりの穴の中に、3人はやっと腰を下ろした。
その小さな空間は小部屋のようになっていて、ゴザが敷いてあり、ランプが灯り良い香りの香が焚いてある。セレンは珍しくて天上やむきだしの岩壁をながめた。
「ふう・・・これでやっと、話ができるわ」
ランプのしたで女の人の顔をじっくり見て、セレンは驚いた。
「あ、あなた・・・!」
表情やたたずまいは正反対と言っていいほど違うが、そのひとの顔だちは、セレンとうりふたつだったのだ。
その人はふわっと微笑んだ。ミリア姫のような美しい微笑とは違い、疲れが見えるが、それは労わりが感じられる優しい笑みだった。
その表情に、セレンは自然と心がなごんだ。
「セレン、私の事、おぼえていますか?」
「え、ええと・・・」
セレンは口ごもった。
「すみません、覚えていないようです」
「・・・無理もないわね。あなたも大変だったんだもの。私はこのウツギの長、アジサイ。あなたの母の姉よ。会えてとてもうれしいわ」
ということは、目の間の彼女は私の伯母!?セレンは目を見張った。
「私とあなたが・・・?!それなら私の両親は・・・・?」
アジサイうつむいた。その動作に、長く美しい黒髪がゆれて影をつくった。
「10年前、辛い生活に耐えられず、集団で脱出することを計画した人がいたのよ。あなたの両親はそれに加わり逃げることを選んだの。でも、イベリスの兵士に見つかってしまって、二人は・・・」
彼女はそこで言葉を途切れさせた。だが続きを聞きたいセレンは身をのりだした。
「殺されたのですか?そして、私だけ、外に・・・?」
「ええ・・・おそらく。最後の力を振り絞って、あなた一人を逃がしたのでしょうね・・・。あなたがまさか外で生き延びて、こうして大きくなっているなんて、ずっと知らなかったのだれど・・・」
沈黙してしまった2人に変わって、男が言った。
「アジサイ様の占で、君が生きていて、イベリスへ来ることがわかったんだ。俺たちはずっと待っていた。
おととい輿入れしてきたミリアネス姫の侍女の名がセレンで、牢に入れられてるって噂が流れてきてね。それで君だと検討をつけて今夜確かめにいったんだ。彼女がじかに見れば、わかるからね」
セレンはアジサイのほうを見た。
「・・・どうして、私があなたの姪の、セレンだとわかったのですか?」
その質問に、アジサイはまた微笑んだ。
「あなたが私と似ているという事もありますが・・・。
私はウツギの直系の子孫として、人の心を見る力が備わっているのです」
「人の心、を・・・?すごい」
さきほど、牢で目を見交わしたとき、妙な状態になったのはそのせいか。とセレンは合点がいった。
「ウツギの民に伝わる不思議な力というのは、お伽噺や噂ではなく、本当だったのですね」
ガウラス大公の言葉を思い出し、セレンは興奮気味に言った。が、アジサイは首をふった。
「お伽噺や魔法のような、そんな大それたものではないのです、セレン。私の力は、いわば人に対する注意力が深い、というだけのこと。人の心の中というものは表情や仕草に現れるものです。なのでよく人を見れば、その人の考えていることがわかるのです。わかれば心の中に呼びかけたり、気持ちを静めたり、眠らせたりすこともできますし、悪い部分を見つけて薬を調薬することもできるのですよ」
サラリとそう言うアジサイに、セレンは息を呑んだ。
「それって・・・すごいですよ。つまり人を、部分的には操れるという事じゃないですか」
少し困った顔をしたアジサイを見て、男が口をはさんだ。
「操るっていっても、アジサイ様は物騒なことにはその力を使わないんだ。最近はもっぱらこぜり合いをおさめるために、その力を・・・」
アジサイがやんわりとその言葉をさえぎった。
「そんな驚くことでもありません。それにセレン。あなたも直系の血を持つ女性なのですから、なんらかの力があるかもしれませんよ」
「えっ、私にも?!でも・・・」
驚いて考えをめぐらせてみたが、自分に特別な力などいままでチラとも感じたことはかった。
「私、そういう力はどうもないみたいです。何かの、まちがいかも・・・」
「そんなはずないわ」
アジサイはやさしくそういって、セレンの手をとった。
「あなたの手、あたたかい。さっきも、あなたの手から生命の力が流れ込んでくるのを感じたわ。あなたの力は、多分これ」
セレンはぽかんとした。
「これ・・・?手があったかいことですか?」
アジサイはくすりと笑った。
「あなたは純粋でまっすぐな人。長い辛い生活も、その資質を奪うことはできなかったのね。あなたは、力のかたまり。その力を人にわけることができるのよ。私は体が弱いから、特にその力を感じるんだわ」
初対面の彼女に手放しでほめられて、セレンは少し照れくさかった。
「たしかにアジサイ様、いつもより顔色がいいです。あんなに歩いたあとなのに」
男がそう言ったので、セレンはあわてた。
「具合が悪いのですか?大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。あなたがきてくれましたから」
その優しい表情に、セレンはおぼろげながらも懐かしいという思いを感じた。
きっと母というものは、こうして笑いかけてくれるものなのだろう・・・。
燃えさしのランプをチラリと見たあと、男が言った。
「あまり時間がない。アジサイさま、話して良いですか」
その真剣かつ事務的な口調に、なごやかなムードは一転した、
「ええ、スグリ。私から話すわ」
セレンは姿勢を正した。どんな話だろう。
「あなたも知ってのとおり、30年前、イベリスとの長い戦いに負けたことで、私達ウツギは彼らの奴隷となったわ。つらい労働を強制されて、逃げも出来ず、命を落とすものも多い・・・。
でも、私達は希望を捨てていないの。私達がこの地にいて、翠玉を祀っている限り、再起の目はあるとおもって耐えてきたわ。だけど・・・」
アジサイは目をふせた。
「私は病身で、いつまで生きられるか、もうわからない身体なの。そうなるとウツギは長を失う・・・翠玉を祀る巫女が、いなくなってしまうの」
スグリと呼ばれた青年がそのあとをつづけた。
「今はウツギの民も一枚岩でなくなってきているんだ。
イベリスの支配から逃れるため、兵を挙げようという奴らも多い。だけど、武器も持たない俺らに何ができる?返り討ちにあってもっとひどい状況になるだけだ。アジサイ様はそういった連中をなだめて、今までなんとか大きな犠牲を出さずにやってきた。だがアジサイ様が・・・いなくなってしまったら、もう抑えられない・・・。」
話の雲行きが怪しくなってきたな、とセレンは思った。
「そこでかわりの女長がいる・・・ということですか」
アジサイはうなずいた。
「そうなの。私と同じ血を持つあなたを・・・帰ってくるのをずっと、待っていたのよ」
にわかには、信じがたい。自分に親族がいて、ずっと帰りを待たれていたとは。
だがこれは使い方によっては「宿題」を有利に進められるかもしれない。どう返答すればいいのか、セレンは精一杯考えながら言った。
「私にはそんな・・・いきなり外から来た私を、ウツギの人はきっと認めてはくれないでしょう。それより、もっと良い方法をお伝えするために、私はトリトニアからミリア様と共に来たのです」
「それは・・・?」
「私は、トリトニ大公ガウラス様から、ウツギの長への密書を携えてきたのです。書そのものはミリア様が隠し持っているので今お渡しできませんが、内容はお伝えできます。それは・・・」
セレンはその内容を一字一句たがわずアジサイに伝えた。
大公はいずれイベリスを潰したいと思っていること。その前にウツギの民を仲間に引き入れたいこと。イベリスを介さずにジュエルの取引をしたいこと。ウツギがイベリスの支配から逃れるために、援助は惜しまないこと・・・。
苦しんでいるウツギの民にとっては、願ってもいないことだろう。セレンはそう思って誇らしげに伝えたが、アジサイの表情は暗いままだった。
「どうでしょうか、アジサイ・・さん」
彼女はうつむけていた顔を上げた。
「アジサイ、でいいのよ、セレン・・・私達は、家族なのですから」
そしてまた微笑んだ。が、その笑みはどこか淋しげだった。
「大国であるトリトニアからそのような申し出があることは、ありがたいです。ただ、私は・・・これ以上、人々の血を流したくないのです」
だまりこんでいた男が、アジサイに向かって言った。
「そんな、アジサイ様!またとない、チャンスではないですか?!」
アジサイはたしなめるような顔つきになった。
「そのように結論を急いではなりません。考えてもごらんなさい。トリトニア国の援助を得てイベリスの支配から開放されたら、その後はどうなるの?私達は、次は彼らに頭が上がらなくなるわ。申し出はありがたいけど、私達は自分の力でこの状況を抜け出すことが第一なのよ。でないと利用されつくされるだけなのだから・・・」
セレンは驚いた。
虫も殺せぬかよわい風情の彼女が、なぜ民の信頼を得、長としてウツギをまとめあげているのか、わかった気がした。
その場の利益ではなく、長い目で一族の未来を考えている。少々、長すぎるのかもしれないが・・・。
しかし、スグリは不服そうだった。
「だからといって今の状況がつづけば、一生イベリスのいいようにされて終わってしまうかもしれない、アジサイ様・・・」
セレンはアジサイのほうを向いた。
「アジサイ、心配はもっともです。民を想うその判断、立派だと思います。
ただ大公は、イベリスが行っているような支配をするつもりはありません。一例を出しますと、ウツギの民の持つジュエル・・・いえ、こちらの言い方ですと翠玉、ですね・・・の、専売契約を結ぶとか、同盟を組むとか、そういった形になるかと思います」
そのセレンの言葉に、アジサイは少し考えるそぶりを見せた。
「そうね・・・それは、こちらにとっても良い話だけれど・・・でも」
でも、のあとにいいたいことは、セレンにもスグリにもわかった。
(でも・・・そうすればイベリスが黙っていない。一歩間違えれば、またたくさんの血が流れる・・・)
セレンは沈黙を破った。
「私、アジサイの意志をミリア様にお伝えしますね。そして・・・一度、姫と会ってもらえませんか?ミリア様もアジサイと同じように、聡明でお優しい方です。きっと話をすれば、良い方向にいくとおもうのです」
その真剣な瞳を、アジサイはじっと見た。
この子の言葉には嘘がない。そう思った彼女はうなずいた。
「わかったわ。お会いしましょう」
「ありがとうございます、アジサイ・・・」
セレンは頭を下げた。とりあえずガウラス様の宿題に取り掛かることができて、ほっとした。
が、次の瞬間、自分の置かれている状況を思い出した。
(ダメだ、2人を合わせるどころか、ミリア姫にさえ会えない牢屋ぐらしなんだった・・・)
セレンは頭をかいた。
「・・・といっても、ご存知の通り、私は姫と引き離されていて・・・。ちょっと時間がかかるかもしれません。ですが絶対にお二人を会わせてみせます。なので、少し待っていてもらえますか」
「ええ、もちろん」
アジサイは微笑んだ。今日見た中で一番、明るい笑みだった。
「では、私は夜のうちに戻りますね。今夜はありがとうございました、アジサイ」
再び頭を下げたセレンを、ふわりとアジサイの腕がつつんだ。
「・・・難しい話ばかりになってしまったけど、会えて嬉しかったわ、セレン・・・。あなたは、あなたのお母さんに良く似ているわ。また、ゆっくり話しましょうね・・・。」
こんなふうに抱きしめられることなど、記憶の限り始めてだ。アジサイからは薬香の甘い香りがする。セレンはその細いからだをぎゅっと抱きしめ返した。
「私も。アジサイ、あなたのような人と血がつながっているとわかって、嬉しいです」
抱擁の中で、めったに口にすることのない本心が、自然と口からでた。
(これは・・・最初の日、森で聞いた音・・・?)
飛び起きたセレンは、鉄格子の前に1人の男が立っているのに気がついた。
「起きたようですね」
「どうです、巫女さま・・・・?」
セレンはその風貌に息をのんだ。
2人とも、黒髪に、藍色の瞳ーーー!
とくにその女性のほうは儚げなたたずまいで、物語に出てくる妖精そのものだった。
(もしかして、・・・!?)
セレンは女の人の顔をじっと見た。するととたんに頭の中にきりがかかったようにふんわりと心地よい気持ちになり、つづいてふっと目の前が暗転した。
(なに・・・・!?)
驚くセレンに、女の人が声をかけた。
「たしかに・・・セレンです。セレン、私を覚えていますか・・・?」
「え・・・なぜ、私の名を・・・・それにどうやってここに・・・?」
セレンはわけがわからず目を白黒させた。
「とりあえず、ここから出ましょう、セレン」
男の人がそういい、鉄格子の鍵の前に座って何やら手を動かした。
「それ、鍵がかかっていて、ないと出れな・・・・えっ」
セレンが言い終わらぬうちに、カチャリと音がして鍵が開いた。
「さあ、いきましょう。話はそれから」
女の人がそういって手を、差し出した。
一瞬迷ったが、セレンはその手を取った。いずれ彼らと交渉せねばならないのだから、それを逃す手はない。
その手はさらりとしていて、冷たかった。
牢を抜け、城の裏手の崖をつたい、街を取り囲む背後の山にセレンは足を踏み入れた。山道は厳しかったが、前の二人は対して苦しそうにもなくどんどん進んでいった。
「セレン、平気ですか・・・?」
途中、女の人がそう声をかけた。
「大丈夫です、このくらい・・・」
彼女はふふと笑った。
「そう、頼もしいです。ここは、ウツギしかしらない秘密の道なのですよ」
山の中腹にさしかかったところで、前方に丸太でできた大きな壁が連なっているのが見えた。
「あの柵の中が、私達の村です。中の洞窟に向かいましょう」
女の人がそういった。
「門番がまだ眠っているか、確かめてきます」
男の人がさっと走り、また音もたてずに戻ってきた。
「大丈夫です。さ、いきましょう」
2人に先導されるままに、セレンは大きなやぐらの下の小さな木の扉をくぐり抜けた。
そこは、石造りのいかめしい城下とは全くことなった、木や茅葺でできた建物が点在している集落のようだった。小屋はどれも小さく、くずれかけたみすぼらしいものばかりで、灯もなく夜の闇に沈んでいる。
セレンは城下との落差に驚いた。
前の2人はその家々を素通りし、村のはずれまでセレンを導いた。
「あっ・・・だれか、いますよ・・・!」
セレンは驚いてたちどまった。
村の行き止まりは、聳え立つ山壁で、そこにはぽっかりと穴が開いていた。そこにランプを持ったイベリス兵が立っていることにセレンは気がついた。
「大丈夫、そこへは行かないわ」
女の人は言い、兵士達の居る場とは反対方向に歩き出した。
「ど、どこへ行くのですか」
「・・・・ここよ」
兵士達が見えなくなったところで、女の人は山肌の岩に足をかけ登りはじめた。
いくらか上まで登ると、ちょうど数人立てるほどの岩場が現れた。
「さあ、あなたも」
「あの、どこへ・・?」
セレンが聞こうとした瞬間、女の人の姿が消えた。
(!?)
うろたえるセレンに、男の人が説明した。
「少しわかりにくいけれど、この岩の後ろが入り口なんだ。足元、気をつけて」
次の瞬間、男の人も消えた。
セレンはおそるおそる岩の陰を覗き込んだ。
隠されていてわかりにくかったが、人一人入れるほどの穴が真っ暗な口をあけていた。
(こ、ここに・・・入れと)
セレンは思わずたじろいだ。だが次の瞬間、そんな自分を恥じた。
(なにを怖がっているんだ・・・行かなければ)
セレンは意を決して穴に腰掛け、そこへ足を踏み入れた。
「大丈夫よ、足場はあるから」
下から女の人の声が聞こえたので、セレンはえいっと飛び込んだ。
「っ・・・・・!」
なんとか転ばずに着地したセレンは、2人のあとについて山の腹の中を歩いた。
中は真っ暗で湿っている。ひたひたと風か、水かわからない音がする。女の人は灯を持っているようで、そのわずかな光をたよりにセレンは2人のあとを付いていった。その場所を歩いて、セレンはようやく気が付いた。
(そうか・・・あの不思議な音は、この水の音、だったのか)
複雑にまがりくねった道の突き当たりの穴の中に、3人はやっと腰を下ろした。
その小さな空間は小部屋のようになっていて、ゴザが敷いてあり、ランプが灯り良い香りの香が焚いてある。セレンは珍しくて天上やむきだしの岩壁をながめた。
「ふう・・・これでやっと、話ができるわ」
ランプのしたで女の人の顔をじっくり見て、セレンは驚いた。
「あ、あなた・・・!」
表情やたたずまいは正反対と言っていいほど違うが、そのひとの顔だちは、セレンとうりふたつだったのだ。
その人はふわっと微笑んだ。ミリア姫のような美しい微笑とは違い、疲れが見えるが、それは労わりが感じられる優しい笑みだった。
その表情に、セレンは自然と心がなごんだ。
「セレン、私の事、おぼえていますか?」
「え、ええと・・・」
セレンは口ごもった。
「すみません、覚えていないようです」
「・・・無理もないわね。あなたも大変だったんだもの。私はこのウツギの長、アジサイ。あなたの母の姉よ。会えてとてもうれしいわ」
ということは、目の間の彼女は私の伯母!?セレンは目を見張った。
「私とあなたが・・・?!それなら私の両親は・・・・?」
アジサイうつむいた。その動作に、長く美しい黒髪がゆれて影をつくった。
「10年前、辛い生活に耐えられず、集団で脱出することを計画した人がいたのよ。あなたの両親はそれに加わり逃げることを選んだの。でも、イベリスの兵士に見つかってしまって、二人は・・・」
彼女はそこで言葉を途切れさせた。だが続きを聞きたいセレンは身をのりだした。
「殺されたのですか?そして、私だけ、外に・・・?」
「ええ・・・おそらく。最後の力を振り絞って、あなた一人を逃がしたのでしょうね・・・。あなたがまさか外で生き延びて、こうして大きくなっているなんて、ずっと知らなかったのだれど・・・」
沈黙してしまった2人に変わって、男が言った。
「アジサイ様の占で、君が生きていて、イベリスへ来ることがわかったんだ。俺たちはずっと待っていた。
おととい輿入れしてきたミリアネス姫の侍女の名がセレンで、牢に入れられてるって噂が流れてきてね。それで君だと検討をつけて今夜確かめにいったんだ。彼女がじかに見れば、わかるからね」
セレンはアジサイのほうを見た。
「・・・どうして、私があなたの姪の、セレンだとわかったのですか?」
その質問に、アジサイはまた微笑んだ。
「あなたが私と似ているという事もありますが・・・。
私はウツギの直系の子孫として、人の心を見る力が備わっているのです」
「人の心、を・・・?すごい」
さきほど、牢で目を見交わしたとき、妙な状態になったのはそのせいか。とセレンは合点がいった。
「ウツギの民に伝わる不思議な力というのは、お伽噺や噂ではなく、本当だったのですね」
ガウラス大公の言葉を思い出し、セレンは興奮気味に言った。が、アジサイは首をふった。
「お伽噺や魔法のような、そんな大それたものではないのです、セレン。私の力は、いわば人に対する注意力が深い、というだけのこと。人の心の中というものは表情や仕草に現れるものです。なのでよく人を見れば、その人の考えていることがわかるのです。わかれば心の中に呼びかけたり、気持ちを静めたり、眠らせたりすこともできますし、悪い部分を見つけて薬を調薬することもできるのですよ」
サラリとそう言うアジサイに、セレンは息を呑んだ。
「それって・・・すごいですよ。つまり人を、部分的には操れるという事じゃないですか」
少し困った顔をしたアジサイを見て、男が口をはさんだ。
「操るっていっても、アジサイ様は物騒なことにはその力を使わないんだ。最近はもっぱらこぜり合いをおさめるために、その力を・・・」
アジサイがやんわりとその言葉をさえぎった。
「そんな驚くことでもありません。それにセレン。あなたも直系の血を持つ女性なのですから、なんらかの力があるかもしれませんよ」
「えっ、私にも?!でも・・・」
驚いて考えをめぐらせてみたが、自分に特別な力などいままでチラとも感じたことはかった。
「私、そういう力はどうもないみたいです。何かの、まちがいかも・・・」
「そんなはずないわ」
アジサイはやさしくそういって、セレンの手をとった。
「あなたの手、あたたかい。さっきも、あなたの手から生命の力が流れ込んでくるのを感じたわ。あなたの力は、多分これ」
セレンはぽかんとした。
「これ・・・?手があったかいことですか?」
アジサイはくすりと笑った。
「あなたは純粋でまっすぐな人。長い辛い生活も、その資質を奪うことはできなかったのね。あなたは、力のかたまり。その力を人にわけることができるのよ。私は体が弱いから、特にその力を感じるんだわ」
初対面の彼女に手放しでほめられて、セレンは少し照れくさかった。
「たしかにアジサイ様、いつもより顔色がいいです。あんなに歩いたあとなのに」
男がそう言ったので、セレンはあわてた。
「具合が悪いのですか?大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。あなたがきてくれましたから」
その優しい表情に、セレンはおぼろげながらも懐かしいという思いを感じた。
きっと母というものは、こうして笑いかけてくれるものなのだろう・・・。
燃えさしのランプをチラリと見たあと、男が言った。
「あまり時間がない。アジサイさま、話して良いですか」
その真剣かつ事務的な口調に、なごやかなムードは一転した、
「ええ、スグリ。私から話すわ」
セレンは姿勢を正した。どんな話だろう。
「あなたも知ってのとおり、30年前、イベリスとの長い戦いに負けたことで、私達ウツギは彼らの奴隷となったわ。つらい労働を強制されて、逃げも出来ず、命を落とすものも多い・・・。
でも、私達は希望を捨てていないの。私達がこの地にいて、翠玉を祀っている限り、再起の目はあるとおもって耐えてきたわ。だけど・・・」
アジサイは目をふせた。
「私は病身で、いつまで生きられるか、もうわからない身体なの。そうなるとウツギは長を失う・・・翠玉を祀る巫女が、いなくなってしまうの」
スグリと呼ばれた青年がそのあとをつづけた。
「今はウツギの民も一枚岩でなくなってきているんだ。
イベリスの支配から逃れるため、兵を挙げようという奴らも多い。だけど、武器も持たない俺らに何ができる?返り討ちにあってもっとひどい状況になるだけだ。アジサイ様はそういった連中をなだめて、今までなんとか大きな犠牲を出さずにやってきた。だがアジサイ様が・・・いなくなってしまったら、もう抑えられない・・・。」
話の雲行きが怪しくなってきたな、とセレンは思った。
「そこでかわりの女長がいる・・・ということですか」
アジサイはうなずいた。
「そうなの。私と同じ血を持つあなたを・・・帰ってくるのをずっと、待っていたのよ」
にわかには、信じがたい。自分に親族がいて、ずっと帰りを待たれていたとは。
だがこれは使い方によっては「宿題」を有利に進められるかもしれない。どう返答すればいいのか、セレンは精一杯考えながら言った。
「私にはそんな・・・いきなり外から来た私を、ウツギの人はきっと認めてはくれないでしょう。それより、もっと良い方法をお伝えするために、私はトリトニアからミリア様と共に来たのです」
「それは・・・?」
「私は、トリトニ大公ガウラス様から、ウツギの長への密書を携えてきたのです。書そのものはミリア様が隠し持っているので今お渡しできませんが、内容はお伝えできます。それは・・・」
セレンはその内容を一字一句たがわずアジサイに伝えた。
大公はいずれイベリスを潰したいと思っていること。その前にウツギの民を仲間に引き入れたいこと。イベリスを介さずにジュエルの取引をしたいこと。ウツギがイベリスの支配から逃れるために、援助は惜しまないこと・・・。
苦しんでいるウツギの民にとっては、願ってもいないことだろう。セレンはそう思って誇らしげに伝えたが、アジサイの表情は暗いままだった。
「どうでしょうか、アジサイ・・さん」
彼女はうつむけていた顔を上げた。
「アジサイ、でいいのよ、セレン・・・私達は、家族なのですから」
そしてまた微笑んだ。が、その笑みはどこか淋しげだった。
「大国であるトリトニアからそのような申し出があることは、ありがたいです。ただ、私は・・・これ以上、人々の血を流したくないのです」
だまりこんでいた男が、アジサイに向かって言った。
「そんな、アジサイ様!またとない、チャンスではないですか?!」
アジサイはたしなめるような顔つきになった。
「そのように結論を急いではなりません。考えてもごらんなさい。トリトニア国の援助を得てイベリスの支配から開放されたら、その後はどうなるの?私達は、次は彼らに頭が上がらなくなるわ。申し出はありがたいけど、私達は自分の力でこの状況を抜け出すことが第一なのよ。でないと利用されつくされるだけなのだから・・・」
セレンは驚いた。
虫も殺せぬかよわい風情の彼女が、なぜ民の信頼を得、長としてウツギをまとめあげているのか、わかった気がした。
その場の利益ではなく、長い目で一族の未来を考えている。少々、長すぎるのかもしれないが・・・。
しかし、スグリは不服そうだった。
「だからといって今の状況がつづけば、一生イベリスのいいようにされて終わってしまうかもしれない、アジサイ様・・・」
セレンはアジサイのほうを向いた。
「アジサイ、心配はもっともです。民を想うその判断、立派だと思います。
ただ大公は、イベリスが行っているような支配をするつもりはありません。一例を出しますと、ウツギの民の持つジュエル・・・いえ、こちらの言い方ですと翠玉、ですね・・・の、専売契約を結ぶとか、同盟を組むとか、そういった形になるかと思います」
そのセレンの言葉に、アジサイは少し考えるそぶりを見せた。
「そうね・・・それは、こちらにとっても良い話だけれど・・・でも」
でも、のあとにいいたいことは、セレンにもスグリにもわかった。
(でも・・・そうすればイベリスが黙っていない。一歩間違えれば、またたくさんの血が流れる・・・)
セレンは沈黙を破った。
「私、アジサイの意志をミリア様にお伝えしますね。そして・・・一度、姫と会ってもらえませんか?ミリア様もアジサイと同じように、聡明でお優しい方です。きっと話をすれば、良い方向にいくとおもうのです」
その真剣な瞳を、アジサイはじっと見た。
この子の言葉には嘘がない。そう思った彼女はうなずいた。
「わかったわ。お会いしましょう」
「ありがとうございます、アジサイ・・・」
セレンは頭を下げた。とりあえずガウラス様の宿題に取り掛かることができて、ほっとした。
が、次の瞬間、自分の置かれている状況を思い出した。
(ダメだ、2人を合わせるどころか、ミリア姫にさえ会えない牢屋ぐらしなんだった・・・)
セレンは頭をかいた。
「・・・といっても、ご存知の通り、私は姫と引き離されていて・・・。ちょっと時間がかかるかもしれません。ですが絶対にお二人を会わせてみせます。なので、少し待っていてもらえますか」
「ええ、もちろん」
アジサイは微笑んだ。今日見た中で一番、明るい笑みだった。
「では、私は夜のうちに戻りますね。今夜はありがとうございました、アジサイ」
再び頭を下げたセレンを、ふわりとアジサイの腕がつつんだ。
「・・・難しい話ばかりになってしまったけど、会えて嬉しかったわ、セレン・・・。あなたは、あなたのお母さんに良く似ているわ。また、ゆっくり話しましょうね・・・。」
こんなふうに抱きしめられることなど、記憶の限り始めてだ。アジサイからは薬香の甘い香りがする。セレンはその細いからだをぎゅっと抱きしめ返した。
「私も。アジサイ、あなたのような人と血がつながっているとわかって、嬉しいです」
抱擁の中で、めったに口にすることのない本心が、自然と口からでた。
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