鬼様に生贄として捧げられたはずが、なぜか溺愛花嫁生活を送っています!?

小達出みかん

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儚い幸福(百夜視点)

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 年もあけ、残寒去りやらぬその日。麓の神社から、大勢の人が武器を手に攻めてきた。
 何が理由だったのかは、わからない。いつまでたっても水分(みくまり)の音沙汰がない事に業を煮やしたのか、はたまた困窮したのか。
 先頭に立っていたのは陰陽師と、澪子の従兄妹であるという男女だった。
 だが、この封印の中にただ人は入れない。あきらめて去ってくれることを願って、百夜は澪子を屋敷の奥に隠して静観していた。しかし、それが裏目に出た。
巫女の封印の内に入れないと悟った陰陽師は、百夜を澪子もろとも焼き殺そうと火をかけた。冬の乾いた空気の中、火はあっという間に燃え広がった。気が付いた時には、もう遅く、澪子は煙をたくさん吸い込んで、息を詰まらせ―…

「澪、澪、どうしたのですか、起きて、起きてください…!」

 必死の思いで屋敷の奥から助け出した澪子を腕に抱いて、百夜は呼びかけた。背後では屋敷が燃えていた。だがそんな事はどうでもよかった。百夜は澪子の頬を軽くたたいた。だがその小さい頭は、力なく垂れているばかり。
――もう、心臓も止まっていた。それはわかっていた。
だが百夜は、現実を受け止められなかった。わなわなと震える唇で、その名を呼んだ。

「目をあけて、返事をしてください…澪!」

 物いわぬ澪子を、百夜はぎゅっと抱きしめた。声が揺れて、裏返る。

「嘘ですよね…?私を、おどろかそうと…して…いるんでしょう?」

 百夜がなんど名前を呼ぼうと、もう返事が返ってくることはない。
 澪子の目に百夜が映ることも、彼女の唇が自分の名を呼ぶことも…。

ついにそれを認めた百夜は、がくりと頭を垂れた。全身に、凍るような震えが走った。

(嘘だ―…なんで、なんで澪が。私でなく澪が)

 やっと笑顔になってくれたのに。幸せを教えてくれたのに。いろんな着物を着せて、美味しいものを一緒に食べて、これからもっと、澪子を幸せにするはずだったのに。

(澪は―…悪い事などひとつもしていない。私とちがって、何の罪もない人間なのに)

 百夜は鬼気迫る勢いで顔を上げて、湖の方角へ視線を飛ばした。澪子を失った絶望が、百夜に荒唐無稽な願いを口走らせた。

「頼む!澪を…!生き返らせてくれ、頼む…!」

 その瞬間、空気がぐわんと歪んだような心地がした。背後は燃え盛っていたが、百夜はぞっとするような冷たい気配を感じた。その冷たいものの想念が、百夜へ流れ込んだ。

(…生き返らせてくれ…?ずいぶんと…都合のいい鬼…)
(捕らえた人間を、お前は一度でも助けたか…?)

それは、この地で命を奪われた死者の声なのか、封印に命をささげた巫女の怒りなのか―。

その言葉に、百夜は殴られたような衝撃を感じた。
どのくらいの人間の命を、自分は奪ってきたのだろう?正確な数は、記録を見ねばわからないほどだ。

 なのに、たった一人の澪子が死んで、これほどまでに苦しい。彼女は、百夜にとっては何にも代えがたい、特別な存在だったからだ。だが…

―――自分が殺した人間も、きっとそうだったのだ。
 一人一人はきっと誰かの妻で、夫で、息子で、娘だった。
その命が奪われて、今の百夜のように苦しんだ人間が、その数だけいる。

 その事実に初めて気が付いた百夜は、息が止まりそうになった。

(わ…私は……何という、事を……)

 澪子を失って、百夜は今初めて気が付いた。
 人の命は、それぞれがたったひとつしかない、大事で尊いものだという事が。

 ならば自分の罪は、あがなえないほどに深い。

「す…すまな…かった……」

 百夜は深く頭を垂れて呟いた。そんな事ではどうにもならないとはわかっていたが、言わずにはおれなかった。

 だが。

「ですが澪は…澪は、何も償うものなどない…!なのに私の巻き添えになってしまった…どうか澪だけは」

 誰にともなく百夜は訴えた。その声にはもはや狂気が滲んでいた。

(私はどうなってもいい、澪だけは――…)
 
 だがいくら神頼みしたところで、一度死んだ人間がタダで生き返ることなどありえない。散々不老不死を追いもとめ、その境界を探してきた百夜には悲しいほどそれがわかっていた。
 命は儚い。人間のものはことに。
 百夜は拝むのをやめ、肩を落とした。

(澪、あなたのいない世界で、どうして生きていけるでしょうか―…)

 火の手は留まる事を知らず、山を焼き尽くさんばかりだ。燃える炎を背後にしながら、百夜は目を閉じそのまま澪子を抱きしめた。

 澪子は死んだ。自分は山を出る事ができない。
 ならば今、ここで一緒に池に沈めばいい―…

 百夜は浅瀬から立ち上がり、澪子を抱いたまま深みへと一歩、足を踏み出した。ぬるい水に全身が沈み、百夜は目を閉じた。

 手のなかの澪子だけは離さず、そのまま2人は一緒に水底へと落ちていった。


◇◇◇


 だが、どうした事だろう。百夜が目を開けると、そこは池の底ではなく、自室の畳の上だった。
 
(!?)

 百夜は飛び起きて障子の外の庭を見た。青空は天高く、澄んだ風が紅い木々と池のおもてを揺らす。

(秋…?どういうことだ。私は、夢を見ているのか?)

 百夜は自分の手をまじまじと見たあと、頬をパンと叩いてみた。普通に痛い。感覚は起きている時そのものだ。

「これは…現実、なのか?」

 声に出して言うも、答える者はいない。

「そうだ澪、澪はどこだ?ましろは…!」
 
 百夜は考えるより先に炊事場へ向かっていた。だがそこは埃かぶって、昔百夜が飲み散らかした瓶子が散乱しているだけだった。

(これは…昔の炊事場そのものだ。どういう事だ…)

 百夜は考え込みながら蔵へと向かった。残り少ない酒と、しまい込んだ木箱がぱっと目についた。

(そうだ、この箱の中に…ましろがいれば)

 ある仮説が、百夜の脳裏に浮かんだ。百夜は震える手で木箱の蓋を開けた。

「ま…ましろ」

 信じられない事に、中にはしまったままだった白い狐がおさまっていた。

「ましろ…起きろ、私だ…」

 百夜がその体に触れると、ましろの目が開いた。

「ご、しゅじん…サマ?」

 ぽわんとした目が彼を見上げたとたん、百夜はうめき声と共に膝をついた。あまりの事に、体を支える事ができなかったのだ。

(戻っている―…時間が、巻き戻ったんだ!澪子が来る前の秋に…!!!)

 肩を震わせて嗚咽を漏らす百夜を、ましろは箱から出て心配そうに見上げた。

「ご主人サマ…ドウシタノ…?」

「ま、ましろ…」

 震える声で答えようとした百夜に、ましろは不思議そうに首を傾げた。

「ましろ…?ダレの…コト?」

 その言葉に、百夜は声を詰まらせた。

(ましろは覚えていない―…!私だけが、前の事を覚えているのか…!)

 だとしたら澪子も、きっと同じだ。
 最初の出会った日のことも、鮭雑炊を作ってくれた事も、幸せな時間を過ごしたことも…
 すべて、覚えていない。
 この思い出を抱えているのは、自分だけ。
 だが、百夜はぐっと拳を握りしめ、うなだれた頭を上げた。

(…でも、それでもいい)

 生きてまた会えるのだ。それ以上に望むことなどない。
 そして今回こそは。

(澪…あなたを死なせません)

 百夜は強くそう誓った。

◇◇◇

 百夜は初めてのような顔をして、また澪子と出会った。
 様々な後悔があった百夜は、澪子と共に過ごせるだけでただただ嬉しかった。

(今度は―…あなたに幸せだけを、感じてほしい)

 百夜は自分にできるすべての事を澪子にした。最初から自分の気持ちを偽らずに告げ、朝な夕な澪子に愛情を注いだ。そして今度は前より早い段階で、再び澪子と夫婦となる事ができた。
 また幸福な日を過ごす事ができて、百夜は巫女に深く感謝するほどたった。

(きっと鏡も…子孫の澪が死んだ事は、予想外だったのだろう)
 
 だから人智を越えた力が発動して、時が巻き戻った。澪子の命を救う事は、きっと巫女の願いでもあるはずだ。
 百夜はそう解釈して、今回は屋敷に火がかけられぬよう様々に根回しをした。ましろを使い、旧縁のあった風来と繋ぎをつけ、薬を売って金を稼いだ。神社が困窮しないようこっそり献金し、自分たちの屋敷を焼けにくくするための改装もした。
 あの冬の日の人間からの攻撃さえ食い止めれば、澪子は死なないはずだ。
 そして二人で一緒に、この屋敷で幸せに過ごすのだ。澪子の寿命が尽きるまで―――…。
 
 だが、百夜が描いていたその計画はまたも見事にぶち破られた。
 火事を回避しても、結界内に入ってきた蝶子に、澪子は刺殺された。彼女もまた、巫女の末裔であったからだ。蝶子は味方のような顔をして、澪子を陥れて殺したのだ。もう人を殺生すまいと百夜が決めていたことも仇となった。
 
 血染めの澪子を抱きしめ、再び自分の無能を呪った百夜だったが、巫女は再度やり直しを認めてくれた。
またしても秋の座敷で目を覚ました百夜は、今度はあの従兄妹たちに注意せねばと考えを改めた。

様々な試行錯誤をした―…寿命が延びるかと、橘を植え、澪子に食べさせた。冬が来るまでに屋敷の守りを固め、頑丈な縄を用意した。そして攻めてきたその日、百夜は結界内に入ろうとした蝶子と泰信を両脇に抱え峠へ降り、一昼夜縄をかけて見張って澪子から遠ざけ、二度と山へ足を踏み入れぬように脅した。本当は殺してしまいたかったが、我慢をした。澪子が悲しむだろうし、巫女の怒りに触れる可能性があったからだ。
 そして何事もなく日付がかわった。今度こそ、澪子を守れた。そう思った百夜は、怯える二人を峠の外へ開放し、屋敷へと戻ろうした。

 その時だった。地面がぐらぐらと揺れたのは。

(これは――地震!?)

 今まで感じた事がないほどの強い揺れだった。百夜は立っていられず、地面に倒れた。早く澪子を助けなければ。飛翔すれば地面の揺れは回避できるはず。そう思った百夜は風をつかもうとした。が、風もこの揺れに動乱していて、乗ることは不可能だった。

(澪―…澪が!!)

 それでも、百夜は走って屋敷へと戻った。何度も転んで、全身痣と傷だらけとなった。
 だが、遅かった。地震によって山崩れが起こり、屋敷のあった場所は瓦礫と岩の積み重なる地と化していた。

「澪!どこですか…!!」

 百夜は血眼になってその瓦礫へと突撃した。鬼の力でもってしても、岩をどかすのは容易ではなかったが、一時ほどして、力なく揺れる手がその間から見えた。その指先には血が滴り、澪子はすでに…

 それを見た百夜はがくりと膝をついた。全身に力が入らない。体が重くて、手足が地面にのめりこんでしまいそうだった。

(何度も繰り返した結果が、これだというのか…!)

 血を吐くようにして百夜は叫んだ。

「最初から、決まっていたのか…?巫女よ…!全部、無意味だったのか…?」

 だがその時、百夜の頭の中で冷たい自身の声が一言、響いた。

(…ひとつだけ、確実に澪子を救う方法がある…わかっているくせに)

 百夜はぎゅっと目を閉じて、唇をかみしめた。

―この山にいる限り、澪子は助からない。ならば、山から出せばいいだけのこと。

 今気が付いたわけではない。最初から、その方法がある事はわかっていた。
 だが、どうしてもそれはできなかった。

 もはや澪子は、百夜の全てだったからだ。

(澪、あなたと離れてしまえば…私に生きる理由などない…)

 彼女の命の最後まで、一緒にそばに居たかった。大事にして暮らせば、人間は60年ほどは生きられるはずだ。そしてその時が来たら、自分も後を追えばいい。そのために百夜は何度も同じ時間を繰り返した。
だがその結果、澪子を何度も死なせた。きっと痛かったはずだ。苦しかったはずだ。血のにじむその手を握って、百夜は澪子に謝った。

「すまない…すまない、澪……」

 また、澪子が死ぬのを見るのか。
 それとも、この山から解放して生きつづけてもらうか。

 とうとう、その選択をしなければならない時が来たのだ。どちらが正しいかなんて、最初からわかっていた。なのに百夜のわがままで、澪子に何度も苦しい思いをさせた。

(澪子は生きのびるべきだ…そして悪い鬼である私は、この山でひとり死ぬ)

 …それがきっと、巫女の真の望みのはずだ。百夜はうつむいて目を閉じた。喉がぎゅっと締め付けらえたように熱く痛い。

(でも…私は、彼女の笑った顔が好きだったじゃないか)

そのためなら何でもしたいと思っていたはずだ。だから彼女が幸せになるなら、別れる事だって耐えられるはずだ。
それでなければ、きっとこの繰り返しは終わらない。鏡は、子孫の娘の命が助かる事で満足し、時を戻すことをやめるだろう。

「次で…最後だ。澪をこの山から、出す」


◇◇◇


 澪子を見送った今、百夜の身体からはすべての力が抜けてしまった。燃える熱も、生きる気力も、なにもかもだ。

 もうできる事はやり切った。この屋敷の蔵も薬箱ももう全て空っぽだ。すでに新しい家に中身を移してあるので、澪子も山から遠ざけてそちらに移動させる。下町の、こじんまりとした屋敷。澪子が一生暮らすのに困らないほどの薬の在庫が、そこにある。毎晩休まず働き続けた成果だ。
今日から彼女はその家に住む。後を頼んだ風来が、澪子のため動いてくれるだろう。

(澪子はこれからも、ましろと幸せに暮らすんだ―――…やっと、彼女を本当に幸せにできたんだ…)

 百夜はそう自分に言い聞かせながら、腑抜けたように柱に身を預けた。もう自分にできる事は、酒を飲むことくらいだ。百夜はおいてあった瓶子(へいじ)を引き寄せ、そのまま一気に煽った。灼けるような透明の液体が喉へと染みる。このくらいでは全然酔えない。百夜は酒を置いてある炊事場へ行くため立ち上がった。
澪子のいなくなった屋敷は、見違えるほどに色あせ、どこを歩いても寒々しく感じた。

(ああ…あなたが居たから、この牢獄のような屋敷は美しかったのですね)

 澪子がましろと共にいつも立ち働いていた炊事場に、百夜はひとり腰かけた。澪子はいつも謙遜していたが、彼女の料理が百夜はこの上なく好きだった。きのこ汁。炙った団子。そして―…鮭の入った雑炊。

 今回が最後だから、百夜は澪子との時間を大事にした。一秒でも長く彼女と一緒に居たかったから、彼女が寝ている間にやるべきことはすべてやった。
 澪子を悲しませたり、傷つけるような事は一切したくなかった。だから恥ずかしがりの彼女が自信をつけて自分から来てくれるまで、体を重ねるのは待った。
 外へ出ても何不自由なく暮らせるように、できるだけのことはしつくした。
  
(澪は―…手紙を読んだら、きっと悲しむでしょうね)

 その気持ちを想像すると、百夜の胸は痛んだ。だがその痛みはどこか甘くもあった。きっと澪子はたくさん泣くだろう…。百夜を映していたあの澄んだ瞳が、百夜のために涙を流す。
百夜は再び瓶子を煽った。しだいに酒が効いてきて、悲しみも辛さもぼんやりと薄まっていく。百夜の心に呼応するように、空はだんだんと暮れて、暗闇が訪れた。

―――この山が崩壊するまで、あとわずかだ。
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