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二年生へん
きもちわるい
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「ユーリ」
「わ、今度は兄さんか……」
「手を拭こう」
「え、手袋してるので、ちょ、取るな取るな」
「おいおい、落ち着け。あーこっちこっち」
手袋を取ってまで俺の手を拭こうとするヴィルの肩を叩いて、カイル先輩が誘導をする。
向かった先はバルコニーだった。幻想的な室内とは真逆の、現実の景色が広がっている。潮風に宝石をちりばめたような夜空、暗い海。中よりも少し低い気温に、なんだかほっとする。人工物というのは嫌いではないし、むしろ好きだが自然のままのほうが見てるぶんには違和感がない。
カイル先輩は、ヴィルたち以外にも護衛が居る。中を見ると、その護衛たちがバルコニーの出入り口で待機をしていた。
動き回る王子様をいつでも助けられる距離で、かつ、周囲に違和感ないように動くのは大変な仕事だろう。俺に近づく人間に殺意を隠さないどこかの誰かには、できないことだ。
「つかれたぁ」
「もう少し頑張ってください」
「カイルに演技ができるわけないだろう。ユーリはよく頑張っていたよ」
手すりに寄りかかったカイル先輩は、むっとした顔でヴィルを見る。
「苦手なんだよ、嘘ってのは」
「そんな性格で公務も外交も勤まると思えないね」
「うるせー、オレは将来王子なんてやめてやるって決めてんの」
王子って辞めようとして辞められるものなのか、確かにカイル先輩は王子様らしくはない。だが、何が向いているかというと分からない。酒屋とかどうだろう。
どちらかというと、俺も政には向いていない。こんな性格だしな。だが、カイル先輩よりは自分を隠すことができる自信がある。たまに我慢ができなくなるが、歳をとればこういう部分も丸くなるに違いない。
「国の事は優秀な兄たちに任せて、オレはどっかの砦守ったり騎士団やったりするんだ。もしくは傭兵」
「良いですね、田舎の自警団とか設立してくれたら協力しますよ」
「そんなところ行かなくても、ユーリは僕が養うよ」
ボケにボケを重ねて、ボケを返すみたいな状況になってきた。俺はあえて乗っただけだが、ヴィルは違うだろ。本音だろ。カイル先輩は調子を取り戻してくれ。でないと俺ではヴィルを捌けない。
疲れた、というよりジェイの言葉が刺さったように見えた。彼と会ってから、少しカイル先輩のテンションが下がったように思えたからだ。
「ところで、彼はなんなのかな」
「彼、ジェイ? この国の第二王子、王子っぽくねぇけどな」
「そうではなく、やたらユーリに馴れ馴れしかった」
「それ、お前が気にしてるだけだろ」
「いや、俺も思いましたよ。馴れ馴れしいというより、前から俺を知っていたのかなって」
ヴィルに呆れた顔をしていたカイル先輩だったが、俺の言葉に首を傾げる。
考えようによっては、そこまでおかしくはないのだが、口ぶりが初対面の人間に対するものにしては妙に感じた。本当に、些細な違和感なので言語化がし難い。
「そういう人間ってだけだと思う。あいつ、オレと初めて会った時も初めまして感なかったし」
幼き日、とある式典で出会った時、まるでかつての友のように声をかけられたのだとカイル先輩は語る。子供の頃から馴れ馴れしく、絡み方が面倒くさい男だったそうだ。
「オレたち王子としては駄目だよねー、とか言って肩組んでくるけど、あいつ素行が悪いだけで魔法だのなんだのはヴィルみたいなんだよ。オレとは全然違う」
「性格最悪なのに天才肌ってことですね」
「褒められると照れるよユーリ」
「ヴィル……褒めてねぇぞこいつ」
最近のヴィルは、俺への感情を隠さなくなった。いや、前からそうだったかもしれないんだけど、もう少しマイルドだったと記憶している。
弟相手に正気を疑うような発言をしているというのに、ヴィルのファンは「ヴィルさまもお茶目なところがあるのね」程度で済ませていて、恋は盲目という言葉が真実だと知った。
カイル先輩が引いてくれるだけで俺は嬉しい。真っ当な反応だ。俺は普通の感覚を持っていたんだ。
眉を顰めたまま、カイル先輩は気を取り直してといった様子で口を開く。
「とにかく、ジェイは元からだよ」
「そういうものですか」
正直、どこがおかしいかと聞かれると性格だからという範囲で済んでしまいそうで、それ以上何も言えない。
ちら、とヴィルを横目で見ると、ばっちり目があった。お前はいつでも俺を見ているのか、怖いぞ。
ヴィルはしばし、口を閉ざしていたが納得いかないといった風に目元を歪める。
「僕は、彼を警戒しておいて損は無いと思うよ。アーヴィン家であるからといって、さすがに王族に顔を知られるほどではない。なのに彼は、僕をユーリの兄だと言い当てた」
「鎌をかけただけだろ」
「どうかな、だとしても妙だ。カイルはもう少し人を疑い、人を騙すことを学んだらどうだい?」
綺麗にほほ笑んで、しっかり嫌味を言う。血のつながりは無いのに、こういう所に兄弟を感じてしまった。
育ちのせいかな、と両親に思いを馳せているとバルコニーの戸が開く。そこからお散歩に出ていた犬たちが姿を現した。
「気が付いたらみんな居なかった。焦るから声かけてくれ」
「クロエ……、外に出てったって言ったろ」
のんびりとしたクロエと、少し疲れた様子のアルが俺たちの元へやってきた。
すでに心行くまで料理を堪能したとなのか、クロエは満足げだ。表情筋は死んだままだが、瞳が輝いている。
アルはここ来た当初より服が乱れている。まさかお目当ての料理を取るために暴れたわけではないだろう、揉め事にでも巻き込まれたのか。
「なんていうか、アルは何があった」
「なんかアル、女の子にいっぱい話かけられてた。もてもてってやつ?」
「クロエもだろ! なのに全部俺に押し付けて」
「聞こえないかったよ」
なるほどな、こいつらも目立つからな。家柄は置いといて顔は良い。クロエは身長が会った頃よりも伸びたせいで、立っているだけで待ち合わせの目印になるレベルだ。
そういえば、俺もカイル先輩も挨拶回りに勤しんでいたせいで何も食べられていない。俺たちについていたヴィルも同じくだろう。
「俺も何か食べてこようかな」
「シーグレイブは魚介料理が美味しいんだよ。行こうか」
「馬鹿、ユーリはオレと行動だ。今日は我慢しろヴィル」
カイル先輩が俺の手を引くヴィルをはがし、じとりと睨む。ヴィルはあからさまに不機嫌になったが、大人しく下がった。なんだかんだ与えられた仕事は、こなす男だ。生徒会の仕事も同じくらいさぼらずやれ。
シーグレイブでの数日はあっという間で、観光してパーティ参加して観光して転移装置で帰宅となった。
学生業を休んでの旅行だったので、長居はできていない。本当なら船で行ける離島や、海底に沈んだ神殿探索もしたかった。潜水艦みたいな乗り物ではなく、水竜の力を使っていくのだという。ロマンがあって良い。いつか行きたいものだ。
時間というのはあっという間で、すぐに春が来て俺は二年に上がった。
スタジュエの舞台の年であり、リーフの予知いわく、今年に厄介ごとが起きるのだという。
逃げたい気持ちと、腹くくって面倒ごと全てをねじ伏せてやる、という気持ちが俺の中で戦っていた。
やろうと思えば逃げられる。たぶん。ただ、不確定な未来のために自分の人生を投げうつのも嫌ではある。それに、他にもいろいろ。
常々思うのは、前世の記憶が戻る前の俺の方がある意味幸せだったよな、ということだ。
周りを憎んで妬んで恨んで、実はそれってすごく楽なんじゃないかと思う。誰かのせいにして生きられたら良かった。だが、今の俺は、俺の行動次第で誰かがどうにかなることに、かなり敏感になっているように感じる。
ヴィルとカイル先輩は三年となり、受験生だ。ただ二人は特進生ということもあって、推薦も貰えるだろう。
ヴィルは、受験で苦労する姿が想像できない。カイル先輩もなんだかんだ、苦手科目もしつこく勉強すればできる人だ。そもそも王子様って受験するのか?
二年になって俺の周辺で起きた変化は、まずクラス替え。
一年のころやたらつっかかってきたクロードくんと別のクラスになってしまった。非常に残念だ。
代わりにアル、クロエと一緒になった。アルは嬉しそうだが、これはどう見ても忖度。別に三人違うクラスでも俺は良かったんだぞ。
そしてもう一つ、特進の担任ポジションであったリザ先生が産休に入り、代わりの教師がやってきたことだろうか。
エドガーという名の男性教師で、去年は三年の担任をしていたそうだ。眼鏡にブロンド、穏やかな笑顔がチャームポイント。生徒からの人気も高い。上級生の担任だったから、俺はよく知らないが優しい先生だろうな。
そして最後。変化、というか悪化したことがある。
反世界樹をうたっていた者たちが落ち着いてきたかと思いきや、打倒世界樹! 新たなる神を崇めよ! といった謎の教団が誕生してしまった。
彼らの崇拝する神は、過去より蘇った黒き神だそう。その神が言うには、世界樹を倒しその生命力を解放すれば、この国はもっと豊かになるのだとかなんとか。
確かにあれは生命力と魔力の塊だ。でも、あれを伐採したところで他の人に分配されるものではない。
様子のおかしい集団に、民衆はすっかり手のひらを返し、やっぱ世界樹最高だよな。やばいやつらから俺たちを守れよなという空気を出している。
スタジュエ本編でも、悪魔崇拝の敵集団が世界樹を襲うところから始まっているので、本当にゲーム内に近しいことが起こる予感がする。
悠太がストーリーをほぼ覚えていないせいで、次はこれが起こるぞとはっきり言えないのがもどかしい。
記憶にあるの、システムと戦闘についてばっかり。装備品のステータスとかあんまり役に立たないんだ。
俺もその教団入りたい。神は崇拝しないけど、世界樹を切るのは一向に構わない。俺はあいつの事嫌いだし。でも、彼らにとっては俺も敵。襲われないように、極力一人で行動するなと学園長直々にお達しが出ているくらい、憎まれているっぽい。実際に会ったことがないので、実感が出来ていない現状だ。
という状態なのだが、俺は今一人で行動している。
教室から面談室へ足早に向かう理由は、特進生の面談があるからだ。特進生一人一人とちゃんと話をしたいという、新担任エドガー先生の意向である。
何故一人かって、アルは生徒会へクロエは教師に呼ばれてどこかに行った。二人は俺が一人になることに難色を示していたが、学園内は良いだろうと俺が一人で教室を出た。
学園の防護壁は強固だといいつつ、裏世界からの侵入には無力なんだよな。とクロエの能力を使った侵入者を思い出す。でも影があればどこへでも侵入可能は、チートだからあまり考えないでおいた。
春の柔らかな日差しが廊下を照らす。窓の外は、色とりどりの花が咲いた中庭が広がっており、季節が一つ巡ったことを知らせている。
この国には、桜は無い。似た花は、現在リーフがいる国に存在するもののあくまで似ているだけだ。
「あー、聖女くんだ」
「は?」
窓を見ながら歩いていると、曲がり角から現れた人物が俺の前ににゅっと手を出す。
制服を激しく気崩した縦長な男は、確か
「ジェイ、王子?」
「呼び捨てで良いよ。せーんぱい」
にい、と笑った顔が獲物を前にした蛇のようだ。
そういえばシルヴィアに来るって言っていたな。他国から留学してくる生徒は珍しくない。だがこの男は、わざわざ国境を越えてまで魔法を学ぶタイプだろうか、なんて疑念を抱いてしまう。ファーストインプレッションって大事だな。
それに、シーグレイブはそこまで魔法を重視しておらず、どちらかというと機械技術の発展を進めていたはずだ。技術科の棟に居た方が自然に感じた。
「ね、聖女くんはさぁ、聖女の生まれ変わりだから世界樹に選ばれたの?」
「いいや、聖女が来なかったのでその代わりだ」
「でも近しい何かがあったんじゃない? だから選ばれたんだと思ったぁ」
「俺に近いとか、聖女が可哀想だろう」
「なんで?」
質問が多いやつだな。なんでそんなに世界樹と聖女に興味津々なんだ。
覗き込む瞳をよく見ると、変わった瞳孔をしているのに気が付いた。縦に長くて、爬虫類みたいだ。そういえば、竜化したクロエもこんな風になるな。ということは、こいつも何か特殊な力があるのか?
「アーヴィン家の次男について少し調べたら出てくるぞ、性格最悪ってな。こんなのと一緒なんて嫌だろうよ」
「そういうの、自分で言っちゃうんだ」
「開き直っているからな」
そう、俺は本来悪役である男。前世の記憶が無ければ今頃アルやヴィルを恨みつつ、強くなる方法を探っていただろう。
一人孤独に嫉妬に塗れ、世界を恨んで闇落ち。こう書くと、良い敵役だ。殴ることに躊躇しなくて良さそうじゃないか。化け物になるのも自業自得ってやつ。
「たしかに、聖女くん母性が足りないわ」
「何?」
聞き間違えか? こいつ母性って言った?
「母性ー、世界を包み込むような海みたいな心ぉ、世界を照らすような圧倒的光属性」
「あるわけないだろ。あっても父性だ」
「聖女たるもの必要じゃない? 癒しを与える存在だよ」
「なりたくてなったわけじゃない。というか聖女っていうな。母性が欲しいなら実家にでも帰ったらどうだ? それともきみは母君と不仲なのかな?」
「仲良しでーす。ぼくが求めてるのは聖女の母性なんだよねぇ」
何言ってるんだこいつ。ヴィルとは違うベクトルの気持ち悪さがある。胎内回帰願望ってやつなら、俺ではなく別の人間、せめて女性に求めてくれ。いや、まあオルカンドでは男同士でも子供作れる術があるんだけど、いったん忘れよう。
クロエに近い背の高さのせいか、やたら圧がある。見下ろされるとどうにも動けない。これが蛇に睨まれた蛙化現象。なんてな。
廊下を歩く生徒も、絡まれる俺をちらりと見てからジェイへと視線を移し、何も居なかったかのようにその場を去る。この男、触ってはいけない空気を出しているから仕方ないな。
「残念だが、きみの期待通りの人間ではない。聖女にやたら幻想を抱いているようだが、それなら俺ではなく過去の記録を調べた方が良い。必要ならお勧めの書籍を貸してやる」
「貸してくれんの? 優しーね、でも要らない。ぼくのが彼女をよーく知ってるから」
顔をあげ、目を細めたジェイは俺の頭をぽんぽんと撫でる。
「ぼくは特進行くと思うから、その時またお世話してね。せんぱい」
大した自信だ。手を振って去る後姿に、あれの世話か、と形容し難い感情がわく。
なんというか、ここが日本だったら彼は、結構強めなおたくになっていただろう。同担拒否ってやつなんだろうか。カイル先輩とは、聖女について語り合わない方が良いだろう。
悠太の記憶にあるおたくしか知らないが、キャラを嫁と言うタイプな気がする。いやいや、さすがに失礼がすぎるな。他国の王子に対してなんてことを、……でも、この得体のしれない寒気はなんだろう。
ねっとりとした視線が、心の奥をみようとしているみたいで不快だった。いくら俺が丸くなったとはいえ、耐えられなくなったら目つぶしくらいするかもしれない。
「わ、今度は兄さんか……」
「手を拭こう」
「え、手袋してるので、ちょ、取るな取るな」
「おいおい、落ち着け。あーこっちこっち」
手袋を取ってまで俺の手を拭こうとするヴィルの肩を叩いて、カイル先輩が誘導をする。
向かった先はバルコニーだった。幻想的な室内とは真逆の、現実の景色が広がっている。潮風に宝石をちりばめたような夜空、暗い海。中よりも少し低い気温に、なんだかほっとする。人工物というのは嫌いではないし、むしろ好きだが自然のままのほうが見てるぶんには違和感がない。
カイル先輩は、ヴィルたち以外にも護衛が居る。中を見ると、その護衛たちがバルコニーの出入り口で待機をしていた。
動き回る王子様をいつでも助けられる距離で、かつ、周囲に違和感ないように動くのは大変な仕事だろう。俺に近づく人間に殺意を隠さないどこかの誰かには、できないことだ。
「つかれたぁ」
「もう少し頑張ってください」
「カイルに演技ができるわけないだろう。ユーリはよく頑張っていたよ」
手すりに寄りかかったカイル先輩は、むっとした顔でヴィルを見る。
「苦手なんだよ、嘘ってのは」
「そんな性格で公務も外交も勤まると思えないね」
「うるせー、オレは将来王子なんてやめてやるって決めてんの」
王子って辞めようとして辞められるものなのか、確かにカイル先輩は王子様らしくはない。だが、何が向いているかというと分からない。酒屋とかどうだろう。
どちらかというと、俺も政には向いていない。こんな性格だしな。だが、カイル先輩よりは自分を隠すことができる自信がある。たまに我慢ができなくなるが、歳をとればこういう部分も丸くなるに違いない。
「国の事は優秀な兄たちに任せて、オレはどっかの砦守ったり騎士団やったりするんだ。もしくは傭兵」
「良いですね、田舎の自警団とか設立してくれたら協力しますよ」
「そんなところ行かなくても、ユーリは僕が養うよ」
ボケにボケを重ねて、ボケを返すみたいな状況になってきた。俺はあえて乗っただけだが、ヴィルは違うだろ。本音だろ。カイル先輩は調子を取り戻してくれ。でないと俺ではヴィルを捌けない。
疲れた、というよりジェイの言葉が刺さったように見えた。彼と会ってから、少しカイル先輩のテンションが下がったように思えたからだ。
「ところで、彼はなんなのかな」
「彼、ジェイ? この国の第二王子、王子っぽくねぇけどな」
「そうではなく、やたらユーリに馴れ馴れしかった」
「それ、お前が気にしてるだけだろ」
「いや、俺も思いましたよ。馴れ馴れしいというより、前から俺を知っていたのかなって」
ヴィルに呆れた顔をしていたカイル先輩だったが、俺の言葉に首を傾げる。
考えようによっては、そこまでおかしくはないのだが、口ぶりが初対面の人間に対するものにしては妙に感じた。本当に、些細な違和感なので言語化がし難い。
「そういう人間ってだけだと思う。あいつ、オレと初めて会った時も初めまして感なかったし」
幼き日、とある式典で出会った時、まるでかつての友のように声をかけられたのだとカイル先輩は語る。子供の頃から馴れ馴れしく、絡み方が面倒くさい男だったそうだ。
「オレたち王子としては駄目だよねー、とか言って肩組んでくるけど、あいつ素行が悪いだけで魔法だのなんだのはヴィルみたいなんだよ。オレとは全然違う」
「性格最悪なのに天才肌ってことですね」
「褒められると照れるよユーリ」
「ヴィル……褒めてねぇぞこいつ」
最近のヴィルは、俺への感情を隠さなくなった。いや、前からそうだったかもしれないんだけど、もう少しマイルドだったと記憶している。
弟相手に正気を疑うような発言をしているというのに、ヴィルのファンは「ヴィルさまもお茶目なところがあるのね」程度で済ませていて、恋は盲目という言葉が真実だと知った。
カイル先輩が引いてくれるだけで俺は嬉しい。真っ当な反応だ。俺は普通の感覚を持っていたんだ。
眉を顰めたまま、カイル先輩は気を取り直してといった様子で口を開く。
「とにかく、ジェイは元からだよ」
「そういうものですか」
正直、どこがおかしいかと聞かれると性格だからという範囲で済んでしまいそうで、それ以上何も言えない。
ちら、とヴィルを横目で見ると、ばっちり目があった。お前はいつでも俺を見ているのか、怖いぞ。
ヴィルはしばし、口を閉ざしていたが納得いかないといった風に目元を歪める。
「僕は、彼を警戒しておいて損は無いと思うよ。アーヴィン家であるからといって、さすがに王族に顔を知られるほどではない。なのに彼は、僕をユーリの兄だと言い当てた」
「鎌をかけただけだろ」
「どうかな、だとしても妙だ。カイルはもう少し人を疑い、人を騙すことを学んだらどうだい?」
綺麗にほほ笑んで、しっかり嫌味を言う。血のつながりは無いのに、こういう所に兄弟を感じてしまった。
育ちのせいかな、と両親に思いを馳せているとバルコニーの戸が開く。そこからお散歩に出ていた犬たちが姿を現した。
「気が付いたらみんな居なかった。焦るから声かけてくれ」
「クロエ……、外に出てったって言ったろ」
のんびりとしたクロエと、少し疲れた様子のアルが俺たちの元へやってきた。
すでに心行くまで料理を堪能したとなのか、クロエは満足げだ。表情筋は死んだままだが、瞳が輝いている。
アルはここ来た当初より服が乱れている。まさかお目当ての料理を取るために暴れたわけではないだろう、揉め事にでも巻き込まれたのか。
「なんていうか、アルは何があった」
「なんかアル、女の子にいっぱい話かけられてた。もてもてってやつ?」
「クロエもだろ! なのに全部俺に押し付けて」
「聞こえないかったよ」
なるほどな、こいつらも目立つからな。家柄は置いといて顔は良い。クロエは身長が会った頃よりも伸びたせいで、立っているだけで待ち合わせの目印になるレベルだ。
そういえば、俺もカイル先輩も挨拶回りに勤しんでいたせいで何も食べられていない。俺たちについていたヴィルも同じくだろう。
「俺も何か食べてこようかな」
「シーグレイブは魚介料理が美味しいんだよ。行こうか」
「馬鹿、ユーリはオレと行動だ。今日は我慢しろヴィル」
カイル先輩が俺の手を引くヴィルをはがし、じとりと睨む。ヴィルはあからさまに不機嫌になったが、大人しく下がった。なんだかんだ与えられた仕事は、こなす男だ。生徒会の仕事も同じくらいさぼらずやれ。
シーグレイブでの数日はあっという間で、観光してパーティ参加して観光して転移装置で帰宅となった。
学生業を休んでの旅行だったので、長居はできていない。本当なら船で行ける離島や、海底に沈んだ神殿探索もしたかった。潜水艦みたいな乗り物ではなく、水竜の力を使っていくのだという。ロマンがあって良い。いつか行きたいものだ。
時間というのはあっという間で、すぐに春が来て俺は二年に上がった。
スタジュエの舞台の年であり、リーフの予知いわく、今年に厄介ごとが起きるのだという。
逃げたい気持ちと、腹くくって面倒ごと全てをねじ伏せてやる、という気持ちが俺の中で戦っていた。
やろうと思えば逃げられる。たぶん。ただ、不確定な未来のために自分の人生を投げうつのも嫌ではある。それに、他にもいろいろ。
常々思うのは、前世の記憶が戻る前の俺の方がある意味幸せだったよな、ということだ。
周りを憎んで妬んで恨んで、実はそれってすごく楽なんじゃないかと思う。誰かのせいにして生きられたら良かった。だが、今の俺は、俺の行動次第で誰かがどうにかなることに、かなり敏感になっているように感じる。
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ヴィルは、受験で苦労する姿が想像できない。カイル先輩もなんだかんだ、苦手科目もしつこく勉強すればできる人だ。そもそも王子様って受験するのか?
二年になって俺の周辺で起きた変化は、まずクラス替え。
一年のころやたらつっかかってきたクロードくんと別のクラスになってしまった。非常に残念だ。
代わりにアル、クロエと一緒になった。アルは嬉しそうだが、これはどう見ても忖度。別に三人違うクラスでも俺は良かったんだぞ。
そしてもう一つ、特進の担任ポジションであったリザ先生が産休に入り、代わりの教師がやってきたことだろうか。
エドガーという名の男性教師で、去年は三年の担任をしていたそうだ。眼鏡にブロンド、穏やかな笑顔がチャームポイント。生徒からの人気も高い。上級生の担任だったから、俺はよく知らないが優しい先生だろうな。
そして最後。変化、というか悪化したことがある。
反世界樹をうたっていた者たちが落ち着いてきたかと思いきや、打倒世界樹! 新たなる神を崇めよ! といった謎の教団が誕生してしまった。
彼らの崇拝する神は、過去より蘇った黒き神だそう。その神が言うには、世界樹を倒しその生命力を解放すれば、この国はもっと豊かになるのだとかなんとか。
確かにあれは生命力と魔力の塊だ。でも、あれを伐採したところで他の人に分配されるものではない。
様子のおかしい集団に、民衆はすっかり手のひらを返し、やっぱ世界樹最高だよな。やばいやつらから俺たちを守れよなという空気を出している。
スタジュエ本編でも、悪魔崇拝の敵集団が世界樹を襲うところから始まっているので、本当にゲーム内に近しいことが起こる予感がする。
悠太がストーリーをほぼ覚えていないせいで、次はこれが起こるぞとはっきり言えないのがもどかしい。
記憶にあるの、システムと戦闘についてばっかり。装備品のステータスとかあんまり役に立たないんだ。
俺もその教団入りたい。神は崇拝しないけど、世界樹を切るのは一向に構わない。俺はあいつの事嫌いだし。でも、彼らにとっては俺も敵。襲われないように、極力一人で行動するなと学園長直々にお達しが出ているくらい、憎まれているっぽい。実際に会ったことがないので、実感が出来ていない現状だ。
という状態なのだが、俺は今一人で行動している。
教室から面談室へ足早に向かう理由は、特進生の面談があるからだ。特進生一人一人とちゃんと話をしたいという、新担任エドガー先生の意向である。
何故一人かって、アルは生徒会へクロエは教師に呼ばれてどこかに行った。二人は俺が一人になることに難色を示していたが、学園内は良いだろうと俺が一人で教室を出た。
学園の防護壁は強固だといいつつ、裏世界からの侵入には無力なんだよな。とクロエの能力を使った侵入者を思い出す。でも影があればどこへでも侵入可能は、チートだからあまり考えないでおいた。
春の柔らかな日差しが廊下を照らす。窓の外は、色とりどりの花が咲いた中庭が広がっており、季節が一つ巡ったことを知らせている。
この国には、桜は無い。似た花は、現在リーフがいる国に存在するもののあくまで似ているだけだ。
「あー、聖女くんだ」
「は?」
窓を見ながら歩いていると、曲がり角から現れた人物が俺の前ににゅっと手を出す。
制服を激しく気崩した縦長な男は、確か
「ジェイ、王子?」
「呼び捨てで良いよ。せーんぱい」
にい、と笑った顔が獲物を前にした蛇のようだ。
そういえばシルヴィアに来るって言っていたな。他国から留学してくる生徒は珍しくない。だがこの男は、わざわざ国境を越えてまで魔法を学ぶタイプだろうか、なんて疑念を抱いてしまう。ファーストインプレッションって大事だな。
それに、シーグレイブはそこまで魔法を重視しておらず、どちらかというと機械技術の発展を進めていたはずだ。技術科の棟に居た方が自然に感じた。
「ね、聖女くんはさぁ、聖女の生まれ変わりだから世界樹に選ばれたの?」
「いいや、聖女が来なかったのでその代わりだ」
「でも近しい何かがあったんじゃない? だから選ばれたんだと思ったぁ」
「俺に近いとか、聖女が可哀想だろう」
「なんで?」
質問が多いやつだな。なんでそんなに世界樹と聖女に興味津々なんだ。
覗き込む瞳をよく見ると、変わった瞳孔をしているのに気が付いた。縦に長くて、爬虫類みたいだ。そういえば、竜化したクロエもこんな風になるな。ということは、こいつも何か特殊な力があるのか?
「アーヴィン家の次男について少し調べたら出てくるぞ、性格最悪ってな。こんなのと一緒なんて嫌だろうよ」
「そういうの、自分で言っちゃうんだ」
「開き直っているからな」
そう、俺は本来悪役である男。前世の記憶が無ければ今頃アルやヴィルを恨みつつ、強くなる方法を探っていただろう。
一人孤独に嫉妬に塗れ、世界を恨んで闇落ち。こう書くと、良い敵役だ。殴ることに躊躇しなくて良さそうじゃないか。化け物になるのも自業自得ってやつ。
「たしかに、聖女くん母性が足りないわ」
「何?」
聞き間違えか? こいつ母性って言った?
「母性ー、世界を包み込むような海みたいな心ぉ、世界を照らすような圧倒的光属性」
「あるわけないだろ。あっても父性だ」
「聖女たるもの必要じゃない? 癒しを与える存在だよ」
「なりたくてなったわけじゃない。というか聖女っていうな。母性が欲しいなら実家にでも帰ったらどうだ? それともきみは母君と不仲なのかな?」
「仲良しでーす。ぼくが求めてるのは聖女の母性なんだよねぇ」
何言ってるんだこいつ。ヴィルとは違うベクトルの気持ち悪さがある。胎内回帰願望ってやつなら、俺ではなく別の人間、せめて女性に求めてくれ。いや、まあオルカンドでは男同士でも子供作れる術があるんだけど、いったん忘れよう。
クロエに近い背の高さのせいか、やたら圧がある。見下ろされるとどうにも動けない。これが蛇に睨まれた蛙化現象。なんてな。
廊下を歩く生徒も、絡まれる俺をちらりと見てからジェイへと視線を移し、何も居なかったかのようにその場を去る。この男、触ってはいけない空気を出しているから仕方ないな。
「残念だが、きみの期待通りの人間ではない。聖女にやたら幻想を抱いているようだが、それなら俺ではなく過去の記録を調べた方が良い。必要ならお勧めの書籍を貸してやる」
「貸してくれんの? 優しーね、でも要らない。ぼくのが彼女をよーく知ってるから」
顔をあげ、目を細めたジェイは俺の頭をぽんぽんと撫でる。
「ぼくは特進行くと思うから、その時またお世話してね。せんぱい」
大した自信だ。手を振って去る後姿に、あれの世話か、と形容し難い感情がわく。
なんというか、ここが日本だったら彼は、結構強めなおたくになっていただろう。同担拒否ってやつなんだろうか。カイル先輩とは、聖女について語り合わない方が良いだろう。
悠太の記憶にあるおたくしか知らないが、キャラを嫁と言うタイプな気がする。いやいや、さすがに失礼がすぎるな。他国の王子に対してなんてことを、……でも、この得体のしれない寒気はなんだろう。
ねっとりとした視線が、心の奥をみようとしているみたいで不快だった。いくら俺が丸くなったとはいえ、耐えられなくなったら目つぶしくらいするかもしれない。
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名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結済】虚な森の主と、世界から逃げた僕〜転生したら甘すぎる独占欲に囚われました〜
キノア9g
BL
「貴族の僕が異世界で出会ったのは、愛が重すぎる“森の主”でした。」
平凡なサラリーマンだった蓮は、気づけばひ弱で美しい貴族の青年として異世界に転生していた。しかし、待ち受けていたのは窮屈な貴族社会と、政略結婚という重すぎる現実。
そんな日常から逃げ出すように迷い込んだ「禁忌の森」で、蓮が出会ったのは──全てが虚ろで無感情な“森の主”ゼルフィードだった。
彼の周囲は生命を吸い尽くし、あらゆるものを枯らすという。だけど、蓮だけはなぜかゼルフィードの影響を受けない、唯一の存在。
「お前だけが、俺の世界に色をくれた」
蓮の存在が、ゼルフィードにとってかけがえのない「特異点」だと気づいた瞬間、無感情だった主の瞳に、激しいまでの独占欲と溺愛が宿る。
甘く、そしてどこまでも深い溺愛に包まれる、異世界ファンタジー
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる
ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。
この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。
ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
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※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
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