【R18】VRMMO 最強を目指す鍛錬記

市村 いっち

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リリィ・フランネル

リリィ・フランネル(6)

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 アジムはリリィに「8:2」以下にはならない、と言い切られて、頷いた。

「でしょうね。リリィさんと剣をあわせてみて、自分の弱さを痛感しました」
「アジムくんはちゃんとスキルとステータスを上げきってたから、
 弱いんじゃないの。自分の強みの押し付け方を知らないだけだと思う。
 でも、今の時点で私がいいたいのはそこじゃないの」

 言い切ったリリィはアジムが怒り出さないか不安だったのだが、不快な表情を見せるどころか当たり前のように肯定したのを見て、内心ほっとしつつ言葉を続ける。

「アジムくんの強みが、強みになりきれていないの」

 言われている意味がわからず、アジムが首をかしげると、

「アジムくんの強みって、素手の一撃で鎧の上から私を倒せる攻撃力と、
 何しても死にそうにないほど高いVIT(体力)と分厚い鎧に加えて
 「抵抗力」や「回復強化」スキルまでもった総合的な耐久力……で、いいよね?」
「はい。自分でもそのつもりです」
「攻撃力はちょっと置いておくとして、
 耐久力のほうにちょっと問題があって……。
 ステータスやスキルはいいんだけど、装備が問題なの」

 リリィそう言われて、やっぱりアジムは首をかしげる。

「一応、身体に合った装備は使ってますけど……」
「そうじゃないの。
 アジムくんの防具って、どうやって用意したの?」
「俺より少し前に始めた友人が鍛冶スキル持ちだったので、
 身体に合わせて作ってもらいました。
 普通にノンプレイヤーキャラクターの店で売っている装備はサイズが合わなくて」
「そうすると、普通に鉄製だよね?」
「はい。
 え、それがダメなんですか?」
「ダメ。全然ダメ。
 むしろそんな装備で私とそれなりに斬りあえてたほうがおかしいの。
 後で装備の差に気がついて、私、ちょっと自信なくしそうだったんだから」

 一瞬だけがっくりした様子を見せたが、すぐに気を取り直してリリィは自分の腰にある剣を叩いて見せる。

「私の剣はそこそこ難易度の高いダンジョンにもぐったときに、
 宝箱から見つけたものなんだ。最初から強化魔法がかかってる剣なの。
 結構、自慢の剣なんだ」

 リリィは歯を見せて笑ってから、顔を引き締めて言葉を続ける。

「強化魔法がかかってるから、鉄くらいなら簡単に斬れる。
 だから、アジムくんが身に付けている防具くらいなら、
 簡単にばっさりいけちゃうの」
「ああ、なるほど。
 リリィさんとやりあったときに、鎧が酷く痛んだのはそれですか」
「そう。でも、耐久力を売りにするんだったら、
 それじゃダメなの。私程度の攻撃力なら、
 鎧で「受け流す」んじゃなくて「受け止め」られるようにならないと」

 正直なところ、アジムが今のままの装備でも、決闘ランキング下位にいる間は十分に通用するだろうとリリィは剣を合わせた感触で判断している。決闘ランキング中位に位置するリリィの、剣と魔法を織り交ぜた攻撃を、じりじりと鎧を削られ血を流しつつもリリィが隙を見せるまで淡々と受け流し続けた我慢強さがあれば、装備が不十分でも決闘ランキング下位ならかなり強いほうに部類されるだろうと、リリィは感じている。

 だが、アジムに伸びしろがあって、その伸びしろが簡単に伸ばせるものなら伸ばしてあげたいと、リリィは思っている。

 今後、アジムとやりとりが増えて、お互いの関係がどう変化するかはわからない。
 けれど、今の時点では、リリィはアジムのことをすごく気に入っている。

 一度身体を重ねたら、上からモノを言うようになる男は腐るほど見てきた。まして、決闘で勝って陵辱してからだと、奴隷に対する主人のような振る舞いをするやつのほうが多かった。だが、リリィはプレイ嗜好として陵辱されるのが好きなだけであって、普段から奴隷扱いされるのが好きなわけではないのだ。

 アジムは事前の取り決めどおり、リリィの面倒な性癖に付き合って陵辱してくれたし、その後こうして顔を合わせても、リリィのことをゲームの先輩として扱ってくれている。

 リリィの言葉に素直に頷きつつも「防具か……でも、サイズがなぁ……」などとぼやきながら、頭を掻いているアジムにリリィは笑いかけた。

「アジムくんのような戦い方とか、体格の人ってほとんど見たことがないから、
 商人プレイヤーの間に流通している防具を調べたら、
 意外と安く手に入るんじゃないかなって思うんだ。

 ただ、商人プレイヤーは商人スキルで商売してるから、
 スキルがない人が商人プレイヤーから買おうとすると、
 すっごく高い値段をふっかけられることもあるから、
 できれば知り合いの商人を通じて買ってもらったほうがいいかも」

 そこまで口に出してから、アジムが今使っている防具のことを思い出す。

「そういえば、今使っている防具は、思い入れとかはないの?
 せっかくオーダーで作ってもらったんだよね?」
「ああ、どんなものがいいのかわからないままに、
 身体に合わせて作ってもらっただけのものですし、
 大丈夫ですよ」
「作ってくれた人、怒ったりしないの?」
「別に怒られるようなことでもないですよ
 鍛冶スキル上げるための練習がてらに作ってくれただけですし」
「うーん……そうなのかなぁ」

 アジムはまったく気にした様子もなく言っているが、職人が自分の作ったものをないがしろにされていると思ったら、やっぱり怒るのではないだろうかとは思うのだが、アジムが言い切ってしまっているのにリリィが気を揉んでも仕方ない。

「アジムくんは防具を探してくれそうな商人さんって知り合いにいる?
 いないなら、私の知り合いに声をかけてみようか?」
「いいんですか?
 是非、お願いします!」
「じゃあ、ちょっと待ってね。
 メッセージ送ってみるから。
 たぶん、この時間ならログインしてると思う」

 リリィが言うのに頷いて、アジムは腰の剣の位置を確かめた。
 フレンドメッセージなどのゲーム内のシステム的なものは、目を閉じていれば瞼の内側に浮き上がるようになっている。当たり前だが、メッセージのやりとりを始めたリリィは目を閉じている。この間、当然ながらシステム情報以外は目に入らなくなるので、隙だらけだ。街中ではあるし、酒場の中には他のプレイヤーはいないので、突然襲われたり拉致されたりすることはないだろうが、警戒しておくに越したことはない。

 しばらくメッセージのやりとりをしていたリリィは、最後に「む」と眉間にしわをよせてから、目を開けた。

「うーん……なんかね、
 アジムくんが身に付けられそうなサイズの鎧って、
 ほとんど出回らないんだって」
「あー……まあ、俺みたいな体格の人は少ないですからねぇ」
「大きなサイズの鎧を持ち帰っても、買ってくれる人がいないから、
 ダンジョンで見つけても捨てて帰っちゃうんだって」
「俺のサイズだと、持ち帰るのも重いでしょうから」
「うん……だからね、
 オークションとかに良さそうな鎧が出たら
 押さえておくよとは言ってくれてるんだけど、
 今身に付けられるものは用意できなさそう……ごめんね」
「いえ、そんな。ありがとうございました。 
 しばらくはあの鎧と付き合いますよ」

 アジムは気楽にそう言って、店員の娘を呼んで珈琲を注文する。

「とりあえず、鎧を直してもらって、
 リリィさんに斬られた部分は分厚く強化してもらおうかな」
「それよ、アジムくん!」
「え?」

 なんとか実践に耐える装備を入手できないか、いっそ一緒にダンジョンに潜ろうかと考えていたリリィは、アジムの言葉でぴんと来た。

「今の鎧に魔法をかけて、強化してもらえばいいんだ!
 付与魔術師にお願いしよう!」
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