女神なんてお断り!~感情を封印された女神が3人のハイスペ神様兼王子に溺愛されまして

紅位碧子 kurenaiaoko

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(あ――!もう、本当っに嫌だっ――!)
 
 何を好んであの腹黒女に会いに行かねばならないのか?

 アーレイの魂の叫び。
 天界になんて行きたくない。
 行きたくない!
 完全アウェーな天界。
 
  そこには、超苦手なあの方がいらっしゃる。
 また無理難題を押し付けられることだろう。
 天界に行く足取りはずっしりと重い。

 さすがに作業着姿では天界には行けないため、歩きながら霊術を使い、正装に着替える。
 
 ――はぁ。
 ――――ふぅ。
 ため息また1つ。
 
 主の魂の叫びが聞こえたのか?白銀のモフモフの塊がひょっこりとアーレイの肩に飛び乗ってきた。鬣が埋もれるほどのモフモフ具合がとても可愛い。

「ムーパ、心配してくれたんだ。ありがとう」

 アーレイがムーパのモフモフな毛を優しく撫でる。お腹のあたりを撫でると嬉しそうに目を細める。
 ムーパは、その昔にアーレイが天界樹の近くで瀕死のところを助けた霊獣だ。

 白と銀の中間色の毛並みをした一角霊獣。

 助けた時はアーレイがまだ小さかったこともあるがアーレイでは抱えきれないくらいの大きさだったが、現在ではアーレイの腕にすっぽりと埋まる大きさである。

「むむっーんっ」

 ムーパが何かを言いたそうに短く呻いた。

「天界に一緒に来てくれるの?」

 アーレイの問いかけにムーパは体を寄せてすりすりとモフモフな毛並みを擦り付けてくる。

「ありがとう、ムーパ!」

 アーレイはムーパをギュっと抱き締めた。
 ムーパは攻撃系の霊術が一切使えないアーレイにとっては大切な護衛だ。

 彼は霊獣では珍しく転移術から、攻撃術まで幅広く霊術を使える。アーレイが使えない術も多く、二人で補っているのだ。
 
(本当に、ムーパがいてくれて助かる!)
 
 護衛を連れて行けない天界には姿を消して一緒に行動が出来るムーパは最高のパートナーだ。
 でも、何かあった時のためにもっと保険かけとかなきゃ。それほどまでにあの方は陰湿だ。
 ついでに言うならば、母娘で陰湿だ。
 
 先ほどミルラには伝言を頼んだし、ムーパも連れて行くが理不尽なことで拘束されたら堪らない。
 なんせ天界に大至急、それも直接赴くなんて滅多にないこと。
 普段ならば、指令などは霊伝書で届くし、天界に赴く必要がある際は大抵が日時指定がある。
 だが、今回は異例中の異例。
 大至急な上に、直接、だ。
 何かとてつもなく嫌な予感がする。
 
 ――――はぁ。
 
 やっぱり、連絡しておこう。
 先ほどの『保険』を実行すべく、幼馴染み3人に霊伝を飛ばす。
 
「いま、大丈夫?アーレイだけど」
 
 久しぶりに幼馴染みに連絡を入れる。
 
(学院の卒業式以来かなあ?)
 
 霊伝はお互い契約した相手同士なら複数でも会話が可能だ。しかし、霊力をそれなりに使うため、アーレイのレベルでも4人くらいが限界であった。
 
 程無くして一人また一人と応答があった。
 
「さっきね、天界から大至急来いって呼び出しがあったから行くんだけどさ」
 
 アーレイが切り出す。
 
「俺もだ」
 
「私もだ」
 
「ああ、そうだ」
 
 ほぼ同時に同じような会話が繰り広げられる。
 
「え――――っ!ってことはみんな呼び出し食らったってこと?あの腹黒女に?」
 
 アーレイは予想外の展開に更に驚く。
 
「とりあえずは何が起こるか分からないから霊伝は繋いでおこう」
 
 この中で最年長の2400才であり、北の国の第2王子であるジーエンが切り出した。
 
 爽やかな物腰に、女性へのエスコートが抜群に上手いジーエンはいつも女性との噂が絶えない。細身ながらも引き締まった体躯。金髪碧眼といった美丈夫な外観も女性受けこの上ない。
 
(まあ、裏では策士な腹黒ドSなんだけどね……)
 
 裏の顔を知るアーレイはいつもそのギャップを楽しんでいた。
 
 この四人の中では、宰相タイプとして本領を発揮してくれる。
 また、ジーエンは医薬の神でもあるため、医薬にも精通していた。
 ちなみに、アーレイ含め残り三人は2160才。
 人間界の一年が天界では120年になるため、人間の年齢に換算するならば18才になる。
 
「何で魔界の第二王子まで呼び出されんのか、わかんねーよなぁ」
 
 ウェイが呟く。
 魔王と天界の王女との間に生まれたウエイ。
 そのため、霊術も魔術も使いこなせす貴重な人材だ。今では魔界軍を束ねる立場にある。
 ウエイが言うのももっともなことで、通常は魔界の人間は天界には何か事件など起こさない限りは行く場所ではない。
 それは、天界と魔界が過去の歴史において何度も争いを起こし、悲劇を産んできたからだ。
 そのため、天界と魔界では協定が結ばれ人材交流も活発化し、結婚するものも増えてきた。
 
「そーだよねぇ」
 
 ――――はぁ。 
 
 とまたため息をつく。
 
「アーレイ、心の声が駄々漏れだぞ」
 
 リンセイの苦笑いが聞こえそうだ。
 
「だってさ。リンセイだって知ってるでしょ。学院にいた時のあの数々の嫌がらせと無理難題!このメンバーが一番迷惑被ったじゃない」
 
「まぁな……」
 
 南の国の第二王子であり、天界軍の戦神でもあるリンセイは普段から口数は少ないものの、冷静沈着で先を読む力に長けている。軍人らしいがっかりとした体躯に、黒髪、黒目が印象的な見た目もクールな美丈夫だ。
 
 ――――優しくて、いい奴。
 
 これがアーレイのリンセイへの第一印象だった。
 
「今回は俺たちもいるから安心しろ」
 
 リンセイがアーレイを安心させようとなだめるも、アーレイはこのメンバーで呼び出しされたことに不安でいっぱいだった。
 
「はいはい。期待してますよ、戦神さま」
 
 嫌みな言葉も出てしまう。
 
 天界行きは毎度頭痛が起こりそうなほど、トラウマが強い。
 
「悪い。俺はもう扉に潜るからまた後でな」
 
 ウエイが先に会話を抜ける。
 
「天堂で待ってるよ、私の女神様」
 
 ジーエンが続く。
 
「ああ。後でな。アーレイ、行くぞ」
 
 リンセイが最後にアーレイを促した。
 
「うん。了解。いつもありがとうね。じゃあ、私ももうじきだから」
 
 ――――いつも三人は、優しくて暖っかいんだよね。だから、心地いいだ、この関係が。
 
 アーレイは久しぶりに聞いた幼馴染みの声に懐かしさと温かさを感じた。安心出来る心地良さ、だ。
 
 アーレイも、天界への扉に近づいた。
 
 そこを開けると、天界と繋がる空間に出る。
 
 そこにはある一定の霊力を持つものしか入れないよう結界が張られている。
 
 それには東の国で管理している天界樹が関わっている。
 
(私も小さい頃はお父様やお母様と一緒に行ったなぁ)
 
 そのため霊力が足りない場合は、霊力を有する者と一緒に行く必要があった。
 
(今回は1人じゃないし。ムーパもいる。三人もいる。だから、大丈夫!)
 
 アーレイは自分に言い聞かせた。
 
 そして、天界への扉を静かに開けた。

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