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「アーレイちゃん、大地の女神の一番の武器は何だと思う?」
霊術を学ぶ学院にいた頃、あまりに私が同級生や先輩に嫌がらせをされるため、母に相談していた時のこと。
この世界に自分を邪魔だと思っている輩が本当に多いのだ。毎日が死と隣り合わせな日々にげんなりしてしまう。
(居なくなれば困るはずなのに……。学院生使っていろいろ仕掛けてくるの、本当にやめてほしいわー)
黒幕は、学院ならば手出しがしやすいと、あの手この手を使ってくる。
「私もずっとアーレイちゃんと同じようなことに悩んでいたのよ。だから、あなたの気持ちは痛い程分かるわ」
ーーーお母様も同じだった?
私は首をかしげた。
アーレイから見る母は、完全無欠で、何でも解決できて、相手をぶったぎる強くて逞しい存在だ。
「うふふっ。もー、相変わらず可愛いんだから、アーレイちゃんってば!」
女神の武器が何かを真剣に考える私を母が茶化す。
「お母様っ!アーレイは本気で考えてますっ!」
「うふふっ。答えが出せそう?」
「うーんと……」
私は、答えに詰まった。
――――女神の武器?
考えたことがなかったからだ。
1つ言えることは、
『大地の女神ほど、無力な神はいない』
ということ。
だから、他人は勝手に期待し、誤解する。
単に背景を見ずに、その場の見たままを憶測で語る。
(まあ、そんなのには負けないけど!何にも出来ない自分が悔しくて。悔しくて……)
私はその時の感情を母に素直に語ってみることにした。
「大地の女神は、無力」
私がそうつぶやくと、母が両手を広げて抱き締めてくれた。一瞬、戸惑う私。
「お、お母様っ?」
「アーレイちゃんっ、正解よ!やだー、さすが、私の娘っ。賢いじゃない!」
どうやら正解だったらしい。
「だって、大地の女神は攻撃も出来ないし、防御すらあやふやでしょ?持てる能力は、他人や世界のためのものばかり。自己防衛すら出来ないのに、どうやって世界や自分を守れるのかってやっぱり考えちゃうじゃない?」
まさしくその通りだった。
「私が考えて考えて私なりに導き出した答えだから、正解とは言えないのだけど。参考までに話すわね」
母は前置きしながら持論を展開した。
「無力でも、一応神様なわけ。逆に考えた時に、じゃあどうして大地の女神はいるのか、と。そこから見えてきたのは、無力が最大の武器ということかな?つまり、誰かに助けてもらえる。それが最大の武器なのよ。」
ーーー誰かに助けてもらえること?
ぽかーんとしてる私をよそに、母は続ける。
「でね、あと考えるに女神にとってのもう一つの武器は、『感情』だと思ってる。これはまだあなたには難しいかも知れないけど、おそらく縁者石のお告げが出る頃には分かると思う。他人の感情が分かってコントロール出来ると、攻撃術にも匹敵するパワーになるから」
母は全てを経験したからこそ、そう語った。
まさに、経験者は語る、というヤツだ。
ーーー縁者石のお告げ、かぁ。
天界の神仙の縁結びとされる縁者石。
数万年前に現れたとされる神仙の婚姻を決める石。
その時期になると、いつの間にか石の表面に婚姻を結ぶ者同士の名前が刻まれる。摩訶不思議な石らしい。
ちなみに、この石の決めた配偶者以外と結婚に至っても、なぜか元の鞘に戻ってしまうのだとか。
それが分かってからは、皆素直に従うようになったとかならないとか。
(だから、神様たちはあまり恋愛には興味がないのかな。遊びだけってヤツ?だって、結局は生まれながらに相手が決まってるんだから……)
自分のことも含めて周りを見ていてもそう思うに至った。
「今度時間があれば話すけど、私の時代の縁者石のお告げの時もそれはもう本当に大変で……」
母が遠い目をした。
もう絶対に経験したくないくらいのレベル、だったらしい。どんなレベル?と妙な好奇心が湧いてくる。
毎回波乱があるらしい縁者石。
楽しみなのか?
不安なのか?
おそらくどちらも正解。
ーーもしかしたら、お母様の時もあの腹黒女が絡んでいるのかも知れない。
ふとそんな予感がした。
ーーーふー、やれやれ。まもなく天敵とご対面かぁ。気合い入れないと!
天界の門番が声をかけてきた。
「大地の女神、アーレイ様到着。天堂に」
事前に通達があったのだろう。
到着するや指示が入る。
「ありがとう」
私は礼を述べると、天界の門をくぐった。
門を進むと天堂につながる大理石で出来た階段が広がっている。
天堂は、天帝が臣下と議会を行ったり、謁見したり、舞踏会などが開かれる場所だ。
(私からすると恐怖の伏魔殿だけどねっ!)
武器などは基本的には持ち込み禁止なはずなのに、確か前回の成人の儀の時は、いきなり衣服を切断されたっけ?あとは、新年の宴では、毒をもられたり。階段から突き落とされそうになったり。
ーーーふーっ。
あまりに数が多くてもはや覚えてないけど、本当に天界の警備体制は大地の女神限定で薄くなるのかってくらい。もっとひどいのは、それがいつの間にかうやむやにされてしまうこと。
(あの腹黒女が裏で何してるんだかっ!)
お母様も毎度のことすぎて、もはや楽しむ境地に至ってるんだとか。
だから、ここは『戦場』なのである。
階段を登ると何の装飾も施されていない、白亜の無機質な空間が目に飛び込んで来る。
そう、ここが天堂だ。
呼吸を整えて、一歩踏み出す。
霊伝で他の三人はもう到着したと連絡があった。
ムーパも空間から風を送ってくれる。
天堂に続く階段に足を踏み入れる。
(私も着いたよ)
素早く霊伝を入れる。
(今日は、槍かナイフでも降ってくるかもね)
私が冗談でつぶやく。
((大丈夫だ。俺達が全力で守る))
彼らの力強い声。
その声にいつも救われる。
(知ってるよ。ありがとう)
絶対的な安心感。
無力だけど、出陣しなくては。
小心者で、心配性な私。
運動音痴で不器用な私。
ーーーだから、覚悟を決める。
霊術を学ぶ学院にいた頃、あまりに私が同級生や先輩に嫌がらせをされるため、母に相談していた時のこと。
この世界に自分を邪魔だと思っている輩が本当に多いのだ。毎日が死と隣り合わせな日々にげんなりしてしまう。
(居なくなれば困るはずなのに……。学院生使っていろいろ仕掛けてくるの、本当にやめてほしいわー)
黒幕は、学院ならば手出しがしやすいと、あの手この手を使ってくる。
「私もずっとアーレイちゃんと同じようなことに悩んでいたのよ。だから、あなたの気持ちは痛い程分かるわ」
ーーーお母様も同じだった?
私は首をかしげた。
アーレイから見る母は、完全無欠で、何でも解決できて、相手をぶったぎる強くて逞しい存在だ。
「うふふっ。もー、相変わらず可愛いんだから、アーレイちゃんってば!」
女神の武器が何かを真剣に考える私を母が茶化す。
「お母様っ!アーレイは本気で考えてますっ!」
「うふふっ。答えが出せそう?」
「うーんと……」
私は、答えに詰まった。
――――女神の武器?
考えたことがなかったからだ。
1つ言えることは、
『大地の女神ほど、無力な神はいない』
ということ。
だから、他人は勝手に期待し、誤解する。
単に背景を見ずに、その場の見たままを憶測で語る。
(まあ、そんなのには負けないけど!何にも出来ない自分が悔しくて。悔しくて……)
私はその時の感情を母に素直に語ってみることにした。
「大地の女神は、無力」
私がそうつぶやくと、母が両手を広げて抱き締めてくれた。一瞬、戸惑う私。
「お、お母様っ?」
「アーレイちゃんっ、正解よ!やだー、さすが、私の娘っ。賢いじゃない!」
どうやら正解だったらしい。
「だって、大地の女神は攻撃も出来ないし、防御すらあやふやでしょ?持てる能力は、他人や世界のためのものばかり。自己防衛すら出来ないのに、どうやって世界や自分を守れるのかってやっぱり考えちゃうじゃない?」
まさしくその通りだった。
「私が考えて考えて私なりに導き出した答えだから、正解とは言えないのだけど。参考までに話すわね」
母は前置きしながら持論を展開した。
「無力でも、一応神様なわけ。逆に考えた時に、じゃあどうして大地の女神はいるのか、と。そこから見えてきたのは、無力が最大の武器ということかな?つまり、誰かに助けてもらえる。それが最大の武器なのよ。」
ーーー誰かに助けてもらえること?
ぽかーんとしてる私をよそに、母は続ける。
「でね、あと考えるに女神にとってのもう一つの武器は、『感情』だと思ってる。これはまだあなたには難しいかも知れないけど、おそらく縁者石のお告げが出る頃には分かると思う。他人の感情が分かってコントロール出来ると、攻撃術にも匹敵するパワーになるから」
母は全てを経験したからこそ、そう語った。
まさに、経験者は語る、というヤツだ。
ーーー縁者石のお告げ、かぁ。
天界の神仙の縁結びとされる縁者石。
数万年前に現れたとされる神仙の婚姻を決める石。
その時期になると、いつの間にか石の表面に婚姻を結ぶ者同士の名前が刻まれる。摩訶不思議な石らしい。
ちなみに、この石の決めた配偶者以外と結婚に至っても、なぜか元の鞘に戻ってしまうのだとか。
それが分かってからは、皆素直に従うようになったとかならないとか。
(だから、神様たちはあまり恋愛には興味がないのかな。遊びだけってヤツ?だって、結局は生まれながらに相手が決まってるんだから……)
自分のことも含めて周りを見ていてもそう思うに至った。
「今度時間があれば話すけど、私の時代の縁者石のお告げの時もそれはもう本当に大変で……」
母が遠い目をした。
もう絶対に経験したくないくらいのレベル、だったらしい。どんなレベル?と妙な好奇心が湧いてくる。
毎回波乱があるらしい縁者石。
楽しみなのか?
不安なのか?
おそらくどちらも正解。
ーーもしかしたら、お母様の時もあの腹黒女が絡んでいるのかも知れない。
ふとそんな予感がした。
ーーーふー、やれやれ。まもなく天敵とご対面かぁ。気合い入れないと!
天界の門番が声をかけてきた。
「大地の女神、アーレイ様到着。天堂に」
事前に通達があったのだろう。
到着するや指示が入る。
「ありがとう」
私は礼を述べると、天界の門をくぐった。
門を進むと天堂につながる大理石で出来た階段が広がっている。
天堂は、天帝が臣下と議会を行ったり、謁見したり、舞踏会などが開かれる場所だ。
(私からすると恐怖の伏魔殿だけどねっ!)
武器などは基本的には持ち込み禁止なはずなのに、確か前回の成人の儀の時は、いきなり衣服を切断されたっけ?あとは、新年の宴では、毒をもられたり。階段から突き落とされそうになったり。
ーーーふーっ。
あまりに数が多くてもはや覚えてないけど、本当に天界の警備体制は大地の女神限定で薄くなるのかってくらい。もっとひどいのは、それがいつの間にかうやむやにされてしまうこと。
(あの腹黒女が裏で何してるんだかっ!)
お母様も毎度のことすぎて、もはや楽しむ境地に至ってるんだとか。
だから、ここは『戦場』なのである。
階段を登ると何の装飾も施されていない、白亜の無機質な空間が目に飛び込んで来る。
そう、ここが天堂だ。
呼吸を整えて、一歩踏み出す。
霊伝で他の三人はもう到着したと連絡があった。
ムーパも空間から風を送ってくれる。
天堂に続く階段に足を踏み入れる。
(私も着いたよ)
素早く霊伝を入れる。
(今日は、槍かナイフでも降ってくるかもね)
私が冗談でつぶやく。
((大丈夫だ。俺達が全力で守る))
彼らの力強い声。
その声にいつも救われる。
(知ってるよ。ありがとう)
絶対的な安心感。
無力だけど、出陣しなくては。
小心者で、心配性な私。
運動音痴で不器用な私。
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