女神なんてお断り!~感情を封印された女神が3人のハイスペ神様兼王子に溺愛されまして

紅位碧子 kurenaiaoko

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8 (ジーエン目線)

前回東の国に来たときは、お忍びでマーリ様に呼ばれた時だった。

今回縁者石のお告げが出たこともあるだろうが、話がある、というのはあの件のことだろう。

(-----あれからもう何百年経っただろう。実に時の流れは早いものですねぇ)

あの当時はまだ学院生だった。
卒業後、北の国で医薬の神の修行を続けながら、父である皇帝から秘密裏に任務を任されるようになった。

それは、北の国に代々伝わる機関である『奥の院』の継承者として全ての任務を把握することだった。

『奥の院』は、いわゆる諜報機関であり、諜報部門と暗殺などを請負う軍事部門に分かれている。それらをまとめ、天界の安寧を守るのが『奥の院』の役割だ。

『奥の院』自体の存在を知っているものは少ない。
いや、少なければ少ないほどいいのだろう。

軍事部門には、毒などを主に扱う特殊部隊も存在する。

奇人変人の集団でもあるが、毒使いとしては一流ばかりだ。今回の毒もそこで調べさせるつもりだ。

(先ほどの縁者石のお告げの付帯条件。もしかしたら、この毒とも関係あるやも知れない)

ふとそんな考えがよぎる。

『医薬之神に必要な絶対治癒の力を授かることとする』

今、医薬の本拠地、北の国で医薬の神である私以上に医薬に精通している者はいない。

ただ、私とてすべてを手に入れている訳でもない。

先代の医薬の神である父ですら『絶対治癒の力』と呼ばれる霊術の会得までには及ばなかった。北に戻ったら、父を訪ねる必要がありそうだ。

奥の院といえばーーーー。

諜報活動の一環として、天界及び魔界の情報を集めているのだが、探りやすいよういつも女性受けしやすい貴公子を演じるのも毎回一苦労している。

お陰で女性と浮名を流すとんでもない男というイメージばかりが先行してしまった。こればかりは誤算でしかない。

(アーレイにだけは誤解されたくないのですが……)

これからどうやってそこを払拭していくか。
少々頭が痛い。

(はあ。これも自分の蒔いた種。なんですが、いざとなるとダメージが深刻かも知れません……)

解毒とイメージ回復。
いや、信頼回復・・なのだろうか。
目下、これらがテーマになりそうだ。

そんなことを考えながら歩いていると、どうやら目的地に着いたようだ。

「ジーエン様、こちらが貴賓室です。まもなく国王夫妻が参ります。しばしこちらでお寛ぎ下さい」
使いの者は一礼すると、貴賓室の扉を開けた。

「ありがとう。少し休ませてもらいますね」

ジーエンは、部屋に入ると目についたソファに腰をかけた。

(今日はあまりにもいろいろありすぎですねぇ……)
縁者石のお告げ。
襲撃。
治療。

頭の中を整理したいが、なかなかまとまらない。
考えごとをしているとまた霊伝が入る。どうやらウエイとリンセイが戻ったようだ。

まもなくこの部屋に到着するだろう。

(ゆっくりしているどころではなさそうですねぇ……)

天井に焦点を合わせるかのように見上げ、そっと目を細めた。

国王夫妻との面会に、ウエイとリンセイとも今後の話をする必要がある。毒も早急に解明しなくてはならない。

静寂から一転、複数の足音が近づいて来た。

扉が勢い良く開かれ一気に室内の温度が上がる。

「ジーエン、アーレイ、アーレイの様子は?」

目を血走らせたウエイが迫ってくる。

「ウエイ、落ち着いて下さい。私は医薬の神ですよ?」

だから大丈夫、と言わんばかりに近寄るウエイを静止する。リンセイは、端からそんなこと分かっているかの如く、それ以上詰め寄るな、とウエイの衣服を掴んだ。

「さすが、リンセイはよく分かっていますね」

二人は無傷とまではいかないが、あまりダメージは受けていないようだ。ジーエンが突然二人に向けて光を放つ。

「彼女の怪我は傷を回復させました。毒がまだ三割、解毒出来ていませんが命に別状はありません。北に戻って毒の解明をします。霊力が戻ればすぐ目を覚ますはずです。私たちの女神ですから。ところで、お二人さん。少し霊力を回復しておきましたよ」

「ああ、助かった。おい、ムーパ!」

リンセイの肩からひょいっと現れ、そそくさと部屋を出ていった。主が気になるのだろう。

「ムーパも元気そうですね」

念のためムーパにも回復術を施した。
「俺がムーパを迎えに行った時には、イルスをはしぎ飛ばしていたところだった。あと少し遅れたら全面戦争になってたかも知れないぜ」

そんな手加減しないムーパをイルスから引き離し、急ぎ戻ってきたのだ。

「ムーパの奴、アーレイのことが好きすぎてイルスの奴を殺りかねない勢いだったんだぜ。本当にいろんな意味で驚かされた」

ウエイの身ぶり手振りがその驚きを表現していた。

「それはそれは。彼は私たちのライバルですからねぇ」

ジーエンがくすりと笑う。
その時、国王夫妻の来訪を使いの者が告げた。

「お疲れのところ、ごめんなさいね」

たった一言話しただけでも、その場の空気が変わる。

神々しいーーいや、神様なのだからその通りなのだが。気品溢れる佇まいに、アーレイの倍は生きているはずなのに今も輝き続けるその美しさーー。

その立ち居振る舞いに大抵の者は目を奪われ、息を飲む。

アーレイと母であるマーリは本当に似ていた。
アーレイは、マーリの生き写しだった。
しかし、二人の性格はまるで違う。

マーリは、その気品溢れる美貌とは裏腹に、知力と智力に長けた策士で、大胆で甘え上手な毒舌女神。一方アーレイは、普段は臆病で心配性なのだが、好奇心旺盛でスイッチが入ると無鉄砲に行動できる責任感溢れる女神だった。

「今、アーレイの様子も見てきたの。まだ眠っていたけど大丈夫そうで安心したわ。ありがとう、ジーエン」

その笑顔の破壊力がすざましく、ジーエンの頬が一瞬で朱色に染まる。

「ねぇ、ねぇ。ヨハン。アーレイちゃんの未来の旦那さま、みんな素敵ねぇ~!さすが、私の娘だわっ!しばらく会わないうちに更にいい男になってるぅ~!」

マーリは、夫であり皇帝であるヨハンに同意を求めるようにヨハンの手を引っ張る。

ヨハンが三人にすまない、と目配せしながらマーリをソファに座らせる。

「ーーーも~っ。ヨハン!!」
マーリが少し頬を膨らませ抵抗を見せる。

「ほら、マーリ。早いところ本題に入ろうじゃないか」

三人がどう切り出そうか困っているところにヨハンが助け船を出す。

「ーーーそうね。わたくしとしたことが。はしゃぎすぎてしまったわ。こほんっ。そうそう。今日はいくつか重要なお話があるの」

マーリが防音の霊術を施す。

「これでわたくしたち以外は聞こえないわ。さて、どこから話そうかしら……」

マーリが迷い始めると、ヨハンが隣に座りそっとマーリの肩を抱いた。

「我々の縁者石の話からにしたらどうだ?」

マーリが嬉しそうにヨハンを見つめる。

「そうね。そうしましょう」

マーリが力強く頷く。
覚悟を決めた合図にも見えた。

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