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2 お見合い大作戦
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その日の放課後、昼にあれだけ派手にやらかした手前何か仕掛けてくるかと思ったが、案の定我が伯爵家の馬車をあの二人に乗っていかれた。
まあ、そんなことは初めてではないしうちの伯爵家の馬車を使ってることから、二人で我が家に向かったのだろう。
そして何故我が家に向かったかも容易に想像がつく。
なぜなら先日から両親が領地視察に出かけているため不在だからだ。
二人っきりでしたいことをするつもりなのだろう。
(本当に、盛のついた猫、いや猫に失礼か?!)
辻馬車を手配しようやく屋敷に到着したところ、やはり予想が当たっていたようで、玄関先での使用人の様子が明らかにおかしかった。
「……あの二人に馬車を乗って行かれたわ。ところで、あの二人は?」
玄関先で家令が無言で私を2階に促す。
(……なるほど。オリーブの部屋ね)
私は分かった、と頷く。
ちなみに屋敷の使用人の大半はオリーブの演技に騙されているが、次期伯爵が私のため表立って反抗する者はいない。
「例のものを頂戴。私が直接渡しに行くから」
家令はすぐに例のものを手渡してくれた。
「あと、今日のことも、両家に報告するから、そのつもりでいて」
私の厳しい口調に、家令が驚いたのか僅かに遅れて畏まりました、と言った。
私は液体の入ったガラスのコップを持ち、2階に向かう。
(ああ、見たくないものをまた見る羽目になるなんて……)
他人の情事なんて興味もないし、ましてや自分と同じ顔の妹の情事だ。心境は複雑すぎる。
オリーブの部屋の前で一呼吸する。
中から二人の声が漏れ聞こえてきた。
(さーて、突撃!)
私は勢い良く部屋の扉を開けた。
すると、眼の前で私の婚約者であるエリオット様が私の実の妹オリーブとベットの上で周りを気にする素振りすらなく裸で抱きあっていた。
二人はいきなり現れた私に驚いたのか、無言でこちらを見ていた。
女好きの無能な婚約者と、何かあれば仮病……おっと病弱令嬢に変身する主演女優賞総ナメな妹は、超お似合いなバカップル……。
私がいても2人の世界に浸ってくれちゃってる。
(あー、何だか自分と同じ顔の人間が、あの馬鹿男とまぐわっているのを見るなんて不快以外の何モノでもないわ……)
「ちょっと!二人で何してるの!?」
「…お姉様、ノックくらいしたらどうですの?私は愛しいエリオット様との逢瀬を楽しんでいたのに。お姉様のせいで興醒めだわ……」
「本当に君は余計なことしかしないな。そんなにオリーブに嫉妬しているのかい?君は正妻の地位を手に入れるんだ。恋人の地位はオリーブと楽しませてくれないかい?」
「……エリオット様。何度も申し上げておりますが、オリーブと婚約したらいかがですか?私はあなたなんて願い下げです!それと、念のため両家には本日のことをまとめて報告……しておきますのであしからず。あと……」
私はベットのオリーブに近づき、コップを手渡した。
「どうぞ愛しのエリオット様との逢瀬を楽しんで?これを飲まないとこの先、楽しめないわよ?」
オリーブはしぶしぶコップの中身を飲み干した。
「要件はこれだけだから、邪魔者は消えますね。どうぞごゆっくり」
避妊薬だけ飲ませると私は部屋を後にした。
こんな汚らわしい場所に1秒足りとも居たくなかった。
(伯爵領に群がる寄生虫ね……)
害虫は駆除しなくては。
その足で執務室に行き、父親の代わりに領主代行の作業を行う。一応、ホワイティア伯爵家にも今日の報告……抗議はするが、うちからの援助を切られたくないのでまた何らかの理由をつけてはぐらかすのだろう。
(やはり、ここまで勝手なことをされると、カイトの言うお見合い作戦を急ぐべきかもね……)
このままだと私は伯爵家の領主にはなれるが、寄生虫と共に生きなくてはならない。
そんなことはゴメンだ。
我がボールドワルド領はサファイア鉱山を擁し、また海を領地に持つため塩の生産も盛んだ。
貴族の領地としては国内有数の豊かさで、正直婿に来たい家はたくさんあるだろう。
あんなポンコツと結婚するくらいならしないほうがマシだし、両親はなぜかエリオット様を気に入っており、もはや自分で探す以外、道はなさそうだった。
そう考えると、両親不在のうちに進めれるところは進むよう、と固く決意した。
◇◇◇
「はい、これ」
翌日の昼休みに例の芝生でカイトから紙の束を手渡された。
「仕事早いね!」
まあな、とカイトはそのまま芝生に仰向けに寝転んだ。
「私さ、カイト。昨日ね、屋敷に帰って一番最初にしたことがさ。あの婚約者と妹がベットで抱き合っている部屋にずかずか入っていって、避妊薬飲ませることだったんだよね……。何かさ、私、終わってるなーって虚しくなって……。だからさ……。カイトの言ってたお見合い大作戦、本気で考えてみるから」
本当は、カイトと婚約出来たらどんなに嬉しいか。
でも、現時点でそれは難しいことは分かっていた。
だって、カイトにも婚約者がいるのだからーー。
ちなみに、カイトの婚約者はエリオット様とは別のベクトルでの破壊力が半端ない女性で、自分のことを棚にあげておいてあれだが、カイトが可哀想だなあと毎回話を聞いていて思う。
私のお見合い大作戦が成功した暁には、カイトのことも何か協力したかった。
(……あれ?もしかして、もしかするとカイトが婚約破棄になったら、私とチャンスがあるかもしれない……?)
今まで全くそんなことを考えたことがなかっただけに、その衝撃は半端なかった。
少しだけ明るい未来が見えて喜んでみたが……自分に新しく婚約者が出来たら自らその幸せを手放してしまうことになるーー。
(……何だか気分が余計に複雑になったかも……)
そんなことを考えながら私はその場でカイトから手渡された用紙をめくった。
まあ、そんなことは初めてではないしうちの伯爵家の馬車を使ってることから、二人で我が家に向かったのだろう。
そして何故我が家に向かったかも容易に想像がつく。
なぜなら先日から両親が領地視察に出かけているため不在だからだ。
二人っきりでしたいことをするつもりなのだろう。
(本当に、盛のついた猫、いや猫に失礼か?!)
辻馬車を手配しようやく屋敷に到着したところ、やはり予想が当たっていたようで、玄関先での使用人の様子が明らかにおかしかった。
「……あの二人に馬車を乗って行かれたわ。ところで、あの二人は?」
玄関先で家令が無言で私を2階に促す。
(……なるほど。オリーブの部屋ね)
私は分かった、と頷く。
ちなみに屋敷の使用人の大半はオリーブの演技に騙されているが、次期伯爵が私のため表立って反抗する者はいない。
「例のものを頂戴。私が直接渡しに行くから」
家令はすぐに例のものを手渡してくれた。
「あと、今日のことも、両家に報告するから、そのつもりでいて」
私の厳しい口調に、家令が驚いたのか僅かに遅れて畏まりました、と言った。
私は液体の入ったガラスのコップを持ち、2階に向かう。
(ああ、見たくないものをまた見る羽目になるなんて……)
他人の情事なんて興味もないし、ましてや自分と同じ顔の妹の情事だ。心境は複雑すぎる。
オリーブの部屋の前で一呼吸する。
中から二人の声が漏れ聞こえてきた。
(さーて、突撃!)
私は勢い良く部屋の扉を開けた。
すると、眼の前で私の婚約者であるエリオット様が私の実の妹オリーブとベットの上で周りを気にする素振りすらなく裸で抱きあっていた。
二人はいきなり現れた私に驚いたのか、無言でこちらを見ていた。
女好きの無能な婚約者と、何かあれば仮病……おっと病弱令嬢に変身する主演女優賞総ナメな妹は、超お似合いなバカップル……。
私がいても2人の世界に浸ってくれちゃってる。
(あー、何だか自分と同じ顔の人間が、あの馬鹿男とまぐわっているのを見るなんて不快以外の何モノでもないわ……)
「ちょっと!二人で何してるの!?」
「…お姉様、ノックくらいしたらどうですの?私は愛しいエリオット様との逢瀬を楽しんでいたのに。お姉様のせいで興醒めだわ……」
「本当に君は余計なことしかしないな。そんなにオリーブに嫉妬しているのかい?君は正妻の地位を手に入れるんだ。恋人の地位はオリーブと楽しませてくれないかい?」
「……エリオット様。何度も申し上げておりますが、オリーブと婚約したらいかがですか?私はあなたなんて願い下げです!それと、念のため両家には本日のことをまとめて報告……しておきますのであしからず。あと……」
私はベットのオリーブに近づき、コップを手渡した。
「どうぞ愛しのエリオット様との逢瀬を楽しんで?これを飲まないとこの先、楽しめないわよ?」
オリーブはしぶしぶコップの中身を飲み干した。
「要件はこれだけだから、邪魔者は消えますね。どうぞごゆっくり」
避妊薬だけ飲ませると私は部屋を後にした。
こんな汚らわしい場所に1秒足りとも居たくなかった。
(伯爵領に群がる寄生虫ね……)
害虫は駆除しなくては。
その足で執務室に行き、父親の代わりに領主代行の作業を行う。一応、ホワイティア伯爵家にも今日の報告……抗議はするが、うちからの援助を切られたくないのでまた何らかの理由をつけてはぐらかすのだろう。
(やはり、ここまで勝手なことをされると、カイトの言うお見合い作戦を急ぐべきかもね……)
このままだと私は伯爵家の領主にはなれるが、寄生虫と共に生きなくてはならない。
そんなことはゴメンだ。
我がボールドワルド領はサファイア鉱山を擁し、また海を領地に持つため塩の生産も盛んだ。
貴族の領地としては国内有数の豊かさで、正直婿に来たい家はたくさんあるだろう。
あんなポンコツと結婚するくらいならしないほうがマシだし、両親はなぜかエリオット様を気に入っており、もはや自分で探す以外、道はなさそうだった。
そう考えると、両親不在のうちに進めれるところは進むよう、と固く決意した。
◇◇◇
「はい、これ」
翌日の昼休みに例の芝生でカイトから紙の束を手渡された。
「仕事早いね!」
まあな、とカイトはそのまま芝生に仰向けに寝転んだ。
「私さ、カイト。昨日ね、屋敷に帰って一番最初にしたことがさ。あの婚約者と妹がベットで抱き合っている部屋にずかずか入っていって、避妊薬飲ませることだったんだよね……。何かさ、私、終わってるなーって虚しくなって……。だからさ……。カイトの言ってたお見合い大作戦、本気で考えてみるから」
本当は、カイトと婚約出来たらどんなに嬉しいか。
でも、現時点でそれは難しいことは分かっていた。
だって、カイトにも婚約者がいるのだからーー。
ちなみに、カイトの婚約者はエリオット様とは別のベクトルでの破壊力が半端ない女性で、自分のことを棚にあげておいてあれだが、カイトが可哀想だなあと毎回話を聞いていて思う。
私のお見合い大作戦が成功した暁には、カイトのことも何か協力したかった。
(……あれ?もしかして、もしかするとカイトが婚約破棄になったら、私とチャンスがあるかもしれない……?)
今まで全くそんなことを考えたことがなかっただけに、その衝撃は半端なかった。
少しだけ明るい未来が見えて喜んでみたが……自分に新しく婚約者が出来たら自らその幸せを手放してしまうことになるーー。
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