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同志
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我が夫の愛人であるロナウド・オーランド伯爵の妻は、ローザンヌ様18歳。
現在は、ローザンヌ・オーランドであるが、出身は同じ家格の伯爵家のスピカネル家。
長女に生まれ、調べによると物心ついた時から親交のあったオーランド家とは家族ぐるみで仲良くしており、ローザンヌ様はロナウド様を一途に愛した上で嫁いだのだそうだ。
「だとしたら、相当ショックよねぇ……」
「ですよねぇ…。なんせ愛人は旦那様ですから…」
私とナターシャはスピカネル家のお茶会に参加するための準備をしながら、同志のことを話していた。
――幼い頃から一途に思っていた相手が同性愛者だった。
「私なら知りたくないかなあ?」
「……かも知れません」
「今日のミッションは、同志とお友達になること!」
「承知しております!マリーナ様もおりますし、楽勝かと」
「……とにかく、今日参加して下さることを祈るわ」
不思議とまだ見ぬ同志と親友になれる気がしていた。
◇◇◇
お茶会の会場であるスピカネル家は、素晴らしいバラ園を持つ由緒ある伯爵家だ。
無事に会場に到着するとマリーナと合流し、主賓であるスピカネル伯爵夫妻にご挨拶させて頂いた。
(……ローザンヌ様のお兄様が爵位を継がれていたはず)
若い伯爵夫妻は好感が持てた。
「初めまして。本日はご招待頂きありがとうございました。ミザリア・ライザールでございます。以降お見知り置きを」
「……まあ、ライザール侯爵の!ゆっくりされて下さいね」
「はい。ありがとうございます。ところで、本日もしローザンヌ様がいらっしゃるようでしたらご挨拶を、と思いまして。参加されていらっしゃいますか?実は、私の夫と、ローザンヌ様のご主人が懇意にしているようで、一度ご挨拶をと思いまして……」
(本当に懇意にしているわよね……)
「あら、そんなご縁が。ローザンヌはずっと夫のロナウド一筋で、ようやく結婚出来て本当に幸せそうで……あ、あそこにいたわ!」
伯爵夫人は義妹であるローザンヌと視線があったのだろうか。ローザンヌがこちらに向かい会釈した。
「伯爵夫人、ありがとうございます。では、ローザンヌ様にも挨拶させて頂きますわ」
私は小柄でとても可愛らしい感じのローザンヌ様の元に向かった。
「すみません。初めまして。ミザリア・ライザールです」
私が自己紹介をすると、一瞬表情が曇ったように見えた。
(見間違い?ライザールに反応した?)
「……ローザンヌ・オーランドです。初めまして」
着ている淡いピンクのローズ柄のドレスが華奢で愛らしいローザンヌ様にぴったりだった。
「突然、ご挨拶させて頂きすみません。夫とロナウド様が懇意にさせて頂いているようで……。先日、ロナウド様が我が家にお越し頂いたので、一度ご挨拶を、と」
私はかなり注意深くローザンヌ様を観察した。小柄でとても愛らしく、男性の庇護欲を掻き立てるタイプだ。ブラウンの大きな瞳が一瞬陰りを見せたのを見逃さなかった。
(どうやって切り出そうか悩まれてる?)
ようやくローザンヌ様が一言目を話した。
「……本当に懇意にさせて頂いているようで……。私も一度ご挨拶を、と思っておりました。ミザリア様」
…彼女は…知っている!!
私は確信した。
そして、彼女も察したのか込み入った話が出来る場所に案内してくれた。
「ここはバラ園も見える場所なんですよ?人目につきにくい場所ですが、私は小さい頃から大好きな場所ですの」
「そうでしたか。バラも見事ですわね」
今は失礼ながらバラを楽しんでいる精神的な余裕はなかった。
「……そう言って頂けると手入れのかいがありますわ。ミザリア様、私……。ずっとずっとバラが大好きで育て手参りましたね。ようやく満開になり…とても嬉しかったですわ。なのに…花が散るのがあんまりにも早くて…」
ローザンヌ様はバラを遠目に眺めながら、紅茶を嗜まれていた。
「……ローザンヌ様。失礼なのですが初めてお目にかかりましたが、私は出会う前から勝手に同志だと思っていましたの」
「……同志?」
「……ええ。夫を愛人に奪われた同志」
ローザンヌ様の微笑みは薔薇のように美しかった。
現在は、ローザンヌ・オーランドであるが、出身は同じ家格の伯爵家のスピカネル家。
長女に生まれ、調べによると物心ついた時から親交のあったオーランド家とは家族ぐるみで仲良くしており、ローザンヌ様はロナウド様を一途に愛した上で嫁いだのだそうだ。
「だとしたら、相当ショックよねぇ……」
「ですよねぇ…。なんせ愛人は旦那様ですから…」
私とナターシャはスピカネル家のお茶会に参加するための準備をしながら、同志のことを話していた。
――幼い頃から一途に思っていた相手が同性愛者だった。
「私なら知りたくないかなあ?」
「……かも知れません」
「今日のミッションは、同志とお友達になること!」
「承知しております!マリーナ様もおりますし、楽勝かと」
「……とにかく、今日参加して下さることを祈るわ」
不思議とまだ見ぬ同志と親友になれる気がしていた。
◇◇◇
お茶会の会場であるスピカネル家は、素晴らしいバラ園を持つ由緒ある伯爵家だ。
無事に会場に到着するとマリーナと合流し、主賓であるスピカネル伯爵夫妻にご挨拶させて頂いた。
(……ローザンヌ様のお兄様が爵位を継がれていたはず)
若い伯爵夫妻は好感が持てた。
「初めまして。本日はご招待頂きありがとうございました。ミザリア・ライザールでございます。以降お見知り置きを」
「……まあ、ライザール侯爵の!ゆっくりされて下さいね」
「はい。ありがとうございます。ところで、本日もしローザンヌ様がいらっしゃるようでしたらご挨拶を、と思いまして。参加されていらっしゃいますか?実は、私の夫と、ローザンヌ様のご主人が懇意にしているようで、一度ご挨拶をと思いまして……」
(本当に懇意にしているわよね……)
「あら、そんなご縁が。ローザンヌはずっと夫のロナウド一筋で、ようやく結婚出来て本当に幸せそうで……あ、あそこにいたわ!」
伯爵夫人は義妹であるローザンヌと視線があったのだろうか。ローザンヌがこちらに向かい会釈した。
「伯爵夫人、ありがとうございます。では、ローザンヌ様にも挨拶させて頂きますわ」
私は小柄でとても可愛らしい感じのローザンヌ様の元に向かった。
「すみません。初めまして。ミザリア・ライザールです」
私が自己紹介をすると、一瞬表情が曇ったように見えた。
(見間違い?ライザールに反応した?)
「……ローザンヌ・オーランドです。初めまして」
着ている淡いピンクのローズ柄のドレスが華奢で愛らしいローザンヌ様にぴったりだった。
「突然、ご挨拶させて頂きすみません。夫とロナウド様が懇意にさせて頂いているようで……。先日、ロナウド様が我が家にお越し頂いたので、一度ご挨拶を、と」
私はかなり注意深くローザンヌ様を観察した。小柄でとても愛らしく、男性の庇護欲を掻き立てるタイプだ。ブラウンの大きな瞳が一瞬陰りを見せたのを見逃さなかった。
(どうやって切り出そうか悩まれてる?)
ようやくローザンヌ様が一言目を話した。
「……本当に懇意にさせて頂いているようで……。私も一度ご挨拶を、と思っておりました。ミザリア様」
…彼女は…知っている!!
私は確信した。
そして、彼女も察したのか込み入った話が出来る場所に案内してくれた。
「ここはバラ園も見える場所なんですよ?人目につきにくい場所ですが、私は小さい頃から大好きな場所ですの」
「そうでしたか。バラも見事ですわね」
今は失礼ながらバラを楽しんでいる精神的な余裕はなかった。
「……そう言って頂けると手入れのかいがありますわ。ミザリア様、私……。ずっとずっとバラが大好きで育て手参りましたね。ようやく満開になり…とても嬉しかったですわ。なのに…花が散るのがあんまりにも早くて…」
ローザンヌ様はバラを遠目に眺めながら、紅茶を嗜まれていた。
「……ローザンヌ様。失礼なのですが初めてお目にかかりましたが、私は出会う前から勝手に同志だと思っていましたの」
「……同志?」
「……ええ。夫を愛人に奪われた同志」
ローザンヌ様の微笑みは薔薇のように美しかった。
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