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思い
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「……私もいつかオーランド侯爵夫人とはお話したいと思っていました。このような機会が出来て……突然でしたが夢が叶いましたわ」
「……では、ローザンヌ様は毎日お辛くないですか」
「……そうですね。辛いと言えば辛いです。誰にも相談できなくて……」
ですよね、と言いそうになったがぐっと堪える。
「……私も同じですわ。ただ、私の場合は周囲に何名か話が出来る人たちがいるので……」
こうして、夫を男の愛人に奪われた妻同士は話を始めた。
それから私たちはしばらくの間、本音……で話をした。
一番驚いたのは、ローザンヌ様は結婚前からロナウド様が同性愛者と知って結婚されたということ。
(そこまでロナウド様を愛していらっしゃるとは……。私なんてまだまだね……)
同性愛者と知って結婚したにも関わらず……この思い詰めた表情なのだ。
きっと毎日の生活は結婚したから何とかなるものではなかったのだろう。
「ミザリア様はいつから……?」
「私が夫に愛人がいると知ったのも本当に偶然で……。おまけに、お相手が男性の方だと知って本当に驚いてしまって……。先日、実家に帰省した際に家族と離婚について話をしてきました」
「……そうだったのですね。離婚されるのですか」
「……はい。弁護士ともその方向で動いています。ローザンヌ様は?」
「……私の場合はすべてを知ったうえで結婚しているので離婚に関してはまだ考えていません。ただ、結婚したら少しは妻である私のことを見てくれると思っていた自分がやはり愚かでした」
「……お辛いですね。うちは、政略結婚で、正直夫には何の感情も未練もありません。ただ、この結婚に私を巻き込まないで欲しかったという思いだけ、です。このまま自分だけ我慢すれば丸く収まるから我慢しようと何度も思いました。ただ、後継ぎのことを考えると……。侯爵家としては養子でも何でも取ってもらったほうがいいかなと思うようになりました」
「……そうでしたか」
「二人は結婚前からお付き合いしていたのでしょうかね」
「ええ、もう数年以上前からの関係だと聞いています。結婚したばかりだからお互い後継ぎが出来るまでは会わないようにしているらしいです」
「……そうなのですね。私が先日しばらく実家に行っていたので、ロナウド様を招いた、のでしょうね」
「……会いたかったのでしょうね」
ローザンヌ様は涙を浮かべた。
「あと、その…同性愛者の方は、女性を抱けるものなのでしょうか」
「…それに関しては個人差があるかと…。ミザリア様はその…」
お互いに跡継ぎのために会わなかったのは、仕方ないから抱いているだけなのだろう。
「…我が家は…その…お恥ずかしい話、毎日はありますの。ただ、毎回15分程度で…。本当に苦痛なんですの…。最近は自分で潤滑油を準備している程ですわ」
「…まあ…。ミザリア様も…。ロナウド様も似たようなもので…。彼の愛はとうに諦めましたが、このままですと彼との子供も無理かも知れません…。私はただ愛する人との子供が欲しかったのです。子供がいれば…」
ローザンヌ様は嗚咽をあげながら両手で顔を覆った。私はそっと肩に手をあて、反対側の手で背中をさすった。
「…私は、ローザンヌ様が壊れてしまわないか心配です。もしよろしければ、定期的にお話しませんか」
愛している人は、絶対に自分を愛してはくれない。
子供が出来たらまた違うかも知れないけれど…。
(ある意味、私なんかよりよっぽどローザンヌ様は過酷な運命にあるわね…)
これからこの運命から自力で這い出そうとしている私とは対照的に、ローザンヌ様は抜け出せない沼にどんどんはまっているようだった。
「……では、ローザンヌ様は毎日お辛くないですか」
「……そうですね。辛いと言えば辛いです。誰にも相談できなくて……」
ですよね、と言いそうになったがぐっと堪える。
「……私も同じですわ。ただ、私の場合は周囲に何名か話が出来る人たちがいるので……」
こうして、夫を男の愛人に奪われた妻同士は話を始めた。
それから私たちはしばらくの間、本音……で話をした。
一番驚いたのは、ローザンヌ様は結婚前からロナウド様が同性愛者と知って結婚されたということ。
(そこまでロナウド様を愛していらっしゃるとは……。私なんてまだまだね……)
同性愛者と知って結婚したにも関わらず……この思い詰めた表情なのだ。
きっと毎日の生活は結婚したから何とかなるものではなかったのだろう。
「ミザリア様はいつから……?」
「私が夫に愛人がいると知ったのも本当に偶然で……。おまけに、お相手が男性の方だと知って本当に驚いてしまって……。先日、実家に帰省した際に家族と離婚について話をしてきました」
「……そうだったのですね。離婚されるのですか」
「……はい。弁護士ともその方向で動いています。ローザンヌ様は?」
「……私の場合はすべてを知ったうえで結婚しているので離婚に関してはまだ考えていません。ただ、結婚したら少しは妻である私のことを見てくれると思っていた自分がやはり愚かでした」
「……お辛いですね。うちは、政略結婚で、正直夫には何の感情も未練もありません。ただ、この結婚に私を巻き込まないで欲しかったという思いだけ、です。このまま自分だけ我慢すれば丸く収まるから我慢しようと何度も思いました。ただ、後継ぎのことを考えると……。侯爵家としては養子でも何でも取ってもらったほうがいいかなと思うようになりました」
「……そうでしたか」
「二人は結婚前からお付き合いしていたのでしょうかね」
「ええ、もう数年以上前からの関係だと聞いています。結婚したばかりだからお互い後継ぎが出来るまでは会わないようにしているらしいです」
「……そうなのですね。私が先日しばらく実家に行っていたので、ロナウド様を招いた、のでしょうね」
「……会いたかったのでしょうね」
ローザンヌ様は涙を浮かべた。
「あと、その…同性愛者の方は、女性を抱けるものなのでしょうか」
「…それに関しては個人差があるかと…。ミザリア様はその…」
お互いに跡継ぎのために会わなかったのは、仕方ないから抱いているだけなのだろう。
「…我が家は…その…お恥ずかしい話、毎日はありますの。ただ、毎回15分程度で…。本当に苦痛なんですの…。最近は自分で潤滑油を準備している程ですわ」
「…まあ…。ミザリア様も…。ロナウド様も似たようなもので…。彼の愛はとうに諦めましたが、このままですと彼との子供も無理かも知れません…。私はただ愛する人との子供が欲しかったのです。子供がいれば…」
ローザンヌ様は嗚咽をあげながら両手で顔を覆った。私はそっと肩に手をあて、反対側の手で背中をさすった。
「…私は、ローザンヌ様が壊れてしまわないか心配です。もしよろしければ、定期的にお話しませんか」
愛している人は、絶対に自分を愛してはくれない。
子供が出来たらまた違うかも知れないけれど…。
(ある意味、私なんかよりよっぽどローザンヌ様は過酷な運命にあるわね…)
これからこの運命から自力で這い出そうとしている私とは対照的に、ローザンヌ様は抜け出せない沼にどんどんはまっているようだった。
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