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14.脱出2

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何とか王宮のメイド服に着替えると、着ていた地味なドレスはゴミ箱に捨てた。

メイド服のポケットを確認する。

王宮の通行証が入っていた。

(……うん?)

反対側にのポケットには、ナナの優しさだろう。キャンディが数個入っていた。

私は緊張感を和らげるため一つ口に放り込む。

すぐに甘いリンゴの味が口に広がった。

……おっと!急げ急げ!

使用人部屋から反対側の通路を抜けると、北の塔に近い道に出られるはずだ。

私は深呼吸して扉を開ける。

ここから私はスカーレット・オルタナ公爵令嬢ではなくなる。

スカーレット・オルタナは死ぬのだ。

(私は、アイリス。単なるアイリス……!)

あまり足早では怪しまれるため、誰とも視線を合わさないよううつむき加減で移動する。

(何だか犯罪者な気分ね……)

今頃、私の捜索が始まっているはずだ。
何とか早く抜け出さないと……!
緊張感が走る。

しばらくうつむき加減で歩いていると前から侍女頭らしき服装が目に入ってきた。

頭を低く下げて、一旦止まり、腰をかがめながら侍女頭が通り過ぎるのを祈るような気持ちで待っていた。

あと2歩、1歩……。

侍女頭が通り過ぎたので、頭をあげようとした時だった。

「ちょっと……!そこのメイド!」

回りに自分以外はいないので、私を呼んでいるのは明白だった。

「……は、はい。侍女頭……」

「どこの宮の者かしら?」

「は、はい、侍女頭。私は、第二王子の宮の者です」

咄嗟に北の塔の手前にある第二王子宮を口にした。

「そう。なら、丁度良かったわ。これを届けてもらえる?」

そういうと有無を言わせず、シーツの束を渡された。

「畏まりました」

私はそれだけ告げると、シーツを抱え歩き出した。

(ふぅ、危なかった……。まあ、おかげでメイドっぽいかな?)

真新しいシーツに顔を埋めてみる。

とにかく、北の塔を目指のみ。

もう少しで日が落ちそうな時間だった。

北の塔の横にある通行門が閉まるまで時間が僅かだ。

計画では、北の塔にある井戸から、私の身代わりは飛び込む(正確には放り込む)予定になっていて、その身投げする姿を通りすがりの侍女が見ている計画だ。

しばらく歩いていると、俄に人を探していると思われる護衛騎士が私であろうか姿見を見せながら、行き交う人に訪ね歩いていた。

(……早く通り過ぎてっ……!)

神様、カミサマ……!

壁の裏側にある台の隙間に身を潜めながら足音が過ぎ去るのをひたすら待っていた。
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