「能力」によって形成された絶対的実力世界についての研究

澄川蛍光(すみかわほたる)

文字の大きさ
1 / 4
プロローグ

第1話(始まり)

しおりを挟む
目が覚めると何も見えなかった、真っ暗だ。手足も不自由だ、かなり狭い。すると突然目の前が少し明るくなって『こんにちは、まず本来ならこれから何が起こるのかを説明するのですが、あなたは少し特別なのでまずそのことから話させてもらいます』
はぁ、何事だ?
『あなたの過去は消されました、名前も記憶も。あなたに関係することはすべて。しかしこのままでは不便なのであなたに名前を与えます。これからあなたの名前はシオンです。質問はありませんか?』    
質問しかない。まず、
『ここはどこだ?』
『詳しくはお答えできませんが我々は研究所と呼んでいます』
我々、研究所……
『分かった、あとでまとめて質問するから先に全部説明してくれ』
なぜか自分でも不思議なほど落ち着いている。
『シオンさん、あなたにはこれから全部で10個のステージで戦っていただきます。見事全ステージをクリアすると地上に帰ることができます。この戦いの参加者の一部には特別な能力が与えられます。全ての参加者に与えられるわけではありませんが、シオンさんには能力が与えられてます。あなたに与えられた能力は「死者と交流ができる」という能力です。あなたにはこれからこの能力を駆使してこれからの戦いを生き抜いてもらいます、説明は以上です。質問はありませんか?』
ステージ?能力?急に話が進みすぎじゃないか?疑問が多すぎる。
『俺の能力について聞きたい、これはどんなことができる能力なんだ?』
『能力についての質問はお答えできません。これからあなたには第1ステージに行ってもらいますが、そこで始まるまでのあいだ少し時間があります。そこでいろいろと試してみてはどうでしょうか?』
『じゃあさっき言ってたステージって何をするんだ?』
『各ステージによって変わります、毎ステージの初めに説明がありますので、心配なさらずに。全ステージに共通することが1つありまして、それはバトルロイヤル、殺し合いです。この戦いで敗北は基本的に死を意味しています』
やはり薄々気づいてはいたが殺し合いか、「基本的に」という表現からすると負けても生きられる可能性があるのか?
『参加者は何人くらいいるんだ?』
『全ステージの現在の参加者の総和はこちらでも把握しきれていません。しかし死亡された方を含めるとトータルで数万人にはなるかと』
すごい人数だ、規模がデカすぎる。ここまで多くの人がこんな施設の中に閉じ込めらていて世間が気づかないなんてありえない。この参加者はどこから集められたんだ?ただ今はこんなこと考えても仕方ない。
『最後に、これからの戦いで少なからず他の参加者とコミュニケーションを取らなきゃいけなくなると思うんだが、みんな日本人なのか?それとも世界中から集まってるのか?』
『参加者は基本的に皆さん日本人です。少数ですが、外国の方もいらっしゃいますがその方々は皆、日本にいたのでほとんど言語の問題はないかと思われます』
『そうか、分かった。第1ステージに案内してくれ。第1ステージの内容はそこで説明してくれんだよな?』
『はい、その通りです。では第1ステージにお連れします』
するとまた視界が途絶えた。










次に目が覚めた時、周りに4人いた。俺と同世代くらいの男女1人ずつ、中学生か高校生くらいの子ども1人、この中で明らかに年が離れているおじさん1人。
『あなたがたにはこれから第1ステージを行ってもらいます。第1ステージはチーム戦です、ここに集まった5人は1つのチームです。5人で協力して是非第2ステージまで勝ち進んでください。』
さっき俺にいろいろな説明をしてくれた人と同じ声だ、もしかしたら人ではなくAIなどかもしれないが。
『第1ステージではどんなことをするんですか?』
俺と同年代の男が尋ねている。そもそも俺は自分の年齢すら分からないからほんとに同年代なのか怪しいところではある。とりあえずこの男のことを好青年と呼ぶことにする、頭の中でだけ。
『第1ステージは他のチームとの潰し合いです。ルールは全チームリーダーを一人決めていただきます。他のチームのリーダーを倒すとそのチーム全員に1ポイント入ります。そして3ポイント集めたチームは第2ステージに進出となります。』
『ってことは他の3チームを倒すとこのステージは終了ってことですね?』
『簡単に言えばそうです。しかしこのステージにはいろいろなルールが追加されています。例えば、リーダーは死亡したが他のプレイヤーは生き残っている場合です。その場合は生き残っているプレイヤーを新たにリーダーにしてもらいます、所持していたポイントはそのままです。また死亡する以外にもリーダーと対象のプレイヤーの両方が同意した場合リーダーを変更することができます。しかし新しくリーダーになったプレイヤーはポイントを1つ失うので気をつけてください。またリーダーとその対象となる個人の両方が同意した場合他のチームに移動することもできます。その場合、ポイントの変動はありません。このほかにも様々なルールがありますが全てを説明する暇はないので詳しくはお手元の腕時計からご確認ください、マニュアルアプリが入ってます。』
言われてから左腕を見ると腕時計が巻かれていた。デジタルの腕時計のように液晶が付いていたからタッチしてみると、空中に画面が映し出された。「ルールマニュアル」「リーダー変更」「チーム変更」など説明にあった内容がスレッドのように並んでいる。ほかにも「電話」や「ダイレクトメッセージ」など説明になかったこともいろいろ並んでいる。電話やダイレクトメッセージはチーム内の人にしかできないようだが。
『他に質問がないようでしたら、ステージ開始に移りたいんですが大丈夫ですか?』
誰も質問しない、というかそんな空気でもない。
『質問がないようなので、ステージ開始の準備を始めさせていただきます。7.8分ほどかかりますのでその間にチーム内でのコミュニケーションや能力の確認を行ってください。』
『……』
誰も話さない、というより話せない。この状況で率先して話せる奴なんてなかなかいない。
『えーと、皆さんまずは自己紹介からしませんか?僕は大野哲也と言います。残念ながら能力はなしです。よろしくお願いします!次そこの女性の方お願いできませんか?』
いた、さっきの好青年だ。見た目だけでなく、中身のコミュニケーション能力の偏差値も高い。
『私は水島カレンです、まだ試してないんですけど能力はモノを凍らす能力らしいです。よろしくお願いします。』
同年代っぽい、唯一の女性も続いた。はっきりした声だ。気も強いのかもしれない。大野が俺の方を見てる。ただちょっと俺の自己紹介は後回しにして欲しい。
『すまないが、俺の自己紹介は後にしてくれないか?少し頭が落ち着かない。』
おじさんの方を見ながら言った。日本語が変だった気もするが大丈夫だろう。
『じゃあ、次は私が。三橋克也と言います。私も能力はないんですが、よろしくお願いします。』
明らかに年上だから、もしかしたら強気に来るタイプのおじさんかと思っていたがそんなことはなかった。いい人そうだ。チームメイトとは仲良くしておきたい。
『俺は山崎竜星、能力は「体の強度を高める」だ。俺のこと年下だと思って見下してるやつがいたら、チームメイトだろうが能力使って殴るからな』
やっぱりこいつ高校生くらいだな、言葉使いからして頭は良くなさそうだ。
さすがに次は俺か。
『待たせてしまって申し訳ない、俺の名はシオン。能力はなしだ。名前が不自然に思うかもしれないが、俺もよく分かってない、記憶喪失らしい。よろしく。』
名前が俺だけ明らかに不自然だからそのことを手短に伝えて自己紹介を終えた。チームメイトには悪いが能力のことは隠させてもらう。
ここから先の会話にはほとんど入らなかった。大野がずっと話全体の進行をしていて、そのまま自然な形で大野がリーダーとなった。例え、能力がなくてもやはりリーダーシップがあるのは強みだ。他に第1ステージでの作戦や余った時間でそれぞれの昔話をしていたら準備時間が終わっていた。全体的に見て、大野という圧倒的リーダー、そして俺を含めて5人中3人が能力者ということからしてかなりいいチームなんじゃないだろうか、他のみんなは能力者は2人だと思っているわけだが。別に心配がないわけではない、1人問題児が隠れている。自己紹介から危険な雰囲気を醸し出していた山崎、ではなくリーダーとなった大野だ。俺の直感が危険だと告げている。恐らくこいつも俺と同じように能力者でありながらそのことを隠している、なんの証拠もないが。
『準備が完了しました。第1ステージにお連れします。ですが、その前に皆さんにちょっとしたヒントをお与えします。第1ステージの地図です。2分間だけお見せしますのでどうか役立ててください。』
目の前に地図が表示された。めちゃくちゃデカい。こんなの2分で覚えられるわけがない。ほかの4人は地図に近づいてガン見しているが、俺は逆に離れさせてもらった。この間に俺の能力についていろいろ試してみよう。さっきの準備時間はみんながいたから何もできなかった。
少ししたらまたアナウンスが流れてきた。
『2分経過しました。ではこれより第1ステージにお連れします。』
視界が突然奪われた。初めここに来た時と同じ感覚だ。
この場所にいたのは時間にすると15分前後だが、かなりたくさんの情報が手に入った。
この研究所と呼ばれる施設には老若男女分け隔てなくさまざまな人間が参加させられていること。
最初にあった説明のとおり、本当に能力を持っていない人間もいること、これは推測だが第2ステージ以降で非能力者にアドバンテージが与えられる機会もあるんではないだろうか。
俺の能力のことで言えば、この「死者と交流ができる」という能力はかなり抽象的であるということ。初め死んでしまった曾祖母とか隣のおじさんなど具体的に誰かを思い浮かべなければいけないのかと思っていたがそういうわけではないようだ。「死者の怨念」などを体に武装して火力をあげることなどができるらしい。ともかくこの能力はかなり奥が深い。
そしてこの戦いでの俺の目標、それはやはり勝利。勝って勝って勝って全ステージをクリアする。俺に残された道はそれしかない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

元公務員、辺境ギルドの受付になる 〜『受理』と『却下』スキルで無自覚に無双していたら、伝説の職員と勘違いされて俺の定時退勤が危うい件〜

☆ほしい
ファンタジー
市役所で働く安定志向の公務員、志摩恭平(しまきょうへい)は、ある日突然、勇者召喚に巻き込まれて異世界へ。 しかし、与えられたスキルは『受理』と『却下』という、戦闘には全く役立ちそうにない地味なものだった。 「使えない」と判断された恭平は、国から追放され、流れ着いた辺境の街で冒険者ギルドの受付職員という天職を見つける。 書類仕事と定時退勤。前世と変わらぬ平穏な日々が続くはずだった。 だが、彼のスキルはとんでもない隠れた効果を持っていた。 高難易度依頼の書類に『却下』の判を押せば依頼自体が消滅し、新米冒険者のパーティ登録を『受理』すれば一時的に能力が向上する。 本人は事務処理をしているだけのつもりが、いつしか「彼の受付を通った者は必ず成功する」「彼に睨まれたモンスターは消滅する」という噂が広まっていく。 その結果、静かだった辺境ギルドには腕利きの冒険者が集い始め、恭平の定時退勤は日々脅かされていくのだった。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...