おっさんが願うもの 〜異世界行ったらイケメンに大切にされ、溺愛され、聖女と呼ばれ、陰謀に巻き込まれ。それでも幸せ目指して真面目に頑張ります〜

猫の手

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王都編 〜パレードから謁見そして再び囮へ〜

90.おっさん、パレードに緊張する

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 俺を体調不良にさせていた信者達の魔力を感じなくなり、気力を取り戻す。
「よし。これで動けるぞー」
 両手の拳をギュッと握って、フンスフンスと鼻息を荒くする。
「お前、守られる立場だってわかってる…?」
「え?何?」
 ロイが呆れたように言ったが、ちょうど馬車が石に乗り上げて大きな音を立てたために聞こえなかった。
 だが言い直すことはしてくれず、ただ苦笑いされる。
「ショーヘイさんは、絶対に魔法を使わないでください」
「え、なんで」
「そうだ。お前の魔法は派手だからな。乱戦になったら、周囲へ被害が出そうだ」
 グレイが笑いながら言い、その言葉にえー、と文句を言う。
「それにな、王都には今いろんな輩が入り込んでる。お前の力を知ってさらに狙われる、なんてことになりかねん」
 ロイが、これ以上敵を増やしたくないと苦笑した。
「今回は大人しく守られててください」
「ちゃんとセーブしても駄目?」
「駄目」
「駄目です」
「駄目だ」
 3人に即答され口を尖らせると、俺だって戦えるのに、とブツブツと文句を言って笑われた。

「着くぞ」
 グレイが窓から外を見て、馬車が停まりかけていることを知らせる。
 窓から外を見ると、城壁に沿って警備兵が整列していた。
 馬車が停まり、すぐにロイとグレイが降りた。
 その瞬間、どよめきが起こった。
「ロイ様だ」
「英雄ロイ様」
「白炎の狼」
 馬車の外から、ロイの名を呟く声が複数聞こえ、彼を賞賛するような口調で、ため息も聞こえてくる。
「いいぞ」
 グレイが中へ声をかける。
「どうぞ、聖女様」
 ディーがニコリと微笑む。
「あ、うん…」
 ゆっくりドアの前に立つと、外からロイが手を差し出したので、その手に捕まり、裾を踏まないように手で持ち上げて、慎重にそろそろと馬車の階段を降りた。
「聖女様…」
 警備兵の視線が一斉に俺に集中し、聖女様という声が至る所から聞こえてきて、見られていることに一気に緊張する。

 この人たちは案山子、案山子だ。

 と失礼なことを考えながら、自分に言い聞かせて緊張を必死に解こうとした。
 地面に降り立つと、足元に集中していた目線を上げて前を見る。
 その先に、巨大が門が扉を閉めた状態で聳え立っていた。
「でけぇ…」
 20mはあるか、と門を見上げて思わず呟く。
「いつもは開いてるんですけどね。今日は特別です」
 ディーが後ろから教えてくれた。
「行くか」
 ロイが手を離し、俺に背中を向けると右肘を差し出してきたので、左手を添えると、歩きにくい服を着た俺を考慮してか、ゆっくりと進む。
 前方で、第1部隊が馬から降りて、俺たちを待っているのが見えた。

 大門の手前に、屋根も壁もない、黒塗りで豪華な模様が入った馬車が1台停まっている。
 今までのように向かい合わせの座席ではなく、前後2列の席が両方とも前を向き、後ろの座席は高くなっていた。
「グレイは前、俺とディーでショーへーをはさんで座る」
 歩きながら説明してくれる。
「ショーへーさんは、ただ沿道に向かってニコニコと手を振っていればいいですからね」
「はぁ…」
 今から始まるパレードに、既に胃が痛い。緊張して体が強張り、心臓がバクバクとうるさかった。
「そんなに緊張すんな。ただ座って笑ってりゃいいんだ」
 触れている俺の手から緊張が伝わったのか、ロイが揶揄うように笑う。

 あともう少しで馬車に辿り着くと言う時、後方から突然声が上がった。
「取り押さえろ!!」
 その声に後ろを振り向くのと、信者が数人に取り押さえられ、地面に倒されるのと同時だった。
「聖女様ぁ!!」
 地面に押さえつけられ、這いつくばりながらも、涎を垂らして俺へ手を伸ばす。
 その制服から、警備兵の1人だとわかった。
「っち、こんな所にまで入り込んでやがるのか」
 グレイが舌打ちし、早く行こうと促す。
 この小さな捕り物のおかげなのか、緊張が少しだけ取れた。逆に、信者達の襲撃が思っているよりも多いんじゃないかと不安になる。

 
 馬車へ近付くと、敬礼をした3人の若い騎士が立っていた。
「騎士団第4部隊、アドニスです!私達が馬車を引きます!よろしくお願いします!!」
 1人が代表して挨拶し、その大きな声と、緊張して声が裏返った騎士に微笑んだ。
「よろしくお願いします」
 微笑みながらペコリと3人に頭を下げると、騎士達が嬉しそうに頬を染めて、嬉々として騎乗した。
 馬車に乗り込み、その座り心地を確認する。ソファはフカフカで、長時間座っても大丈夫そうだった。
 右にロイ、左にディーが座り、下段中央にグレイが座る。
「準備はいいか」
 レインが馬車へ近寄ると、俺たちを見上げた。
「ショーへー、いいな?」
 否が応にも緊張が高まる。
「行こう」
 頷きがら2人に返事をした。
「全員騎乗!」
 一斉に騎士達が騎乗し、馬車を取り囲み配置に着く。
 レインが先頭へ進み、一度全員を振り向き隊列を確認する。

「開門!!!」

 レインの言葉で、ゆっくりと大門が重厚な音を立てて開いていく。
 それと同時に、ファンファーレが鳴らされ、門が開くに連れて聞こえていた民衆の歓声が大きくなっていく。


「聖女様!!」
 隊列がゆっくりとメインストリートを進む。
 馬車道をはさみ左右の沿道から、通り沿いの建物の窓から、屋根から、口々に聖女様、聖女様、と声をかけられて、手を大きく振られる。

 沿道に詰めかけた民衆の多さに圧倒されて、大門を抜けた直後に呆けてしまった。この世界に来て、こんなに大勢の人達を見るのは初めてだし、その立派な街並みにも驚いた。
 その大勢の人たちの視線が一気に俺達に集中するのがわかって、体温が1、2度上がったような気がした。

 恥ずかしい。
 穴があったら入りたい。
 今すぐ逃げ出したい。

 1、2分はそんなことばかり考えていた。
「ショーヘイさん、笑顔」
 ディーがニコニコしながら俺に言い、自分は沿道に向かって手を振る。
 すると、沿道に居た男女の目がハートになり、キャーキャーと黄色い悲鳴をあげた。
「ディーゼルさまぁ!!」
「ロイさまぁ!!!」
 聖女様、の言葉の中に、2人の名前はもちろん、グレイやレイン、第1部隊の騎士達の名前も叫ばれているし、みんなも手を振り返している。
 特にロイ、ディー、レインの人気は絶大らしく、もしかしたら聖女様という言葉よりも多いと感じた。
「ほら、手を振れよ」
 ロイも同じように沿道に向かって笑顔で手を振る。

 なんでこいつらこんなに慣れてんだ。

 緊張しているのは自分だけだと気付いて、少しムッとする。
「笑顔笑顔」
 ディーが俺を見もせずに、周囲に笑顔を撒き散らす。
 そのたびに湧き起こる黄色い声。
 そんな姿を見て覚悟を決めると、俺も笑顔を作って手を振り始める。
「聖女さまー!!可愛いー!!」
 思い切り大声で叫ばれて、その形容詞に顔が引き攣った。
「引き攣ってるぞw」
 その顔を笑われ、左手で頬を撫でられる。
 その瞬間、一際大きな黄色い声が上がり、顔を真っ赤にした。
「おい、右を見ろ」
 前方に居たグレイが静かに言う。
「わかってますよ」
 ディーが右に向かって笑顔を向け、手を振りつつ確認する。
 俺も右を確認すると、民衆の後ろで、素早く羽交締めにされて路地へ連れて行かれる男を見た。
 連れていかれる直前の一瞬だけ目が合い、昨日見たあの3人と同じような目をしていたことに気付いて鳥肌が立った。
「信者の拘束が始まったな」
 ロイも、笑顔で手を振りながら呟いた。
「ショーヘイさん、笑顔」
 ディーが再び俺に注意し、慌てて笑顔を作ると、周囲へ微笑みを振り撒いて手を振る。


 10分もすると、だいぶ笑顔で手を振る行為にも慣れて、周りを観察する余裕も出てきた。
「聖女さまぁ!!」
「聖女様!かわい~!」
「聖女様、こっち向いて!!」
 まるで自分がアイドルにでもなったかのように、声を投げかけられ、それに応えて行く。
 圧倒的に可愛いと言う声が多くて泣きたくなるが、たまに、いい男、と言う言葉も聞こえてきて、少しだけ気分が良くなった。
「なかなか様になってきましたね」
 ディーに揶揄われる。
「お前も声かけられて嬉しそうじゃねーか」
「私は毎度のことですから」
 嫌味を言ったつもりだが通用せず、ああそーですか、と鼻で笑う。
 そんな会話をしながらも、また1人沿道の隅で信者が捕らえられるのを見る。
 たかが10分程度で、距離にしても1キロ程度。その間で目撃しただけでも30人はいた。
 一体どれだけの信者がいるのか、と若干うんざりする。
 今の所は誰に気付かれることもなく済んでいるが、その数はどんどん増えている。
 まさに計画通り、自分の姿が餌になっていることに苦笑した。




「あと3分で第1チェックポイント、各員警戒を怠るな」
「了解」
「こちらベータ、第1チェックポイントにクラスBを3名1グループ確認、対処されたし」
「こちらアルファ、B地点にクラスS、個別で2名確認、事前に対処されたし」
「アルク班、B地点クラスS、個別2名了解。処理に向かう」

 通信用魔鉱石から各部隊、班からの連絡が聞こえてくる。
「すご…」
 ディーが持っていた魔鉱石を俺の耳に近づけ、聞かせてくれた。
 多分、クラスというのは強さのことを表しているんだろうな、と思った。
「安心しましたか?」
 ディーに微笑まれ、頷く。
「お前はここに座って、笑っていればいいんだ」
 ロイが俺の頬を撫で微笑みかけられ、俺も微笑んだ。が、そんな俺たちの行動を見た沿道の民衆から、キャアアァーと黄色い声があがり、ハッとして照れ隠しのために手を振る。
「最初の襲撃地点に入りますよ」
 ディーがクスクスと俺を見て、報告する。



 メインストリートから左に曲がり、サブストリートへ続く路地へ入る。
 細めの路地のせいで、広がっていた隊列が長く伸びる。
 メインと比べると民衆は少ない。だがそれでも今までと同じように声を出して手を振る人々が大勢いた。
 昨日の話ではこの区画に一般人はいないはずで、今ここにいる人々が全員偽装した黒騎士なのか、と心の中で驚きつつ、笑顔で手を振りかえす。
「来るぞ」
 通りの中央付近に馬車が差し掛かった時、馬車が停まり、グレイとディーが一瞬で馬車周辺に防御魔法壁を張る。
「え?」
 感知魔法を遮断しているため、何もわからず声を出したが、次の瞬間ロイに頭を抱えるように抱きしめられて、冷たい鎧の胸当てに頬を押し付けた。
 それと同時に、頭上の魔法壁に衝突する炎と雷撃が一瞬で弾かれる。
「うわ!」
 思わず目を閉じて、届かないとわかっていても、頭を低くした。
「動くなよ」
 ロイの腕の中で、なるべく小さくなってやり過ごしつつ、周囲を確認する。

 先ほどまで沿道で歓声を上げていた人達が、今の攻撃の数秒で消えていた。
 炎と雷の魔法が放たれた建物の4階の窓から、ボンっと小さな炎が吹き出し煙が上がるが、その煙すらすぐに風の魔法で拡散される。
「聖女さまぁ!!!」
 通りの両脇の建物の隙間から数人が馬車へ向かって走ってくる。
「聖女様!愛してますぅ!!!」
「俺の愛を受け取ってくださぁい!!」
 馬車の一番近い場所から涎を垂らして襲ってきた信者達が、一瞬で視界から消える。
 さらに数十人が次から次へと押し寄せ、映画で見たゾンビのようだと思った。
 だがそのゾンビ達の狙いは、俺ただ1人。
「聖女さまぁ。抱かせてください!!」
「SEXしましょぉ」
「舐めさせてくださぁい」
 口々に卑猥な言葉を発し、涎を垂らしながら近づいてくるが、誰1人として馬車に近付くことすら出来ずに、黒騎士に連れ去られ、騎士達が、魔道士がその場で拘束していく。
「何人いるんだ」
 グレイが、魔法壁を維持しつつ、始末の補助にまわって、馬車上から向かってくる信者へ軽い雷撃を放ち、動きを止めていく。
 動きを止められても、ずりずりと俺を目指してくる男、両腕を後ろ手に拘束された男に至っては、俺を見ながらカクカクと腰を降っている。
 その姿に思わず顔を背け、ロイも見るなと言わんばかりに俺を抱きしめてくれた。
「終わりだな」
 レインが右腕を上げ、この地点での襲撃が終わったことを全員に知らせると、再び馬車が動き始めた。


 時間にして5分もなかった。
 サブストリートに出る前に、一瞬だけ立ち上がって後ろを振り返ったが、そこにはもう黒騎士や魔導士、信者達の姿はどこにもなかった。


 再び民衆が大勢集まった通りに出ると、左右や建物の窓から顔を出す人たちに向かって笑顔で手を振り、次の襲撃地点まで移動していく。
 その間も、一般人に紛れた騎士や自警団、魔導士達が次々と信者達を秘密裏に拘束して行くのを、何度も目撃した。


 2箇所目、3箇所目と、順調に襲撃地点を通過しつつ、どの場所でも順調にスパイや信者達を捕らえて行く。
「なぁ、すごい人数だけど…、牢屋に全部入る…?」
 移動するにつれて、どんどん増えていく襲撃者に、ついつい余計な心配をした。
「満員御礼ですね、きっと」
 ディーが苦笑する。
 3箇所目を通過して、すでに100人を超えた襲撃者に苦笑するしか出来ない。

 パレードが始まって、すでに1時間半が経過し、外から見えた5層の城壁の内、2層を通り抜けていた。
 沿道の民衆の数も相変わらず、聖女を一目見ようと多くの見物客が集まっている。

「緊急連絡。全部隊、班に告ぐ。第4チェックポイントでクラスSを複数確認。
偽装部隊は集結し襲撃に備えよ。
 制服班はチェックポイント付近を至急封鎖せよ。
 繰り返す…」

 ディーが聞こえた連絡を俺に伝えてくれる。
「これはちょっとかかりそうですね」


 今まで走っていたサブストリートからメインストリートへ抜ける、一本道の狭い通り。
 1番目とほぼ同じくらいの狭さだが、今回の襲撃予測地点の中で、最も距離が長く100m近い。
 馬車が直角に右折し、その通りに入って中央付近に差し掛かった時、突然始まった。
 飛んでくる炎の玉や雷撃に、馬車の周囲に何重にも張られた魔法壁が次々に破壊されていく。
 3人が次々に魔法壁を張り直すが攻撃魔法の数が多く、徐々に押され始めた。
 魔法を放つ敵も、移動を繰り返しているため、追いかける黒騎士や魔導士達も翻弄されているのが、目で確認出来た。
 さらに、地上からは信者達がウヨウヨと湧き出るかのように周囲から現れ、第1部隊も、弱いとは言え数に圧倒されて始めた。
「っだー!!うぜぇ!!」
 殺すわけにもいかず、峰打ちや気絶する程度の打撃、拘束魔法を駆使して対処するが、今までの襲撃と圧倒的に数が違った。
「どっから湧いて出た!!」
 事前に配置についていた黒騎士や魔導士達も僅かに困惑しているようで、全体的に押され始めた。
 これが戦場で、相手を手加減なしで行動出来るならこんなことにはならないだろう。
 こちら側が、殺さない、重症者を出さないという縛りがあるせいで、動きが悪くなっていた。

 そんな時、攻撃魔法の合間を縫って、黒づくめの暗殺犯がさらに襲撃を開始した。
 馬車を守る魔法壁が、魔法攻撃だけじゃなく、剣や打撃によっても破壊され始め、3人が魔法壁を張る前に、とうとう目の前まで暗殺犯と信者が近付いてしまった。
 咄嗟にディーが抜剣し攻撃を防ぎ、ロイが打撃によって暗殺犯をぶち抜くが、その隙をついて、ロイの足元から伸ばされた腕が俺の腕を掴み、強く引っ張られた。
「あ!」
 右腕を強く引かれ、そのまま馬車から引きずり下ろされる。
 無理矢理引っ張られて、おかしな体勢で馬車から落ち、肩を強打し、俺の腕を掴んで離さない男にのしかかられた。
「ヒッ!」
 俺の上に跨った信者の男が、ごそごそとズボンを下げようとしているのを見て、小さく悲鳴をあげた。
 そして、肩の痛みも忘れてその男を火の玉で吹き飛ばす。
「ショーへー!!」
 ロイが馬車から降りてすぐに俺を助け出すと、その背中に庇う。
 もう魔法壁を作る暇さえない数による猛襲に、こちらも応戦するしかなくなった。
「なぁ!俺も戦っていいよな!?」
 すぐにヒールを使って肩の負傷を癒しつつ叫ぶ。
 ワーワーと怒号が飛び交うなか、叫んだ。
「派手じゃ無ければいいぞ! やれ!」
 ロイに許可をもらい、俺も参戦した。
「よし。やるぞ」
 ロイの背中の後ろで意識を集中する。
 遮断していた感知魔法を解除すると、一気に気持ちの悪い魔力が流れ込んで来て吐き気をもよおすが、グッと歯を食いしばって我慢すると、頭の中のソナーをこの路地一体に展開させた。
「おい…何する気だ」
 背後から翔平の魔力を感じたロイが、襲ってくる信者を殴りながら、振り返る。
 頭の中のソナーに反応する敵の魔力だけに集中し、一気に魔力を放出した。

「動くな」

 一言そう呟くと、襲撃者の体が止まった。
 動けなくなり、動作の途中だった者は、その場でバランスを崩して地面に倒れ、腕を振り上げる者、這いつくばる者、襲撃者全員の動きが止まった。
「1分くらいしか持たないから今のうちに!!」
 広範囲に展開した魔法に、どんどん魔力を吸い取られて行くのを感じて、意識を保てる時間を、味方全員に聞こえるように叫んだ。
 その俺の声に、全員がすぐに反応し、周囲の襲撃者を次々に気絶させて行く。

 そして約1分後、限界が来て魔法を解除する。


 路地がシーンと静まり返り、味方が俺を見る。
「ふぅ…」
 ペタリと座り込んで、魔力の大量消費に力が抜けた。
「おいおい…すげ~な」
 オスカーが含み笑いで、呟く。
 第1部隊の騎士達が駆け寄ってくる。
「聖女ちゃん、よくやってくれた!」
「助かった」
「さすが戦う聖女様だな」
 そんな騎士達を、ロイが寄るな、触るな、あっち行けと追い払う。
「ショーヘイ、また今度同じような襲撃があったら、使えるか?」
 側にきたレインが地面に座り込んだ俺に確認を取る。
「次の人数によるけど、今と同じくらいなら多分30秒くらいしか持たないと思う」
「そうか」
 レインが笑って俺の手を取ると、立たせてくれた。

 そのやり取りの間、黒騎士が気絶した襲撃者を物理的にロープで縛って拘束し建物の中へ押し込み、魔導士がさらに強力な拘束魔法と隠蔽魔法をかけた。
「ショーヘイさん…」
 ディーが近寄ると、俺を抱きしめる。
「すみません、守ると言っておきながら貴方に魔法を使わせて…」
 ギュッと抱きしめられ、背中をさする。
「助かったよ、ショーへー」
 グレイも苦笑しつつ、そっと頭を撫でてきた。

「よし、次へ進むぞ。騎乗しろ」
「了解」
 すぐに元の隊列へ戻り、俺たちも馬車へ戻る。
「補助魔法なら大歓迎だ」
 ロイが隣に座り俺の頬へ触れると、チュッと唇へキスされた。
「ですね」
 すぐにディーの手が伸び、向きを変えられると、同じようにキスされる。
「止めろよ…まだ終わってないんだから」
 赤面しつつ顔を顰めた。

 馬車が移動を再開すると、通りに残っていた黒騎士や魔導士が俺たちに向かって敬礼する。
 その中の数人の魔導士の目がキラキラと輝き、俺を尊敬するような、興奮した目で見ていることに気付き、その魔導士達の視線に照れつつ、ペコリと何度も頭を下げた。



「各部隊、班に連絡。聖女ショーヘイ様の広範囲拘束魔法により第4チェックポイントを無事に通過。順次持ち場へ戻り次に備えよ」


 メインストリートに馬車が戻ると、何事もなかったかのように隊列は進んで行く。
 一気に大量の魔力を消費して、少しだけだるさが残ったが、それでも戦闘にアドレナリンが分泌されているのか、あまり疲労は感じられなかった。


 5番目の襲撃地点では、俺の補助魔法を使うことなく通過出来、次が最後の襲撃予測地点となる。


「各隊、班に連絡。順次最終ポイントに集結せよ」
「こちらデルタ、要監視者が撤退」
「こちらシグマ、こちらの要監視者も撤退し王都を離れた」
「こちらアルファ、信者を最終ポイント周辺に複数確認。数およそ120」
「ミラー班、事前排除に向かう」
「オグマ班、ミラー班と合流する」

 笑顔で手を振りつつ、通信を聞いていたディーが、各国のスパイと暗殺者が撤退したと教えてくれた。
 残りは信者だけになるが、今までの襲撃地点よりも数が多いと言った。

「信者だけならどうとでもなる」
 グレイがホッとため息をついた。
「だが最後まで気を抜くなよ」
「おう」

 王城はもう目前まで迫っている。
 王城の門を潜れば、強固な結界と魔法壁よって、許可のない者は入れない。

 パレード開始から約3時間。
 大詰めを迎える。
 

 



 

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