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キドナ編 〜バルト家との食事会〜
223.おっさん、食事会に行く / ロイ、バシリオと再会する
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全く苛立ちを隠さず、ひたすら貧乏揺すりを繰り返していた。
重厚な執務机の下で小刻みに足を揺らしながらも、目の前に置かれた報告書や決裁書に目を通す。
だが、あと数日でこの苛立ちから確実に解放されるとわかっていた。
待っているという状況に対する苛立ちであり、1分でも1秒でも早くと気持ちが逸り、貧乏ゆすりが大きくなる。
まだ待たせるつもりか。
書類にサインする手が苛立ちと怒りで震えるのを抑えられなかった。
2日前、執務室でやりたくもない書類仕事をしていると、部屋をノックされた。
「入れ」
また仕事が増えるのかとうんざりしながら、苛立だった声で顔も上げずに言うと、静かにドアが開き、足音を全く立てず滑り込むように執事が1人入ってきた。
「貴様か」
顔を上げ、入ってきたこの王宮の使用人ではない、黒い執事服の男を見とめてペンを置いた。
「次は完璧だろうな」
「抜かりなく」
男が胸ポケットから1通の封書を取り出すと、静かに執務机の上に置き差し出した。
その封書をひったくるように手に取ると、乱暴に開け中を取り出し、数枚に渡って書かれた内容に素早く目を通す。
読み始めて数秒後には、目を見開き、食い入るように文字を追い始め、口元が歪んだ。
「上手くいくんだろうな」
「はい」
「許可する。好きに使え」
「ありがとうございます。
それとナイゼル様、もう一つご報告が」
「なんだ」
「お会いするのはこれで最後となります。
さらなるご活躍を期待しております」
恭しく頭を下げて挨拶した。
「そうか。ご苦労だったな」
フンと鼻を鳴らし、口だけで何の感情も込められていない棒読みで返す。
執事はナイゼルからの言葉を受け取ってもその場から動こうとしなかった。
「どうした。行け」
何度も読み返しながら、立ち去ろうとしない執事に眉間に皺を寄せながら言った。
「そちらの処分を」
「あ?」
そちらと言われ、自分が手に持っている便箋のことだと、ややしばらくしてから気がついた。
「ああ。処分する」
しっしっと追い払うように手を動かし、処分すると言いながらもまだ中身を見ている姿に、執事は心の中で呆れた。
黒い執事はそのまま一礼すると執務室を静かに出る。
「愚図が」
廊下を進みながら、口の中で呟く。
あれが他者の目に触れることがいかに危険なことなのかわかっていない。本来なら、一度読んで内容を把握、暗記し、その場で焼却処分するのが妥当だ。それをわかっていないばかりか何度も読み返す姿に呆れ、心の中でその知能の低さをバカにした。
あれで一国の王になろうと言うのだから、無知とは恐ろしい。なった所で、1年、いや数ヶ月も持たないだろう。
王になる能力も器もない男に、堪えていた笑みがついつい漏れてしまった。
「もう2度と会うこともないし知ったことではないがな」
フンと鼻を鳴らして笑いながら、王宮から雪が降り続いている外へ出て庭園を抜けると、森に入る手前で後ろを振り返る。
「会うことはないが、見せてはもらうぞ」
ニヤリと楽しそうに笑うと、そのまま王宮を取り囲む森に進んで行く。
「さて…もう1箇所…」
しばらく森を進み、いつもならこのまま帰るのだが、王宮の別棟へ進路を変更する。
「それにしても、あいつもえげつないことを考える…」
こんな計画絶対に誰も思いつかない。自分ですらこの計画を知って唖然とし、笑ってしまったほどだ。
計画通りに進めば後に残るのは…。
いや、残らないのが正しいのか?
黒い執事はクスクスと上機嫌に笑う。
こんなに楽しい気分は久しぶりだった。
口元を手で抑え、声を上げて笑いそうになりながらも、その計画の目的が以前と微妙に違うことも楽しんでいた。
アレの扱いが変わった。
そう思ったが、それも次の計画のために必要なことなのだろうと考えることにした。
何にしても、今はやるべきことをやるだけだ。
俺は種を蒔くだけ。
それ以上でも以下でもない。
王宮の別棟が目の前に迫り、黒い執事は笑顔を消し無表情に戻ると、聳え立つ尖塔を見上げ立ち止まる。
雪が積もった上に残った足跡は、しんしんと降る雪にあっという間に見えなくなった。
11月28日、午後5時。
約束時間ぴったりに王宮から歩いて20分ほどの離宮に到着した。
結構離れており、馬車を使うと言われたが、雪も解けて歩きやすくなっているし、運動がてら歩くことにした。
「お待ちしておりました」
離宮を管理している専属執事が出迎えてくれる。
先頭で入ったキースが同僚である執事と会話し、予定通りであるか最終チェックを行う。
第2王子妃となったキースだが、今だに彼は執事の管理職であることには変わりはない。離宮の執事も王子妃ではなく、執事のキースとしていつも通り接しているようだった。
離宮の専属メイドに案内され、キース、ジャニス、フィンに囲まれて廊下を進む。
この離宮には初めて入ったが、王家の賓客を泊める場所に相応しく、内装は王宮の内装となんらわからず、とても豪華な作りになっていた。
自分の現在の住まいである瑠璃宮も豪華だと思っていたが、ここに比べるとかなり質素であることがよくわかる。
2階の奥に案内され、両開きの扉の前で立ち止まると、ドアを挟むように騎士が2人立っていた。
その内の1人がアレックスだった。
実は、アレックスには一度きちんとお礼を言いたいと思っていた。色々あったが、彼もあの襲撃に応戦し、俺を助ける手助けをしてくれたのだ。
攫われた俺をロイやディーと共に王宮の外までお追いかけ、オーギュストと最後まで戦ってくれた。
戦闘が終わった後お礼は言ったのだが、改めてきちんとお礼を、話をしてみたいと思っていた。
一度会えないかどうか聞いてはみたのだが、聖女が襲撃を受けたこと、アレックスが参戦したことはバルト家には知らされておらず、個人的に会うことは無理だと言われてしまった。
だが、バルト家がここに滞在している間、何かのタイミングで直接話が出来ないかと密かに機会は伺っている。
アレックスは顔を正面に向けているが、目線は俺を見ている。俺も、顔は向けず目線だけをアレックスに向けて、互いに視線だけで会話するようにニコリと微笑んだ。
ドアが開けられると、中にいたユージーンとモーリスが出迎えてくれる。
「この度はお招きありがとうございます」
中に入り、2人の前に立つと、片足を半歩下げて膝を曲げる貴族流の挨拶をする。
「こちらこそ、お誘いを受けていただき誠に感謝します」
モーリスが丁寧に頭を下げるが、
「ショーへーさん、お待ちしておりました」
ユージーンが嬉々とした表情で挨拶もそこそこに俺の手を取ると、引っ張るように俺を席にエスコートしようとする。
「~」
そんなユージーンの姿にモーリスは苦笑し、何かを言いかけて口を開いたが、諦めたように言葉をため息に変えた。
「ありがとう」
ユージーンが椅子を引いてくれ、礼を言いながら静かに座る。
3人が席に着くと、置かれたグラスに果実酒が注がれる。それを手に取り、和やかに食事会が始まった。
今回の食事会は離宮で開催されたため、その全てを離宮の執事と、バルト家の執事が仕切っている。
キースは今回、聖女側として内容を把握するだけになり同席はしない。今は隣室にて待機という形をとっていた。
翔平とユージーン、モーリスが対面で座り、それぞれの背後に護衛騎士が壁際に1名づつ。そして給仕のメイドと執事がいるだけだった。
前菜から始まり、おしゃべりをしながら食事が進む。
モーリスから依頼のあった、ユージーンに対してのお小言はまだ出ていない。依然として、ユージーンが翔平に対して質問し、翔平が差し障りなく答えるという形で会話が進んでいた。
ユージーンは相変わらず聖女伝説の話ばかりで、数々の奇跡の話をたくさん教えてくれた。それはそれで面白いので、退屈することはなかったのだが、モーリスはお小言を言うタイミングを測りかねているようで、たまに苦笑いを浮かべていた。
そこで、助けるつもりでこちらから話題を提供することにする。
「色々な施設を視察されたと伺いましたが、いかがでしたか?
私もまだまだ知らないことばかりなので、是非お話をお聞かせ願いますでしょうか」
ニコニコしながら2人に話しかけると、ユージーンは、んぅ、と言葉に詰まり、モーリスは嬉しそうに微笑むと感謝の視線を送ってきた。
「隣国とはいえ、やはり国が違うと重視する項目も大きく違いがあると感じたよ」
ユージーンが黙り込んでしまったため、モーリスが答える。
「例えばどのような」
「例えば医療の場合、こちらでは傷を細分化し、それに見合った効率の良いヒールの使い方を研究していた。
裂傷には裂傷のヒールを、火傷には火傷のといった感じでね。
帝国ではヒールはヒール。治療するという魔法は全て同じで、分けるという発想すらないよ」
「確かに…、同じヒールでも、魔力量も治療のイメージも違いますね。
もし、それが可能であるなら、余計な魔力を消費しなくても済むことになるのか…」
モーリスが感心したという研究内容に、俺も興味が湧いた。
俺のヒールも、どの傷でも全て同じように使っている。傷の程度で魔力量が変わるだけで、全て「元に戻す」とイメージしているだけだ。
言われてみれば、怪我によって治療方法が変わるのは当たり前の話だと思った。
「今度、魔獣化を治療する研究にショーヘイ君も参加すると聞いたよ」
「あ、はい」
「魔獣化した人を治したってほんとですか!?」
黙っていたユージーンが聖女の奇跡にここぞとばかりに食いついてきて、アハハと乾いた笑いを漏らした。
近くで見ると意外に大きな教会で、周囲を取り囲む塀や、玄関扉まで続いている石畳、庭も綺麗に整備されていた。今は雪が積もって全貌を見ることは出来ないが、きっちり除雪された石畳を歩きながら左右を見ると、花壇だと思われる場所が通路に沿って点在している。
石畳の脇には所々魔鉱灯も灯って足元を照らしており、玄関扉の両脇にも煌々と灯りがついている。
窓からは中の灯りが漏れており、たまにその灯りが揺れることから中に人がいることがすぐにわかる。
どこからどう見ても普通の教会。
街や村にあるような、なんの変哲もない教会で、ここが性を売る者たちが逃げ隠れている、または余生を過ごす場所だとは想像すらも出来ない普通の教会だった。
ダニエルが玄関脇の呼び鈴を鳴らす。
ロイとデクスターは教会の柵の外で、その様子を伺いつつ、周囲の警戒を行う。
探索、索敵など、周囲に注意を向ける魔法を広範囲に広げつつ、ダニエルの様子を見ていた。
ややしばらくして、扉が少しだけ開けられ、中から来訪者を伺うように黒い修道服を着た女性が顔を出す。
「どなたです…か?…ダニエル様!」
初老という感じの、顔に皺が目だち始めた女性が尋ねながら、魔鉱灯に照らされたダニエルの顔を見て名を呼んだ。
「まぁまぁ、お久しぶりでございます」
すぐにドアが開けられて女性が笑顔でダニエルに挨拶した。
「やぁサロメ。元気そうだな」
ダニエルが笑顔で声をかけると玄関扉が大きく開けられた。
「ダニエル様?」
中から数人が名前を聞きつけて玄関に集まってくるのが見える。
「どうぞどうぞ」
「ささ、中へ」
最初の女性サロメと、後から来た司祭服の男も嬉しそうにダニエルを招き入れた。
ダニエルが教会の中に入ったことを確認し、ロイとデクスターは一先ず第一段階をクリアしたと、ほんの少しだけ肩の力を抜いた。
教会の中は非常に暖かく、室内は魔鉱灯で明るく照らされていた。
入ってすぐ聖堂となっており、数本の長椅子が並べられ。その先には教会の本尊である創造神を中央に、御使と呼ばれる6人の子供たちが左右に3体づつ並んでいた。
「いったいどうされたのです?」
「ご連絡をいただければ、お出迎えの準備をしましたのに」
「ダニエル様ですって!?」
「ダニエル!?」
バタバタと教会の奥から修道服を着た男女が走ってきた。
「やぁ、みんな元気そうだな」
嬉しそうにダニエルも笑い、声をかけた。
「近くに用事があってな。久々に寄ってみたんだ。
この間、新たに2人来たって聞いたが…」
ダニエルはサッと見渡して人数を確認する。
「今、夕食の準備で厨房に」
「新しく入った2人もそちらにおりますわ。呼んできましょうか?」
シスターがニコリと微笑み、ダニエルは仕事中ならこちらから出向くと、返した。
「夕食をご一緒に」
「いや、立ち寄っただけだから、全員の顔を見たらすぐに行くよ」
厨房へ歩きながら答えると、ついてきた数人が、えー、と文句のような声をあげる。
教会の奥に進むと。次第にいい匂いがしてくる。
「今日はシチューか?
食材などは足りているか?」
「ええ。充分に」
「いつも寄付をありがとうございます。
こうして冬を越せるのも、ダニエル様やスカーレット様が多大な寄付を寄せてくださるおかげです」
「こちらこそ、いつも世話になっている」
にこやかに会話しながらついてくる男女を振り返る。
「お前たちもあまりシスター達に迷惑をかけるなよ」
そう言うと、はぁい、と体をくねらせながら返事をする姿を見て苦笑した。
「皆様。ダニエル様がいらっしゃいましたよ」
数歩先を歩いていたサロメが厨房の中に向かって声をかける。
ダニエルは一緒に厨房までついてきた者達と、厨房を覗き込んでサッと人数を確認した。
17人。1人足りない。
足りないのが、バシリオであることはすぐにわかった。
「ジャネット。先日お話ししたダニエル・クルス子爵様よ。ご挨拶して」
魔導コンロにかけられた大鍋の前に居た女性が振り返る。その頬に艶やかな蛇の鱗が見えた。
ジャネットが緊張した面持ちで鍋から離れると、静かにダニエルの前に歩み寄り、お辞儀した。
「数日前からお世話になっております、ジャネットと申します…。
あの…私は…」
ジャネットは、突然現れた出資者のダニエルに、自分がここに来た事情を話さなければならないのかと思ったようで、困りながら言葉を詰まらせた。
「事情はいい。困ったことがあるからここに来たんだろう?
詮索しないから安心しなさい」
ダニエルが笑顔を向け、ジャネットの肩をポンポンと慰めるように叩くと、彼女は顔を上げ、一瞬泣きそうな表情をしたが。すぐに顔を隠すように俯いた。
「あら。リオは?さっきまでいたわよね?」
「リオは芋が足りなくなったので、地下の貯蔵庫に取りに」
「そう。それじゃすぐに戻ってくるわね」
サロメがダニエルにこれで全員です、と告げる。
「貯蔵庫の様子も確認したいから、ついでにそのリオという子にも会ってこよう」
「そうですか?では案内を…」
司祭が一緒にいる男女を見渡し、案内役を選ぼうとする。
「いやいい。勝手に見せてもらうよ。
そろそろ食事だろう?みんなで準備するといい」
ダニエルは笑顔で案内を断ると、よく知っている貯蔵庫の方へ歩き出す。
バシリオが1人でいるのは都合が良いと、心の中で呟いていた。
厨房を出てすぐのドアを開けると、地下へと続く階段を降りて行く。
室になっている地下は年間を通して同じ気温と湿度が保たれており、食料や教会の備品が保存されていた。
「リオ、いるか?」
「はい。ここに居ます」
階段を降り切った所で、薄暗い室の中に声をかける。
すぐに若い男の声が返って来て、ガタガタと物を動かす音も聞こえた。
「すみません、まだ物の場所を把握出来ていなくて…」
奥から、芋を入れた木製の桶を抱えた、丸眼鏡の青年が出てきた。
だが、ダニエルの姿を見た途端その場でビクリと体を竦ませて立ち止まる。
「どなた…ですか…?」
バシリオの体から警戒する気配が伝わってくる。
「ダニエルだ」
「ダニエル…」
弱い魔鉱灯の灯りに照らされるダニエルの姿を、眉間に皺を寄せて探るように見る。
「ダニエル・クルス子爵様…ですか?」
名前を聞き返しながら、本物なのか疑いの目をダニエルに向ける。
この教会についてすぐ、聖教会の司祭からここの説明を受けた。
連れてきてくれたジャネットから、どういう場所なのかは聞いていたが、司祭からの詳細な説明を聞き、ゲーテの大娼館主である夜の女帝スカーレット、クルス子爵家、ガリレア聖教会が協力し合って、娼婦や男娼を守る場所であると聞かされた。
「そうだ」
ダニエルは周囲に人の気配がないことを素早く確認すると、一歩前に進んでその場に跪いた。
「バシリオ殿下。ご無事で何よりです」
バシリオはヒュッと息を飲み、近づいてこられた分後ずさる。そして、必死にダニエル・クルスの顔を記憶から呼び起こそうとした。
今から2年と少し前、父王と共に公国を訪れた際、夜会でダニエルと会っていると、その顔を思い出して本人だと気付いた。
その当時は父親のダニー・クルスの側に立ち、息子だと紹介された。
その時の息子が子爵ということは、後を継いだのかと瞬時に思い至る。
ダニエルは貴族の、騎士の顔で下からバシリオの顔を見上げる。
バシリオはキュッと口を真横に結ぶと、手に持っていた桶を側に置いた。
「クルス子爵殿。お久しぶりでございます。まさかこのような形で…」
頭を深く下げつつ、ダニエルへ手を伸ばして立たせる。
「お父上は引退なされたのですか?」
「いえ、2年前に病で…。私は騎士を辞し後を継いで、法務局執行官の任に就いております」
「そうでしたか…。お悔やみ申しあげます」
「ありがとうございます」
ダニエルがニコリと微笑むとすぐに真顔になる。
「殿下、時間がありません。外にロイも来ています。私たちと共に王都へ」
すぐに用件を切り出した。
バシリオがダニエルを見上げ、その状況をすぐに悟る。
何故ダニエルがここに来たのか、何故自分がここにいるとわかったのか。
詳細はわからなくても、自分が置かれた状況と、執行官という肩書きのダニエル、ロイの名前に、その目的は自分の救出であると瞬時に理解した。
ダニエルから視線を逸らすと、泣き笑いのような表情を浮かべ、他国の人間を巻き込んでしまったことに申し訳なさ悔しさと、あらゆる感情が心の中で嵐のように巻き起こった。
「詳しいことは道中説明しますので、まずはお支度を」
「わかりました」
再びダニエルの顔を見て薄く微笑む。
貯蔵庫から上に上がると、バシリオが寝泊まりしている部屋へ行き、急いで着替えてもらう。
元々持ち物はほとんどなく、小さな肩掛けカバンのみだった。
ものの数分で準備を終え、そのまま全員が揃っている食堂へ向かう。
「リオ?どうしたの?その格好」
修道服を脱いだリオに、聖教会の司祭や同じくここで匿われている娼婦や男娼が驚きの声を上げる。
だが、バシリオは微笑むだけで何も答えられなかった。
「俺が誰だか知っているだろう?察してくれ」
ダニエルが全員に聞こえるように言うと、執行官という肩書きを持ったダニエルに誰も何も言えなくなる。
バシリオがここに来た理由はジャネット以外は知らない。聞かないのがここのルールだ。
だが、ダニエルが来て連れて行くのだから、何か犯罪絡みであることは間違いなく、彼が守ってくれるのだと理解した。
「短い間でしたが、お世話になりました」
ペコリとバシリオが頭を下げる。
「リオ、元気でね」
たった10日間だが、共に過ごした仲間達が声をかけてくれる。
「ありがとう。皆さんもお元気で」
とても優しく接してくれて、良くしてくれて、久しぶりに体を休めることが出来た場所だった。
「見送りはいい。このまま食事を続けてくれ」
ダニエルが言い、全員その場で挨拶を交わす。
バシリオは再び頭を下げると、ダニエルと共に食堂から出た。
だが、玄関でコートを羽織っていると、パタパタと1人走ってきた。
「リオ」
ジャネットだった。
彼女は目にいっぱい涙を溜めて、バシリオの足元に崩れ落ちると、そのコートの裾を掴んだ。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。
あたしのせいで…」
彼女が泣きながら謝罪する。
それは、彼女が情報をナイゼルに売ったことで起こったことに対する涙だった。
「ごめんなさい…カイラ…ごめんね…」
殺された娼婦カイラに対する謝罪を口にし、後悔してもし切れない自責の念が彼女を襲う。
「ジャネット。貴方1人のせいではありません」
バシリオは膝をついて泣き崩れるジャネットに触れる。もしジャネットが売らなければ、カイラも従者2人も生きていたかもしれない。だが。それは確実なことでもない。
彼女が情報を売らなくてもバレたかもしれない。そうなればやはり襲われて殺されていた。
「貴方のせいだけじゃないんです。
私のせいでもあるんです。だから自分だけを責めないで」
「でも…あたし…」
ボロボロに泣くジャネットをバシリオは抱きしめた。
「君もカイラと同じように私を助けてくれた。ここに連れてきてくれて、感謝しています」
こうして、自分はダニエルと会えたと、ジャネットに笑顔を向ける。
「ジャネット。どうか元気で。体を大切にしてください」
ギュッと抱きしめてその背中を優しく摩った。
「リオ…」
ジャネットもバシリオを抱きしめ、元気でと別れの挨拶をした。
「行こう」
ジャネットを立たせると。玄関扉へ手をかける。
「さようなら」
お互いに微笑み合い、そのドアを開けて外に出る。
ドアが閉まるまで、ジャネットは小さく手を振っていた。
教会の塀の外側で、玄関から出て来た2人を見たロイが手を上げる。
いつのまにか降り始めた雪の中、ザクザクと音を立ててロイとデクスターの元へ戻った。
「よぉバシリオ、狩猟祭ぶり」
ロイが口元の黒布を取ると、ニカッといつもの笑顔を見せ、友達にするように挨拶する。
「まだ20日程しか経っていないんですね」
そんなロイにバシリオも笑う。
「これからはリオと呼んでください」
「わかった」
「こちらは?」
バシリオがデクスターを見て尋ねる。
「俺の弟のデクスターだ」
「デクスター・クルスと申します。どうぞデックとお呼びください、殿下」
「ではデック、私のことはリオと」
握手を交わして挨拶を済ませる。
「あっちに馬を用意してある。まずは移動しよう」
ロイがあっちと指差し、4人で歩き始めた。自然にバシリオを中心に3人で囲むように歩くのは、彼を護衛するためだ。バシリオがそれに気付き、再び申し訳ないと言う思いが込み上げてきた。
それと同時にそばにいるロイという圧倒的な強者への安心感が、ずっと胸の奥底にしまい込んできた感情の蓋が、少しづつ開いて行くのがわかった。
その感情が抑えきれず、体がカタカタと小さく震え始める。
「リオ、よく耐えたな」
ロイが震えるバシリオに気付き隣に並ぶと、フードを被っていた頭をポンポンと叩いた。
「……ぅ…」
そのまま何度も軽く頭を撫でるように叩かれ、バシリオはコートの襟元を握りしめて俯き、顔を隠すようにフードを目深に被る。
視界がボヤける。
自分の足元を見つめているが。その足が涙で歪むのを抑えられなかった。
「っふ…ぅ…」
堪えろと自身に言い聞かせても溢れてくる涙を抑えられなかった。
私を守っていた者達を悉く殺された。
重傷を負いながらも殿を務めた者。
私を守るために身を盾にし絶命した者。
お逃げください。
生きてください。
そう命をかけて叫ばれた。
たった1人。私を守るために10人の騎士が死んで行った。
私を助け匿い、巻き込まれたカイラも、逃げてと叫び、私を突き飛ばして敵の強靭に自ら身を差し出した。
「あぁ…う…うぅ…」
ボタボタと大粒の涙がこぼれ落ち、嗚咽を止めることは出来なかった。
ロイがバシリオの頭を撫で、その肩を抱いて引き寄せると優しく腕を摩る。
王族という重積。命を狙われる恐怖、目の前で自分のために死んで行く者を見なければならない苦痛。
バシリオの置かれた立場を、ロイは計り知ることは出来ない。
だが、耐え難い恐怖と苦痛を感じていることは理解出来る。
子供のように泣くバシリオを慰めながら歩き、遠くに馬が4頭じっとロイ達が来るのを待っているのが見えた。
重厚な執務机の下で小刻みに足を揺らしながらも、目の前に置かれた報告書や決裁書に目を通す。
だが、あと数日でこの苛立ちから確実に解放されるとわかっていた。
待っているという状況に対する苛立ちであり、1分でも1秒でも早くと気持ちが逸り、貧乏ゆすりが大きくなる。
まだ待たせるつもりか。
書類にサインする手が苛立ちと怒りで震えるのを抑えられなかった。
2日前、執務室でやりたくもない書類仕事をしていると、部屋をノックされた。
「入れ」
また仕事が増えるのかとうんざりしながら、苛立だった声で顔も上げずに言うと、静かにドアが開き、足音を全く立てず滑り込むように執事が1人入ってきた。
「貴様か」
顔を上げ、入ってきたこの王宮の使用人ではない、黒い執事服の男を見とめてペンを置いた。
「次は完璧だろうな」
「抜かりなく」
男が胸ポケットから1通の封書を取り出すと、静かに執務机の上に置き差し出した。
その封書をひったくるように手に取ると、乱暴に開け中を取り出し、数枚に渡って書かれた内容に素早く目を通す。
読み始めて数秒後には、目を見開き、食い入るように文字を追い始め、口元が歪んだ。
「上手くいくんだろうな」
「はい」
「許可する。好きに使え」
「ありがとうございます。
それとナイゼル様、もう一つご報告が」
「なんだ」
「お会いするのはこれで最後となります。
さらなるご活躍を期待しております」
恭しく頭を下げて挨拶した。
「そうか。ご苦労だったな」
フンと鼻を鳴らし、口だけで何の感情も込められていない棒読みで返す。
執事はナイゼルからの言葉を受け取ってもその場から動こうとしなかった。
「どうした。行け」
何度も読み返しながら、立ち去ろうとしない執事に眉間に皺を寄せながら言った。
「そちらの処分を」
「あ?」
そちらと言われ、自分が手に持っている便箋のことだと、ややしばらくしてから気がついた。
「ああ。処分する」
しっしっと追い払うように手を動かし、処分すると言いながらもまだ中身を見ている姿に、執事は心の中で呆れた。
黒い執事はそのまま一礼すると執務室を静かに出る。
「愚図が」
廊下を進みながら、口の中で呟く。
あれが他者の目に触れることがいかに危険なことなのかわかっていない。本来なら、一度読んで内容を把握、暗記し、その場で焼却処分するのが妥当だ。それをわかっていないばかりか何度も読み返す姿に呆れ、心の中でその知能の低さをバカにした。
あれで一国の王になろうと言うのだから、無知とは恐ろしい。なった所で、1年、いや数ヶ月も持たないだろう。
王になる能力も器もない男に、堪えていた笑みがついつい漏れてしまった。
「もう2度と会うこともないし知ったことではないがな」
フンと鼻を鳴らして笑いながら、王宮から雪が降り続いている外へ出て庭園を抜けると、森に入る手前で後ろを振り返る。
「会うことはないが、見せてはもらうぞ」
ニヤリと楽しそうに笑うと、そのまま王宮を取り囲む森に進んで行く。
「さて…もう1箇所…」
しばらく森を進み、いつもならこのまま帰るのだが、王宮の別棟へ進路を変更する。
「それにしても、あいつもえげつないことを考える…」
こんな計画絶対に誰も思いつかない。自分ですらこの計画を知って唖然とし、笑ってしまったほどだ。
計画通りに進めば後に残るのは…。
いや、残らないのが正しいのか?
黒い執事はクスクスと上機嫌に笑う。
こんなに楽しい気分は久しぶりだった。
口元を手で抑え、声を上げて笑いそうになりながらも、その計画の目的が以前と微妙に違うことも楽しんでいた。
アレの扱いが変わった。
そう思ったが、それも次の計画のために必要なことなのだろうと考えることにした。
何にしても、今はやるべきことをやるだけだ。
俺は種を蒔くだけ。
それ以上でも以下でもない。
王宮の別棟が目の前に迫り、黒い執事は笑顔を消し無表情に戻ると、聳え立つ尖塔を見上げ立ち止まる。
雪が積もった上に残った足跡は、しんしんと降る雪にあっという間に見えなくなった。
11月28日、午後5時。
約束時間ぴったりに王宮から歩いて20分ほどの離宮に到着した。
結構離れており、馬車を使うと言われたが、雪も解けて歩きやすくなっているし、運動がてら歩くことにした。
「お待ちしておりました」
離宮を管理している専属執事が出迎えてくれる。
先頭で入ったキースが同僚である執事と会話し、予定通りであるか最終チェックを行う。
第2王子妃となったキースだが、今だに彼は執事の管理職であることには変わりはない。離宮の執事も王子妃ではなく、執事のキースとしていつも通り接しているようだった。
離宮の専属メイドに案内され、キース、ジャニス、フィンに囲まれて廊下を進む。
この離宮には初めて入ったが、王家の賓客を泊める場所に相応しく、内装は王宮の内装となんらわからず、とても豪華な作りになっていた。
自分の現在の住まいである瑠璃宮も豪華だと思っていたが、ここに比べるとかなり質素であることがよくわかる。
2階の奥に案内され、両開きの扉の前で立ち止まると、ドアを挟むように騎士が2人立っていた。
その内の1人がアレックスだった。
実は、アレックスには一度きちんとお礼を言いたいと思っていた。色々あったが、彼もあの襲撃に応戦し、俺を助ける手助けをしてくれたのだ。
攫われた俺をロイやディーと共に王宮の外までお追いかけ、オーギュストと最後まで戦ってくれた。
戦闘が終わった後お礼は言ったのだが、改めてきちんとお礼を、話をしてみたいと思っていた。
一度会えないかどうか聞いてはみたのだが、聖女が襲撃を受けたこと、アレックスが参戦したことはバルト家には知らされておらず、個人的に会うことは無理だと言われてしまった。
だが、バルト家がここに滞在している間、何かのタイミングで直接話が出来ないかと密かに機会は伺っている。
アレックスは顔を正面に向けているが、目線は俺を見ている。俺も、顔は向けず目線だけをアレックスに向けて、互いに視線だけで会話するようにニコリと微笑んだ。
ドアが開けられると、中にいたユージーンとモーリスが出迎えてくれる。
「この度はお招きありがとうございます」
中に入り、2人の前に立つと、片足を半歩下げて膝を曲げる貴族流の挨拶をする。
「こちらこそ、お誘いを受けていただき誠に感謝します」
モーリスが丁寧に頭を下げるが、
「ショーへーさん、お待ちしておりました」
ユージーンが嬉々とした表情で挨拶もそこそこに俺の手を取ると、引っ張るように俺を席にエスコートしようとする。
「~」
そんなユージーンの姿にモーリスは苦笑し、何かを言いかけて口を開いたが、諦めたように言葉をため息に変えた。
「ありがとう」
ユージーンが椅子を引いてくれ、礼を言いながら静かに座る。
3人が席に着くと、置かれたグラスに果実酒が注がれる。それを手に取り、和やかに食事会が始まった。
今回の食事会は離宮で開催されたため、その全てを離宮の執事と、バルト家の執事が仕切っている。
キースは今回、聖女側として内容を把握するだけになり同席はしない。今は隣室にて待機という形をとっていた。
翔平とユージーン、モーリスが対面で座り、それぞれの背後に護衛騎士が壁際に1名づつ。そして給仕のメイドと執事がいるだけだった。
前菜から始まり、おしゃべりをしながら食事が進む。
モーリスから依頼のあった、ユージーンに対してのお小言はまだ出ていない。依然として、ユージーンが翔平に対して質問し、翔平が差し障りなく答えるという形で会話が進んでいた。
ユージーンは相変わらず聖女伝説の話ばかりで、数々の奇跡の話をたくさん教えてくれた。それはそれで面白いので、退屈することはなかったのだが、モーリスはお小言を言うタイミングを測りかねているようで、たまに苦笑いを浮かべていた。
そこで、助けるつもりでこちらから話題を提供することにする。
「色々な施設を視察されたと伺いましたが、いかがでしたか?
私もまだまだ知らないことばかりなので、是非お話をお聞かせ願いますでしょうか」
ニコニコしながら2人に話しかけると、ユージーンは、んぅ、と言葉に詰まり、モーリスは嬉しそうに微笑むと感謝の視線を送ってきた。
「隣国とはいえ、やはり国が違うと重視する項目も大きく違いがあると感じたよ」
ユージーンが黙り込んでしまったため、モーリスが答える。
「例えばどのような」
「例えば医療の場合、こちらでは傷を細分化し、それに見合った効率の良いヒールの使い方を研究していた。
裂傷には裂傷のヒールを、火傷には火傷のといった感じでね。
帝国ではヒールはヒール。治療するという魔法は全て同じで、分けるという発想すらないよ」
「確かに…、同じヒールでも、魔力量も治療のイメージも違いますね。
もし、それが可能であるなら、余計な魔力を消費しなくても済むことになるのか…」
モーリスが感心したという研究内容に、俺も興味が湧いた。
俺のヒールも、どの傷でも全て同じように使っている。傷の程度で魔力量が変わるだけで、全て「元に戻す」とイメージしているだけだ。
言われてみれば、怪我によって治療方法が変わるのは当たり前の話だと思った。
「今度、魔獣化を治療する研究にショーヘイ君も参加すると聞いたよ」
「あ、はい」
「魔獣化した人を治したってほんとですか!?」
黙っていたユージーンが聖女の奇跡にここぞとばかりに食いついてきて、アハハと乾いた笑いを漏らした。
近くで見ると意外に大きな教会で、周囲を取り囲む塀や、玄関扉まで続いている石畳、庭も綺麗に整備されていた。今は雪が積もって全貌を見ることは出来ないが、きっちり除雪された石畳を歩きながら左右を見ると、花壇だと思われる場所が通路に沿って点在している。
石畳の脇には所々魔鉱灯も灯って足元を照らしており、玄関扉の両脇にも煌々と灯りがついている。
窓からは中の灯りが漏れており、たまにその灯りが揺れることから中に人がいることがすぐにわかる。
どこからどう見ても普通の教会。
街や村にあるような、なんの変哲もない教会で、ここが性を売る者たちが逃げ隠れている、または余生を過ごす場所だとは想像すらも出来ない普通の教会だった。
ダニエルが玄関脇の呼び鈴を鳴らす。
ロイとデクスターは教会の柵の外で、その様子を伺いつつ、周囲の警戒を行う。
探索、索敵など、周囲に注意を向ける魔法を広範囲に広げつつ、ダニエルの様子を見ていた。
ややしばらくして、扉が少しだけ開けられ、中から来訪者を伺うように黒い修道服を着た女性が顔を出す。
「どなたです…か?…ダニエル様!」
初老という感じの、顔に皺が目だち始めた女性が尋ねながら、魔鉱灯に照らされたダニエルの顔を見て名を呼んだ。
「まぁまぁ、お久しぶりでございます」
すぐにドアが開けられて女性が笑顔でダニエルに挨拶した。
「やぁサロメ。元気そうだな」
ダニエルが笑顔で声をかけると玄関扉が大きく開けられた。
「ダニエル様?」
中から数人が名前を聞きつけて玄関に集まってくるのが見える。
「どうぞどうぞ」
「ささ、中へ」
最初の女性サロメと、後から来た司祭服の男も嬉しそうにダニエルを招き入れた。
ダニエルが教会の中に入ったことを確認し、ロイとデクスターは一先ず第一段階をクリアしたと、ほんの少しだけ肩の力を抜いた。
教会の中は非常に暖かく、室内は魔鉱灯で明るく照らされていた。
入ってすぐ聖堂となっており、数本の長椅子が並べられ。その先には教会の本尊である創造神を中央に、御使と呼ばれる6人の子供たちが左右に3体づつ並んでいた。
「いったいどうされたのです?」
「ご連絡をいただければ、お出迎えの準備をしましたのに」
「ダニエル様ですって!?」
「ダニエル!?」
バタバタと教会の奥から修道服を着た男女が走ってきた。
「やぁ、みんな元気そうだな」
嬉しそうにダニエルも笑い、声をかけた。
「近くに用事があってな。久々に寄ってみたんだ。
この間、新たに2人来たって聞いたが…」
ダニエルはサッと見渡して人数を確認する。
「今、夕食の準備で厨房に」
「新しく入った2人もそちらにおりますわ。呼んできましょうか?」
シスターがニコリと微笑み、ダニエルは仕事中ならこちらから出向くと、返した。
「夕食をご一緒に」
「いや、立ち寄っただけだから、全員の顔を見たらすぐに行くよ」
厨房へ歩きながら答えると、ついてきた数人が、えー、と文句のような声をあげる。
教会の奥に進むと。次第にいい匂いがしてくる。
「今日はシチューか?
食材などは足りているか?」
「ええ。充分に」
「いつも寄付をありがとうございます。
こうして冬を越せるのも、ダニエル様やスカーレット様が多大な寄付を寄せてくださるおかげです」
「こちらこそ、いつも世話になっている」
にこやかに会話しながらついてくる男女を振り返る。
「お前たちもあまりシスター達に迷惑をかけるなよ」
そう言うと、はぁい、と体をくねらせながら返事をする姿を見て苦笑した。
「皆様。ダニエル様がいらっしゃいましたよ」
数歩先を歩いていたサロメが厨房の中に向かって声をかける。
ダニエルは一緒に厨房までついてきた者達と、厨房を覗き込んでサッと人数を確認した。
17人。1人足りない。
足りないのが、バシリオであることはすぐにわかった。
「ジャネット。先日お話ししたダニエル・クルス子爵様よ。ご挨拶して」
魔導コンロにかけられた大鍋の前に居た女性が振り返る。その頬に艶やかな蛇の鱗が見えた。
ジャネットが緊張した面持ちで鍋から離れると、静かにダニエルの前に歩み寄り、お辞儀した。
「数日前からお世話になっております、ジャネットと申します…。
あの…私は…」
ジャネットは、突然現れた出資者のダニエルに、自分がここに来た事情を話さなければならないのかと思ったようで、困りながら言葉を詰まらせた。
「事情はいい。困ったことがあるからここに来たんだろう?
詮索しないから安心しなさい」
ダニエルが笑顔を向け、ジャネットの肩をポンポンと慰めるように叩くと、彼女は顔を上げ、一瞬泣きそうな表情をしたが。すぐに顔を隠すように俯いた。
「あら。リオは?さっきまでいたわよね?」
「リオは芋が足りなくなったので、地下の貯蔵庫に取りに」
「そう。それじゃすぐに戻ってくるわね」
サロメがダニエルにこれで全員です、と告げる。
「貯蔵庫の様子も確認したいから、ついでにそのリオという子にも会ってこよう」
「そうですか?では案内を…」
司祭が一緒にいる男女を見渡し、案内役を選ぼうとする。
「いやいい。勝手に見せてもらうよ。
そろそろ食事だろう?みんなで準備するといい」
ダニエルは笑顔で案内を断ると、よく知っている貯蔵庫の方へ歩き出す。
バシリオが1人でいるのは都合が良いと、心の中で呟いていた。
厨房を出てすぐのドアを開けると、地下へと続く階段を降りて行く。
室になっている地下は年間を通して同じ気温と湿度が保たれており、食料や教会の備品が保存されていた。
「リオ、いるか?」
「はい。ここに居ます」
階段を降り切った所で、薄暗い室の中に声をかける。
すぐに若い男の声が返って来て、ガタガタと物を動かす音も聞こえた。
「すみません、まだ物の場所を把握出来ていなくて…」
奥から、芋を入れた木製の桶を抱えた、丸眼鏡の青年が出てきた。
だが、ダニエルの姿を見た途端その場でビクリと体を竦ませて立ち止まる。
「どなた…ですか…?」
バシリオの体から警戒する気配が伝わってくる。
「ダニエルだ」
「ダニエル…」
弱い魔鉱灯の灯りに照らされるダニエルの姿を、眉間に皺を寄せて探るように見る。
「ダニエル・クルス子爵様…ですか?」
名前を聞き返しながら、本物なのか疑いの目をダニエルに向ける。
この教会についてすぐ、聖教会の司祭からここの説明を受けた。
連れてきてくれたジャネットから、どういう場所なのかは聞いていたが、司祭からの詳細な説明を聞き、ゲーテの大娼館主である夜の女帝スカーレット、クルス子爵家、ガリレア聖教会が協力し合って、娼婦や男娼を守る場所であると聞かされた。
「そうだ」
ダニエルは周囲に人の気配がないことを素早く確認すると、一歩前に進んでその場に跪いた。
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バシリオはヒュッと息を飲み、近づいてこられた分後ずさる。そして、必死にダニエル・クルスの顔を記憶から呼び起こそうとした。
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頭を深く下げつつ、ダニエルへ手を伸ばして立たせる。
「お父上は引退なされたのですか?」
「いえ、2年前に病で…。私は騎士を辞し後を継いで、法務局執行官の任に就いております」
「そうでしたか…。お悔やみ申しあげます」
「ありがとうございます」
ダニエルがニコリと微笑むとすぐに真顔になる。
「殿下、時間がありません。外にロイも来ています。私たちと共に王都へ」
すぐに用件を切り出した。
バシリオがダニエルを見上げ、その状況をすぐに悟る。
何故ダニエルがここに来たのか、何故自分がここにいるとわかったのか。
詳細はわからなくても、自分が置かれた状況と、執行官という肩書きのダニエル、ロイの名前に、その目的は自分の救出であると瞬時に理解した。
ダニエルから視線を逸らすと、泣き笑いのような表情を浮かべ、他国の人間を巻き込んでしまったことに申し訳なさ悔しさと、あらゆる感情が心の中で嵐のように巻き起こった。
「詳しいことは道中説明しますので、まずはお支度を」
「わかりました」
再びダニエルの顔を見て薄く微笑む。
貯蔵庫から上に上がると、バシリオが寝泊まりしている部屋へ行き、急いで着替えてもらう。
元々持ち物はほとんどなく、小さな肩掛けカバンのみだった。
ものの数分で準備を終え、そのまま全員が揃っている食堂へ向かう。
「リオ?どうしたの?その格好」
修道服を脱いだリオに、聖教会の司祭や同じくここで匿われている娼婦や男娼が驚きの声を上げる。
だが、バシリオは微笑むだけで何も答えられなかった。
「俺が誰だか知っているだろう?察してくれ」
ダニエルが全員に聞こえるように言うと、執行官という肩書きを持ったダニエルに誰も何も言えなくなる。
バシリオがここに来た理由はジャネット以外は知らない。聞かないのがここのルールだ。
だが、ダニエルが来て連れて行くのだから、何か犯罪絡みであることは間違いなく、彼が守ってくれるのだと理解した。
「短い間でしたが、お世話になりました」
ペコリとバシリオが頭を下げる。
「リオ、元気でね」
たった10日間だが、共に過ごした仲間達が声をかけてくれる。
「ありがとう。皆さんもお元気で」
とても優しく接してくれて、良くしてくれて、久しぶりに体を休めることが出来た場所だった。
「見送りはいい。このまま食事を続けてくれ」
ダニエルが言い、全員その場で挨拶を交わす。
バシリオは再び頭を下げると、ダニエルと共に食堂から出た。
だが、玄関でコートを羽織っていると、パタパタと1人走ってきた。
「リオ」
ジャネットだった。
彼女は目にいっぱい涙を溜めて、バシリオの足元に崩れ落ちると、そのコートの裾を掴んだ。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。
あたしのせいで…」
彼女が泣きながら謝罪する。
それは、彼女が情報をナイゼルに売ったことで起こったことに対する涙だった。
「ごめんなさい…カイラ…ごめんね…」
殺された娼婦カイラに対する謝罪を口にし、後悔してもし切れない自責の念が彼女を襲う。
「ジャネット。貴方1人のせいではありません」
バシリオは膝をついて泣き崩れるジャネットに触れる。もしジャネットが売らなければ、カイラも従者2人も生きていたかもしれない。だが。それは確実なことでもない。
彼女が情報を売らなくてもバレたかもしれない。そうなればやはり襲われて殺されていた。
「貴方のせいだけじゃないんです。
私のせいでもあるんです。だから自分だけを責めないで」
「でも…あたし…」
ボロボロに泣くジャネットをバシリオは抱きしめた。
「君もカイラと同じように私を助けてくれた。ここに連れてきてくれて、感謝しています」
こうして、自分はダニエルと会えたと、ジャネットに笑顔を向ける。
「ジャネット。どうか元気で。体を大切にしてください」
ギュッと抱きしめてその背中を優しく摩った。
「リオ…」
ジャネットもバシリオを抱きしめ、元気でと別れの挨拶をした。
「行こう」
ジャネットを立たせると。玄関扉へ手をかける。
「さようなら」
お互いに微笑み合い、そのドアを開けて外に出る。
ドアが閉まるまで、ジャネットは小さく手を振っていた。
教会の塀の外側で、玄関から出て来た2人を見たロイが手を上げる。
いつのまにか降り始めた雪の中、ザクザクと音を立ててロイとデクスターの元へ戻った。
「よぉバシリオ、狩猟祭ぶり」
ロイが口元の黒布を取ると、ニカッといつもの笑顔を見せ、友達にするように挨拶する。
「まだ20日程しか経っていないんですね」
そんなロイにバシリオも笑う。
「これからはリオと呼んでください」
「わかった」
「こちらは?」
バシリオがデクスターを見て尋ねる。
「俺の弟のデクスターだ」
「デクスター・クルスと申します。どうぞデックとお呼びください、殿下」
「ではデック、私のことはリオと」
握手を交わして挨拶を済ませる。
「あっちに馬を用意してある。まずは移動しよう」
ロイがあっちと指差し、4人で歩き始めた。自然にバシリオを中心に3人で囲むように歩くのは、彼を護衛するためだ。バシリオがそれに気付き、再び申し訳ないと言う思いが込み上げてきた。
それと同時にそばにいるロイという圧倒的な強者への安心感が、ずっと胸の奥底にしまい込んできた感情の蓋が、少しづつ開いて行くのがわかった。
その感情が抑えきれず、体がカタカタと小さく震え始める。
「リオ、よく耐えたな」
ロイが震えるバシリオに気付き隣に並ぶと、フードを被っていた頭をポンポンと叩いた。
「……ぅ…」
そのまま何度も軽く頭を撫でるように叩かれ、バシリオはコートの襟元を握りしめて俯き、顔を隠すようにフードを目深に被る。
視界がボヤける。
自分の足元を見つめているが。その足が涙で歪むのを抑えられなかった。
「っふ…ぅ…」
堪えろと自身に言い聞かせても溢れてくる涙を抑えられなかった。
私を守っていた者達を悉く殺された。
重傷を負いながらも殿を務めた者。
私を守るために身を盾にし絶命した者。
お逃げください。
生きてください。
そう命をかけて叫ばれた。
たった1人。私を守るために10人の騎士が死んで行った。
私を助け匿い、巻き込まれたカイラも、逃げてと叫び、私を突き飛ばして敵の強靭に自ら身を差し出した。
「あぁ…う…うぅ…」
ボタボタと大粒の涙がこぼれ落ち、嗚咽を止めることは出来なかった。
ロイがバシリオの頭を撫で、その肩を抱いて引き寄せると優しく腕を摩る。
王族という重積。命を狙われる恐怖、目の前で自分のために死んで行く者を見なければならない苦痛。
バシリオの置かれた立場を、ロイは計り知ることは出来ない。
だが、耐え難い恐怖と苦痛を感じていることは理解出来る。
子供のように泣くバシリオを慰めながら歩き、遠くに馬が4頭じっとロイ達が来るのを待っているのが見えた。
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