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キドナ編 〜戦闘訓練開始〜
237.おっさん、がっかりする
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12月3日。
今日も午前中は訓練に明け暮れる。
全くついていけていないが、身体強化の補助魔法の練習もしながら、訓練に勤しんだ。
今日と明日、ダリルは家庭教師がくる日で訓練には不参加だと昨日聞いていたので、俺はストレッチのペア相手を探すためにあたりを見渡した。
すると、待ってましたと言わんばかりに、そばにいた騎士が数人、我先にと寄ってきて一緒に組みませんかと誘ってくれた。
だが、ジャニスとキースがサッと間に立ち塞がって牽制しているのを見て、何もそこまでしなくてもいいのに、と笑ってしまった。
結局ジャニスと2人でストレッチをする。
「最初に比べたら柔らかくなったわね~」
褒めてくれて、努力の成果ですとドヤ顔を決めた。
ナイフ術の基本の型の訓練を行い、今日から新しいものを取り入れられる。
なんのことはない。
飛んでくる柔らかいボールをナイフで斬る、という訓練だ。
言うだけでなら簡単だが、これがなかなか難しい。
テニスボールほどのポヨンポヨンしたボールなのだが、これが結構なスピードで向かってくる。しかも四方八方から。
柔らかいので当たっても全く痛くはないのだが、向かってくるボールを魔法で強化した目で捉えてナイフを振る。だが、これがなかなかどうして当たらない。
見えているのに、ナイフを当てられないのだ。
「ショーヘイさん、獲物を良く見て、ナイフを自分の手だと思ってください」
キースが俺の動きを見ながら口で指導をする。
「足をもっと動かして、腕だけで斬ろうとせずボールへ体を向けるように」
そうは言っても、どこから飛んでくるのかがわからない。
一つのボールに集中すると、横から飛んきたボールが脇腹にポヨンとぶつかる。かと言って全体を見て動こうとすればナイフを空振りしてしまう。
5分ほど続けて5分休憩という流れを繰り返し、はぁはぁと荒い呼吸を吐いた。
「きっつ…」
壁によしかかって両足を投げ出して深呼吸をする。
「無意識で感知魔法を使っているのよね?
目で見ることも大事だけど、近付いてくるボールを感知魔法で捉えるのよ」
ジャニスが教えてくれるが、頭ではわかっていても体がついて行かない。
頭の中では向かってくるボールが見えている。だが、次に来るボールが見えても、目で捉える時にはもうすでに遅いのだ。
「はぁ…」
ため息のような深呼吸をついて、よっこらしょと立ち上がると、大きく腕を振り上げてストレッチをしながら再び訓練室の中央に立った。
何度も同じことを繰り返して慣れるしかない。訓練を始めてまだたった数日で出来る方がおかしいのだ。
騎士のみんなは、こんな訓練を毎日毎日、何年も何十年も続けている。
頑張ろう。
そう気合を入れて、両手にナイフを構えた。
午後2時過ぎに、瑠璃宮に来訪者があった。
明日に控えた会談の打ち合わせは3時からのはずで、来客の予定はなかったはずだと、誰だろうとキースと顔を見合わせた。
メイドに案内されて共有リヴィングに姿を現したのは、騎士団第2部隊所属のウィリアム・バーナードだった。
数日前に彼が俺の専属護衛騎士になると聞いていたのを思い出し、キドナとの国境沿いの砦からようやっと戻ってきたんだと思った。
「ウィル!」
ガタッと勢い立ち上がり彼に近寄ると握手しようと手を出したが、ウィルはその右手を掴むと跪き、チュッとその甲にキスを落とす。すぐに立ち上がると、今度はキースの前に跪いて同じように手にキスをする。
そうだった。彼は騎士の前にバーナード子爵家の次男という貴族だった。
「久しぶり…」
約3ヶ月ぶりとなるウィルは相変わらず優しそうな微笑みで、俺とキースを見る。
「ショーヘイさん、お久しぶりです。
今回専属護衛騎士の任を仰せつかりました。どうぞよろしくお願いいたします」
にこやかに話す声と口調は、やはりほんわかと和む。本当にいい声だとホッとしてしまう。
「キース様、アラン様とのご婚約、誠におめでとうございます」
「ありがとうございます。ウィリアム様、私のことはどうぞ呼び捨てで。これからよろしくお願いいたします」
キースが丁寧に頭を下げ、俺もキースと同じく、よろしくお願いしますと頭を下げた。
「いつこっちに?」
「昨日の昼過ぎに戻りました。1日お休みを頂いて…」
ニコニコと嬉しそうにしている様子を見ると、きっと自宅に戻って伴侶2人に会って来たんだろうとこっちも嬉しくなる。
「それにしてもショーヘイさん、少し痩せたんじゃないですか?」
「え?そうか?変わってないと思うけど…」
「王都に来てから色々ありましたからね」
「少し…その…」
ウィルが言いかけて、口を閉じる。
「なんだよ」
「いえ……」
言ってもいいものか悩むように苦笑したが、じっと俺の顔を見て、
「前よりも色っぽくなりましたよね」
と、少し照れるように言った。
「…どこが…?」
「どこ…、というか…なんとなくです」
チラッと俺の全身を眺め、意味ありげな表情を浮かべた。
その視線で、ウィルが何を言いたいのか何となくわかった。
この世界に来た時の俺と今の俺は、顔も体も少しだけ変わっている。
年齢のせいで出来かかっていた皺は消え、体型もほんの少しだけ変わったような気がしていた。
その理由がこの世界に来たからなのか、男性の恋人が出来て抱かれているからなのか、それはわからないが。
「まぁ、とにかくウィルが護衛に入ってくれて嬉しいよ」
話を逸らすように言うと、ウィルが優しく微笑んだ。
ジャニスとオリヴィエとも挨拶を済ませる。元々同じ騎士団、顔を合わせることも何度もあったし、第1第2部隊合同訓練もあるため、自己紹介は不要だった。
「まさか貴方も黒騎士だったなんてねぇ」
「ほんと。なんで実力はあるのに、なんで第1に昇格しないのか不思議だったけど、そういうことだったのね」
2人はウィリアムが黒騎士だと知り、その強さに納得したように笑った。
第2から第4部隊までは、隊全体の任務がほとんだ。その中でも班分けされているが、警備や警護で派遣される時は、部隊全体で任務にあたる。
だが、第1部隊に所属する騎士は、それぞれが一騎当千の騎士達で構成されており、かなり特別な存在だ。任務も部隊全員でというよりも、単身から少人数で、任務に合わせて選抜されることの方が多い。
翔平が王都までに来る道中、第1部隊全員で護衛についたということは異例中の異例であり、それだけ聖女、ジュノーである翔平を重要人物としていたことがわかる。
ウィルは第2部隊所属だが、第1部隊に配属されても問題のない実力者であることがオリヴィエの言葉でわかった。
第1部隊にはフィッシャーが。第2部隊にはウィルが。
公表されていないが、おそらく第3、第4部隊にもそれぞれ黒騎士が所属しているのだろう。騎士団のみならず、獣士団や魔導士団、近衞騎士団もしかりだ。
「護衛に入るにあたって、事情は聞いていますか?」
「はい、アルヴィン様から全て聞いております」
キースが俺が置かれている状況の確認を行うと、ウィルはしっかりと頷いた。
黒騎士でもあるウィルは、王都に帰還する途中で、全て報告書によって把握していると答えた。
「今日はこの後明日の会談の打ち合わせがあると聞いております」
「ええ。関係者が全員揃うので、改めてそこで紹介を」
「はい」
挨拶を済ませ、揃って王宮に向かった。
ウィルと並んで歩き、色々と話をする。
「狩猟祭でな、エリカ様と同席になって…」
ウィルの伴侶の1人であるシルビアの姉、モーガン伯爵家長女のエリカの話をした。狩猟祭で、テイラー侯爵家の長男アントニーから求婚を受けて了承していた。
「ええ、シルビアから聞きました。結婚を前提で交際が始まったそうです。
エリカ様はモーガン家を継ぐお方ですので、アントニー様がモーガン家に入ることになるそうですよ」
「そっか、良かった」
笑顔でウィルを見る。
「今度、シルビア様とイヴァン様に会わせてもらえないか?
ウィルの伴侶と話してみたい」
「ええ。いいですよ。2人も喜びます。
イヴァンは何度かショーヘイさんを見掛けてはいるそうです。今騎士団で戦闘訓練を受けられているんでしょ?
挨拶したいと言っていましたけど、第1部隊の先輩が怖くて声をかけられないそうですw」
「怖いってw」
ウィルの話に笑いながら応える。
聞くと、イヴァンは第4部隊で班長をしているそうだ。基礎訓練に班員を連れて参加しているらしい。
やはりウィルと話すと何故か気持ちが和む。彼の口調と声は人を落ち着かせる効果があると思った。
王宮に到着すると真っ直ぐ会議室へ向かう。
すでに他の護衛騎士達、ギルバート、フィッシャーが揃っており、後は王族が揃うだけとなっていた。
新たに護衛に加わるウィルが挨拶をし、握手や拳を突き合わせる動作をする。
「ウィル。お前も黒か…」
オスカーが全然気付かなかったと、苦笑しながらウィルとフィッシャーをジト目で見る。
「何度も第1に推薦したのによぉ…。俺がバカみたいじゃねえか」
ウィルを第1部隊に昇格させるために、レインやミネルヴァに申告していたとオスカーが言った。
「すまんな。こういうことだ」
それをフィッシャーが笑う。
そこへレイブンを始め王族が会議室に到着し、騎士達はビシッと背筋を伸ばして敬礼する。
こういうメリハリはすごいと感心する。
「ウィル、久しぶりです。ショーヘイさんをよろしくお願いします」
ドルキア砦から一緒に旅をしたディーがウィルと握手を交わす。
「全身全霊をかけてお守りします」
ウィルがにこやかに応え、ディーも微笑んだ。
俺はディーに手を取られて、いつものようにその隣に座るように促される。サッと椅子を引いて俺を座らせてくれる行動に慣れたが、まだ恥ずかしかった。
全員が席に着き打ち合わせが始まった。
俺はロイの情報が待ち遠しくてドキドキしていた。
今の時間になってもロイがシュターゲンから転移魔法陣を使用したという話はなく、もちろん戻っても来ていない。
早ければ今日にと聞いていたので、今か今かとずっと落ち着きがなかった。
そんな俺のソワソワする様子をユリアが見る。
その視線に気付いて彼女を見て、俺は気付いてしまった。
ロイは戻らない。
彼女が話す前にその目がそう言っており、申し訳なさそうに俺を見て悲しげに目を伏せた。
「ロイ兄様からの報告はただ一言、キドナに行く、だけです」
やっぱり戻るという連絡ではなかったと、血の気がサーッと引いて行くような気がした。
「それだけ?」
ディーが焦ったようにユリアに確認するが、ユリアは小さく頷くだけだった。
「キドナへ直行するということか…」
アランが独り言のように呟き、両腕を組んで考え始める。
全員がロイの行動の意味を考える中、俺はロイが帰って来ないという事実に打ちのめされていた。
会いたい、という気持ちが溢れ涙が出そうになるのを堪えるために俯いて、膝の上で両手をギュッと握りしめた。
そんな俺を気遣って、ディーが俺の手に手を重ねて慰めるように包んでくれる。
「キドナ国内の状況も変わりつつある」
続けてフィッシャーが報告する。
「12月1日にバシリオの訃報を受けたナイゼルは、派閥を問わずすぐに臨時議会を召集した。
そこで奴は熱弁を奮ったそうだ」
フィッシャーは黒幕が用意していたセリフを口にしただけだがな、と嘲るように笑う。
12月1日午後10時過ぎ、キドナの王宮手前の城砦にある議会場に、貴族や内政官が急遽集められた。
夜遅くの緊急招集に誰もが嫌な顔をするが、時間も時間だけにその内容におおよその検討をつけていた。
『父王が倒れた後、行方がわからなくなっていたバシリオを探していたが、今日、公国内で死亡が確認された。
愚弟は父が病に伏せっているにも関わらず、公国に遊興に出掛け、その帰りに公国に跋扈する盗賊団によって殺された』
ナイゼルが集まった中枢メンバーに大きな声で語る。
だが、半分以上は国王派とバシリオ派であり、誰もナイゼルの言葉を信じてはいなかった。
全くバシリオを探す素振りも見せなかった。さらに自分と敵対する勢力の粛清を行なっていたのに何を今更と、隠しもせず表情に表した。盗賊団のせいにして、実はお前が暗殺したんだと、誰もが思っていた。
だが。
『私はバシリオが嫌いだ』
ナイゼルがはっきりと全員の目を見て告げる。
『嫌いだが、奴は国に必要な人物だと認識している』
ナイゼルの言葉に、議会内にどよめきが起こる。
『…認めよう。
私よりも、バシリオの方が王に相応しい。
私は王太子と言えども、第2妃の子。本来は正妃の子であるバシリオが王太子になるべきだ。
さらに、内政においても私よりもずっと優秀で統治者に相応しい』
その場にいた者達がポカンと口を開けたまま呆ける。全く予想もしていなかった言葉だった。
『父が倒れ、私は焦ったのだ。
このまま私が王になるのか、と。
はっきり言えば、このままバシリオが戻ってこない方が良いと思った。だが、いざ1人で国を統治しようとして、その難しさに恐れ慄いた』
ナイゼルは悔しそうに顔を歪め、テーブルの上で両手を強く握りしめて全身で悔しさを表現する。
『笑え。私は今になって気付いたのだ。いや、気付いていたのに認めたくなかった。
なんと愚かで滑稽か』
ハハハと自虐的にナイゼルが笑い、逆に議会内が静まり返る。
『では粛清の意味は』
しばらくしてから1人が問う。
『…あれは、バシリオにたかる蛆虫どもだ。バシリオが戻った時のために虫を排除した』
ナイゼルの言葉にザワザワと囁き合うような話し声が起こる。
『つまり殿下はバシリオ様が戻られた時、王太子の地位を譲るつもりだったと仰りたいのですか』
『そうだ。父も長くはないだろう。存命のうちに弟に即位させるつもりでいた』
さらにざわめきが大きくなる。
『だが…それも叶わん!!』
ドン!と拳でテーブルを叩き、怒鳴った。
『公国人が我が国の王となるバシリオを殺した!!許されざる行為だ!!
公国はその盗賊団の存在知りながら放置し、数々の被害者が出ている!
その被害者に我が弟がなるなどあってはならん!!』
ナイゼルの怒りの波動が議会を突き抜ける。
『ナイゼル様!報復を!!』
『公国に鉄槌を!!』
何処からともなく声が上がる。
『ナイゼル様!仇を!!』
『王太子殿下!!』
ナイゼルは小さく体を震わせながら、じっと俯いていた。側から見ればそれは怒りを堪えているようにも見える。
だが、俯いたナイゼルの顔は笑っていた。
ニヤリと口元を歪ませて、この小芝居がおかしくて肩を震わせて笑っていた。
議会内で口々に報復を求める声を聞きながら、ナイゼルは笑いをなんとか抑えると顔を上げた。
『公国に事実を告げ、その責任を問う。
簡単ではないだろうが、私に考えがある』
真剣な表情で全員を見渡す。
『バシリオのため、協力して欲しい。
王になる者を殺された我が国の怒りを示すのだ』
ナイゼルが静かに言った。
ナイゼル派4割、国王派2割、バシリオ派4割だった構図は、ナイゼル派に大幅に傾いた。
だが、それでも1割ほどのバシリオ派の貴族、内政官はナイゼルを信用せず、その背景を探るべく密かに動き出した。
内戦に向かっていたキドナが、やはりバシリオの死という情報によってまとまりを見せた。
「自分のための粛清をバシリオのためとすり替えたか…」
サイファーが汚いとは思いつつも、そのやり方に思う所があるのか、フッと鼻で笑う。
「死人に口無しとはこのことですね」
フィンが呟く。
「国の怒りか」
レイブンは両腕を組み目を閉じて報告を聞いていたが、ゆっくりと目を開ける。
「アラン、キドナ国境沿いに兵士と騎士はどのくらいいる」
「今現在、砦常駐の兵士に加えて騎士団第2部隊、魔道士団第3部隊、騎兵3部隊、弓兵2部隊を砦に派遣しています」
「ふむ…」
レイブンが顎を手で摩りながら頭の中に地図を思い描く。
「アラン、もう少し増やした方がいいな。砦だけではなく、検問関所にも」
「すでに騎兵と弓兵を追加し、検問関所には騎士団第1部隊から10名を派遣しました」
それを聞いたレイブンは、流石じゃのぉ、と軍統括の息子に微笑む。
俺はそれを聞いて、今朝の基礎訓練の時に第1部隊のおっさん達が数人見えなかったのは、そのせいかと思った。
「ちょっと確認いいかしら」
ジャニスが手を上げる。
「つまり、今のキドナはバシリオの仇を討つために一致団結したってことであってるのかしら?」
「そうなるね。予測通りだよ」
フィッシャーが答える。
「こっちに報復戦争を仕掛けてくるかもしれないってことになるの?」
「ブラフだよ」
ダリアが微笑む。
「交渉を有利に運ぶために、戦争もやむなしというはったりです」
ディーが静かに言う。
それを聞いたジャニスやアビゲイル、エミリアが顔を顰める。
「でも、それじゃ交渉決裂の時は戦争が…」
「それはないな。
いざ戦争となっても、キドナの戦力じゃうちには勝てん。それはナイゼルもよくわかってるさ。
あくまでも見せかけなんだ。それが国の総意だというな」
アランが説明するように言った。
「ですが、戦争も辞さないという意思は人々の記憶に、歴史に記録を残します」
ギルバートが苦笑する。
戦争を起こしかけたという事実は、その理由に関わらず黒歴史となることをよく理解していた。
「残念ながら問題はそこではない」
サイファーが見せかけの戦争の話を打ち切る。
「そうだね。問題は何を要求してくるかだ。
おそらく、ロイの行動はその要求に関係しているんだろうね」
ダリアが苦笑しながら言う。
「キドナの目的はショーへー兄様ですわ。それは間違いありません。
ですが、正面から要求しても通らないことも把握しています」
ユリアが真剣に俺の目を見た。俺もそれに頷きつつ応える。
「考えられるのは、ショーヘイと同じように価値のあるものを要求してくるということだ」
俺を商品のように例えることに苦笑いを浮かべた。
ディーは同じ価値のものなんてあるか、と怒ったような表情を浮かべ、絶対に手放さないと言うように俺の手を強く握った。
「同等かどうかはわからんが…」
オスカーが口を開く。
「価値という点で考えるなら、魔鉱石鉱山だな」
「そうですね。キドナは資源が乏しい。魔鉱石は全て輸入に頼っているし、喉から手が出るほど欲しいでしょう」
ギルバートも頷きながら言う。
実際にキドナはベネットを介してイグリットの魔鉱石鉱山を手に入れようとしていたし、横流しもしている。
ダニエルから法務局、司法局へと報告も上がっており、暗躍は200年前からという彼の憶測に各局は過去の調査に大騒ぎになっている。
「ですが、鉱山か聖女どちらかを寄越せと言われても、それも無理な話ですよ」
ウィルが否定した。
「そうだ。どちらにしても要求は通らない」
サイファーが頷く。
「目的であるショーヘイを手に入れるための要求だ。何かの代替品としてショーヘイを…」
「ショーヘイさんが何かの代わりになるんんてあり得ない」
ディーは文句のように言った。
「ディー」
さっきからムッとしているディーを宥めるように、俺はテーブルの下でディーの手を握り返す。
「あり得ないですね。あり得ないですが…」
ギルバートが眉間に皺を寄せる。
その裏に黒幕の存在があることを、全員が思い浮かべ、あり得ないことが起こり得る計画だろうと考える。
翔平が代替品になる何かが思いつかない。その計画を考えれば考えるほど深みにハマるように頭を悩ませた。
「…ロイ兄様が…」
ユリアがポツリと漏らした。
「真っ直ぐキドナへ向かったのは、こちらへ戻る時間が無駄だと悟ったからでしょう」
伏せていた目線を上げると、全員を見渡す。
「バシリオ様をキドナへお連れして直接ナイゼル様と対峙し、謀略を暴く。
元々私達も、ナイゼル様を追い詰めるためにバシリオ様をお助けしたのです。
要求がなんであれ、飲む必要はないのですから、まずはロイ兄様と早急に合流する必要がありますわ」
ユリアがわからないことを後回しにして、しなければならないことを進めようと言った。
「そうだな。今はそれしかない」
サイファーも妹の言葉に納得し、誰を向かわせるかと考えた。
「ギルバート、行ってくれるか」
だが、レイブンがすぐにギルバートを見て言った。
「もちろんです」
確かにギルバートなら最適だ。
その強さもさることながら、公国の公爵という立場も役に立つ。
「それとオスカーにも行ってもらいたい」
さらにレイブンがオスカーを見た。
レイブンの考えがわかったサイファーがニヤリと笑い、オスカーを見る。
「オスカー。利用して申し訳ないがレンブラント公爵へ密書を送ってもらえるか」
「ワシもマシューへ協力を依頼する」
帝国の2つの公爵家に話を通すと聞いて、俺はその理由を頭に思い浮かべ、後でディーに確認しようと思った。
「明日の会談には私とダリア、アランの3人で臨む」
サイファーが締めくくるように言った。
王宮の会議室を出て騎士達と瑠璃宮へ戻る。
今日の護衛担当はディーとウィルらしいが、他の騎士達は今の打ち合わせで聞きたいこと、思ったことがあったらしく、官舎には戻らず瑠璃宮の共有リヴィングに揃った。
キースと一緒にお茶の用意をして全員に配膳すると、早速ディーとオスカーに確認した。
「帝国のレンブラント公爵とバルト公爵に協力を依頼するってさ、見届け人にするためか?」
「そうです。事は内々に済ませられる内容ではありませんからね」
「ああ。ましてやナイゼルはキドナの王太子だ。他国の王太子を吊し上げるんだから、それなりの根回しも必要なんだよ」
ディーとオスカーが説明してくれて、俺はうんうんと納得した。
「ほんと面倒臭いわね」
ジャニスが苛立つように言った。
「悪人退治に政治が絡むなんてやりづらいったらありゃしないわ」
オリヴィエも文句を言い、口を尖らせた。
それを聞いて、本当に面倒臭いよな、とクスクスと笑っていたが、ふと思う。
「…あのさ。キドナも見届け人を用意してるってことは…?」
「…多分ね」
ディーが苦笑いを浮かべる。
「それが何処の誰かはわかりませんけど、他国の誰かを見届け人にしてくると思いますよ」
「こっちではギル様と帝国の公爵。それに見合うだけの人ってことよね」
「予測ではジェラール聖王国の誰かだと」
ディーはサイファーから聞いた人物を口にする。
「あー…。それなら話はわかるわ。
聖王国は戦争の時以来、こっちにいい印象持ってないもんね」
アビゲイルが考えて口にする。
なるほど、と思った。
見届け人になる人物が中立である必要はない。こちらが協力を要請し応えてくれる国があるのと同様に、キドナにも協力する国がいるということか、と思った。
侵略戦争に負けた聖王国が今回のことでキドナに加担してもおかしくはない。むしろ、聖女を、ジュノーを聖王国も利用しようとしているとも考えられた。
ほんと外交って難しい。
心の中で愚痴のように呟いた。
「はいはい!まだ質問!」
エミリアが手を上げる。
「なんで会談はレイブン様じゃないの?」
「それはキドナも王の出席ではないからですよ」
それにはキースが答える。
「他国間の交渉においては、立場が同等の者という大前提があるんです。
ナイゼルが王太子である以上、王が出る必要はありません」
「逆にここでレイブン様が出席すれば、こちらの足元を見られかねません」
ウィルが優しい声色で補足する。
「そういうものなのね」
ニコリと微笑むウィルにほんわかと空気が和んだ。
その後明日の会談について、様々な憶測を話し合いながら過ごす。
夕食の時間になり、護衛騎士達全員で食堂へ降りると、騎士達が瑠璃宮に残った理由がウィルの歓迎会の意味もあると知って笑ってしまった。
食事中はウィルの伴侶の話や、同じ既婚者であるフィンの話を聞いて、この世界の夫婦(夫夫)関係の話題はすごく参考になった。
さらに俺の訓練の話から、城下町の話題、ジュリエッタの営業再開の話題と尽きることはなく、久しぶりに大勢で食事をして楽しくて楽しくて、一瞬ではあったが、置かれた状況を忘れることが出来た。
夕食を終え、キースはアランの元へ、担当以外の騎士達が官舎へ帰るのをエントランスで見送り、自室に戻る。
ウィルは2階の騎士の部屋に行き、俺とディーは3階へ上がった。
チャプチャプとお湯が揺れる。
背後のディーの肩に後頭部を預けて、後ろから抱かれるように共に湯船に浸かっていた。
「はぁ~…気持ちぃ…」
温めのお湯に浸かりながらため息をつく。
「もっと気持ち良くなりませんか?」
クスクスと耳元で笑いながら囁かれ、それと同時に指先で乳首の先端を撫でられてピクリと反応した。
「なぁ…」
クリクリと乳首をいじられてジクジクとした快感を感じながらディーを振り返る。
「もう…11日目だ」
ロイが出発して11日目。帰ってくると思っていたのに、まだ戻らないとわかって寂しさが襲っていた。
「いつ…会えるかな」
ディーの手の動きが止まる。
「寂しいですか?」
「うん。寂しい…」
素直に寂しいと訴える翔平に、ディーはロイに嫉妬した。
2人で愛しているとわかっていても、目の前の恋人はもう1人の男を欲している。
私がいるのに、それでは足りないとそう訴えている。
「ショーヘイ…」
ギュッと背後から抱きしめると、翔平はディーの腕に縋り付く。
そして体を起こすとディーと向かい合わせになって、抱きついた。
「寂しいから…ずっとこうしてたい」
ディーは何も言えず、ただ抱きしめ返して慰めるように頭を撫でた。
翔平の手がディーの肩に触れ、体を起こすと自分から唇を重ねた。
唇を重ねるだけのキスが舌を絡ませる濃厚なものに変わるまで時間はかからなかった。
触れている互いのペニスが天を向いて硬く膨張し、求め合う。
「ディー…」
はぁと熱い吐息を吐き、自らすり寄せるようにディーを求めた。
濡れた体を完全に拭き取ることもせず、絡み合ったまま寝室へ雪崩こむ。
1人欠けた状態で、互いに補うように体を貪り合う。
何度も繋がり、溶け込むように体を重ね、その存在を確かめ合った。
今日も午前中は訓練に明け暮れる。
全くついていけていないが、身体強化の補助魔法の練習もしながら、訓練に勤しんだ。
今日と明日、ダリルは家庭教師がくる日で訓練には不参加だと昨日聞いていたので、俺はストレッチのペア相手を探すためにあたりを見渡した。
すると、待ってましたと言わんばかりに、そばにいた騎士が数人、我先にと寄ってきて一緒に組みませんかと誘ってくれた。
だが、ジャニスとキースがサッと間に立ち塞がって牽制しているのを見て、何もそこまでしなくてもいいのに、と笑ってしまった。
結局ジャニスと2人でストレッチをする。
「最初に比べたら柔らかくなったわね~」
褒めてくれて、努力の成果ですとドヤ顔を決めた。
ナイフ術の基本の型の訓練を行い、今日から新しいものを取り入れられる。
なんのことはない。
飛んでくる柔らかいボールをナイフで斬る、という訓練だ。
言うだけでなら簡単だが、これがなかなか難しい。
テニスボールほどのポヨンポヨンしたボールなのだが、これが結構なスピードで向かってくる。しかも四方八方から。
柔らかいので当たっても全く痛くはないのだが、向かってくるボールを魔法で強化した目で捉えてナイフを振る。だが、これがなかなかどうして当たらない。
見えているのに、ナイフを当てられないのだ。
「ショーヘイさん、獲物を良く見て、ナイフを自分の手だと思ってください」
キースが俺の動きを見ながら口で指導をする。
「足をもっと動かして、腕だけで斬ろうとせずボールへ体を向けるように」
そうは言っても、どこから飛んでくるのかがわからない。
一つのボールに集中すると、横から飛んきたボールが脇腹にポヨンとぶつかる。かと言って全体を見て動こうとすればナイフを空振りしてしまう。
5分ほど続けて5分休憩という流れを繰り返し、はぁはぁと荒い呼吸を吐いた。
「きっつ…」
壁によしかかって両足を投げ出して深呼吸をする。
「無意識で感知魔法を使っているのよね?
目で見ることも大事だけど、近付いてくるボールを感知魔法で捉えるのよ」
ジャニスが教えてくれるが、頭ではわかっていても体がついて行かない。
頭の中では向かってくるボールが見えている。だが、次に来るボールが見えても、目で捉える時にはもうすでに遅いのだ。
「はぁ…」
ため息のような深呼吸をついて、よっこらしょと立ち上がると、大きく腕を振り上げてストレッチをしながら再び訓練室の中央に立った。
何度も同じことを繰り返して慣れるしかない。訓練を始めてまだたった数日で出来る方がおかしいのだ。
騎士のみんなは、こんな訓練を毎日毎日、何年も何十年も続けている。
頑張ろう。
そう気合を入れて、両手にナイフを構えた。
午後2時過ぎに、瑠璃宮に来訪者があった。
明日に控えた会談の打ち合わせは3時からのはずで、来客の予定はなかったはずだと、誰だろうとキースと顔を見合わせた。
メイドに案内されて共有リヴィングに姿を現したのは、騎士団第2部隊所属のウィリアム・バーナードだった。
数日前に彼が俺の専属護衛騎士になると聞いていたのを思い出し、キドナとの国境沿いの砦からようやっと戻ってきたんだと思った。
「ウィル!」
ガタッと勢い立ち上がり彼に近寄ると握手しようと手を出したが、ウィルはその右手を掴むと跪き、チュッとその甲にキスを落とす。すぐに立ち上がると、今度はキースの前に跪いて同じように手にキスをする。
そうだった。彼は騎士の前にバーナード子爵家の次男という貴族だった。
「久しぶり…」
約3ヶ月ぶりとなるウィルは相変わらず優しそうな微笑みで、俺とキースを見る。
「ショーヘイさん、お久しぶりです。
今回専属護衛騎士の任を仰せつかりました。どうぞよろしくお願いいたします」
にこやかに話す声と口調は、やはりほんわかと和む。本当にいい声だとホッとしてしまう。
「キース様、アラン様とのご婚約、誠におめでとうございます」
「ありがとうございます。ウィリアム様、私のことはどうぞ呼び捨てで。これからよろしくお願いいたします」
キースが丁寧に頭を下げ、俺もキースと同じく、よろしくお願いしますと頭を下げた。
「いつこっちに?」
「昨日の昼過ぎに戻りました。1日お休みを頂いて…」
ニコニコと嬉しそうにしている様子を見ると、きっと自宅に戻って伴侶2人に会って来たんだろうとこっちも嬉しくなる。
「それにしてもショーヘイさん、少し痩せたんじゃないですか?」
「え?そうか?変わってないと思うけど…」
「王都に来てから色々ありましたからね」
「少し…その…」
ウィルが言いかけて、口を閉じる。
「なんだよ」
「いえ……」
言ってもいいものか悩むように苦笑したが、じっと俺の顔を見て、
「前よりも色っぽくなりましたよね」
と、少し照れるように言った。
「…どこが…?」
「どこ…、というか…なんとなくです」
チラッと俺の全身を眺め、意味ありげな表情を浮かべた。
その視線で、ウィルが何を言いたいのか何となくわかった。
この世界に来た時の俺と今の俺は、顔も体も少しだけ変わっている。
年齢のせいで出来かかっていた皺は消え、体型もほんの少しだけ変わったような気がしていた。
その理由がこの世界に来たからなのか、男性の恋人が出来て抱かれているからなのか、それはわからないが。
「まぁ、とにかくウィルが護衛に入ってくれて嬉しいよ」
話を逸らすように言うと、ウィルが優しく微笑んだ。
ジャニスとオリヴィエとも挨拶を済ませる。元々同じ騎士団、顔を合わせることも何度もあったし、第1第2部隊合同訓練もあるため、自己紹介は不要だった。
「まさか貴方も黒騎士だったなんてねぇ」
「ほんと。なんで実力はあるのに、なんで第1に昇格しないのか不思議だったけど、そういうことだったのね」
2人はウィリアムが黒騎士だと知り、その強さに納得したように笑った。
第2から第4部隊までは、隊全体の任務がほとんだ。その中でも班分けされているが、警備や警護で派遣される時は、部隊全体で任務にあたる。
だが、第1部隊に所属する騎士は、それぞれが一騎当千の騎士達で構成されており、かなり特別な存在だ。任務も部隊全員でというよりも、単身から少人数で、任務に合わせて選抜されることの方が多い。
翔平が王都までに来る道中、第1部隊全員で護衛についたということは異例中の異例であり、それだけ聖女、ジュノーである翔平を重要人物としていたことがわかる。
ウィルは第2部隊所属だが、第1部隊に配属されても問題のない実力者であることがオリヴィエの言葉でわかった。
第1部隊にはフィッシャーが。第2部隊にはウィルが。
公表されていないが、おそらく第3、第4部隊にもそれぞれ黒騎士が所属しているのだろう。騎士団のみならず、獣士団や魔導士団、近衞騎士団もしかりだ。
「護衛に入るにあたって、事情は聞いていますか?」
「はい、アルヴィン様から全て聞いております」
キースが俺が置かれている状況の確認を行うと、ウィルはしっかりと頷いた。
黒騎士でもあるウィルは、王都に帰還する途中で、全て報告書によって把握していると答えた。
「今日はこの後明日の会談の打ち合わせがあると聞いております」
「ええ。関係者が全員揃うので、改めてそこで紹介を」
「はい」
挨拶を済ませ、揃って王宮に向かった。
ウィルと並んで歩き、色々と話をする。
「狩猟祭でな、エリカ様と同席になって…」
ウィルの伴侶の1人であるシルビアの姉、モーガン伯爵家長女のエリカの話をした。狩猟祭で、テイラー侯爵家の長男アントニーから求婚を受けて了承していた。
「ええ、シルビアから聞きました。結婚を前提で交際が始まったそうです。
エリカ様はモーガン家を継ぐお方ですので、アントニー様がモーガン家に入ることになるそうですよ」
「そっか、良かった」
笑顔でウィルを見る。
「今度、シルビア様とイヴァン様に会わせてもらえないか?
ウィルの伴侶と話してみたい」
「ええ。いいですよ。2人も喜びます。
イヴァンは何度かショーヘイさんを見掛けてはいるそうです。今騎士団で戦闘訓練を受けられているんでしょ?
挨拶したいと言っていましたけど、第1部隊の先輩が怖くて声をかけられないそうですw」
「怖いってw」
ウィルの話に笑いながら応える。
聞くと、イヴァンは第4部隊で班長をしているそうだ。基礎訓練に班員を連れて参加しているらしい。
やはりウィルと話すと何故か気持ちが和む。彼の口調と声は人を落ち着かせる効果があると思った。
王宮に到着すると真っ直ぐ会議室へ向かう。
すでに他の護衛騎士達、ギルバート、フィッシャーが揃っており、後は王族が揃うだけとなっていた。
新たに護衛に加わるウィルが挨拶をし、握手や拳を突き合わせる動作をする。
「ウィル。お前も黒か…」
オスカーが全然気付かなかったと、苦笑しながらウィルとフィッシャーをジト目で見る。
「何度も第1に推薦したのによぉ…。俺がバカみたいじゃねえか」
ウィルを第1部隊に昇格させるために、レインやミネルヴァに申告していたとオスカーが言った。
「すまんな。こういうことだ」
それをフィッシャーが笑う。
そこへレイブンを始め王族が会議室に到着し、騎士達はビシッと背筋を伸ばして敬礼する。
こういうメリハリはすごいと感心する。
「ウィル、久しぶりです。ショーヘイさんをよろしくお願いします」
ドルキア砦から一緒に旅をしたディーがウィルと握手を交わす。
「全身全霊をかけてお守りします」
ウィルがにこやかに応え、ディーも微笑んだ。
俺はディーに手を取られて、いつものようにその隣に座るように促される。サッと椅子を引いて俺を座らせてくれる行動に慣れたが、まだ恥ずかしかった。
全員が席に着き打ち合わせが始まった。
俺はロイの情報が待ち遠しくてドキドキしていた。
今の時間になってもロイがシュターゲンから転移魔法陣を使用したという話はなく、もちろん戻っても来ていない。
早ければ今日にと聞いていたので、今か今かとずっと落ち着きがなかった。
そんな俺のソワソワする様子をユリアが見る。
その視線に気付いて彼女を見て、俺は気付いてしまった。
ロイは戻らない。
彼女が話す前にその目がそう言っており、申し訳なさそうに俺を見て悲しげに目を伏せた。
「ロイ兄様からの報告はただ一言、キドナに行く、だけです」
やっぱり戻るという連絡ではなかったと、血の気がサーッと引いて行くような気がした。
「それだけ?」
ディーが焦ったようにユリアに確認するが、ユリアは小さく頷くだけだった。
「キドナへ直行するということか…」
アランが独り言のように呟き、両腕を組んで考え始める。
全員がロイの行動の意味を考える中、俺はロイが帰って来ないという事実に打ちのめされていた。
会いたい、という気持ちが溢れ涙が出そうになるのを堪えるために俯いて、膝の上で両手をギュッと握りしめた。
そんな俺を気遣って、ディーが俺の手に手を重ねて慰めるように包んでくれる。
「キドナ国内の状況も変わりつつある」
続けてフィッシャーが報告する。
「12月1日にバシリオの訃報を受けたナイゼルは、派閥を問わずすぐに臨時議会を召集した。
そこで奴は熱弁を奮ったそうだ」
フィッシャーは黒幕が用意していたセリフを口にしただけだがな、と嘲るように笑う。
12月1日午後10時過ぎ、キドナの王宮手前の城砦にある議会場に、貴族や内政官が急遽集められた。
夜遅くの緊急招集に誰もが嫌な顔をするが、時間も時間だけにその内容におおよその検討をつけていた。
『父王が倒れた後、行方がわからなくなっていたバシリオを探していたが、今日、公国内で死亡が確認された。
愚弟は父が病に伏せっているにも関わらず、公国に遊興に出掛け、その帰りに公国に跋扈する盗賊団によって殺された』
ナイゼルが集まった中枢メンバーに大きな声で語る。
だが、半分以上は国王派とバシリオ派であり、誰もナイゼルの言葉を信じてはいなかった。
全くバシリオを探す素振りも見せなかった。さらに自分と敵対する勢力の粛清を行なっていたのに何を今更と、隠しもせず表情に表した。盗賊団のせいにして、実はお前が暗殺したんだと、誰もが思っていた。
だが。
『私はバシリオが嫌いだ』
ナイゼルがはっきりと全員の目を見て告げる。
『嫌いだが、奴は国に必要な人物だと認識している』
ナイゼルの言葉に、議会内にどよめきが起こる。
『…認めよう。
私よりも、バシリオの方が王に相応しい。
私は王太子と言えども、第2妃の子。本来は正妃の子であるバシリオが王太子になるべきだ。
さらに、内政においても私よりもずっと優秀で統治者に相応しい』
その場にいた者達がポカンと口を開けたまま呆ける。全く予想もしていなかった言葉だった。
『父が倒れ、私は焦ったのだ。
このまま私が王になるのか、と。
はっきり言えば、このままバシリオが戻ってこない方が良いと思った。だが、いざ1人で国を統治しようとして、その難しさに恐れ慄いた』
ナイゼルは悔しそうに顔を歪め、テーブルの上で両手を強く握りしめて全身で悔しさを表現する。
『笑え。私は今になって気付いたのだ。いや、気付いていたのに認めたくなかった。
なんと愚かで滑稽か』
ハハハと自虐的にナイゼルが笑い、逆に議会内が静まり返る。
『では粛清の意味は』
しばらくしてから1人が問う。
『…あれは、バシリオにたかる蛆虫どもだ。バシリオが戻った時のために虫を排除した』
ナイゼルの言葉にザワザワと囁き合うような話し声が起こる。
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さらにざわめきが大きくなる。
『だが…それも叶わん!!』
ドン!と拳でテーブルを叩き、怒鳴った。
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公国はその盗賊団の存在知りながら放置し、数々の被害者が出ている!
その被害者に我が弟がなるなどあってはならん!!』
ナイゼルの怒りの波動が議会を突き抜ける。
『ナイゼル様!報復を!!』
『公国に鉄槌を!!』
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『ナイゼル様!仇を!!』
『王太子殿下!!』
ナイゼルは小さく体を震わせながら、じっと俯いていた。側から見ればそれは怒りを堪えているようにも見える。
だが、俯いたナイゼルの顔は笑っていた。
ニヤリと口元を歪ませて、この小芝居がおかしくて肩を震わせて笑っていた。
議会内で口々に報復を求める声を聞きながら、ナイゼルは笑いをなんとか抑えると顔を上げた。
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ナイゼルが静かに言った。
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「自分のための粛清をバシリオのためとすり替えたか…」
サイファーが汚いとは思いつつも、そのやり方に思う所があるのか、フッと鼻で笑う。
「死人に口無しとはこのことですね」
フィンが呟く。
「国の怒りか」
レイブンは両腕を組み目を閉じて報告を聞いていたが、ゆっくりと目を開ける。
「アラン、キドナ国境沿いに兵士と騎士はどのくらいいる」
「今現在、砦常駐の兵士に加えて騎士団第2部隊、魔道士団第3部隊、騎兵3部隊、弓兵2部隊を砦に派遣しています」
「ふむ…」
レイブンが顎を手で摩りながら頭の中に地図を思い描く。
「アラン、もう少し増やした方がいいな。砦だけではなく、検問関所にも」
「すでに騎兵と弓兵を追加し、検問関所には騎士団第1部隊から10名を派遣しました」
それを聞いたレイブンは、流石じゃのぉ、と軍統括の息子に微笑む。
俺はそれを聞いて、今朝の基礎訓練の時に第1部隊のおっさん達が数人見えなかったのは、そのせいかと思った。
「ちょっと確認いいかしら」
ジャニスが手を上げる。
「つまり、今のキドナはバシリオの仇を討つために一致団結したってことであってるのかしら?」
「そうなるね。予測通りだよ」
フィッシャーが答える。
「こっちに報復戦争を仕掛けてくるかもしれないってことになるの?」
「ブラフだよ」
ダリアが微笑む。
「交渉を有利に運ぶために、戦争もやむなしというはったりです」
ディーが静かに言う。
それを聞いたジャニスやアビゲイル、エミリアが顔を顰める。
「でも、それじゃ交渉決裂の時は戦争が…」
「それはないな。
いざ戦争となっても、キドナの戦力じゃうちには勝てん。それはナイゼルもよくわかってるさ。
あくまでも見せかけなんだ。それが国の総意だというな」
アランが説明するように言った。
「ですが、戦争も辞さないという意思は人々の記憶に、歴史に記録を残します」
ギルバートが苦笑する。
戦争を起こしかけたという事実は、その理由に関わらず黒歴史となることをよく理解していた。
「残念ながら問題はそこではない」
サイファーが見せかけの戦争の話を打ち切る。
「そうだね。問題は何を要求してくるかだ。
おそらく、ロイの行動はその要求に関係しているんだろうね」
ダリアが苦笑しながら言う。
「キドナの目的はショーへー兄様ですわ。それは間違いありません。
ですが、正面から要求しても通らないことも把握しています」
ユリアが真剣に俺の目を見た。俺もそれに頷きつつ応える。
「考えられるのは、ショーヘイと同じように価値のあるものを要求してくるということだ」
俺を商品のように例えることに苦笑いを浮かべた。
ディーは同じ価値のものなんてあるか、と怒ったような表情を浮かべ、絶対に手放さないと言うように俺の手を強く握った。
「同等かどうかはわからんが…」
オスカーが口を開く。
「価値という点で考えるなら、魔鉱石鉱山だな」
「そうですね。キドナは資源が乏しい。魔鉱石は全て輸入に頼っているし、喉から手が出るほど欲しいでしょう」
ギルバートも頷きながら言う。
実際にキドナはベネットを介してイグリットの魔鉱石鉱山を手に入れようとしていたし、横流しもしている。
ダニエルから法務局、司法局へと報告も上がっており、暗躍は200年前からという彼の憶測に各局は過去の調査に大騒ぎになっている。
「ですが、鉱山か聖女どちらかを寄越せと言われても、それも無理な話ですよ」
ウィルが否定した。
「そうだ。どちらにしても要求は通らない」
サイファーが頷く。
「目的であるショーヘイを手に入れるための要求だ。何かの代替品としてショーヘイを…」
「ショーヘイさんが何かの代わりになるんんてあり得ない」
ディーは文句のように言った。
「ディー」
さっきからムッとしているディーを宥めるように、俺はテーブルの下でディーの手を握り返す。
「あり得ないですね。あり得ないですが…」
ギルバートが眉間に皺を寄せる。
その裏に黒幕の存在があることを、全員が思い浮かべ、あり得ないことが起こり得る計画だろうと考える。
翔平が代替品になる何かが思いつかない。その計画を考えれば考えるほど深みにハマるように頭を悩ませた。
「…ロイ兄様が…」
ユリアがポツリと漏らした。
「真っ直ぐキドナへ向かったのは、こちらへ戻る時間が無駄だと悟ったからでしょう」
伏せていた目線を上げると、全員を見渡す。
「バシリオ様をキドナへお連れして直接ナイゼル様と対峙し、謀略を暴く。
元々私達も、ナイゼル様を追い詰めるためにバシリオ様をお助けしたのです。
要求がなんであれ、飲む必要はないのですから、まずはロイ兄様と早急に合流する必要がありますわ」
ユリアがわからないことを後回しにして、しなければならないことを進めようと言った。
「そうだな。今はそれしかない」
サイファーも妹の言葉に納得し、誰を向かわせるかと考えた。
「ギルバート、行ってくれるか」
だが、レイブンがすぐにギルバートを見て言った。
「もちろんです」
確かにギルバートなら最適だ。
その強さもさることながら、公国の公爵という立場も役に立つ。
「それとオスカーにも行ってもらいたい」
さらにレイブンがオスカーを見た。
レイブンの考えがわかったサイファーがニヤリと笑い、オスカーを見る。
「オスカー。利用して申し訳ないがレンブラント公爵へ密書を送ってもらえるか」
「ワシもマシューへ協力を依頼する」
帝国の2つの公爵家に話を通すと聞いて、俺はその理由を頭に思い浮かべ、後でディーに確認しようと思った。
「明日の会談には私とダリア、アランの3人で臨む」
サイファーが締めくくるように言った。
王宮の会議室を出て騎士達と瑠璃宮へ戻る。
今日の護衛担当はディーとウィルらしいが、他の騎士達は今の打ち合わせで聞きたいこと、思ったことがあったらしく、官舎には戻らず瑠璃宮の共有リヴィングに揃った。
キースと一緒にお茶の用意をして全員に配膳すると、早速ディーとオスカーに確認した。
「帝国のレンブラント公爵とバルト公爵に協力を依頼するってさ、見届け人にするためか?」
「そうです。事は内々に済ませられる内容ではありませんからね」
「ああ。ましてやナイゼルはキドナの王太子だ。他国の王太子を吊し上げるんだから、それなりの根回しも必要なんだよ」
ディーとオスカーが説明してくれて、俺はうんうんと納得した。
「ほんと面倒臭いわね」
ジャニスが苛立つように言った。
「悪人退治に政治が絡むなんてやりづらいったらありゃしないわ」
オリヴィエも文句を言い、口を尖らせた。
それを聞いて、本当に面倒臭いよな、とクスクスと笑っていたが、ふと思う。
「…あのさ。キドナも見届け人を用意してるってことは…?」
「…多分ね」
ディーが苦笑いを浮かべる。
「それが何処の誰かはわかりませんけど、他国の誰かを見届け人にしてくると思いますよ」
「こっちではギル様と帝国の公爵。それに見合うだけの人ってことよね」
「予測ではジェラール聖王国の誰かだと」
ディーはサイファーから聞いた人物を口にする。
「あー…。それなら話はわかるわ。
聖王国は戦争の時以来、こっちにいい印象持ってないもんね」
アビゲイルが考えて口にする。
なるほど、と思った。
見届け人になる人物が中立である必要はない。こちらが協力を要請し応えてくれる国があるのと同様に、キドナにも協力する国がいるということか、と思った。
侵略戦争に負けた聖王国が今回のことでキドナに加担してもおかしくはない。むしろ、聖女を、ジュノーを聖王国も利用しようとしているとも考えられた。
ほんと外交って難しい。
心の中で愚痴のように呟いた。
「はいはい!まだ質問!」
エミリアが手を上げる。
「なんで会談はレイブン様じゃないの?」
「それはキドナも王の出席ではないからですよ」
それにはキースが答える。
「他国間の交渉においては、立場が同等の者という大前提があるんです。
ナイゼルが王太子である以上、王が出る必要はありません」
「逆にここでレイブン様が出席すれば、こちらの足元を見られかねません」
ウィルが優しい声色で補足する。
「そういうものなのね」
ニコリと微笑むウィルにほんわかと空気が和んだ。
その後明日の会談について、様々な憶測を話し合いながら過ごす。
夕食の時間になり、護衛騎士達全員で食堂へ降りると、騎士達が瑠璃宮に残った理由がウィルの歓迎会の意味もあると知って笑ってしまった。
食事中はウィルの伴侶の話や、同じ既婚者であるフィンの話を聞いて、この世界の夫婦(夫夫)関係の話題はすごく参考になった。
さらに俺の訓練の話から、城下町の話題、ジュリエッタの営業再開の話題と尽きることはなく、久しぶりに大勢で食事をして楽しくて楽しくて、一瞬ではあったが、置かれた状況を忘れることが出来た。
夕食を終え、キースはアランの元へ、担当以外の騎士達が官舎へ帰るのをエントランスで見送り、自室に戻る。
ウィルは2階の騎士の部屋に行き、俺とディーは3階へ上がった。
チャプチャプとお湯が揺れる。
背後のディーの肩に後頭部を預けて、後ろから抱かれるように共に湯船に浸かっていた。
「はぁ~…気持ちぃ…」
温めのお湯に浸かりながらため息をつく。
「もっと気持ち良くなりませんか?」
クスクスと耳元で笑いながら囁かれ、それと同時に指先で乳首の先端を撫でられてピクリと反応した。
「なぁ…」
クリクリと乳首をいじられてジクジクとした快感を感じながらディーを振り返る。
「もう…11日目だ」
ロイが出発して11日目。帰ってくると思っていたのに、まだ戻らないとわかって寂しさが襲っていた。
「いつ…会えるかな」
ディーの手の動きが止まる。
「寂しいですか?」
「うん。寂しい…」
素直に寂しいと訴える翔平に、ディーはロイに嫉妬した。
2人で愛しているとわかっていても、目の前の恋人はもう1人の男を欲している。
私がいるのに、それでは足りないとそう訴えている。
「ショーヘイ…」
ギュッと背後から抱きしめると、翔平はディーの腕に縋り付く。
そして体を起こすとディーと向かい合わせになって、抱きついた。
「寂しいから…ずっとこうしてたい」
ディーは何も言えず、ただ抱きしめ返して慰めるように頭を撫でた。
翔平の手がディーの肩に触れ、体を起こすと自分から唇を重ねた。
唇を重ねるだけのキスが舌を絡ませる濃厚なものに変わるまで時間はかからなかった。
触れている互いのペニスが天を向いて硬く膨張し、求め合う。
「ディー…」
はぁと熱い吐息を吐き、自らすり寄せるようにディーを求めた。
濡れた体を完全に拭き取ることもせず、絡み合ったまま寝室へ雪崩こむ。
1人欠けた状態で、互いに補うように体を貪り合う。
何度も繋がり、溶け込むように体を重ね、その存在を確かめ合った。
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