ぼっちの田舎暮らしの青年、鉄仮面の貴公子を助けて溺愛される

猫の手

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第三章 両思いと甘い日々

出会って10日後にプロポーズします

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 夕食も食べ終わり、後は寝るだけという状態になってから暖炉の前に座った。
 その手にお茶が入ったカップを持ち、椅子に座らず、膝を突き合わせてふわふわの毛足の長いラグの上に座った。
「話って…?」
 ルシルが不安気にアシェルに尋ねる。

 1週間という限定の同居は、すでに4日目が終わろうとしている。
 7日目にはまたアシェルはここを出て行くが、もしかしてその前に出て行くという話かもしれないと、ルシルは不安で、怖くて、悲しくて、彼と離れたくないと胸が締め付けられていた。

「ルシル…」
 アシェルに真剣に見つめられ、否が応でも緊張が高まり、ルシルはゴクリと唾を飲み込んだ。
「単刀直入に言う。俺と…」
 アシェルは一度言葉を止めてルシルの手を握った。
「俺と、一緒に来て欲しい」
 両手でしっかりと手を握り、じっとその目を見つめて言った。
「…え…?」
 ルシルは意味がわからずに思わず聞き返していた。
「俺と一緒に領都へ行こう」
 ルシルはじわじわと言葉の意味を飲み込み、目を丸くし、ポカンと口を開けた。
「ルシル、よく聞いてくれ」
 アシェルは緊張で乾いた喉を潤すようにゴクリと唾を飲み込んだ。
「俺の名前は、アシェル・ヒューバート。ヒューバート伯爵家の次男だ」
「ひゅうば……はく、しゃく?」
 ルシルは言われた言葉を反復して呟き、言葉を理解した。
「……ヒューバート伯爵家!?領主様??」
「ああ。現領主は俺の親父だ」
「え!?ええええ!!??」
 ルシルはようやく理解し大きな声をあげた。
「嘘!?なんで!?ええ??」
 かなり動揺し狼狽え目の前がぐるぐるして疑問符ばかりを口にする。そんなルシルにアシェルは苦笑いを浮かべ、落ち着くのを待つことにした。

 しばらくしてルシルは落ち着きを取り戻し、胸に手を当てながらはあと息を吐き、アシェルをじっと見た。
「…アシェル、様?」
「様はいらない。ルシルの前では俺はただのアシェルでいたい」
 ニコリと微笑むと、ルシルはいつものアシェルだと嬉しくなった。
「ルシル、もう一度言う」
 落ち着いたところで、アシェルは再びルシルの手を取る。
「俺と一緒に来てくれ。もう離れたくない。ずっとそばにいたい。いて欲しい」
 アシェルは心からの想いをルシルにぶつける。
「俺と結婚して欲しい」
 ルシルは目を丸くし、プロポーズされたという事実に顔を真っ赤に染めた。
「……で、でも…まだ知り合って数日なのに…」
 ルシルは嬉しいとは思ったがあまりにも急な話に戸惑いを見せ、目を逸らした。
「それに…僕は平民だし、釣り合わないよ」
「時間も身分も関係ない。俺はルシルがいい。ルシルしかいない」
 アシェルははっきりと言い、握っていた手を引っ張るとルシルを引き寄せ、抱きしめた。
「ルシル、好きだ。こんな気持ち初めてなんだ。ずっと胸が痛いほど高鳴って、苦しい」
 抱きしめられ、頭のすぐそばで辛そうな声で言われた。触れた所からアシェルの鼓動を感じ、言葉通り早鐘のように高鳴っているのを知った。
「こんなに辛いのに、そばにいると嬉しいし楽しい。顔を見ると安心する。とても幸せで満ち足りた気分になる」
 アシェルはルシルを抱きしめる腕に力を込め、思いの丈を打ち明ける。
「お願いだ。ずっとそばにいさせてくれ。俺の隣で笑っていてくれ。
 俺にルシルを、守らせてくれ」
 ルシルは最後の言葉にハッとした。

 アシェルはルシルが何をされたのかを知っている。
 それを知って、守りたいと言ってくれていると気付いた。

 ルシルの腕が上がり、アシェルの背中へ回されると抱きしめ返す。
「アシェル、ありがとう」
 ルシルは静かに涙を流し、アシェルの胸に顔を埋める。
 触れた所からアシェルの魔力が流れ込んでくるのを感じた。
 守りたいと言ってくれたのが本心で、自分を包み込むような温かさを感じて、このまま何もかも委ねたいと思った。
 ルシルは名残惜しむように体を少しだけ離すと、間近にあるアシェルの顔を見つめる。
「僕で、いいの?」
「ああ。ルシルがいい」
 アシェルは即答し、優しく微笑むとルシルの頬を撫で、流れてくる涙を指で掬った。
「僕を、愛して、くれますか?」
 震える声で尋ねる。
「ああ。愛してる」
 ルシルは泣きながら笑顔で尋ねると、アシェルは頷きながら答えた。
 その答えに、ルシルの目から大粒の涙がポロポロと溢れ落ちる。
「アシェル…。僕を、連れてって…」
 泣きながら言ったルシルに、アシェルは愛おしくてたまらなかった。
「ルシル、好きだよ。愛してる。俺と一緒に行こう。ずっと一緒にいよう」
 アシェルの目からも涙が流れ、再び強く抱きしめた。
「アシェル、好き…。愛してる」
 その想いがどんどん深くなる。何度言葉にしても足りず、補うように触れた場所から流れてくる魔力が混ざり合い、互いの心を満たしていった。



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