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5《大泊瀬皇子の訪問》
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「最近父上が体調を崩しやすくてな。俺は昔葛城には良く来ていたから適任だった」
大泊瀬皇子は4年ぶりに会ったと言うのに、至って普通に彼女に話しかけてきた。4年前に比べて、彼は背もかなり延びていて、少し凛々しさも感じられた。
この4年間で、彼自身も大きく成長したのかもしれない。
(まさか大泊瀬皇子が今日の代理だったなんて、全く想像してなかったわ)
「大和から今日代理で来られたのは大泊瀬皇子だったのですね……雄朝津間大王が体調を崩しやすい話しは聞いてます。父も大王の体調は心配だと言ってましたから」
葛城円は日頃から、大和の話しを良く韓媛に話すようにしていた。本来姫にそこまでする必要はないが、韓媛自身が政り事に関心があり、何かの役に立つ事もあるのではと彼は考えていた。
「父上の事は先ほど円と話している際も聞かれた。まぁ、安静にはしてるのでそれ程でもないがな」
韓媛はそれを聞いて少し安心した。大王の体調不良は、彼の家臣や他の豪族達からしても気がきでない。
(とりあえず、雄朝津間大王が安静にされてるようで安心したわ。大和は今、木梨軽皇子と軽大娘皇女の件の事で色々大変なはず……)
「それを聞いて安心です。父との話しはもう済まれたのですか?」
元々彼はこの場所をとても気に入っていた。父親との話しが終わって、それで来ていたのであろう。
「あぁ、先程な。ここは俺も元々気に入っていて、それで少し懐かしくなって来てみた」
彼はそう言って、この木をとても懐かしそうにして見ていた。この木は皇子と韓媛にとってはとても思い出のあるものだ。
(この木を見つめる皇子は、とても少年のような顔ね。それは当時と変わってないわ)
「本当に、皇子とはここで色々遊びましたものね。追いかけっこや、かくれんぼなんかして……あとは、変ないたずらにも付き合わされたりして」
韓媛はふと当時の事を思い出し、口に手を添えてクスクス笑った。
大泊瀬皇子は一緒に来ていた大和の大人達にもいたずらして、よく怒られていた。でも彼はそれでもめげずに、韓媛に『また今度続きをやろう』とまで言っていた。
「そうだったな。俺も流石に今はそんな悪さはしないが……
それに、お前だっておれが見つけて捕まえようとしたら、いつも上手く交わしていたな。まるで触れてしまったら消えてしまうかのように」
彼はそう言いながら韓媛を見た。彼女もこの4年間で少し背も伸びて、前より少し大人びたなと思った。父の円の話しでは、最近は政り事にも関心を持っていると聞き、そこら辺はやはり親子だなと彼は思う。
それを聞いた韓媛は、少し愉快そうにしながら彼に言った。
「まぁ、そう上手くして逃げないと、遊びにならないでしょう。皇子の方が力があるのだから、女の私が逃げるとなると、それなりに考えます」
韓媛も4年ぶりに会ったにも関わらず、こうも気軽に彼と話しが出来ているのが、何とも不思議な感じがする。
「そう言えば皇子、どうして4年間も葛城に来られなかったのですか? 噂では皇子の親や家臣達に止めさせられたと聞いてましたけど」
韓媛もせっかく大泊瀬皇子と再会したので、この事も聞いてみようと思った。
「あぁ、当時おれは遊んでばかりだったから、皇子としての自覚を持たせるため言われた。ただそれだけが理由って訳でもなかったが……」
(え、それ以外にも理由が?)
皇子にそう言われて、韓媛は少し不思議に思った。一体他にどんな理由があったと言うのだろうか。
「皇子、他の理由とは何だったのでしょうか?」
それを聞いた大泊瀬皇子は、急にとても困惑したような表情をし、韓媛から思わず目を反らした。
どうやら彼的に何か不都合な事でもあるのだろう。
「まぁ、ちょっと色々あってな。悪いがそれは教えられない」
そう彼が言ったので、一瞬2人の間に沈黙が訪れた。韓媛も彼には彼なりの事情があるのだろうと思った。
(まぁ、言いたくないなら、別に無理して聞く訳にもいかないわ)
「そうですか、別に無理して聞こうとは思ってませんので。それに皇子にも色々と事情がおありでしょうし……」
韓媛は特に気にするふうでもなく、そう彼に言った。彼も一応大和の皇子だ。もしかすると皇子としての理由があるのかもしれない。
そんな彼女を見て、大泊瀬皇子は思った。
(こいつは、相変わらず物分かりが良いな。父親の円が、娘が男だったらどんなに良かったかと嘆いている理由が分かる気がする)
それから2人は少しの間、この木や周りの景色を眺めていた。
韓媛は何故かこの時間がとても落ち着く感じがした。それは何だかんだで、彼が幼なじみだからなのかもしれない。
それからしばらくして皇子が「あ、そうだ」と何かを思い出したかのようにして彼女に言った。
「先程も言ったが、大王が今体調を崩しやすいから、当分の間は俺が代理でここに度々来る事になる。
お前も知ってるかもしれないが、大王の指示で、今木梨軽の兄上が政り事に関わらないようにしている」
それを聞いた韓媛は、やはり木梨軽皇子の件は大和でもかなり影響が出ているのだなと思った。もしかすると、家臣達からも何か不満が上がって来ているのかもしれない。
「やはり、木梨軽皇子の件は問題になってるのですね。この事に関して、大王もさぞお心を痛めてる事でしょう」
大王も只でさえ体調が悪いのに、そこに来て木梨軽皇子の問題まである。であれば家臣や他の皇子に頼らざるを得ない。
「まぁ、大王には皇后が側に寄り添ってるから、大丈夫だ。俺達子供も、もうそこまで小さい訳ではないからな」
大王夫婦の7番目の子供である大泊瀬皇子がこうやって葛城に来ているのだ、他の兄弟も全員成人はしてなくても、それなりに大きいのだろう。
大泊瀬皇子は4年ぶりに会ったと言うのに、至って普通に彼女に話しかけてきた。4年前に比べて、彼は背もかなり延びていて、少し凛々しさも感じられた。
この4年間で、彼自身も大きく成長したのかもしれない。
(まさか大泊瀬皇子が今日の代理だったなんて、全く想像してなかったわ)
「大和から今日代理で来られたのは大泊瀬皇子だったのですね……雄朝津間大王が体調を崩しやすい話しは聞いてます。父も大王の体調は心配だと言ってましたから」
葛城円は日頃から、大和の話しを良く韓媛に話すようにしていた。本来姫にそこまでする必要はないが、韓媛自身が政り事に関心があり、何かの役に立つ事もあるのではと彼は考えていた。
「父上の事は先ほど円と話している際も聞かれた。まぁ、安静にはしてるのでそれ程でもないがな」
韓媛はそれを聞いて少し安心した。大王の体調不良は、彼の家臣や他の豪族達からしても気がきでない。
(とりあえず、雄朝津間大王が安静にされてるようで安心したわ。大和は今、木梨軽皇子と軽大娘皇女の件の事で色々大変なはず……)
「それを聞いて安心です。父との話しはもう済まれたのですか?」
元々彼はこの場所をとても気に入っていた。父親との話しが終わって、それで来ていたのであろう。
「あぁ、先程な。ここは俺も元々気に入っていて、それで少し懐かしくなって来てみた」
彼はそう言って、この木をとても懐かしそうにして見ていた。この木は皇子と韓媛にとってはとても思い出のあるものだ。
(この木を見つめる皇子は、とても少年のような顔ね。それは当時と変わってないわ)
「本当に、皇子とはここで色々遊びましたものね。追いかけっこや、かくれんぼなんかして……あとは、変ないたずらにも付き合わされたりして」
韓媛はふと当時の事を思い出し、口に手を添えてクスクス笑った。
大泊瀬皇子は一緒に来ていた大和の大人達にもいたずらして、よく怒られていた。でも彼はそれでもめげずに、韓媛に『また今度続きをやろう』とまで言っていた。
「そうだったな。俺も流石に今はそんな悪さはしないが……
それに、お前だっておれが見つけて捕まえようとしたら、いつも上手く交わしていたな。まるで触れてしまったら消えてしまうかのように」
彼はそう言いながら韓媛を見た。彼女もこの4年間で少し背も伸びて、前より少し大人びたなと思った。父の円の話しでは、最近は政り事にも関心を持っていると聞き、そこら辺はやはり親子だなと彼は思う。
それを聞いた韓媛は、少し愉快そうにしながら彼に言った。
「まぁ、そう上手くして逃げないと、遊びにならないでしょう。皇子の方が力があるのだから、女の私が逃げるとなると、それなりに考えます」
韓媛も4年ぶりに会ったにも関わらず、こうも気軽に彼と話しが出来ているのが、何とも不思議な感じがする。
「そう言えば皇子、どうして4年間も葛城に来られなかったのですか? 噂では皇子の親や家臣達に止めさせられたと聞いてましたけど」
韓媛もせっかく大泊瀬皇子と再会したので、この事も聞いてみようと思った。
「あぁ、当時おれは遊んでばかりだったから、皇子としての自覚を持たせるため言われた。ただそれだけが理由って訳でもなかったが……」
(え、それ以外にも理由が?)
皇子にそう言われて、韓媛は少し不思議に思った。一体他にどんな理由があったと言うのだろうか。
「皇子、他の理由とは何だったのでしょうか?」
それを聞いた大泊瀬皇子は、急にとても困惑したような表情をし、韓媛から思わず目を反らした。
どうやら彼的に何か不都合な事でもあるのだろう。
「まぁ、ちょっと色々あってな。悪いがそれは教えられない」
そう彼が言ったので、一瞬2人の間に沈黙が訪れた。韓媛も彼には彼なりの事情があるのだろうと思った。
(まぁ、言いたくないなら、別に無理して聞く訳にもいかないわ)
「そうですか、別に無理して聞こうとは思ってませんので。それに皇子にも色々と事情がおありでしょうし……」
韓媛は特に気にするふうでもなく、そう彼に言った。彼も一応大和の皇子だ。もしかすると皇子としての理由があるのかもしれない。
そんな彼女を見て、大泊瀬皇子は思った。
(こいつは、相変わらず物分かりが良いな。父親の円が、娘が男だったらどんなに良かったかと嘆いている理由が分かる気がする)
それから2人は少しの間、この木や周りの景色を眺めていた。
韓媛は何故かこの時間がとても落ち着く感じがした。それは何だかんだで、彼が幼なじみだからなのかもしれない。
それからしばらくして皇子が「あ、そうだ」と何かを思い出したかのようにして彼女に言った。
「先程も言ったが、大王が今体調を崩しやすいから、当分の間は俺が代理でここに度々来る事になる。
お前も知ってるかもしれないが、大王の指示で、今木梨軽の兄上が政り事に関わらないようにしている」
それを聞いた韓媛は、やはり木梨軽皇子の件は大和でもかなり影響が出ているのだなと思った。もしかすると、家臣達からも何か不満が上がって来ているのかもしれない。
「やはり、木梨軽皇子の件は問題になってるのですね。この事に関して、大王もさぞお心を痛めてる事でしょう」
大王も只でさえ体調が悪いのに、そこに来て木梨軽皇子の問題まである。であれば家臣や他の皇子に頼らざるを得ない。
「まぁ、大王には皇后が側に寄り添ってるから、大丈夫だ。俺達子供も、もうそこまで小さい訳ではないからな」
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