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24《大泊瀬皇子の妃選び》
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穴穂皇子が大王に即位してから、早1ヶ月程が経過していた。
彼は新たな自身の宮である石上穴穂宮を建て、そこで政り事を始めていた。最初は慌ただしい日々を送っていたが、それもここにきて、ようやく落ち着き始めている。
そんな中、新たに大王となった穴穂大王は、1人自身の部屋にてふと考え事をしていた。
「大泊瀬もそろそろ、妃の1人でも決めておくべきか……」
弟皇子である大泊瀬皇子に、妃の1人でも娶らせておけば、彼も少しは落ち着いて良いのではと彼は考えた。
「とりあえず正妃は、出来れば皇女の方が良いだろう。豪族から娶るとなると、また権力云々でややこしい。それに大泊瀬も豪族が権力を持つのを、余り好ましく思っていない」
その時ふと、彼の脳裏に葛城の韓媛の事が浮かんだ。大泊瀬皇子と韓媛の関係が若干気にはなるが、妃を無理に1人に絞る必要もないだろう。
(まぁ、それについては大泊瀬本人に聞いてみれば良い)
それから彼は、色々候補を考えてみる事にした。だが相手が皇女となると、かなり限られて来る。
「うーん、今皇女でまだ嫁いでいない姫となると……草香幡梭姫ぐらいか」
草香幡梭姫は、雄朝津間大王の父親であった大雀大王が、磐之媛以外の妃である日向髪長媛との間に出来た皇女だ。
その草香幡梭姫と、彼女の兄にあたる大草香皇子は、雄朝津間大王とは異母兄弟になる。
つまり穴穂大王や大泊瀬皇子から見れば、草香幡梭姫は彼らの叔母にあたる人物だ。
「ただ彼女と大泊瀬では、わりと歳が離れている。それが少し気にはなるが」
だが相手はあの大雀大王の皇女だ。身分的には全く持って問題はない。
それに噂によれば、兄の大草香皇子は妹の草香幡梭姫の事をかなり心配しているらしい。であれば大泊瀬皇子の妃の申し入れは、意外に喜ばれるかもしれない。
「大泊瀬がどう思うかが一番気がかりではあるが……まぁ弟に聞いてみて、それで問題がなければ、叔父の大草香皇子に伺いを立てるとしよう」
こうして穴穂大王の中で、大泊瀬皇子の妃は草香幡梭姫を勧めてみる事で決まった。
「確か大泊瀬が近々この宮に来るだろうから、その時に聞いてみるか」
こうして穴穂大王は、数日後ここに来る大泊瀬皇子を待つ事にした。
そして数日後、大泊瀬皇子が穴穂大王のいる石上穴穂宮にやって来た。
「兄上が俺に話しがあると聞いたが、一体何だろうか」
大泊瀬皇子は、穴穂大王が自分に話しがあると聞き、彼の部屋までやってきた。
「あぁ、大泊瀬、お前が来るのを待っていた。とりあえず俺の前に座ってくれ」
穴穂大王にそう言われたので、大泊瀬皇子は彼の前にひとまず座る事にした。
大王の言い方からして、自分に何か頼みたい事でもあるのだろうか。
穴穂大王は大泊瀬皇子が自身の前に座ったのを見て、先日自分が考えていた話しをする事にした。
「実はだな、お前もそろそろ妃を娶ってみてはどうかと考えている。そこで俺の中で色々考えてみたところ、1人候補が浮かんだ」
大泊瀬皇子は、穴穂大王にそう言われて一瞬固まってしまう。
(は、俺に妃だと……)
「兄上、妃なら俺より先に兄上が早く娶るべきでは?」
大泊瀬皇子は思った。確かに自身もまだ妃は娶ってないが、兄の穴穂大王もまだ正式に妃を娶ってはいない。
であれば、自身を優先した方が良いのではと思った。
「まぁ、それはそうだが……お前の場合、早く妃の1人でも娶ればもう少し落ち着きも出て良いかと思ってな」
(それに、俺にはまだ諦めきれていない女性がいる)
穴穂大王には、密かに心に想っている女性がいる。だが相手は、彼にとって今も尚手の届かない人でいる。
「ふん、そう言うものか。それで一体誰を俺に勧める気だ」
大泊瀬皇子は少し目を厳しくさせて、穴穂皇子を見た。
「あぁ、相手は俺達の叔母にあたる草香幡梭姫だ。とりあえず正妃は皇女の方がお前も喜ぶかと思ってな」
それを聞いた大泊瀬皇子は、一瞬とても驚いた表情をした。そしてその後、彼はしばらく黙り込んでしまう。何やら1人で色々と考え込んでいるようだ。
(なる程、草香幡梭姫か……)
そんな大泊瀬皇子の姿を見て、穴穂大王もその場で直ぐに断らないとなると、これは意外に良い返答が来るかもしれないと思った。
そんな穴穂大王が期待を寄せる中、大泊瀬皇子は答えた。
「確かに、正妃を皇女から娶るのは悪くない。それに相手が草香幡梭姫なのも、俺的には好都合だ」
大泊瀬皇子はそうあっさりと回答した。
「そうか、ではこの婚姻の件を大草香皇子に伝えても良いか」
(そうだな。とりあえずこちらの条件も乗せて、その上で叔父上に判断してもらおう)
「あぁ、それで構わない。だが向こうも分かっていると思うが、俺と草香幡梭姫ではわりと年齢が離れている。その点も少し相談した方が良いだろう」
穴穂大王も、もちろんその事は理解している。その上での婚姻なので、あとは大草香皇子と草香幡梭姫の判断に任せる他ない。
彼は新たな自身の宮である石上穴穂宮を建て、そこで政り事を始めていた。最初は慌ただしい日々を送っていたが、それもここにきて、ようやく落ち着き始めている。
そんな中、新たに大王となった穴穂大王は、1人自身の部屋にてふと考え事をしていた。
「大泊瀬もそろそろ、妃の1人でも決めておくべきか……」
弟皇子である大泊瀬皇子に、妃の1人でも娶らせておけば、彼も少しは落ち着いて良いのではと彼は考えた。
「とりあえず正妃は、出来れば皇女の方が良いだろう。豪族から娶るとなると、また権力云々でややこしい。それに大泊瀬も豪族が権力を持つのを、余り好ましく思っていない」
その時ふと、彼の脳裏に葛城の韓媛の事が浮かんだ。大泊瀬皇子と韓媛の関係が若干気にはなるが、妃を無理に1人に絞る必要もないだろう。
(まぁ、それについては大泊瀬本人に聞いてみれば良い)
それから彼は、色々候補を考えてみる事にした。だが相手が皇女となると、かなり限られて来る。
「うーん、今皇女でまだ嫁いでいない姫となると……草香幡梭姫ぐらいか」
草香幡梭姫は、雄朝津間大王の父親であった大雀大王が、磐之媛以外の妃である日向髪長媛との間に出来た皇女だ。
その草香幡梭姫と、彼女の兄にあたる大草香皇子は、雄朝津間大王とは異母兄弟になる。
つまり穴穂大王や大泊瀬皇子から見れば、草香幡梭姫は彼らの叔母にあたる人物だ。
「ただ彼女と大泊瀬では、わりと歳が離れている。それが少し気にはなるが」
だが相手はあの大雀大王の皇女だ。身分的には全く持って問題はない。
それに噂によれば、兄の大草香皇子は妹の草香幡梭姫の事をかなり心配しているらしい。であれば大泊瀬皇子の妃の申し入れは、意外に喜ばれるかもしれない。
「大泊瀬がどう思うかが一番気がかりではあるが……まぁ弟に聞いてみて、それで問題がなければ、叔父の大草香皇子に伺いを立てるとしよう」
こうして穴穂大王の中で、大泊瀬皇子の妃は草香幡梭姫を勧めてみる事で決まった。
「確か大泊瀬が近々この宮に来るだろうから、その時に聞いてみるか」
こうして穴穂大王は、数日後ここに来る大泊瀬皇子を待つ事にした。
そして数日後、大泊瀬皇子が穴穂大王のいる石上穴穂宮にやって来た。
「兄上が俺に話しがあると聞いたが、一体何だろうか」
大泊瀬皇子は、穴穂大王が自分に話しがあると聞き、彼の部屋までやってきた。
「あぁ、大泊瀬、お前が来るのを待っていた。とりあえず俺の前に座ってくれ」
穴穂大王にそう言われたので、大泊瀬皇子は彼の前にひとまず座る事にした。
大王の言い方からして、自分に何か頼みたい事でもあるのだろうか。
穴穂大王は大泊瀬皇子が自身の前に座ったのを見て、先日自分が考えていた話しをする事にした。
「実はだな、お前もそろそろ妃を娶ってみてはどうかと考えている。そこで俺の中で色々考えてみたところ、1人候補が浮かんだ」
大泊瀬皇子は、穴穂大王にそう言われて一瞬固まってしまう。
(は、俺に妃だと……)
「兄上、妃なら俺より先に兄上が早く娶るべきでは?」
大泊瀬皇子は思った。確かに自身もまだ妃は娶ってないが、兄の穴穂大王もまだ正式に妃を娶ってはいない。
であれば、自身を優先した方が良いのではと思った。
「まぁ、それはそうだが……お前の場合、早く妃の1人でも娶ればもう少し落ち着きも出て良いかと思ってな」
(それに、俺にはまだ諦めきれていない女性がいる)
穴穂大王には、密かに心に想っている女性がいる。だが相手は、彼にとって今も尚手の届かない人でいる。
「ふん、そう言うものか。それで一体誰を俺に勧める気だ」
大泊瀬皇子は少し目を厳しくさせて、穴穂皇子を見た。
「あぁ、相手は俺達の叔母にあたる草香幡梭姫だ。とりあえず正妃は皇女の方がお前も喜ぶかと思ってな」
それを聞いた大泊瀬皇子は、一瞬とても驚いた表情をした。そしてその後、彼はしばらく黙り込んでしまう。何やら1人で色々と考え込んでいるようだ。
(なる程、草香幡梭姫か……)
そんな大泊瀬皇子の姿を見て、穴穂大王もその場で直ぐに断らないとなると、これは意外に良い返答が来るかもしれないと思った。
そんな穴穂大王が期待を寄せる中、大泊瀬皇子は答えた。
「確かに、正妃を皇女から娶るのは悪くない。それに相手が草香幡梭姫なのも、俺的には好都合だ」
大泊瀬皇子はそうあっさりと回答した。
「そうか、ではこの婚姻の件を大草香皇子に伝えても良いか」
(そうだな。とりあえずこちらの条件も乗せて、その上で叔父上に判断してもらおう)
「あぁ、それで構わない。だが向こうも分かっていると思うが、俺と草香幡梭姫ではわりと年齢が離れている。その点も少し相談した方が良いだろう」
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