48 / 78
48《大泊瀬皇子の告白》
しおりを挟む
「でも私に皇子の役に立つような価値があるとは正直思えないです」
それを聞いた大泊瀬皇子は、何故かひどく愕然とした態度を彼女に見せる。
そして彼は急に彼女から少し体を離した。
韓媛も一体どうしたのだろうかと少し不思議そうにして、そんな彼を見つめた。
そして彼はいよいよ我慢の限界を越えたようで、彼女に自身の本音をぶつけた。
「韓媛、お前もいい加減に気付け!! 俺はお前のことが好きなんだ。そんなお前をどうして殺せるっていうんだ!!」
(え、大泊瀬皇子が私のことを好き?)
韓媛が一瞬何のことだか分からないといった表情をして見せると、彼は強引に彼女の顔を上げさせる。そして彼女の唇をそのまま自身の口でふさいだ。
韓媛は皇子から急に口付けされたことに気付き、思わず彼から離れようとした。
だが彼は彼女の背中に腕を回して、彼女が離れようとするのを止めさせる。
本人の腕の力はとても強かったが、思いのほか彼からの口付けは優しかった。
結局韓媛は彼から離れることができず、そのまま彼の口付けを受け続けることになる。
そしてしばらくして、やっと大泊瀬皇子は彼女から唇を離した。
韓媛は余りのことに体から少し力がぬけ、そして頬も少し赤みがかっていた。
大泊瀬皇子は片手だけ彼女の腰に回し、もう片方の手をそのまま彼女の頬に添えて言った。
「韓媛、これで分かったか。俺がお前のことをどう思ってるのか」
韓媛もさすがにここまでされるとそれは十分に理解した。
だがそうなると少し疑問に思うことも出てくる。まずはあの皇子の婚姻の問題だ。
「でも大泊瀬皇子いってましたよね、自分には心に決めた女性がいるって」
そもそも韓媛はこの件が原因で悩んでいた。彼には意中の女性がいるからと。
それを聞いた皇子は、両手で彼女の腰を持ち直し、続けて話した。
「確かにその件は本当に紛らわしくしてすまなかった。その女性というのはお前のことだ。
だが先に正妃の話しが上がったので、先送りにせざる得なかった……」
(皇子そういうことだったの。でも意中の女性は前々からいたような感じに見えた。でも私は彼とは4年も会っていなかったのに)
「でも私と大泊瀬皇子は4年もの間会っていませんでしたよね?。それなのにどうして皇子が私のことを」
その時韓媛は自分でいってみて、ふと何か大事なことを忘れていないかと考えてみる。
(大泊瀬皇子は前々から私のことが好きだった……)
「そういえば昔、大泊瀬皇子が私を妃にするとかいっていたことがありましたよね。まさかその頃から?」
大泊瀬皇子はそれを聞いて、大きくため息をして見せる。
「確かにあの時は今程本気でいった訳ではない。だがあの頃から俺はお前を妃にしたいとはずっと思っていた」
韓媛からしてみればこれはかなり意外だ。当時大泊瀬皇子はまだ12歳で、その頃から彼は自分のことを好いていたということになる。
「すみません、大泊瀬皇子。あの時はてっきり冗談でいってるものとばかりに……」
「まぁ恐らくそうだろとは思っていたが」
皇子は彼女からはっきりそう言われてしまい、少し傷ついたような表情を見せる。
(あら、大泊瀬皇子を少し傷付けてしまったかしら?)
それから大泊瀬皇子は、韓媛にこれまでの経過を話すから聞いて欲しいといってきた。
なので韓媛もとりあえずは彼の話しを聞いてみることにした。
それから大泊瀬皇子は韓媛から体を離して座り直し、少し距離を取ってから話を始めた。
「俺は子供のころ割りと問題の多い子供で、周りの子供からもよく怖がられていた。でもそんな中、お前だけは普通に接してくれた。幼心にその優しさが正直俺には嬉しかった。だからお前なら将来自分の妃にしても良いと思った」
「皇子、それだけの理由で決められたのですか?」
韓媛からしてもこれは何とも意外な理由だなと思う。
「まぁそれもそうだが……それにお前は当時から割りと可愛かった。だから普通に好きだったのも本当だ」
大泊瀬皇子は少し恥ずかしそうにしながら答えた。韓媛はそんな彼を見て少し可愛いと思う。
「だが当時のお前はまだ恋に疎く、それでお前が年頃になるまで待つしかないと思った。だがずっと幼馴染のまま見られるのも嫌で、それで葛城に行くのをやめることにした」
「まあ、皇子はそれで葛城にこられなくなったのですね」
韓媛もこれで彼が4年間も葛城にこなくなった理由が分かった。だが実際に分かってみると何とも単純な理由である。
「それでお前が14歳になるのを待ってから葛城に行った。そして葛城円にお前を妃にしたいと申し出た。
丁度お前と子供の頃に良く遊んだ木の下で再会した時だ」
(だからお父様は皇子が私を見捨てることはしないと断言できたのね)
しかもこの婚姻は政略的な物とは中々考えにくい。これはどうみても大泊瀬皇子の純粋な恋心からきている。
「それでお父様はその話を聞いて、何といってきたのですか?」
「円も最初は少し驚いていたが、その後に『娘の韓媛が心から納得するなら、この婚姻は認めましょう』といってきた。彼は権力云々よりも娘の幸せを優先したかったようだ」
韓媛はそれを聞いて確かにあの父親ならいいそうだなと思った。
「まぁ俺としてもお前とは強制的ではなく、ちゃんと気持ちを通わせて婚姻を結びたいと思っていた。
だから何とかお前を俺に振り向かせようとして……
だが先ほども言ったように、その途中で草香幡梭姫との婚姻が上がってしまった」
(なるほどね。だいぶ皇子の事情が読めてきたわ)
ここまでくると韓媛もだいぶ気持ちが落ち着いてきた。始めはどんな重たい内容がくるのかと冷や冷やしていたが。
「だが前回の事件の際に、円は眉輪を見逃してもらう代わりに、娘のお前を俺に差し出すといってきた。
その時はよく分からなかったが、もしかすると自身の死期を悟っていたのかもしれない」
「お父様がそのようなことを。もしかすると、そうすることで私を守りたかったのかもしれませんね」
(あとはお父様は私の気持ちに気付いていたってことは……まさかそれはないわね)
韓媛もさすがに父親がそこまで感ずくことはないだろと考える。ただこればかりは本人に聞いていないので、絶対とはいいきれないが。
「確かに円なら考えそうだ。どのみち俺はそのつもりでいたから、お前の身を守るためにも良いと考えたのかもしれない。まぁ円本人がもういないので、確認のしようはないが」
葛城円はきっと娘が幸せになれるよう、そこまで色々と考えていたのであろう。韓媛はそう思うと、父にはただただ感謝の思いでいっぱいだ。
それを聞いた大泊瀬皇子は、何故かひどく愕然とした態度を彼女に見せる。
そして彼は急に彼女から少し体を離した。
韓媛も一体どうしたのだろうかと少し不思議そうにして、そんな彼を見つめた。
そして彼はいよいよ我慢の限界を越えたようで、彼女に自身の本音をぶつけた。
「韓媛、お前もいい加減に気付け!! 俺はお前のことが好きなんだ。そんなお前をどうして殺せるっていうんだ!!」
(え、大泊瀬皇子が私のことを好き?)
韓媛が一瞬何のことだか分からないといった表情をして見せると、彼は強引に彼女の顔を上げさせる。そして彼女の唇をそのまま自身の口でふさいだ。
韓媛は皇子から急に口付けされたことに気付き、思わず彼から離れようとした。
だが彼は彼女の背中に腕を回して、彼女が離れようとするのを止めさせる。
本人の腕の力はとても強かったが、思いのほか彼からの口付けは優しかった。
結局韓媛は彼から離れることができず、そのまま彼の口付けを受け続けることになる。
そしてしばらくして、やっと大泊瀬皇子は彼女から唇を離した。
韓媛は余りのことに体から少し力がぬけ、そして頬も少し赤みがかっていた。
大泊瀬皇子は片手だけ彼女の腰に回し、もう片方の手をそのまま彼女の頬に添えて言った。
「韓媛、これで分かったか。俺がお前のことをどう思ってるのか」
韓媛もさすがにここまでされるとそれは十分に理解した。
だがそうなると少し疑問に思うことも出てくる。まずはあの皇子の婚姻の問題だ。
「でも大泊瀬皇子いってましたよね、自分には心に決めた女性がいるって」
そもそも韓媛はこの件が原因で悩んでいた。彼には意中の女性がいるからと。
それを聞いた皇子は、両手で彼女の腰を持ち直し、続けて話した。
「確かにその件は本当に紛らわしくしてすまなかった。その女性というのはお前のことだ。
だが先に正妃の話しが上がったので、先送りにせざる得なかった……」
(皇子そういうことだったの。でも意中の女性は前々からいたような感じに見えた。でも私は彼とは4年も会っていなかったのに)
「でも私と大泊瀬皇子は4年もの間会っていませんでしたよね?。それなのにどうして皇子が私のことを」
その時韓媛は自分でいってみて、ふと何か大事なことを忘れていないかと考えてみる。
(大泊瀬皇子は前々から私のことが好きだった……)
「そういえば昔、大泊瀬皇子が私を妃にするとかいっていたことがありましたよね。まさかその頃から?」
大泊瀬皇子はそれを聞いて、大きくため息をして見せる。
「確かにあの時は今程本気でいった訳ではない。だがあの頃から俺はお前を妃にしたいとはずっと思っていた」
韓媛からしてみればこれはかなり意外だ。当時大泊瀬皇子はまだ12歳で、その頃から彼は自分のことを好いていたということになる。
「すみません、大泊瀬皇子。あの時はてっきり冗談でいってるものとばかりに……」
「まぁ恐らくそうだろとは思っていたが」
皇子は彼女からはっきりそう言われてしまい、少し傷ついたような表情を見せる。
(あら、大泊瀬皇子を少し傷付けてしまったかしら?)
それから大泊瀬皇子は、韓媛にこれまでの経過を話すから聞いて欲しいといってきた。
なので韓媛もとりあえずは彼の話しを聞いてみることにした。
それから大泊瀬皇子は韓媛から体を離して座り直し、少し距離を取ってから話を始めた。
「俺は子供のころ割りと問題の多い子供で、周りの子供からもよく怖がられていた。でもそんな中、お前だけは普通に接してくれた。幼心にその優しさが正直俺には嬉しかった。だからお前なら将来自分の妃にしても良いと思った」
「皇子、それだけの理由で決められたのですか?」
韓媛からしてもこれは何とも意外な理由だなと思う。
「まぁそれもそうだが……それにお前は当時から割りと可愛かった。だから普通に好きだったのも本当だ」
大泊瀬皇子は少し恥ずかしそうにしながら答えた。韓媛はそんな彼を見て少し可愛いと思う。
「だが当時のお前はまだ恋に疎く、それでお前が年頃になるまで待つしかないと思った。だがずっと幼馴染のまま見られるのも嫌で、それで葛城に行くのをやめることにした」
「まあ、皇子はそれで葛城にこられなくなったのですね」
韓媛もこれで彼が4年間も葛城にこなくなった理由が分かった。だが実際に分かってみると何とも単純な理由である。
「それでお前が14歳になるのを待ってから葛城に行った。そして葛城円にお前を妃にしたいと申し出た。
丁度お前と子供の頃に良く遊んだ木の下で再会した時だ」
(だからお父様は皇子が私を見捨てることはしないと断言できたのね)
しかもこの婚姻は政略的な物とは中々考えにくい。これはどうみても大泊瀬皇子の純粋な恋心からきている。
「それでお父様はその話を聞いて、何といってきたのですか?」
「円も最初は少し驚いていたが、その後に『娘の韓媛が心から納得するなら、この婚姻は認めましょう』といってきた。彼は権力云々よりも娘の幸せを優先したかったようだ」
韓媛はそれを聞いて確かにあの父親ならいいそうだなと思った。
「まぁ俺としてもお前とは強制的ではなく、ちゃんと気持ちを通わせて婚姻を結びたいと思っていた。
だから何とかお前を俺に振り向かせようとして……
だが先ほども言ったように、その途中で草香幡梭姫との婚姻が上がってしまった」
(なるほどね。だいぶ皇子の事情が読めてきたわ)
ここまでくると韓媛もだいぶ気持ちが落ち着いてきた。始めはどんな重たい内容がくるのかと冷や冷やしていたが。
「だが前回の事件の際に、円は眉輪を見逃してもらう代わりに、娘のお前を俺に差し出すといってきた。
その時はよく分からなかったが、もしかすると自身の死期を悟っていたのかもしれない」
「お父様がそのようなことを。もしかすると、そうすることで私を守りたかったのかもしれませんね」
(あとはお父様は私の気持ちに気付いていたってことは……まさかそれはないわね)
韓媛もさすがに父親がそこまで感ずくことはないだろと考える。ただこればかりは本人に聞いていないので、絶対とはいいきれないが。
「確かに円なら考えそうだ。どのみち俺はそのつもりでいたから、お前の身を守るためにも良いと考えたのかもしれない。まぁ円本人がもういないので、確認のしようはないが」
葛城円はきっと娘が幸せになれるよう、そこまで色々と考えていたのであろう。韓媛はそう思うと、父にはただただ感謝の思いでいっぱいだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる